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10章 壁外世界
369 スキップオーブ配達
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翌日から、スキップオーブを各地へを少しずつ配達する。
渡す相手は各地の統治者。個人所有はさせない。
本当はそれぞれが専用のオーブを持つべきなんだけどな。
貸し出し式だと、10階層までしか潜ったことのない冒険者が、好奇心で30階層に行って命を落す、なんてことがあるかもしれないから。
ま、時代が進めば変わってくるだろ。
管理は統治者を通して冒険者ギルド預かり。6等級冒険者以上から貸し出しを許可する方針にした。
階層移動の大変さをわかっていたほうが有難みが出るし、単純に魔力切れ防止のためでもある。
それでも6等級に成り立てくらいだと、魔力切れを起こす危険性はありそうだけど。
「最終的に王には400ほどお届けする予定です。ヴェルトーガ、ボールクローグ、ウィルスレイア、ベイクには俺が直接届けますので、他の迷宮都市への配分を宜しくお願いします」
「うむ。確実に各地に届けると約束しよう。まったく、トーマが来てから王国は揺れてばかりじゃな。
将来的には通常の職人でも作成できるようになるというのも有難い。トーマしか作れないとなると、トーマの死後は失われるだけになってしまうからな」
「くれぐれも扱いにはご注意ください。冒険者が迷宮の先に進みやすくなるという事は、命の危険も増してしまうということですから。
6等級に上がるような冒険者は、己の身を守る実力はあると思いますが、色々と勝手が変わってくると思います」
「うむ。留意しておこう。
時にトーマよ。お主、我が娘に何かしたのか? 最近シルヴァールがやけにそなたを敵視しているのだが」
「謝罪を受け取っただけですよ。あとは2度と近付かないで欲しいとお伝えしました。
俺も自分を敵視している人物と仲良くしようとは思いませんからね。
次に王女殿下とお会いするようなことがあったら、もう2度と登城したくなくなるかもしれません。
俺としても王国とは仲良く付き合っていきたいと思っておりますので、配慮していただければ有難いです」
「……今の件も留意しておこうぞ。
して、このスキップオーブの礼に、何か望む物はあるか? もし何かあれば申してみるが良い」
「ん~……。ちょっと先の話になっちゃうんですけど。
俺の個人用に、ターミナルを設置する許可を貰えませんかね? 新設都市に設置するのとは別枠で。
ターミナルって国に管理されてると聞いていたので、一応許可を取っておきたいなと」
「ふむ? ターミナルが欲しいというわけではなく、許可だけで良いのか? 許可だけで良いのであれば構わぬよ。好きにするといい。
そうだな。あまり衆目に晒されるような場所に設置するのは避けてもらえると有難い」
「家族以外に使わせる気はないのでご心配なく。許可ありがとうございます。
毎度登城して王にお渡しするのも手間ですし、次回以降のお届けは冒険者ギルドでいいですか?」
「それで構わぬ。話は間違いなく通しておく。
それにシルヴァールの件もあるから、トーマは少し登城を控えたほうがいかもしれんからな。
私に何か用事があれば、それも冒険者ギルドに連絡してくれ。よほどの緊急事態でなければ、こちらの都合に合わせてもらえると有難い」
「勿論です。むしろ毎回突然の登城に対応してもらって感謝してます」
流石に王を最優先。次はウィルスレイアに行くか。カルネジア家は最後で良いや。
ウィルスレイアの冒険者ギルドで、可能な限り最優先でファーガロン様に面会したいと伝言を頼む。
前回カンカンが来るのも早かったので、そのままギルドのロビーで待っていると、カンカンを伴ってファーガロン様本人が冒険者ギルドにやって来た。
そのままギルドの会議室を借りてお話しする事に。
「いやいやまさか本人がやってくるとは思ってませんでしたよ。最速の対応ありがとうございます」
「ははは。トーマさんが最優先でと言ったんだから、また面白い話だと思ってね。
先日はついにユリバファルゴアの存在を確認できたと聞いているし、その件についてかな?」
「今回は別件です。先日王城でお話した話題の延長なんですけど、スキップの魔導具が完成したのでお届けに参りました」
「――――は?」
事の経緯と、スキップオーブの取り扱いについて説明する。
始めこそ反応が遅れたけど、流石に順応が早く、真剣に対応してくれる。
「素晴らしいね。ディオーヌ様もよくご決断されたものだ。
シルグリイド家としては何1つ不満はないよ。100もあれば、予備を含めても充分すぎる。
深階層域に潜れる冒険者が増えるなら、治療魔法や空間魔法の流通量も増えるかもしれない。異風の旋律に頼らない、王国民の力による発展と防衛。現実味を帯びてきた気がするよ」
ファーガロン様も話が早い。
ディオーヌ様みたいに博愛の精神ではないけれど、利に聡く合理的な思考をしている。
届け先も冒険者ギルドで了承してもらえた。
「最近ファーガロン様がとても楽しそうにしている。ありがとう」
「いや。こっちこそ大変お世話になってるから。ファーガロン様にもカンカンにも感謝してるよ」
「ははは。僕こそ感謝してるよ。僕の機嫌が良いのは、カンカンの機嫌が良いからさ! 妻の機嫌が良くて不機嫌になる男なんて居るはずないだろう」
最後に爆弾発言を残して2人は去っていった。夫婦だったんかーい!
よくもまぁ領主婦人に俺の応対なんかさせてたもんだ。ファーガロン様からの誠意だったのかな?
仲睦まじいようで何よりだ。
さて、最後は気が進まないけどボールクローグに行くか。
「ふむ。なるほどな。確かに有用な魔導具のようだ」
ブルガーゾだけだと不安だけど、カルマさんにも同席してるし大丈夫と信じたい。
「深階層域への移動時間は確かに問題であったのだ。当家にもスキップ使いはいるが、やはり負担が大きいからな」
「冒険者だけじゃなくて、カルネジア家の人も使えば良いと思うよ。
先日ユリバファルゴアを見てきたんだけどさ。ランドビカミウリよりも明らかに格上だったからな。
レイメルカミウリの討伐を目指すなら、今のままじゃ話にならねぇぞ」
「あの時の白き竜王よりも更に上、か。我自身、1から鍛え直さねばならんか……」
「そうそう、女のケツ追っかけてばかりいないで鍛えろ鍛えろ」
――――あれ? これひょっとしてブーメラン刺さってね?
「そ、そう言えば! カルネジア家の婚姻に関して、今後王家からの厳重な審査が設けられてしまったではないか! どうせ貴様の入れ知恵であろう!?」
「入れ知恵っつうか反省しろよ。今回の氾濫の原因はお前にあったんだからよ。カルネジア家の痴情の縺れでエリアキーパーなんかポンポン召喚されたら、大袈裟じゃなく国が滅びるっつうんだよ。
その処分が不服だってんなら、エリアキーパーを倒せるくらいに強くなってみせりゃあ良いだけだ。それが火のカルネジア家ってもんだろう?」
「ふんっ! 貴様に言われるまでもないわっ! このカルネジア・ブルガーゾ、必ずや更なる強さを手に入れてみせようぞ! いつまでも我が弱いままだと思われては堪らんわっ!」
ブルガーゾも『攻撃範囲拡張:中』まで持ってるらしいからな。真面目に探索すれば、SP獲得は容易だろう。
これで冒険者の成長フラグは完全に立ったかな?
あとは俺たちが頑張る番だ。
倒さなくちゃいけないエリアキーパーも増えてきたからな。
いつまでもユリバファルゴアに躓いてるわけにゃあいかないぜ。
渡す相手は各地の統治者。個人所有はさせない。
本当はそれぞれが専用のオーブを持つべきなんだけどな。
貸し出し式だと、10階層までしか潜ったことのない冒険者が、好奇心で30階層に行って命を落す、なんてことがあるかもしれないから。
ま、時代が進めば変わってくるだろ。
管理は統治者を通して冒険者ギルド預かり。6等級冒険者以上から貸し出しを許可する方針にした。
階層移動の大変さをわかっていたほうが有難みが出るし、単純に魔力切れ防止のためでもある。
それでも6等級に成り立てくらいだと、魔力切れを起こす危険性はありそうだけど。
「最終的に王には400ほどお届けする予定です。ヴェルトーガ、ボールクローグ、ウィルスレイア、ベイクには俺が直接届けますので、他の迷宮都市への配分を宜しくお願いします」
「うむ。確実に各地に届けると約束しよう。まったく、トーマが来てから王国は揺れてばかりじゃな。
将来的には通常の職人でも作成できるようになるというのも有難い。トーマしか作れないとなると、トーマの死後は失われるだけになってしまうからな」
「くれぐれも扱いにはご注意ください。冒険者が迷宮の先に進みやすくなるという事は、命の危険も増してしまうということですから。
6等級に上がるような冒険者は、己の身を守る実力はあると思いますが、色々と勝手が変わってくると思います」
「うむ。留意しておこう。
時にトーマよ。お主、我が娘に何かしたのか? 最近シルヴァールがやけにそなたを敵視しているのだが」
「謝罪を受け取っただけですよ。あとは2度と近付かないで欲しいとお伝えしました。
俺も自分を敵視している人物と仲良くしようとは思いませんからね。
次に王女殿下とお会いするようなことがあったら、もう2度と登城したくなくなるかもしれません。
俺としても王国とは仲良く付き合っていきたいと思っておりますので、配慮していただければ有難いです」
「……今の件も留意しておこうぞ。
して、このスキップオーブの礼に、何か望む物はあるか? もし何かあれば申してみるが良い」
「ん~……。ちょっと先の話になっちゃうんですけど。
俺の個人用に、ターミナルを設置する許可を貰えませんかね? 新設都市に設置するのとは別枠で。
ターミナルって国に管理されてると聞いていたので、一応許可を取っておきたいなと」
「ふむ? ターミナルが欲しいというわけではなく、許可だけで良いのか? 許可だけで良いのであれば構わぬよ。好きにするといい。
そうだな。あまり衆目に晒されるような場所に設置するのは避けてもらえると有難い」
「家族以外に使わせる気はないのでご心配なく。許可ありがとうございます。
毎度登城して王にお渡しするのも手間ですし、次回以降のお届けは冒険者ギルドでいいですか?」
「それで構わぬ。話は間違いなく通しておく。
それにシルヴァールの件もあるから、トーマは少し登城を控えたほうがいかもしれんからな。
私に何か用事があれば、それも冒険者ギルドに連絡してくれ。よほどの緊急事態でなければ、こちらの都合に合わせてもらえると有難い」
「勿論です。むしろ毎回突然の登城に対応してもらって感謝してます」
流石に王を最優先。次はウィルスレイアに行くか。カルネジア家は最後で良いや。
ウィルスレイアの冒険者ギルドで、可能な限り最優先でファーガロン様に面会したいと伝言を頼む。
前回カンカンが来るのも早かったので、そのままギルドのロビーで待っていると、カンカンを伴ってファーガロン様本人が冒険者ギルドにやって来た。
そのままギルドの会議室を借りてお話しする事に。
「いやいやまさか本人がやってくるとは思ってませんでしたよ。最速の対応ありがとうございます」
「ははは。トーマさんが最優先でと言ったんだから、また面白い話だと思ってね。
先日はついにユリバファルゴアの存在を確認できたと聞いているし、その件についてかな?」
「今回は別件です。先日王城でお話した話題の延長なんですけど、スキップの魔導具が完成したのでお届けに参りました」
「――――は?」
事の経緯と、スキップオーブの取り扱いについて説明する。
始めこそ反応が遅れたけど、流石に順応が早く、真剣に対応してくれる。
「素晴らしいね。ディオーヌ様もよくご決断されたものだ。
シルグリイド家としては何1つ不満はないよ。100もあれば、予備を含めても充分すぎる。
深階層域に潜れる冒険者が増えるなら、治療魔法や空間魔法の流通量も増えるかもしれない。異風の旋律に頼らない、王国民の力による発展と防衛。現実味を帯びてきた気がするよ」
ファーガロン様も話が早い。
ディオーヌ様みたいに博愛の精神ではないけれど、利に聡く合理的な思考をしている。
届け先も冒険者ギルドで了承してもらえた。
「最近ファーガロン様がとても楽しそうにしている。ありがとう」
「いや。こっちこそ大変お世話になってるから。ファーガロン様にもカンカンにも感謝してるよ」
「ははは。僕こそ感謝してるよ。僕の機嫌が良いのは、カンカンの機嫌が良いからさ! 妻の機嫌が良くて不機嫌になる男なんて居るはずないだろう」
最後に爆弾発言を残して2人は去っていった。夫婦だったんかーい!
よくもまぁ領主婦人に俺の応対なんかさせてたもんだ。ファーガロン様からの誠意だったのかな?
仲睦まじいようで何よりだ。
さて、最後は気が進まないけどボールクローグに行くか。
「ふむ。なるほどな。確かに有用な魔導具のようだ」
ブルガーゾだけだと不安だけど、カルマさんにも同席してるし大丈夫と信じたい。
「深階層域への移動時間は確かに問題であったのだ。当家にもスキップ使いはいるが、やはり負担が大きいからな」
「冒険者だけじゃなくて、カルネジア家の人も使えば良いと思うよ。
先日ユリバファルゴアを見てきたんだけどさ。ランドビカミウリよりも明らかに格上だったからな。
レイメルカミウリの討伐を目指すなら、今のままじゃ話にならねぇぞ」
「あの時の白き竜王よりも更に上、か。我自身、1から鍛え直さねばならんか……」
「そうそう、女のケツ追っかけてばかりいないで鍛えろ鍛えろ」
――――あれ? これひょっとしてブーメラン刺さってね?
「そ、そう言えば! カルネジア家の婚姻に関して、今後王家からの厳重な審査が設けられてしまったではないか! どうせ貴様の入れ知恵であろう!?」
「入れ知恵っつうか反省しろよ。今回の氾濫の原因はお前にあったんだからよ。カルネジア家の痴情の縺れでエリアキーパーなんかポンポン召喚されたら、大袈裟じゃなく国が滅びるっつうんだよ。
その処分が不服だってんなら、エリアキーパーを倒せるくらいに強くなってみせりゃあ良いだけだ。それが火のカルネジア家ってもんだろう?」
「ふんっ! 貴様に言われるまでもないわっ! このカルネジア・ブルガーゾ、必ずや更なる強さを手に入れてみせようぞ! いつまでも我が弱いままだと思われては堪らんわっ!」
ブルガーゾも『攻撃範囲拡張:中』まで持ってるらしいからな。真面目に探索すれば、SP獲得は容易だろう。
これで冒険者の成長フラグは完全に立ったかな?
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