異世界で目指せハーレム生活! でも仲間のほうがモテモテです

りっち

文字の大きさ
373 / 580
9章 異邦人が生きるために

335 トーマの特殊性

しおりを挟む
 結局その後はずっと、俺の生活魔法でどういうことが出来るかをひたすら実演するだけの時間だった。
 メンタムとはかなり仲良くなった気がするので、結果オーライということにしておこう。
 俺のイメージしてる魔導具作りにも、積極的に協力してくれるみたいだし。


 日没になったので開発局を出て、ブラクムール大図書館に向かう。図書館に到着すると、みんなもう外で待っていた。


「日没になったら、まるで箒で掃き出されるみたいに追い出されちゃったよ。
 ただ面白い情報はいくつか見つけたから、今晩皆が揃ったら共有しよう」


 追い出されはしたけれど、保証金は無事に戻ってきた模様。

 ボールクローグにゲートを繋ぐと、リーネは既にターミナル広場で待っていた。
 リーネと合流して改めてベイクに帰還する。


「そんで今日思ったんだけどさ。俺って『リンカーズ会話理解』を除いて、『免疫力強化』もチート能力も持たない状態で、音魔法を覚えたわけじゃん?
 異邦人とリヴァーブ王国民で生活魔法の扱いに差が出るならまだしも、俺とハルを比べても生活魔法の扱いに差が出るのはおかしいと思うんだよ。
 もし俺の生活魔法の使い方を他の人が出来ないっていうなら、違いは取得の順番だったんじゃないかと思い当たったんだよな」


 これが分かったからといって特に意味はないんだけど、俺が他の人と違う要素で有利な点があるのであれば自覚しておきたい。


「う~ん。どうなんだろうねぇ……。納得出来るような気がしなくもないけど『リンカーズ会話理解』があるから、正しいとも間違ってるとも判断できないかなぁ。
 こんなことなら、ハルにも初日にスクロール使ってもらえばよかったね」

「私は関係ないと思うんだよねー。トーマの特殊性で言うと、思考の分離の方がよほど特殊に感じるんだよねー。スキルや魔法を全く同列に発動するのが物凄く上手いでしょー?
 あれってスキルとか能力とかじゃなくて、トーマだから出来ることだと思うんだよねー」

「私も特殊能力ではなくて、トーマの資質によるものだと思いますね。思考の分離というか、情報の切り捨て方が異常なんですよね。
 必要なもの以外を全て切り捨てる。恐らく普通の人が余計なところに意識を割いてしまう所を、トーマは最高効率で魔法を使ってるんじゃないかと思いますよ」

「トーマの切り捨て方はやべぇよなぁ……。
 私も師匠のせいで、ミルズレンダとひと括りにして切り捨てられかけたし……。
 あの時のトーマは今でもたまに夢に見るぜ……」

「……うん。私はどっちとも言えないかな。トーマの生活魔法の扱いはやっぱり異常だと思うし、それが何らかの特殊な能力だと言われれば納得出来るし。
 ただ私が祝福の儀を受けたあの日、音魔法を先に覚えていたとしても、トーマみたいな使い方が出来た自信はないかなぁ……」

「面白い話だと思うけど、トーマの場合は判断できないよね……。
 なんていうか、トーマってそういう決まりごとの抜け道を探すの好きそうだし……?」

「ま、チート能力を貰った時点で検証できなくなるっすからね。うちらの炎魔法や氷魔法も識別に現れる時点でスキル扱いっすし」

「それに異邦人は比較的年齢も若いみたいだから、ハルみたいな願いをする人も少なそうよね。恐らくでしかないけど、チートスキルを持たずにこちらに来る異邦人は、本当に少ないと思うわ」


 自分的には、これだ! ってくらい確信があったんだけど、みんな的には半々って感じなんだな。

 余分な情報の捨て方かぁ。
 情報の取捨選択って、誰でも多かれ少なかれやってるはずだよな。ここまでは間違ってないはず。
 
 じゃあ俺の切り捨て方が異常ってのはどこから来てるんだろう?
 むしろオーサンに指導を受けてからは、なるべく色んなシチュエーションを想定するよう心がけていたつもりなんだけどな?


「トーマってさー。情報の管理が上手いんじゃなくて、むしろ物凄く下手なんだと思うんだよねー。
 いつもなんでもなさそうにしてるけど、本当に色んな事を考えてる。そして簡単に切り捨てられないんだよね。
 取捨選択が下手だから、何でもかんでも簡単には捨てられないから、限界まで我慢してもダメだったら潔く全部放り投げちゃうんだろうね。
 マーサの時もアリスの時も、トーマは1度捨てると決めた時点で絶対に拾わなくなったもんね。トーマは合理的に考えないと自分が潰れちゃうのが分かってるんだよ。だから自分が潰れないために、見捨てるんだろうねー」

「そうですねぇ。私の時と、ミルズレンダでのマーサの扱いや、城でのアリスのやり取りには差がありすぎるなとは思ってました。私が敵対した時は、私に対してなんの感情も持ち合わせていなかったから、比較的簡単に考え方を変えてくれたんでしょうね」

「――――確かにあの時の私は、真相を知っているトーマから見たら、これ以上ないほどに醜く映っていたかも知れねぇな……。迫害の元凶だった師匠を、被害者である私が庇ってたんだもんな……。
 今になって思い返してみると、吐き気がするほどに歪な状況だったんだな、あの時は……」

「お城のときは、アリスは本当に何も考えてなくて、びっくりするくらい軽い気持ちで、沢山の人に迷惑をかけてきたもんね……。
 本当に最後の最後まで、自分がやってきたことを、まったく理解していなかったようにしか見えなかったし……」


 なんか変な方向に話が流れてしまった。
 今後俺のような生活魔法の使い手が出てくる可能性があるかどうかが焦点のつもりだったんだけど。

 音魔法を覚えて、その有用性に気付いて、こんな凄い魔法、他の人も研究しているに違いないと思って警戒し続けてきた。
 でもどうやら生活魔法を俺みたいに扱える奴は、そんなに多くないらしいな。

 情報操作してるとか、裏で研究してるとか、陰謀論者みたいなことばかり考えてしまっていた覚えがある。
 今思い返すと中々の黒歴史だ。

 真実はいつだって単純で味気ないもんなんだ。
 深読みしすぎも良くない。戒めねば。
しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

第2の人生は、『男』が希少種の世界で

赤金武蔵
ファンタジー
 日本の高校生、久我一颯(くがいぶき)は、気が付くと見知らぬ土地で、女山賊たちから貞操を奪われる危機に直面していた。  あと一歩で襲われかけた、その時。白銀の鎧を纏った女騎士・ミューレンに救われる。  ミューレンの話から、この世界は地球ではなく、別の世界だということを知る。  しかも──『男』という存在が、超希少な世界だった。

異世界でただ美しく! 男女比1対5の世界で美形になる事を望んだ俺は戦力外で追い出されましたので自由に生きます!

石のやっさん
ファンタジー
主人公、理人は異世界召喚で異世界ルミナスにクラスごと召喚された。 クラスの人間が、優秀なジョブやスキルを持つなか、理人は『侍』という他に比べてかなり落ちるジョブだった為、魔族討伐メンバーから外され…追い出される事に! だが、これは仕方が無い事だった…彼は戦う事よりも「美しくなる事」を望んでしまったからだ。 だが、ルミナスは男女比1対5の世界なので…まぁ色々起きます。 ※私の書く男女比物が読みたい…そのリクエストに応えてみましたが、中編で終わる可能性は高いです。

男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺

マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。 その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。 彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。 そして....彼の身体は大丈夫なのか!?

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...