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9章 異邦人が生きるために
338 変化の始まり
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「つうことでマーサ。今夜は俺と2人で88階層周ってくるぞ。
ソロだと4万に届かないくらいだったから、3周すれば余裕で足りるはず」
「いきなりすぎてワケわかんねぇよ! ちゃんと説明しやがれ!」
おっと、ちょっと気が逸り過ぎた。
説明全部すっ飛ばして探索の予定だけ決めてしまったわ。
ま、これも異邦人が増えればいつかはバレる情報だからな。
ここにいるみんなには共有しても問題ないし、バレる前にアドバンテージを確保するのは絶対に必要なことだ。
今日魔導具開発局で起こった事をみんなに説明する。
「嘘だろ……? 職人スキルに、更に上があった、なんて……!」
「早ければ2年以内には、リヴァーブ王国民にも広まる話だと思うから、とりあえずマーサは今日中に取得してしまうぞ。
88階層なんてもう、目を瞑っててもマーサを連れて探索できる自信があるからな」
「それは流石に頭おかしいと思うけど、これは正しく革命と呼ぶに相応しいね。
リヴァーブ王国の生活が根底から覆される出来事だよ」
「流石に俺たちだけで秘匿するには重過ぎる情報だからな。ディオーヌ様、ファーガロン様、それと王様には伝えようと思う。
いやいやホントやべぇわこれ。何もしなくてもミルズレンダ、ガチで衰退するじゃんな?」
「でもこれって、都市建設計画にも光が射してきたってことになるよねー?
魔導具の性能が根本から変わってくるなんて、今までの常識が全部ひっくり返っちゃうよー」
「うん。トーマも言ってたけど、異風の旋律の戦力が突出しすぎている理由が分かったかな。
スキルが全ての世界なんて言いながら、この王国の人たち、必要なスキルを全然取ってないんだもん」
「先日誰かが王国を『狭い世界』って表現してましたけど、なんと的確な表現だったのかと思わされますよ。
神が授けてくれた力を、私たちはこれっぽっちも扱えていなかったなんて……!」
「凄い、凄い凄い凄いよっ……! 今までだって凄いって思ってたけど、これはホントにびっくりしたよ……!
戦う力だけじゃない、みんなの生活まで一変させちゃうなんて、凄すぎるよ……!
「つうかうちらとしては、1等級冒険者の水準の低さにびっくりっすよ。オーサンに全然歯が立たないから、1等級って雲の上みたいに思ってたっすわ……」
「トーマたちが1年もしないうちにここまでのスキルを取得しているのに、王国の人たちは本当に何をやっていたのかと呆れるわ……。
トーマたちはトーマたちで早すぎるんだとは思うけれど」
「おーい! オーサンだ! トーマはいるかぁ!?」
あ? オーサンが来るなんて珍しいな。夕食も終った時間なんか、来客自体殆どないのに。
「おうトーマ。来たぜ異邦人。今冒険者ギルドに4名保護してっからよ。お前の方から説明に出向いちゃくれねぇか?」
「来たかー。こっちはこっちで大変だけど、異邦人は放置できないよな。すぐ行くよ。みんなはどうする?」
聞いてみたけど誰も同行を希望しなかった。薄情かくっそー!
「そんじゃマーサ。夜に出かけられる準備だけしておいてくれ。帰ったらすぐ行くからな。
待たせたオーサン。案内してくれ」
冒険者ギルドなら案内要らないけど、初対面同士だからギルド職員の仲介は欲しい。
ギルドにつくと、ロビーに4名の男女が待たされていた。
不安げな表情をしていたが、俺の髪の色を見て少し安心したようだ。
話を聞いてみると、やはり時期的にはハル達と同じくらいに転移してきた人たちらしい。
リヴァーブ王国ではスキルがないと生活していくのが難しい説明をして、ステータスでスキルの詳細を確認させ、チートスキルのデメリットを確認してもらう。
その後にカンパニーの説明をして、それぞれの希望を大まかに聞く。
絶対に戦いは無理、という人でなければ、基本的に自由に過ごしてもらう。
2名は冒険者として活動出来ていたようだが、あとの2名は生活に困窮し、救貧院だったり親切な人だったりに助けてもらっていたようだ。
食と宿をカンパニーで支援する事を約束し、異邦人用の宿舎に案内する。
「異世界生活って、想像してたのと全然違いましたよ……。
毎日余裕がないし、頼れる人もいなくて途方に暮れてました……」
「私はこの世界の方が性に合ってたわ。出会う人たちみんな優しいし、こっちに来れて良かったと思ってる。
ま、それとは別に、生活苦しかったんだけどね」
やっぱ誰もが異世界で上手く生活できるわけじゃないよなぁ。
俺みたいに、日本よりもエンジョイする人だっているんだけどさ。
これで打ち止めなら平和で良いんだけどな……。
初日に4人も来たと考えると、明日以降殺到する可能性が高い気がするわぁ……。
異邦人のゲート使用料ってカンパニー資金から出してるからな。
金板3枚が殺到すると、カンパニー資金が枯渇するかもしれない……、いや、ないかな? ジーンさんとか逆に喜びかねない。
とりあえず第1弾はトラブルなく案内できて良かった。
ま、異世界生活が上手くいってる奴だったら、ベイクには来ないかもな。
自宅に戻ってマーサを拉致。
戦う術を持たないマーサを迷宮の最深部手前まで連れまわすとか、俺ってDV夫では……?
なんらかの問題が発生して取得できなかったらアホくさいので、余裕を見るために5周ほど探索した。
流石にこれなら間違いなく取得できるだろ。
「……いや、トーマたちがとんでもねぇ強さだってのは分かってたつもりだったんだけどよ……。
実際に目の当たりにしちまうと、想像を超えていたっていうか、次元が違ったっていうか……。
私なんかがお前の装備作って良いのかとすら思っちまったわ……」
「自信持てよ。経緯はどうであれ、お前は俺が選んだ女なんだからさ。
俺の装備はお前以外に作ってもらいたくないよ」
「うん……。頑張るよ。私だって、私以外の職人の装備なんて、トーマに使って欲しくねぇし……」
「今日は夜遅くまでお疲れ様。
家に帰る前に、ちょっとだけご褒美あげような」
「……んっ」
明日は色々激動の日になりかねないからなぁ……。
今日のうちに英気を養っておかないと。
あ~明日が憂鬱すぎるわ。
このまま時間が止まってくれれば良いのに、ね。
ソロだと4万に届かないくらいだったから、3周すれば余裕で足りるはず」
「いきなりすぎてワケわかんねぇよ! ちゃんと説明しやがれ!」
おっと、ちょっと気が逸り過ぎた。
説明全部すっ飛ばして探索の予定だけ決めてしまったわ。
ま、これも異邦人が増えればいつかはバレる情報だからな。
ここにいるみんなには共有しても問題ないし、バレる前にアドバンテージを確保するのは絶対に必要なことだ。
今日魔導具開発局で起こった事をみんなに説明する。
「嘘だろ……? 職人スキルに、更に上があった、なんて……!」
「早ければ2年以内には、リヴァーブ王国民にも広まる話だと思うから、とりあえずマーサは今日中に取得してしまうぞ。
88階層なんてもう、目を瞑っててもマーサを連れて探索できる自信があるからな」
「それは流石に頭おかしいと思うけど、これは正しく革命と呼ぶに相応しいね。
リヴァーブ王国の生活が根底から覆される出来事だよ」
「流石に俺たちだけで秘匿するには重過ぎる情報だからな。ディオーヌ様、ファーガロン様、それと王様には伝えようと思う。
いやいやホントやべぇわこれ。何もしなくてもミルズレンダ、ガチで衰退するじゃんな?」
「でもこれって、都市建設計画にも光が射してきたってことになるよねー?
魔導具の性能が根本から変わってくるなんて、今までの常識が全部ひっくり返っちゃうよー」
「うん。トーマも言ってたけど、異風の旋律の戦力が突出しすぎている理由が分かったかな。
スキルが全ての世界なんて言いながら、この王国の人たち、必要なスキルを全然取ってないんだもん」
「先日誰かが王国を『狭い世界』って表現してましたけど、なんと的確な表現だったのかと思わされますよ。
神が授けてくれた力を、私たちはこれっぽっちも扱えていなかったなんて……!」
「凄い、凄い凄い凄いよっ……! 今までだって凄いって思ってたけど、これはホントにびっくりしたよ……!
戦う力だけじゃない、みんなの生活まで一変させちゃうなんて、凄すぎるよ……!
「つうかうちらとしては、1等級冒険者の水準の低さにびっくりっすよ。オーサンに全然歯が立たないから、1等級って雲の上みたいに思ってたっすわ……」
「トーマたちが1年もしないうちにここまでのスキルを取得しているのに、王国の人たちは本当に何をやっていたのかと呆れるわ……。
トーマたちはトーマたちで早すぎるんだとは思うけれど」
「おーい! オーサンだ! トーマはいるかぁ!?」
あ? オーサンが来るなんて珍しいな。夕食も終った時間なんか、来客自体殆どないのに。
「おうトーマ。来たぜ異邦人。今冒険者ギルドに4名保護してっからよ。お前の方から説明に出向いちゃくれねぇか?」
「来たかー。こっちはこっちで大変だけど、異邦人は放置できないよな。すぐ行くよ。みんなはどうする?」
聞いてみたけど誰も同行を希望しなかった。薄情かくっそー!
「そんじゃマーサ。夜に出かけられる準備だけしておいてくれ。帰ったらすぐ行くからな。
待たせたオーサン。案内してくれ」
冒険者ギルドなら案内要らないけど、初対面同士だからギルド職員の仲介は欲しい。
ギルドにつくと、ロビーに4名の男女が待たされていた。
不安げな表情をしていたが、俺の髪の色を見て少し安心したようだ。
話を聞いてみると、やはり時期的にはハル達と同じくらいに転移してきた人たちらしい。
リヴァーブ王国ではスキルがないと生活していくのが難しい説明をして、ステータスでスキルの詳細を確認させ、チートスキルのデメリットを確認してもらう。
その後にカンパニーの説明をして、それぞれの希望を大まかに聞く。
絶対に戦いは無理、という人でなければ、基本的に自由に過ごしてもらう。
2名は冒険者として活動出来ていたようだが、あとの2名は生活に困窮し、救貧院だったり親切な人だったりに助けてもらっていたようだ。
食と宿をカンパニーで支援する事を約束し、異邦人用の宿舎に案内する。
「異世界生活って、想像してたのと全然違いましたよ……。
毎日余裕がないし、頼れる人もいなくて途方に暮れてました……」
「私はこの世界の方が性に合ってたわ。出会う人たちみんな優しいし、こっちに来れて良かったと思ってる。
ま、それとは別に、生活苦しかったんだけどね」
やっぱ誰もが異世界で上手く生活できるわけじゃないよなぁ。
俺みたいに、日本よりもエンジョイする人だっているんだけどさ。
これで打ち止めなら平和で良いんだけどな……。
初日に4人も来たと考えると、明日以降殺到する可能性が高い気がするわぁ……。
異邦人のゲート使用料ってカンパニー資金から出してるからな。
金板3枚が殺到すると、カンパニー資金が枯渇するかもしれない……、いや、ないかな? ジーンさんとか逆に喜びかねない。
とりあえず第1弾はトラブルなく案内できて良かった。
ま、異世界生活が上手くいってる奴だったら、ベイクには来ないかもな。
自宅に戻ってマーサを拉致。
戦う術を持たないマーサを迷宮の最深部手前まで連れまわすとか、俺ってDV夫では……?
なんらかの問題が発生して取得できなかったらアホくさいので、余裕を見るために5周ほど探索した。
流石にこれなら間違いなく取得できるだろ。
「……いや、トーマたちがとんでもねぇ強さだってのは分かってたつもりだったんだけどよ……。
実際に目の当たりにしちまうと、想像を超えていたっていうか、次元が違ったっていうか……。
私なんかがお前の装備作って良いのかとすら思っちまったわ……」
「自信持てよ。経緯はどうであれ、お前は俺が選んだ女なんだからさ。
俺の装備はお前以外に作ってもらいたくないよ」
「うん……。頑張るよ。私だって、私以外の職人の装備なんて、トーマに使って欲しくねぇし……」
「今日は夜遅くまでお疲れ様。
家に帰る前に、ちょっとだけご褒美あげような」
「……んっ」
明日は色々激動の日になりかねないからなぁ……。
今日のうちに英気を養っておかないと。
あ~明日が憂鬱すぎるわ。
このまま時間が止まってくれれば良いのに、ね。
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