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10章 壁外世界
378 vsユリバファルゴア⑦ 掘削作戦
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「シン。ここでモタモタしてても、状況が悪化するだけだ。
俺があの先を確認してくるから、シンはここで待機してて欲しい」
「……提案の詳細と役割分担の理由をお願い」
「恐らくだけど、ユリバファルゴアは魔力操作が苦手に見えたよな。だから恐らくあの渦の先に奴が居る可能性は、それなりに高いと踏んでる。
奴が今潜っているのは、砂の中が絶対に安全だと思い込んでいるからだ。
なら、砂の中でも安全じゃないと思い知らせれば、奴を地上に引っ張り出すことが出来ると思う」
「……うん、続きを」
「砂の中に飛び込むのは俺のほうが向いてる。土魔法で砂を操作できるし、ガントレットで砂を吹き飛ばせるからな。
どのくらい下に居るのかは全く予想できないが、打撃武器を持ってないシンよりも、俺のほうが向いてる、だろ?」
これは自己犠牲とか全く考えてない。単純な向き不向きの話だ。
シンのほうが適役だったのなら、迷わずシンに行ってもらったはず。
「恐らく奴の本体は、頭部と尻尾の、胴体の両端部分だと思う。そしてこれも予想でしかないけど、始めの攻撃で頭部が再生されたことを考えると、頭と尻尾を同時に破壊しなきゃいけないんじゃないかと思うんだ。
俺が地中から奴を引き摺り出して来るから、シンは地上で待機して、頭が出てきた瞬間にぶった斬って欲しいんだ。俺は尻尾のほうを担当するからさ」
「…………。
確かに、確かに僕よりも、トーマが行く方が成功率が高い、か……。
でも、トーマも分かってると思うけど、地中の奥深いところに、生き埋めになる可能性だってあるよ……?」
「その場合も、土魔法の操作が上手い俺のほうが生還率は上がると踏んでる。
さぁ相棒、覚悟を決めようぜ。ここで俺たちがコイツを地上に引きずり出せなきゃ、お互いの嫁達と一緒に、ウィルスレイアが沈んで無くなってしまうんだよ」
「いやいや、変に焚きつけなくても大丈夫だよ。一応他の方法がないか、もう1度考えていただけだから。
トーマ、砂の下は任せるよ。その代わり、地上に出てきた奴を仕留めるのは僕に任せてくれ」
「勿論だ。お前より信頼できる奴なんて、この世界に存在しねぇよ。
どの程度の時間がかかるかは見当がつかない。下手をすると、数日かかるなんてこともあるかもしれない。
それでも信じて待っててくれよな。俺は絶対に死なねぇってさ」
「トーマが帰ってくるまで、ここでずっと待ってるからさ。僕のことが大切なら、早いとこ戻ってきてくれないかな? 出来れば明日の朝食くらいまでにはさ」
シンと2人で軽口を叩く。
うん。いつも通りの俺たちだ。
ならばいつも通り、無茶を通して帰ってくればいい。
「はっ! あんな奴を倒すのは、まさに朝飯前って奴だな!
それじゃ行ってくるぜ! 精々腹空かせて待っててくれよ!」
シンともう1度拳を合わせ直して、渦に向かって走り出す。
この先が地獄に繋がっていようとも、全部殺して生き残ってやらぁ!
渦に向かう最中に、土魔法で砂の操作を再確認。
ユリバファルゴアが操っている砂にも、俺が上書きで干渉、操作する事は問題なし。
「今迎えに行ってやるぜえええ! 震えて待ってろ引き篭もり野郎があああ!!」
渦の中心、砂が集まっている箇所にガントレットで殴りつける!
クレーターのような穴が開くが、当然奴の姿はない。
「うおおおおおああああ!!」
殴る。殴る。ただひたすらに、足元の砂を吹き飛ばしていく。
暗視があっても全く視界が確保できないが、魔力探知で殴るべき場所は間違えない。
殴る。殴る。殴る度に落ちていく。いまだ奴の姿は見つからない。
余計な事は考えない。もしもこの先にユリバファルゴアが居なかったら……?
もしも奴に辿り着く前に、地中で魔力が切れてしまったら……?
そんなこと考えても仕方ない。ずっと鍛え続けてきた、俺の魔力量を信じるだけだ。
殴る。殴る。殴り続ける。
何も考えずに殴り続けているので、どのくらい時間が経ったのか把握できない。
まだ殴り始めたばかりのような気もするし、もう何日も殴り続けているような気もしてくる。
視界はゼロ。自分の体も既に何度も埋もれている。その度に殴り、その度に落ちる。
どうせ元々何も見えない。なら目を開けている必要はない。
どうせ奴も今は他の行動は一切取れない。ならば魔力探知と拳への魔力を除いて、他への魔力供給を一切断とう。
腕が埋もれたら土魔法で、殴る分だけスペースを空ける。
防具の魔装術を断っても、ガントレットからのフィードバックは多少痛みを感じる程度だ。
さすがマーサ。いい仕事してる。
俺、いったいなにやってんだろうな?
たった1人で、ずっと地面を殴り続けるだけ。
なんだよこのおっさん。傍から見たらシュールすぎるだろ。
それでも殴るのをやめるわけにはいかない。
ここで止まるわけにはいかない。
俺が奴に辿り着けなければ、俺とシンが奴を倒せなければ、俺たちの大切な家族たちが、砂の海に沈んでしまう。
俺だってシンだって、そんなこと絶対に、許せるはずがないよなぁ?
どのくらいの時間が経ったのか。
魔力探知が何かを捉えた。
そこか。そこに居るのか。ユリバファルゴア。
俺の仲間に手を出した、俺の家族を危険に晒した、俺が殺すべき、俺の敵……!
「迎えにきてやったぞ、ユリバファルゴアアアアアアアアア!!!」
渾身の力を込めて、足元に拳を叩きつける。
目の前の砂が吹き飛ばされて、俺は奴の口の中に落ちていった。
俺があの先を確認してくるから、シンはここで待機してて欲しい」
「……提案の詳細と役割分担の理由をお願い」
「恐らくだけど、ユリバファルゴアは魔力操作が苦手に見えたよな。だから恐らくあの渦の先に奴が居る可能性は、それなりに高いと踏んでる。
奴が今潜っているのは、砂の中が絶対に安全だと思い込んでいるからだ。
なら、砂の中でも安全じゃないと思い知らせれば、奴を地上に引っ張り出すことが出来ると思う」
「……うん、続きを」
「砂の中に飛び込むのは俺のほうが向いてる。土魔法で砂を操作できるし、ガントレットで砂を吹き飛ばせるからな。
どのくらい下に居るのかは全く予想できないが、打撃武器を持ってないシンよりも、俺のほうが向いてる、だろ?」
これは自己犠牲とか全く考えてない。単純な向き不向きの話だ。
シンのほうが適役だったのなら、迷わずシンに行ってもらったはず。
「恐らく奴の本体は、頭部と尻尾の、胴体の両端部分だと思う。そしてこれも予想でしかないけど、始めの攻撃で頭部が再生されたことを考えると、頭と尻尾を同時に破壊しなきゃいけないんじゃないかと思うんだ。
俺が地中から奴を引き摺り出して来るから、シンは地上で待機して、頭が出てきた瞬間にぶった斬って欲しいんだ。俺は尻尾のほうを担当するからさ」
「…………。
確かに、確かに僕よりも、トーマが行く方が成功率が高い、か……。
でも、トーマも分かってると思うけど、地中の奥深いところに、生き埋めになる可能性だってあるよ……?」
「その場合も、土魔法の操作が上手い俺のほうが生還率は上がると踏んでる。
さぁ相棒、覚悟を決めようぜ。ここで俺たちがコイツを地上に引きずり出せなきゃ、お互いの嫁達と一緒に、ウィルスレイアが沈んで無くなってしまうんだよ」
「いやいや、変に焚きつけなくても大丈夫だよ。一応他の方法がないか、もう1度考えていただけだから。
トーマ、砂の下は任せるよ。その代わり、地上に出てきた奴を仕留めるのは僕に任せてくれ」
「勿論だ。お前より信頼できる奴なんて、この世界に存在しねぇよ。
どの程度の時間がかかるかは見当がつかない。下手をすると、数日かかるなんてこともあるかもしれない。
それでも信じて待っててくれよな。俺は絶対に死なねぇってさ」
「トーマが帰ってくるまで、ここでずっと待ってるからさ。僕のことが大切なら、早いとこ戻ってきてくれないかな? 出来れば明日の朝食くらいまでにはさ」
シンと2人で軽口を叩く。
うん。いつも通りの俺たちだ。
ならばいつも通り、無茶を通して帰ってくればいい。
「はっ! あんな奴を倒すのは、まさに朝飯前って奴だな!
それじゃ行ってくるぜ! 精々腹空かせて待っててくれよ!」
シンともう1度拳を合わせ直して、渦に向かって走り出す。
この先が地獄に繋がっていようとも、全部殺して生き残ってやらぁ!
渦に向かう最中に、土魔法で砂の操作を再確認。
ユリバファルゴアが操っている砂にも、俺が上書きで干渉、操作する事は問題なし。
「今迎えに行ってやるぜえええ! 震えて待ってろ引き篭もり野郎があああ!!」
渦の中心、砂が集まっている箇所にガントレットで殴りつける!
クレーターのような穴が開くが、当然奴の姿はない。
「うおおおおおああああ!!」
殴る。殴る。ただひたすらに、足元の砂を吹き飛ばしていく。
暗視があっても全く視界が確保できないが、魔力探知で殴るべき場所は間違えない。
殴る。殴る。殴る度に落ちていく。いまだ奴の姿は見つからない。
余計な事は考えない。もしもこの先にユリバファルゴアが居なかったら……?
もしも奴に辿り着く前に、地中で魔力が切れてしまったら……?
そんなこと考えても仕方ない。ずっと鍛え続けてきた、俺の魔力量を信じるだけだ。
殴る。殴る。殴り続ける。
何も考えずに殴り続けているので、どのくらい時間が経ったのか把握できない。
まだ殴り始めたばかりのような気もするし、もう何日も殴り続けているような気もしてくる。
視界はゼロ。自分の体も既に何度も埋もれている。その度に殴り、その度に落ちる。
どうせ元々何も見えない。なら目を開けている必要はない。
どうせ奴も今は他の行動は一切取れない。ならば魔力探知と拳への魔力を除いて、他への魔力供給を一切断とう。
腕が埋もれたら土魔法で、殴る分だけスペースを空ける。
防具の魔装術を断っても、ガントレットからのフィードバックは多少痛みを感じる程度だ。
さすがマーサ。いい仕事してる。
俺、いったいなにやってんだろうな?
たった1人で、ずっと地面を殴り続けるだけ。
なんだよこのおっさん。傍から見たらシュールすぎるだろ。
それでも殴るのをやめるわけにはいかない。
ここで止まるわけにはいかない。
俺が奴に辿り着けなければ、俺とシンが奴を倒せなければ、俺たちの大切な家族たちが、砂の海に沈んでしまう。
俺だってシンだって、そんなこと絶対に、許せるはずがないよなぁ?
どのくらいの時間が経ったのか。
魔力探知が何かを捉えた。
そこか。そこに居るのか。ユリバファルゴア。
俺の仲間に手を出した、俺の家族を危険に晒した、俺が殺すべき、俺の敵……!
「迎えにきてやったぞ、ユリバファルゴアアアアアアアアア!!!」
渾身の力を込めて、足元に拳を叩きつける。
目の前の砂が吹き飛ばされて、俺は奴の口の中に落ちていった。
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