異世界で目指せハーレム生活! でも仲間のほうがモテモテです

りっち

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9章 異邦人が生きるために

317 妨害

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 んー、結局揉め事を起こしてしまったなぁ。
 ていうか結局こいつら誰なんだよ?

 
「トーマ。トーマにとっては異風の旋律なんて、そんなに大した存在じゃないのは分かってる。
 でも私にはとっても大切なことなの。この国に生きる全ての人より大事なの。
 だから、トーマの口から解散するなんて、2度と言わないで……」

「そっか。ごめんな。もう2度と言わないよ。約束する。
 俺にとっては皆がいればそれだけで充分だからさ。名前や形にはそんなに思い入れはなかったんだよ。
 軽率なことを言ってごめん。俺もみんなのことがこの王国の人間全員よりも大切だよ」


 思い入れがない訳じゃない。
 ただここで揉め事を起こすのは得策じゃないと思っただけだ。
 
 でもそんな軽率な発言が、リーンを悲しませてしまった。
 そう考えたら、段々腹が立ってきたな?


「つうかこの馬鹿女どもって王国の貴族なんだよな? ってことはこれって王国の貴族の総意ってこと?
 なんかこんな奴等に付き合うのは馬鹿らしいし、アリス殺して帰っちゃうか。
 もうこんな奴等に配慮する必要ねぇわ。勝手にやりゃあいいだけだ」


 文句があるならかかってくればいいんだよ。
 全部返り討ちにしてやれば、最終的には反対者はいなくなんだろ。


「それはご容赦願います。王国は皆様と敵対する遺志は御座いませんので」


 入り口から現れたのは、カルマさんとスカーさんだった。
 カルマさんが居るって事は、ブルガーゾも来てるってことか。
 精霊家全員が集まってるのかな?


「じゃあこいつらが個人的に俺と敵対したってことでいいのかな?
 ここにいる奴等は皆殺しにしていいの?」

「それもどうかご容赦を。
 あ、アリスさん。一応お伝えしておきますが、トーマさんが言った事は全て事実ですよ。
 タイデリア家も王国も貴方を保護する理由がなくなり、この報告のあとにはトーマさんに貴方を引き取ってもらう予定でした。
 トーマさんと敵対した貴方が殺されることになろうとも、ディオーヌ様も王国も一切邪魔しませんよ?
 なんなら今この場で殺されようともね。トーマさんが譲ってくれるなら、私が殺してあげても良いくらいです」


 アリスがスカーさんの言葉を聞いて、俺とスカーさんを交互に見ている。
 なんか壊れた玩具みたいだ。


「2人が来たってことは、騒動を止めるため? それとも謁見の準備が出来たから呼びに来たの?」

「前者で御座いますね。謁見の準備はもう少しかかりそうです」

「ああ、じゃあいいや。不愉快だから帰るよ。
 こんな想いをしてまで王国に阿るつもりはない。後は好きにさせてもらう」


 おっと、帰る前にアリスだけは確実に殺しておかないとな。
 ダガーを抜いてアリスの前に立つ。


「なにか言い残したいことはある? 異邦人としてそれくらいは聞いてやるよ」

「あ、あああ、ああああ……! ご、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!
 わ、私そんなつもりじゃ……!」

「それが遺言でいいのね? 今さら謝っても遅いから。来世はもう少し思慮深く」

「トーマさん。どうかお待ちいただけませんか?」


 声をかけられたので振り返ると、ディオーヌ様が立っていた。


「謁見の準備は今すぐ完了させます。私と共に参りましょう。
 ――――アリス。貴方のお守りは本当に負担でしたわ。ほんの少し伸びた寿命で、今までの己の振る舞いを後悔なさい。
 それとこの場にいるご令嬢の皆様。貴方達のお父上には全て報告させていただきます。異風の旋律と敵対した以上、貴方たちの処分は非常に重いものになると知りなさい。
 特にシルヴァール王女殿下。貴方には死罪すら有り得ると心得なさい。
 さて、大変長らくお待たせしてしまいました。どうぞ皆さん参りましょう。
 スカー。この部屋にいる令嬢は、絶対に部屋から出さないように」

「畏まりました。お任せください」


 ディオーヌ様に連れ立って、俺たちも部屋を出た。


「なんか済みませんでした。ディオーヌ様の手を煩わせてしまって」

「いえ、こちらこそ申し訳ありませんでした。まさかアリスがあそこまで浅慮だったなんて。
 それに、王国貴族の質の低下は常々問題視しておりました。まさか今日この場で醜態を晒してしまうなど、私の手で殺してやりたいくらいですわ。
 彼女達には必ず厳正な処罰を与えますわ。トーマさんが望むのであれば、絶対服従の奴隷として送ってあげても宜しいですよ?」

「要りませんねぇ。もし送られてきても、売却するくらいしか使い道が思い浮かびませんし」

「全く、忌々しいことです。
 実のところ、謁見の準備だってとっくに整っているのですよ?
 それをゼルポーナスめが難癖をつけて、貴方達と王との謁見を妨害し続けていたのです。
 ミルズレンダで貴方達が行った事は聞きましたけど、それで確執があったとしても、今回のことは王国の存亡がかかっている話なのですよ……!?
 本当に、同じ王国貴族として恥じ入るばかりです」


 はっ! 道理で長い待ち時間だと思ったわ。
 ゼルポーナスのアホが、俺達になにを言われるのかと焦って、謁見を妨害してたのか。

 そりゃ事情を全部知ってるディオーヌ様からしたら、ゼルポーナスのやってる事はアホみたいに見えただろうなぁ。


 ディオーヌ様に先導されて、大きく頑丈そうな扉の前に到着する。どうやらここが謁見の間らしい。


「タイデリア・ディオーヌ様。並びに異風の旋律の皆様、そして異邦人の皆様が到着されました!」


 扉が開かれ、中へと進む。
 思った以上に広い空間で、集まっている人数もかなり多い。


「ゼルポーナスがごねている間に、人が集まってしまったのですわ。
 本来は先に、精霊家以上の者達だけで謁見をする予定でございましたのに」


 ディオーヌ様が小声で教えてくれた。
 ああ、そりゃあ予定が押しまくってたら腹立つよなぁ。

 全く、色々くだらないことで、謁見が随分遅れてしまったじゃないか。
 せめて謁見自体はスムーズに終わると良いんだけど。
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