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9章 異邦人が生きるために
336 狭い世界
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「あー、詰まんない話して悪かった。今度はそっちの話してくれよ」
「そう? 結構興味深い話だったけど、まぁ検証しようもないもんね。
ブラクムール大図書館の資料は膨大だったから、まだ調査不足の情報も多いけど、今日の活動報告って程度で聞いて欲しい」
「へぇ~。みんなあそこ入ったんすか。私もいつか行ってみたいと思ってたんすよね~」
「確か利用料金を聞いてドン引きしたのよね……。
貴方達なら問題ない金額なのよねぇ。改めて異風の旋律との差を思い知らされるわね」
アサヒとカンナも入ってみたかったのか。俺も入りたかったから気持ちは分かるぞっ。
「ボールクローグとかミルズレンダみたいな、過去の都市建設の資料をいくつか読んでみたけど、やっぱり大まかな流れは決まってるみたいでね? まぁトーマがファーガロン様に聞いてきた流れで大体合ってるみたい。
まずは現地の調査をして、安全を確保し、迷宮を探して城壁で囲い、ターミナルを設置して人を集めるって流れみたいだよ。
あ、そうそう。ターミナルはどうやら1度設置すると動かせなくなっちゃうみたいだから、調査の時に持って移動して、次の朝にそこまでゲートで移動するっていう方法は、ターミナルを使い捨てる気がないなら出来ないらしいよ」
「いくら余裕があるとはいえ、心核を使い捨てには出来ないわな。つまり調査に行く場合は、長期間街に戻ってこれない可能性が高いわけか。
そうなってくると徒歩での移動は現実的じゃないよな? ペルやアサルトドラゴンみたいな騎乗魔物って、どうやって用意すればいいんだろ? それも知りたいよな」
「うんうんー! ペルみたいな子がもう1体見つかってくれるのが最高なんだけどねー!」
「そういう情報なら狩人ギルドが詳しいでしょうか? 都市間移動馬車計画に携わってる人も、私達より詳しいかもしれませんね」
「うん。それにやっぱり最低水準はアサルトドラゴン級だよね。壁外地域に行くわけだから危険度が段違いだし」
「明日騎乗魔物について、銀の乙女にも聞いてみるね……!
ペルちゃんはとっても可愛いけど、砂漠地帯を歩かせるのは可哀想だし、ウィルスレイアの先に生息している魔物が理想なのかなぁ……?」
「あ、そうそう。ペルみたいな魔物じゃない生物がいる可能性もゼロではねぇけどよ。魔物を服従させるための魔導具、『従魔の鎖』は私も作れるし、狩人ギルドでも販売してると思うぜ? ミルズレンダで卸したことがあっからよ」
「へぇ! テイム要素あるんすね! 私もモンスターテイマーには憧れるっすよ~!」
「いまいち可愛い魔物っていないのよねぇ……。殺意を持って襲ってくるし、小型の魔物は少ないし、虫系も多いし、好きになれないわ……。騎乗魔物には憧れるんだけど」
ペルも良いけど、異風の旋律専用の騎乗魔物は用意したいよなぁ。
出来れば東西南北で4種類いたら完璧だ。
っと、東西南北と言えば、エリアキーパーの縄張りの範囲も確認しないとな。どうすりゃ良いんだろ?
「シン。リヴァーブ王国の面積ってどの程度か知ってる? それが分かれば、エリアキーパーの縄張り範囲を大まかにだけど予測できると思うんだ。
ま、全部のエリアキーパーが同じ範囲を守ってる保証なんてないんだけどさ」
「あ~、僕もブラクムール大図書館で調べてみたんだけど、絶対的な基準がないんだよね。
中央にはネヴァルドと中央農地があるし、直線的に計測した記述がないんだよ。
しかも都市間の距離は、馬車で何日みたいな、曖昧な記述ばかりだったし」
「じゃあそれも銀の乙女にお願いしようか。ペルの足でボールクローグからミルズレンダまで、どのくらいの時間で着けるか計測してもらおう。
途中で中央農地を挟むとはいえ、迂回する時間を差っ引けば、大体の目安にはなるだろ」
「う~ん。今まで意識してなかったけど、リヴァーブ王国って色々杜撰なトコあるんだねー。
トーマやハルが来なければ気付かなかったけれど、こんなに曖昧な世界で生きてたんだな、ってびっくりするよー」
「うちらの世界では距離とか面積は、正確に割り出されてたっすからね。
異邦人にとっては当たり前のことだったんすけど、あれって本当に凄いことだったんだなって今は思うっすよ」
「王国には中央農地があったり、ゲートがあったりするから、あまり距離を測る必要性がなかったんだね……。
今でこそ王国は狭い世界だって思えるけど、普通の人は生まれた場所から1歩も出ないで死んでいくのが当たり前だし……」
「うん。ゲートがあると距離とか関係ないもんね。それに長い年月をかけて拡張し続けている国だから、仮に計測しても直ぐに変わっちゃうのかな」
「ははは! 面白ぇじゃねぇか。異邦人がいることで、改めて王国の歴史を知るなんてよ!
新しい時代を作るって連中が、今までの歴史に想いを馳せるってんだから、やっぱりお前らは本当に面白ぇわ!」
「故きを温め新しきを知る、だったかしら?
地球であろうと異世界であろうと、人の歴史は変わらないものなのね」
「面白い言葉ですね。先を見据えるには過去に学べということでしょうか。なかなか含蓄のある言葉です」
「異邦人が来ることで、王国の歴史を遡ることになってるんだもんね。
トーマと会わなかったら、僕は本当に狭い世界で一生を過ごすところだったんだなぁ」
前に進むために後ろを向いてるみたいなもんだよな。
なんかアベコベに感じるけれど、これが1番確実だっていう確信もある。
明日からまた色々なことが動き出しそうだ。
良いことも悪いことも、全部みんなと楽しんでいきたいもんだ。
「そう? 結構興味深い話だったけど、まぁ検証しようもないもんね。
ブラクムール大図書館の資料は膨大だったから、まだ調査不足の情報も多いけど、今日の活動報告って程度で聞いて欲しい」
「へぇ~。みんなあそこ入ったんすか。私もいつか行ってみたいと思ってたんすよね~」
「確か利用料金を聞いてドン引きしたのよね……。
貴方達なら問題ない金額なのよねぇ。改めて異風の旋律との差を思い知らされるわね」
アサヒとカンナも入ってみたかったのか。俺も入りたかったから気持ちは分かるぞっ。
「ボールクローグとかミルズレンダみたいな、過去の都市建設の資料をいくつか読んでみたけど、やっぱり大まかな流れは決まってるみたいでね? まぁトーマがファーガロン様に聞いてきた流れで大体合ってるみたい。
まずは現地の調査をして、安全を確保し、迷宮を探して城壁で囲い、ターミナルを設置して人を集めるって流れみたいだよ。
あ、そうそう。ターミナルはどうやら1度設置すると動かせなくなっちゃうみたいだから、調査の時に持って移動して、次の朝にそこまでゲートで移動するっていう方法は、ターミナルを使い捨てる気がないなら出来ないらしいよ」
「いくら余裕があるとはいえ、心核を使い捨てには出来ないわな。つまり調査に行く場合は、長期間街に戻ってこれない可能性が高いわけか。
そうなってくると徒歩での移動は現実的じゃないよな? ペルやアサルトドラゴンみたいな騎乗魔物って、どうやって用意すればいいんだろ? それも知りたいよな」
「うんうんー! ペルみたいな子がもう1体見つかってくれるのが最高なんだけどねー!」
「そういう情報なら狩人ギルドが詳しいでしょうか? 都市間移動馬車計画に携わってる人も、私達より詳しいかもしれませんね」
「うん。それにやっぱり最低水準はアサルトドラゴン級だよね。壁外地域に行くわけだから危険度が段違いだし」
「明日騎乗魔物について、銀の乙女にも聞いてみるね……!
ペルちゃんはとっても可愛いけど、砂漠地帯を歩かせるのは可哀想だし、ウィルスレイアの先に生息している魔物が理想なのかなぁ……?」
「あ、そうそう。ペルみたいな魔物じゃない生物がいる可能性もゼロではねぇけどよ。魔物を服従させるための魔導具、『従魔の鎖』は私も作れるし、狩人ギルドでも販売してると思うぜ? ミルズレンダで卸したことがあっからよ」
「へぇ! テイム要素あるんすね! 私もモンスターテイマーには憧れるっすよ~!」
「いまいち可愛い魔物っていないのよねぇ……。殺意を持って襲ってくるし、小型の魔物は少ないし、虫系も多いし、好きになれないわ……。騎乗魔物には憧れるんだけど」
ペルも良いけど、異風の旋律専用の騎乗魔物は用意したいよなぁ。
出来れば東西南北で4種類いたら完璧だ。
っと、東西南北と言えば、エリアキーパーの縄張りの範囲も確認しないとな。どうすりゃ良いんだろ?
「シン。リヴァーブ王国の面積ってどの程度か知ってる? それが分かれば、エリアキーパーの縄張り範囲を大まかにだけど予測できると思うんだ。
ま、全部のエリアキーパーが同じ範囲を守ってる保証なんてないんだけどさ」
「あ~、僕もブラクムール大図書館で調べてみたんだけど、絶対的な基準がないんだよね。
中央にはネヴァルドと中央農地があるし、直線的に計測した記述がないんだよ。
しかも都市間の距離は、馬車で何日みたいな、曖昧な記述ばかりだったし」
「じゃあそれも銀の乙女にお願いしようか。ペルの足でボールクローグからミルズレンダまで、どのくらいの時間で着けるか計測してもらおう。
途中で中央農地を挟むとはいえ、迂回する時間を差っ引けば、大体の目安にはなるだろ」
「う~ん。今まで意識してなかったけど、リヴァーブ王国って色々杜撰なトコあるんだねー。
トーマやハルが来なければ気付かなかったけれど、こんなに曖昧な世界で生きてたんだな、ってびっくりするよー」
「うちらの世界では距離とか面積は、正確に割り出されてたっすからね。
異邦人にとっては当たり前のことだったんすけど、あれって本当に凄いことだったんだなって今は思うっすよ」
「王国には中央農地があったり、ゲートがあったりするから、あまり距離を測る必要性がなかったんだね……。
今でこそ王国は狭い世界だって思えるけど、普通の人は生まれた場所から1歩も出ないで死んでいくのが当たり前だし……」
「うん。ゲートがあると距離とか関係ないもんね。それに長い年月をかけて拡張し続けている国だから、仮に計測しても直ぐに変わっちゃうのかな」
「ははは! 面白ぇじゃねぇか。異邦人がいることで、改めて王国の歴史を知るなんてよ!
新しい時代を作るって連中が、今までの歴史に想いを馳せるってんだから、やっぱりお前らは本当に面白ぇわ!」
「故きを温め新しきを知る、だったかしら?
地球であろうと異世界であろうと、人の歴史は変わらないものなのね」
「面白い言葉ですね。先を見据えるには過去に学べということでしょうか。なかなか含蓄のある言葉です」
「異邦人が来ることで、王国の歴史を遡ることになってるんだもんね。
トーマと会わなかったら、僕は本当に狭い世界で一生を過ごすところだったんだなぁ」
前に進むために後ろを向いてるみたいなもんだよな。
なんかアベコベに感じるけれど、これが1番確実だっていう確信もある。
明日からまた色々なことが動き出しそうだ。
良いことも悪いことも、全部みんなと楽しんでいきたいもんだ。
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