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9章 異邦人が生きるために
329 リヴァーブ式農業
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「なんでも、砂漠地域に農場を作る計画があるそうですね。とても面白い計画だと思います。
私共も、中央農地だけでの生産では王国中に満足に野菜を提供できなくて、歯がゆい想いをしていたんですよ。
農地が増えれば野菜の供給量も増えるし、この場所ももう少し開かれた場所になってくれると期待してるんです。
年に数人しか来客が無いのは、正直退屈なんですよね。それに人手も足りてないんです。だからこの場所はもっと開かれるべきですし、この場所の重要度をもう少し下げられればと思ってますよ」
ダリッツさんがぶっちゃけてきた。
変に対抗意識を持たれるよりはいいか。積極的に協力してくれそうだし。
馬車の外から見る景色は、異世界という言葉に似つかわしくないほど、整然と区画整理されているようだ。
運搬の利便性のためなのか、俺たち全員が乗れる程度の馬車がすれ違うのにも問題なさそうな道幅だし。
ただ育てられている野菜は、リンカーズではよく口にしているけれど、地球では見覚えのない野菜が多い。
実際の扱いも適当に火を通せばオッケー、というものが多くて生野菜とか殆ど食えないんだよな。
「しかし本当に広い農地のようですね。どの程度の広さがあるんでしょうか?」
「んーそうですね。王都が10個くらいは入ると思いますよ。正確な面積は分かりませんけどね」
「大きいですねぇ。それでも王国の野菜の供給は足りてないとのことですけど、農地を更に拡張するということは出来ないんですか?」
「ええ。それもまた難しいんですよ。中央農地という名前の通り、この場所はリヴァーブ王国の中心近い場所にありるわけですよ。
王国の中央に大規模な進入禁止エリアがあると、人や物の移動にとって大きな弊害を生むわけです。今ですら相当な規模ですからね。これ以上広くするのは各地への影響が出過ぎてしまうんです。
だからこそ、現在人が住んでいない砂漠地域に農地を新しく作るという計画には、大いに期待させてもらってるんですよ。あはは」
なるほどなぁ。
壁外都市も王国とは物理的な距離をある程度確保しておきたいし、王国と壁外都市の間を全て農地にしてしまうのも面白そうではあるな。
「ええ。なんとか成功するよう力を尽くそうと思ってます。
それで、実際に農業に携わる貴方から見て、砂漠地帯での農業っていうのは可能だと思いますか?
我々は農業の知識なんて全くないものですから、本職の方に意見を聞きたくて、本日訪問させてもらったんですよ」
「それは無理もないですね。農業なんてここ以外でやってる場所はないでしょうし。
一応、野菜を育てること自体は問題ないと思いますよ? こちらの農場は元々平野部に作られているので、始めから農地には向いている土地だと言えますけど、結局魔法に頼らざるを得ませんからね。
魔法を使えば砂漠であろうと山岳地帯であろうと、農地にする事は可能だと考えています。
流石に、海の上を農地にする自信はありませんけどね。あはは」
「魔法を使った農業というのは、具体的にどういう方法なんでしょうか?
土魔法で土を生成したり、水魔法で水を生成したりとか?」
「えぇえぇ、まさにその通りですよ。
ここの野菜が植えてある土は、定期的に土魔法で入れ替えて土地が痩せないようにしていますし、水分量の調節も水魔法で行っています。
まぁ魔法と言っても専用の魔導具ですけどね。流石にこの規模の農園を支えられる魔法使いなんて居ませんよ。あはは」
生活魔法と同じような効果の魔導具か。
魔導具があれば誰でも管理できるなら農業のハードルは下がるし、この先魔導具について学ぶ予定もあるからちょうどいいな。
「砂漠地帯で農業を行う場合、こちらで使われている土と水の魔導具を使えば、ここと同じような環境を生み出せるという事ですかね。
砂漠地帯なので、土も水も、ここよりも大量に生み出さないといけないでしょうけれど」
「ああ、それはそうでしょうねぇ。先ほども申し上げましたけど、中央農地って元々農業に向いた土地なんですよ。
逆に砂漠は植物の生育には厳しい環境です。農地を作る場合、立ち上げが一番大変になるかもしれませんね。
計画がいつから始めるかは存じませんが、魔導具は早め早めに用意したほうがいいかもしれません」
「魔導具と言えば、こちらの農地もかなりの規模だと思います。この農地を維持するほどの魔導具を使用するための魔力って、どうやって賄っているんですか?」
「ああ、それは勿論ここで働いている者たちが充填してますよ。ここに来たばかりの者は、連日魔力切れを起こすんですけどね。毎日やってれば魔力量は増えますから。今では何とかなってますよ。ははは」
すげぇ。力ずくで解決したのかよ。
新人は毎日魔力切れとはきっつい職場だ。
「農地を作る前に、こちらに人を送って農業を教えてもらうことってできますかね?」
「ん~。それは私の一存じゃ答えられませんけど、個人的には歓迎したいですね。
王様たちも中央農地だけでは供給量が足りていない事には気付いているはずです。なんとか生産量を増やしたいと思っていることでしょう。
このまま人が増え続ければ、野菜の値段は上がる一方ですから」
確かになぁ。スイカみたいな野菜が、竜肉と同じくらいの価値だからね。野菜の高騰っぷりが半端じゃない。
商売敵に教えることなどないわー、って展開も覚悟してたんだけど、現場の人がちゃんと現状を正しく把握してくれてるみたいで話が早かった。
農業については、魔物と戦いたくない奴の新たな就職先として期待できるだろう。
研修にも前向きで助かるわ。
私共も、中央農地だけでの生産では王国中に満足に野菜を提供できなくて、歯がゆい想いをしていたんですよ。
農地が増えれば野菜の供給量も増えるし、この場所ももう少し開かれた場所になってくれると期待してるんです。
年に数人しか来客が無いのは、正直退屈なんですよね。それに人手も足りてないんです。だからこの場所はもっと開かれるべきですし、この場所の重要度をもう少し下げられればと思ってますよ」
ダリッツさんがぶっちゃけてきた。
変に対抗意識を持たれるよりはいいか。積極的に協力してくれそうだし。
馬車の外から見る景色は、異世界という言葉に似つかわしくないほど、整然と区画整理されているようだ。
運搬の利便性のためなのか、俺たち全員が乗れる程度の馬車がすれ違うのにも問題なさそうな道幅だし。
ただ育てられている野菜は、リンカーズではよく口にしているけれど、地球では見覚えのない野菜が多い。
実際の扱いも適当に火を通せばオッケー、というものが多くて生野菜とか殆ど食えないんだよな。
「しかし本当に広い農地のようですね。どの程度の広さがあるんでしょうか?」
「んーそうですね。王都が10個くらいは入ると思いますよ。正確な面積は分かりませんけどね」
「大きいですねぇ。それでも王国の野菜の供給は足りてないとのことですけど、農地を更に拡張するということは出来ないんですか?」
「ええ。それもまた難しいんですよ。中央農地という名前の通り、この場所はリヴァーブ王国の中心近い場所にありるわけですよ。
王国の中央に大規模な進入禁止エリアがあると、人や物の移動にとって大きな弊害を生むわけです。今ですら相当な規模ですからね。これ以上広くするのは各地への影響が出過ぎてしまうんです。
だからこそ、現在人が住んでいない砂漠地域に農地を新しく作るという計画には、大いに期待させてもらってるんですよ。あはは」
なるほどなぁ。
壁外都市も王国とは物理的な距離をある程度確保しておきたいし、王国と壁外都市の間を全て農地にしてしまうのも面白そうではあるな。
「ええ。なんとか成功するよう力を尽くそうと思ってます。
それで、実際に農業に携わる貴方から見て、砂漠地帯での農業っていうのは可能だと思いますか?
我々は農業の知識なんて全くないものですから、本職の方に意見を聞きたくて、本日訪問させてもらったんですよ」
「それは無理もないですね。農業なんてここ以外でやってる場所はないでしょうし。
一応、野菜を育てること自体は問題ないと思いますよ? こちらの農場は元々平野部に作られているので、始めから農地には向いている土地だと言えますけど、結局魔法に頼らざるを得ませんからね。
魔法を使えば砂漠であろうと山岳地帯であろうと、農地にする事は可能だと考えています。
流石に、海の上を農地にする自信はありませんけどね。あはは」
「魔法を使った農業というのは、具体的にどういう方法なんでしょうか?
土魔法で土を生成したり、水魔法で水を生成したりとか?」
「えぇえぇ、まさにその通りですよ。
ここの野菜が植えてある土は、定期的に土魔法で入れ替えて土地が痩せないようにしていますし、水分量の調節も水魔法で行っています。
まぁ魔法と言っても専用の魔導具ですけどね。流石にこの規模の農園を支えられる魔法使いなんて居ませんよ。あはは」
生活魔法と同じような効果の魔導具か。
魔導具があれば誰でも管理できるなら農業のハードルは下がるし、この先魔導具について学ぶ予定もあるからちょうどいいな。
「砂漠地帯で農業を行う場合、こちらで使われている土と水の魔導具を使えば、ここと同じような環境を生み出せるという事ですかね。
砂漠地帯なので、土も水も、ここよりも大量に生み出さないといけないでしょうけれど」
「ああ、それはそうでしょうねぇ。先ほども申し上げましたけど、中央農地って元々農業に向いた土地なんですよ。
逆に砂漠は植物の生育には厳しい環境です。農地を作る場合、立ち上げが一番大変になるかもしれませんね。
計画がいつから始めるかは存じませんが、魔導具は早め早めに用意したほうがいいかもしれません」
「魔導具と言えば、こちらの農地もかなりの規模だと思います。この農地を維持するほどの魔導具を使用するための魔力って、どうやって賄っているんですか?」
「ああ、それは勿論ここで働いている者たちが充填してますよ。ここに来たばかりの者は、連日魔力切れを起こすんですけどね。毎日やってれば魔力量は増えますから。今では何とかなってますよ。ははは」
すげぇ。力ずくで解決したのかよ。
新人は毎日魔力切れとはきっつい職場だ。
「農地を作る前に、こちらに人を送って農業を教えてもらうことってできますかね?」
「ん~。それは私の一存じゃ答えられませんけど、個人的には歓迎したいですね。
王様たちも中央農地だけでは供給量が足りていない事には気付いているはずです。なんとか生産量を増やしたいと思っていることでしょう。
このまま人が増え続ければ、野菜の値段は上がる一方ですから」
確かになぁ。スイカみたいな野菜が、竜肉と同じくらいの価値だからね。野菜の高騰っぷりが半端じゃない。
商売敵に教えることなどないわー、って展開も覚悟してたんだけど、現場の人がちゃんと現状を正しく把握してくれてるみたいで話が早かった。
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研修にも前向きで助かるわ。
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