異世界で目指せハーレム生活! でも仲間のほうがモテモテです

りっち

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10章 壁外世界

379 vsユリバファルゴア⑧ 仄暗い砂の底で

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 どのくらい時間が経ったのか全然分からないけど、とりあえず目的地まで到達できた。
 勢い余って奴の体内にまで突っ込んでしまったけれど、まぁ些細な問題だな。

 ユリバファルゴアはまるでジンベイザメの立ち泳ぎのように、砂の中で直立状態で埋まっているみたいだ。
 このまま落ちるわけにはいかない。
 とりあえずユリバファルゴアの体内の壁が視認できたので、ジャンプを使って壁に転移し掴まった。

 はぁ~……。
 こうして見ると、まるで砂が滝のように、口から下のほうへと流れ落ちていってるなぁ。
 
 流石に砂漠エリア全ての砂を飲み込む事は出来ないだろうけど、尻尾側から排出でもしてるんだろうか?
 それとも洗浄みたいな魔法で除去しているとか?


 あまりゆっくりしているわけにもいかないが、流石に少し魔力は回復させておきたい。
 まだみんなに掛けてもらった支援魔法は切れていないようだから、数日間殴っていたって事はなさそうだ。

 片手で肉壁に掴まりながら、エリアキーパーの中で、ストレージから取り出した物を飲み食いしてる俺。我ながらドン引きするよ。体内で食事って何? マトリョーシカか何かかな?


 さて、ここから俺が取るべき行動を真面目に考えようか。
 ユリバファルゴアは、頭部と尻尾から切り離された部分は損失する。つまりは短時間で2ヶ所、ユリバファルゴアの体を切断しなければならない。
 
 ま、方法としては閃空の2連射しかないよね。
 潜られる直前、再生される前に2発目の閃空が間に合う事は実証出来てるわけだし。

 
 問題は、閃空でどこを狙うか。
 真下に向かって刳り貫くように閃空を放つつもりだけど、範囲が狭すぎたら両断できないし、広すぎたら距離を稼げない。
 いや、欲張らないほうがいいか。確実に両断する事を考えよう。

 攻撃を受けたら恐らくビビッて地上に逃げると思うから、俺もそれに便乗して地上に帰還するべきだ。
 ならば閃空は2発とも、自分の居る位置よりも下に目掛けて放たねばならないな。


 さて、やるべきことが定まったら、次はどうやって実行するかだ。
 現状は片手で体内に掴まってる状態。そして閃空は片手で放てる気がしない。

 足場が必要だな。どうやって足場を確保するか……。

 お! ストレージの肥やしになってた、シルバーライト製のロングソードがあるじゃない。
 刃渡りは90センチくらいだった。
 これを壁に刺せば、柄の部分も合わせて、即席の足場にはなるかな。

 よし、足場も一応確保できそうだ。あとはもう少し休んで、魔力に余裕を作ろう。


 それにしても、巨大モンスターを倒す方法っていえば、まさに体内に侵入する倒し方だと思うんだけど、このユリバファルゴア、内臓みたいな器官が一切なくて、完全な空洞状態なんだよね。
 内蔵があるとしたら、頭部と尻尾付近だけなんだろう。他の切り捨てられる部分は全部使い捨てだ。トカゲの尻尾切りと同じ、ユリバファルゴアの胴体切り。

 さてと、そろそろ始めようかな。
 もしかしたらロングソードを刺した時点で俺の存在に気付く可能性があるので、行動を起こしたら迅速に事を済ませなければならない。
 準備はオーケー。魔力も余裕あり。集中力もまだ持続できてると思う。

 それじゃユリバファルゴアさん。地上までエスコート宜しくな。
 

 ストレージからシルバーライトロングソードを取り出し、思い切り突き刺す。
 すぐに剣の腹に乗り、頭の上辺りにダガーも刺す。これは取っ手代わりだ。

 ロングソードの上は狭いけど、さすがシルバーライト製、びくともしない。
 ユリバファルゴアも特に何の反応もないので、足場が揺れる心配もない。


「閃空!」


 なるべく遠くに届くように、でも確実に両断できるようにと足元に向かって、角度をつけた円周閃空。
 効果を確かめる間もなく鈴音を納刀しなおし、今度は自分の足元のすぐ下辺りを狙って。


「閃空!」


 素早く鈴音を納め、ロングソードを引き抜きつつ、頭の上のダガーを両手でしっかりと掴む。

 ギュオオオオオアアアアア!!???

 体内で聞く咆哮は、より一層煩いね。持ってて良かった音魔法。


 物凄いスピードで上昇しているのを感じる。
 ここで手を離して生き埋めになるなんて冗談じゃない。

 ダガーを握りつぶすつもりで、全力で握りしめる。


 超高速のエレベーター。
 これって何Gくらいかかってるんだろ。

 まだ切断した部分はくっついていない。結構距離が稼げた模様。
 尻尾のほうも、今地面に向かって伸びてきてるんだろうか?

 砂飲みすぎて追いつけなくなってるとか?


 不意に、上昇している感覚がなくなる。
 確かめる術はないけれど、地上に出たと信じてダガーを抜き取り、いまだ接合されていない切断面から体外に出る。


「うおおお……!?」


 地上に出ていたのは間違いなかったけれど、めっちゃ空高い場所に投げ出されてしまったぞ?
 大丈夫? 俺、死なないかなこれ?

 シンの話では、ユリバファルゴアの鱗弾ですら、骨にヒビが入る程度の衝撃に抑えてくれたという、マーサが作ってくれた装備を信じよう。
 とりあえず両手を大の字にして空気抵抗を増やしつつ、風魔法で気休め程度の上昇気流は忘れない。


 なかなか地面が近付いてこない。
 これって地上何メートルくらいなんだろうなぁ。何キロメートルじゃなきゃいいなぁ。
 流石にマーサ製の防具でも、この高さじゃ死んでしまう気がするな。

 何か、せめて落下スピードを遅く出来るような、なにかないか?


 昔何かで、空中で技を放って、その反動で空中での姿勢制御をするという漫画を見たことがある気がする。
 って真似しようにも、攻撃魔法には反動がなかった。あれじゃ姿勢制御は出来ない……ってあれ?
 反動がないなら、俺に向かって下から撃てば、落下スピード遅くできたり?

 いや、それなら攻撃魔法を使う必要はない。魔法効果で充分だ。間近に迫った地面を見ながら、自分の横っ腹をガントレットで殴りつける。


「ぐほぁっ!」


 思いっきり横に吹っ飛ばされて、数百メートル吹き飛んだけど。何とか砂漠を転がる程度で着地できた模様。
 体中がめちゃくちゃ痛い。

 俺って数分間のうちに上下移動しすぎだわ。
 これも全部テメーのせいだ、ユリバファルゴア。

 かなり高い位置で停滞しているユリバファルゴアを見上げながら、シンが発する音魔法を頼りに、未だ明けない夜の砂漠を駆け出すのだった。
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