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10章 壁外世界
370 刃紋と閃空
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今日から朝の探索はソロ探索に戻る。
シンもスキップとストレージが使えるようになったし、実力的にも全く不安がない。
SP獲得を優先して、別々の場所に潜ることになった。
シンはそのままベイク、ターミナルとスキップの両方が使える俺はヴェルトーガに篭る。
魔法は使えるけど詠唱時間短縮のため、俺もスキップとターミナルの両方の魔導具をこっそり用意した。
ふはは、これが製作者の特権というものよ!
ヴェルトーガの開放型迷宮は広い。1回音魔法で釣りをするだけでストレージがいっぱいになるほどの魔物が寄って来るし、それで魔物が枯渇する心配もない。SP稼ぎに最適な環境だ。
鈴音の音斬撃にも結構慣れてきたつもりなんだけど、なんというか、あと1歩、何かが足りない。
いや、足りないというか、ズレてるのか? 音斬撃に対する俺の認識が間違っている?
――――そもそも、音に斬撃を乗せるという発想が間違ってる?
音と斬撃を分けて考えるからややこしくなってるのか?
『深層集中』と『瞬間加速』と『身体能力過剰強化』の同時使用を『トランス』と名付けて1つのスキルとして扱っているように、音斬撃も1つの能力として認識すべきなのか……?
迫ってくる魔物の攻撃を躱しながら鈴音に魔力を込めていく。
鈴音の斬撃を音に乗せる時、戦場には綺麗な鈴の音が広がる。
それは俺を中心にして周囲に波のように広がっていく。
波のように。波紋のように。
――――分かった。分かった気がする。
音に乗せるとか、上手く扱うとか、そんな話じゃない。
俺がするのはただ一石を投じるだけ。
手にした鈴音に、魔力という一石を投じ、あとは自然に任せるのみ。
鈴音が鳴る。
高く澄んだ鈴の音が空間に広がっていく。
その音が耳に届いた時、魔物は細切れになって絶命している。
こんなもの、制御しようなんてのが間違ってる。
鈴音を中心に広がる、全周囲飽和斬撃。
「刃紋、とでも名付けようかな。とりあえず、こっちは完成だ」
辺りを見ると、そこには見渡す限りのドロップアイテム。
これ全部集めるほうがよっぽど大変だよ……。
そこからは音魔法で敵を釣って、刃紋で殲滅、ドロップアイテム回収の流れが出来上がった。
アイテム回収に非常に時間がかかるので、考え事をしながら作業を進める。
刃紋は完成させることが出来た。
ぶっちゃけてソロ専用の技になってしまったけど、ソロなら防御能力にも期待できそうな能力だ。
ユリバファルゴア戦で使う場合は、シンと密着した状態で発動すれば大丈夫かな?
鈴音がシンを巻き込むとは思えないけど、強力すぎる技には必ずリスクが付きまとうと考えるべきだ。
さて、刃紋が完成した今、次に完成させるべきはトランスと攻撃範囲極大拡張の合わせ技の方だ。
ユリバファルゴアは遠目から見ても遠近感が狂うサイズのバケモノだ。
攻撃範囲拡張でもたついてしまう様では、満足に攻撃することも出来ない。
生まれたてのランドビカミウリですら、ちっぽけな人間サイズの攻撃を全て躱してきやがったからなぁ。ユリバファルゴアもあんなサイズしておきながら、俺たちよりも俊敏に動く可能性は低くない。
スキル発動による僅かなズレが、相手に回避する余裕を与えてしまうかもしれないんだ。
今まで見てきた中で、1番の攻撃射程だったのは、リーンのスネークソードを除けば、ランドビカミウリに止めを刺した、シンが放った緑の閃光だ。ボールクローグからすら視認出来たってんだから、どれほどの範囲の斬撃だったんだろうな。
「あの時はただただ必死だったから、よく覚えていないんだけど。
トーマが怯ませて、リーンが翼を斬り飛ばして、ここで決めなきゃって。
スキルを使おうとか考えてなくて、ただ落ちてくるランドビカミウリを斬ることしか考えてなかったと思う」
あの時の事をシンはこう語っていた。
攻撃範囲を拡張しようとか考えていたのではなく、ただ目の前のランドビカミウリを斬ることしか考えていなかった。
あの時が極限状態だったというのもあるだろうけど、下手にスキルを使用しようとか、範囲を拡張しようとか意識するよりも、ただ単純に攻撃対象を意識して攻撃する方がいいのか?
そう、発想の転換だ。斬撃の範囲を最大限拡大するんじゃなくて、始めから全てを斬るために攻撃を放つ。
鈴音を握る。
居合いなんてしたことないけど、鈴音が刀だからか、自然と居合いの姿勢になる。
集中する。まだスキルは使わない。
この一閃の攻撃範囲を拡張するのではない。この一閃で目の前全てを両断するつもりで放て。
全神経を集中して。全身全霊を持って。この一撃に全てを込めろ。
この一撃で、天地全てを両断しろ――――!!
迷宮内に白い閃光が走る。
気付くと鈴音を抜いていた。
目の前に魔物が居なかったからな。多分完成したような気がするけど、確かめようが……。
一瞬、視界が斜めに傾いた。
次の瞬間、迷宮から大量の魔力が噴き出し、様子を窺っていると少しずつ視界の傾きが治まっていった。
……もしかして、ここの階層そのものを両断してしまったってこと、か?
それで迷宮が損傷し、階層全体が傾いてしまった、と……?
うん。どうやら間違いなく完成したらしい。これって迷宮内ですら気軽に練習できないな。
う~ん、時間を見つけて屋外で練習を重ねるしかないか。
空間全てを両断する白い閃光。閃空とでも名付けよう。
刃紋と閃空。新技はどうにか完成したようだ。
あとはマーサの装備待ちかな?
どうやらもうすぐ会いに行けそうだ。
待ってろユリバファルゴア。次は逃げたりしねぇからよ。
シンもスキップとストレージが使えるようになったし、実力的にも全く不安がない。
SP獲得を優先して、別々の場所に潜ることになった。
シンはそのままベイク、ターミナルとスキップの両方が使える俺はヴェルトーガに篭る。
魔法は使えるけど詠唱時間短縮のため、俺もスキップとターミナルの両方の魔導具をこっそり用意した。
ふはは、これが製作者の特権というものよ!
ヴェルトーガの開放型迷宮は広い。1回音魔法で釣りをするだけでストレージがいっぱいになるほどの魔物が寄って来るし、それで魔物が枯渇する心配もない。SP稼ぎに最適な環境だ。
鈴音の音斬撃にも結構慣れてきたつもりなんだけど、なんというか、あと1歩、何かが足りない。
いや、足りないというか、ズレてるのか? 音斬撃に対する俺の認識が間違っている?
――――そもそも、音に斬撃を乗せるという発想が間違ってる?
音と斬撃を分けて考えるからややこしくなってるのか?
『深層集中』と『瞬間加速』と『身体能力過剰強化』の同時使用を『トランス』と名付けて1つのスキルとして扱っているように、音斬撃も1つの能力として認識すべきなのか……?
迫ってくる魔物の攻撃を躱しながら鈴音に魔力を込めていく。
鈴音の斬撃を音に乗せる時、戦場には綺麗な鈴の音が広がる。
それは俺を中心にして周囲に波のように広がっていく。
波のように。波紋のように。
――――分かった。分かった気がする。
音に乗せるとか、上手く扱うとか、そんな話じゃない。
俺がするのはただ一石を投じるだけ。
手にした鈴音に、魔力という一石を投じ、あとは自然に任せるのみ。
鈴音が鳴る。
高く澄んだ鈴の音が空間に広がっていく。
その音が耳に届いた時、魔物は細切れになって絶命している。
こんなもの、制御しようなんてのが間違ってる。
鈴音を中心に広がる、全周囲飽和斬撃。
「刃紋、とでも名付けようかな。とりあえず、こっちは完成だ」
辺りを見ると、そこには見渡す限りのドロップアイテム。
これ全部集めるほうがよっぽど大変だよ……。
そこからは音魔法で敵を釣って、刃紋で殲滅、ドロップアイテム回収の流れが出来上がった。
アイテム回収に非常に時間がかかるので、考え事をしながら作業を進める。
刃紋は完成させることが出来た。
ぶっちゃけてソロ専用の技になってしまったけど、ソロなら防御能力にも期待できそうな能力だ。
ユリバファルゴア戦で使う場合は、シンと密着した状態で発動すれば大丈夫かな?
鈴音がシンを巻き込むとは思えないけど、強力すぎる技には必ずリスクが付きまとうと考えるべきだ。
さて、刃紋が完成した今、次に完成させるべきはトランスと攻撃範囲極大拡張の合わせ技の方だ。
ユリバファルゴアは遠目から見ても遠近感が狂うサイズのバケモノだ。
攻撃範囲拡張でもたついてしまう様では、満足に攻撃することも出来ない。
生まれたてのランドビカミウリですら、ちっぽけな人間サイズの攻撃を全て躱してきやがったからなぁ。ユリバファルゴアもあんなサイズしておきながら、俺たちよりも俊敏に動く可能性は低くない。
スキル発動による僅かなズレが、相手に回避する余裕を与えてしまうかもしれないんだ。
今まで見てきた中で、1番の攻撃射程だったのは、リーンのスネークソードを除けば、ランドビカミウリに止めを刺した、シンが放った緑の閃光だ。ボールクローグからすら視認出来たってんだから、どれほどの範囲の斬撃だったんだろうな。
「あの時はただただ必死だったから、よく覚えていないんだけど。
トーマが怯ませて、リーンが翼を斬り飛ばして、ここで決めなきゃって。
スキルを使おうとか考えてなくて、ただ落ちてくるランドビカミウリを斬ることしか考えてなかったと思う」
あの時の事をシンはこう語っていた。
攻撃範囲を拡張しようとか考えていたのではなく、ただ目の前のランドビカミウリを斬ることしか考えていなかった。
あの時が極限状態だったというのもあるだろうけど、下手にスキルを使用しようとか、範囲を拡張しようとか意識するよりも、ただ単純に攻撃対象を意識して攻撃する方がいいのか?
そう、発想の転換だ。斬撃の範囲を最大限拡大するんじゃなくて、始めから全てを斬るために攻撃を放つ。
鈴音を握る。
居合いなんてしたことないけど、鈴音が刀だからか、自然と居合いの姿勢になる。
集中する。まだスキルは使わない。
この一閃の攻撃範囲を拡張するのではない。この一閃で目の前全てを両断するつもりで放て。
全神経を集中して。全身全霊を持って。この一撃に全てを込めろ。
この一撃で、天地全てを両断しろ――――!!
迷宮内に白い閃光が走る。
気付くと鈴音を抜いていた。
目の前に魔物が居なかったからな。多分完成したような気がするけど、確かめようが……。
一瞬、視界が斜めに傾いた。
次の瞬間、迷宮から大量の魔力が噴き出し、様子を窺っていると少しずつ視界の傾きが治まっていった。
……もしかして、ここの階層そのものを両断してしまったってこと、か?
それで迷宮が損傷し、階層全体が傾いてしまった、と……?
うん。どうやら間違いなく完成したらしい。これって迷宮内ですら気軽に練習できないな。
う~ん、時間を見つけて屋外で練習を重ねるしかないか。
空間全てを両断する白い閃光。閃空とでも名付けよう。
刃紋と閃空。新技はどうにか完成したようだ。
あとはマーサの装備待ちかな?
どうやらもうすぐ会いに行けそうだ。
待ってろユリバファルゴア。次は逃げたりしねぇからよ。
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