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9章 異邦人が生きるために
330 農業用魔導具
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自由に農地に来られる訳ではないので、実際の収穫なんかも体験してみる。
野菜によって扱いが違うのは、異世界だろうと変わらないな。
「へぇ。皆さん野菜の扱いが丁寧ですね。
農業経験はないとのことでしたので、ひょっとして皆さん料理されるんですか?」
「凄いですね。手付きだけ見てそういうこと分かるものなんですか?
お察しの通り、みんな家庭料理ぐらいなら作れますよ」
なんて言った途端に、アサヒとカンナが全力で目を逸らしている。
こいつら料理できないんかーい!
宿暮らしからロンメノの用心棒、そして今はうちに世話になってるわけで、考えてみたら料理する機会ないかも。
「ははは。料理をしたことがない人だと、野菜の扱いが雑だったりしますからね。
野菜を美味しく調理してくれる人ほど、野菜の取り扱いも優しいものですよ。
もっと沢山の人に野菜を食べてもらいたいんですけど、ドロップアイテムと違って長持ちしませんからね。どうしても充分な流通量を確保できないのがもどかしいです」
「野菜は自然の恵みですからねぇ。ちなみにどの程度の期間で食べられなくなりますか?」
「勿論野菜によりますけど、早いものだと3日も持たない物もありますよね。長持ちするものは20日くらい持つものもありますけど……。
足の早い野菜ほど欲しがるお客さんも多いですから、なんとも上手くいかないものですよ」
この世界には冷蔵庫とかないからなぁ。
そもそも冷却系の魔法が存在してないっぽい。いまのところ冷却系で確認出来ているのは、カンナの氷魔法だけだっていうね。
熱魔法は10度くらいまでしか下げられないし。それでも保存期間は多少延びるとは思うけど。
「つまり野菜の保存期間が長くなれば、今よりもっと野菜が食べられるようになるということですよね?
野菜の保存期間については、砂漠地帯でも無視できない問題ですからね。こちらの方でも少し考えてみようと思います」
「おお! それはありがたいことですね!
仰るとおり、砂漠地帯では中央農地以上に野菜が悪くなるのが早いでしょう。
農地を作っても野菜が供給出来ないのでは意味がないですからね。期待させていただきますよ。あははは」
考えられるのは、熱魔法で温度を下げつつ風魔法で空気を循環、って感じかなぁ。なんちゃって冷蔵庫?
冷静になって考えてみると、農作物を生産するだけじゃダメなんだよ。流通までこなせないと意味がないんだよね。
魔導具の勉強したら、食物運搬用の冷風馬車を作ってみよう。
マーサは魔導具とかは作れるのかな?
いつか農業魔導具製作に携わることがないとも言い切れないので、この農場で使われている魔導具も見せてもらうことにした。
魔導具の場所まで移動している間に、シンが農場の組織運営について色々聞いていた。
そういうのは全然分からないのでシンに任せよう。
「こちらがこの農地で使っている魔導具ですね。生活魔法よりも応用は利きませんが、魔法よりも少ない魔力でより多くの土や水を生成することが出来るのです。
それとお見せすることは出来ませんが、農地の至るところに魔力拡散の魔導具を設置してありまして、魔物の発生を防いでおります。
何せ広大な農地ですから、働いている者だけでは魔物の発生を防ぐことが出来ないんですよ」
「魔力拡散の魔導具なんてあるんですね。参考になります」
魔物ってのは魔力から生み出される生物なんだっけ。
だから一定の魔力が溜まらないように、常に拡散してれば魔物は現れないわけね。
しかし、魔力拡散の魔導具か。拡散が出来るなら、集めることも出来そうだよな?
大気中の魔力を循環させて、半永久的に魔導具を動かし続ける装置とか作れないんだろうか?
これもウィルスレイアで確認しないといけないな。
「農地の外周は、やはり城壁で囲ってあるんですか?」
「そうです。そこは各都市と変わりませんよ。
ただ農地なので人が少なく、魔物の襲来は都市部よりも更に少なめです。内部の魔物発生さえ抑えられれば、城壁はそれほど強度を必要としないのではないですかねぇ」
ああ、魔物って人間を狙ってくるんだっけ。だとすると人が増えれば増えるほど魔物が寄ってくる事になるのか。
国境壁の内側なら人口の大小って問題にならないんだろうけど、国境壁外で人口を増やし過ぎると、人口に比例して危険度が高まっていくのか。
うっが~~! めんどくせえ! なんだこのクソ仕様は!
「こうしてみなさんとお話していると、改めて農地を作ることの難しさを実感しますね。
今まで野菜が足りないと耳にするたびに、なら農地をもっと増やして欲しいと思っていたのですが、そう単純な話ではないということですね。
いやはや、やはり新しい人との交流は新鮮であり、発見も多いものです。あははは」
「そうですね。私も甘く考えていたつもりはなかったんですけど、ダリッツさんとお話して、改めて計画の困難さを思い知らされました。今日は勉強させていただいて本当にありがとうございました」
リヴァーブ王国の農業事情に少し触れることが出来た。
この国では農家の地位は低くないんだけど、全然供給が足りてないみたいだ。
っていうか、農家って言っていいのかな? 農業自体が国が主導している国家プロジェクトみたいなものだろうから、日本の農家とは根本的にシステムが違うんだし、単純比較は出来ないか。
ただ1つ思ったのは、この世界で農業をする場合、農業の知識よりも魔法の知識のほうが重要度が高いような気がするってことだ。
どちらにせよ農地を作る場合、周辺地域の安全を確保する必要があるので、順番的には都市建設の後になると思う。
でも今日の話はかなり興味深いことが多かった。特に、魔力拡散の魔導具の存在を知れたのは大きい。
明日のウィルスレイア行きが俄然楽しみになってきた。
勉強は苦手だけど、発見は楽しい。
我ながら現金なもんだ。
野菜によって扱いが違うのは、異世界だろうと変わらないな。
「へぇ。皆さん野菜の扱いが丁寧ですね。
農業経験はないとのことでしたので、ひょっとして皆さん料理されるんですか?」
「凄いですね。手付きだけ見てそういうこと分かるものなんですか?
お察しの通り、みんな家庭料理ぐらいなら作れますよ」
なんて言った途端に、アサヒとカンナが全力で目を逸らしている。
こいつら料理できないんかーい!
宿暮らしからロンメノの用心棒、そして今はうちに世話になってるわけで、考えてみたら料理する機会ないかも。
「ははは。料理をしたことがない人だと、野菜の扱いが雑だったりしますからね。
野菜を美味しく調理してくれる人ほど、野菜の取り扱いも優しいものですよ。
もっと沢山の人に野菜を食べてもらいたいんですけど、ドロップアイテムと違って長持ちしませんからね。どうしても充分な流通量を確保できないのがもどかしいです」
「野菜は自然の恵みですからねぇ。ちなみにどの程度の期間で食べられなくなりますか?」
「勿論野菜によりますけど、早いものだと3日も持たない物もありますよね。長持ちするものは20日くらい持つものもありますけど……。
足の早い野菜ほど欲しがるお客さんも多いですから、なんとも上手くいかないものですよ」
この世界には冷蔵庫とかないからなぁ。
そもそも冷却系の魔法が存在してないっぽい。いまのところ冷却系で確認出来ているのは、カンナの氷魔法だけだっていうね。
熱魔法は10度くらいまでしか下げられないし。それでも保存期間は多少延びるとは思うけど。
「つまり野菜の保存期間が長くなれば、今よりもっと野菜が食べられるようになるということですよね?
野菜の保存期間については、砂漠地帯でも無視できない問題ですからね。こちらの方でも少し考えてみようと思います」
「おお! それはありがたいことですね!
仰るとおり、砂漠地帯では中央農地以上に野菜が悪くなるのが早いでしょう。
農地を作っても野菜が供給出来ないのでは意味がないですからね。期待させていただきますよ。あははは」
考えられるのは、熱魔法で温度を下げつつ風魔法で空気を循環、って感じかなぁ。なんちゃって冷蔵庫?
冷静になって考えてみると、農作物を生産するだけじゃダメなんだよ。流通までこなせないと意味がないんだよね。
魔導具の勉強したら、食物運搬用の冷風馬車を作ってみよう。
マーサは魔導具とかは作れるのかな?
いつか農業魔導具製作に携わることがないとも言い切れないので、この農場で使われている魔導具も見せてもらうことにした。
魔導具の場所まで移動している間に、シンが農場の組織運営について色々聞いていた。
そういうのは全然分からないのでシンに任せよう。
「こちらがこの農地で使っている魔導具ですね。生活魔法よりも応用は利きませんが、魔法よりも少ない魔力でより多くの土や水を生成することが出来るのです。
それとお見せすることは出来ませんが、農地の至るところに魔力拡散の魔導具を設置してありまして、魔物の発生を防いでおります。
何せ広大な農地ですから、働いている者だけでは魔物の発生を防ぐことが出来ないんですよ」
「魔力拡散の魔導具なんてあるんですね。参考になります」
魔物ってのは魔力から生み出される生物なんだっけ。
だから一定の魔力が溜まらないように、常に拡散してれば魔物は現れないわけね。
しかし、魔力拡散の魔導具か。拡散が出来るなら、集めることも出来そうだよな?
大気中の魔力を循環させて、半永久的に魔導具を動かし続ける装置とか作れないんだろうか?
これもウィルスレイアで確認しないといけないな。
「農地の外周は、やはり城壁で囲ってあるんですか?」
「そうです。そこは各都市と変わりませんよ。
ただ農地なので人が少なく、魔物の襲来は都市部よりも更に少なめです。内部の魔物発生さえ抑えられれば、城壁はそれほど強度を必要としないのではないですかねぇ」
ああ、魔物って人間を狙ってくるんだっけ。だとすると人が増えれば増えるほど魔物が寄ってくる事になるのか。
国境壁の内側なら人口の大小って問題にならないんだろうけど、国境壁外で人口を増やし過ぎると、人口に比例して危険度が高まっていくのか。
うっが~~! めんどくせえ! なんだこのクソ仕様は!
「こうしてみなさんとお話していると、改めて農地を作ることの難しさを実感しますね。
今まで野菜が足りないと耳にするたびに、なら農地をもっと増やして欲しいと思っていたのですが、そう単純な話ではないということですね。
いやはや、やはり新しい人との交流は新鮮であり、発見も多いものです。あははは」
「そうですね。私も甘く考えていたつもりはなかったんですけど、ダリッツさんとお話して、改めて計画の困難さを思い知らされました。今日は勉強させていただいて本当にありがとうございました」
リヴァーブ王国の農業事情に少し触れることが出来た。
この国では農家の地位は低くないんだけど、全然供給が足りてないみたいだ。
っていうか、農家って言っていいのかな? 農業自体が国が主導している国家プロジェクトみたいなものだろうから、日本の農家とは根本的にシステムが違うんだし、単純比較は出来ないか。
ただ1つ思ったのは、この世界で農業をする場合、農業の知識よりも魔法の知識のほうが重要度が高いような気がするってことだ。
どちらにせよ農地を作る場合、周辺地域の安全を確保する必要があるので、順番的には都市建設の後になると思う。
でも今日の話はかなり興味深いことが多かった。特に、魔力拡散の魔導具の存在を知れたのは大きい。
明日のウィルスレイア行きが俄然楽しみになってきた。
勉強は苦手だけど、発見は楽しい。
我ながら現金なもんだ。
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