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10章 壁外世界
398 海の旅人
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(シン。ちょっと気になる生物を見つけた。見に行ってくるからここで待っててくれるか?)
音魔法でシンに確認を取る。
シンが頷くのを待ってから、ウミガメの居る場所まで急ぐ。
ウミガメってあんまり詳しくないんだけど、発見してもいきなり近寄ったりしちゃダメなんだっけ?
でも人懐っこいとかいう話も聞いたことある。
まぁ日本に居た時に聞いた話を参考にしすぎても仕方ない。当たって砕けよう。
『遠目』がなくとも視認できる距離まで接近する。
あちらもこっちには気付いたようだが、特にリアクションはない。
近付こうとも逃げようともしない。あんまりこっちに興味ないのかな?
驚かせないように、スクリューは作動させずに生活魔法操作でゆっくり近付いていく。
へぇ。近くに来ると結構大きいな。2~3メートルくらいはありそうか。
確かウミガメって元々大きめの生物なんだっけ。地球でも2メートルくらいのウミガメが確認されてた記憶が。
ウミガメはこちらをずっと見たままだが、ゆっくりと水を扇いでその場に留まっている。
手が届く距離になっても動かないので手を伸ばして頭を撫でてみる。
首を少し傾けて目を細めるウミガメさん。え、なにこの人可愛いんですけど。
――――!
頭を撫でたら、ウミガメから耳では聞き取れない音が発せされたのを探知した。
これって超音波か?
警戒心や警告みたいな色は感じないな。
ん~、あえてこの音の説明をするとするなら……、好奇心の発露?
音でコミュニケーションが取れるなら、音魔法を試してみよう。
(初めましてウミガメさん。俺はトーマ。この辺には今日初めて来たんだよ)
話しかけるとウミガメさんからも音が返ってくる。興味を示してくれているみたいだ。
(ウミガメさん。俺は今海の底で作業してたんだけど、ウミガメさんもそこまで来てみるかい?)
俺の問いかけに、少し不快感を伴った音が返される。
これは拒否されたってことかな? もしかしたら深海まで潜るのは難しいのかも。
(了解だ。じゃあ今も海底で待っててくれてる俺の仲間を紹介してもいいかな? 会ってくれるかい?)
今度は好意的っぽい音が返ってきた。どうやらシンに会ってくれるらしい。
ウミガメさんにここで待っていて欲しいと伝えると、同じ音が返された。恐らく了承ってことかな。
今度はスクリューも総動員して全力でシンの元に戻る。
(原生生物と接触できた。でもあまり深いところまでは潜れないらしいんだ。
シンにも会ってくれそうだから、釘は一旦ここにおいて、俺と一緒に1度浮上してくれないか?)
シンが首肯するのを確認して、2人で海面に向かって急浮上していく。
これスキルがなかったらブラックアウトとかするんだろうなぁ。そもそもスキルなしじゃこの深さまで潜れないけど。
ウミガメさんの元に戻る。
シンの姿を見たウミガメさんは興味津々の様子で、好意的な音を連発している。
それにしても、これって音魔法なのかな?
それとも人の耳には知覚出来ない音域ってだけの、普通の鳴き声なのかなぁ。
(コイツはシン。俺の仲間だよ。宜しくしてやってくれ)
シンを紹介すると、手が触れられる距離までウミガメさんのほうから近付いてきた。
シンが頭を撫でると、嬉しそうな音色の音が短く連続して発せられている。何だこの人可愛いんですけど。
ナデナデしたり一緒に泳いだりして遊ぶ。
肌の質感はさすがの爬虫類肌をしていて、思ったよりも柔らかい。
その分なのか甲羅はかなり硬い感触で、それなりに高い防御性能を発揮しそうな感じだ。
さてと、せっかく仲良くなれたので残念ではあるけど、俺たちもやるべきことがあるからな。
ただ仲良くなっただけなら、そろそろさよならしないといけない。
俺たちと一緒に来てくれるかどうか確認しないと。
(ウミガメさん。俺たちはここからちょっと離れた場所にある陸地で生活してるんだよ。ウミガメさんさえ良ければ、そこで俺たちと一緒に暮らしてみないか?)
完全にナンパである。
嫁には自分からアプローチしないくせに、動物には積極的にアプローチを仕掛ける俺。
俺の言葉を聞いたウミガメさんは、短い音を発した後に俺たちから離れ始めた。
ん、交渉決裂か。まぁしょうがない。ウミガメさんにはウミガメさんの生き方がある。
なんて思いながら離れていくウミガメさんを見送っていたのだが、ある程度離れたウミガメさんは首だけ伸ばして振り返り、こちらに向かって短く何度も音を飛ばしてくる。
なんだろ? お別れの挨拶ってワケじゃなさそうだけど。
(もしかして、付いて来いって言ってる? どこかに案内してくれるのか?)
俺の言葉を聞いたウミガメさんは、まるでその通りだと言わんばかりに短く音を発して、また前に泳ぎ始めた。
付いて来いと言うなら行かないという選択肢はないな。シンと2人で頷き合って、ウミガメさんの後ろに付いていく。
確か地球のウミガメってあまり早く泳げないという話だった気がするのだが、このウミガメさんはゆったりした動きなのに結構早い。
これはあれか? 『環境適応:小』で水の抵抗を減らしているからこのスピードが出せるんだろうか?
まぁ亀にしては早く感じる、というくらいの早さなので、魔物に追われたらすぐに追いつかれちゃうんだろうなとは思うけど。
体感で2時間くらい泳いでいると、海底が近づいてきている事に気付く。
水深が浅くなってきている? ということは、近くに陸があるのか? ヴェルトーガとは全くの別方向なんだけど。
砂漠と違って、海はかなり積極的に魔物が襲い掛かってくる。その度に返り討ちにしているのだが、ウミガメさんは魔物の死体に興味を示さないようだ。肉食はしないのかな? ウミガメってなに食べるんだろ。
更に2時間前後進み続け、日が大分傾いてきた頃、前方に陸地が見えてきた。
それほど大きいな陸地には見えない。恐らくは小さな島なんだろう。
あそこがウミガメハウスなのかな?
ふふふ、今日初めて会った相手の家に御呼ばれされてしまったぜ。
音魔法でシンに確認を取る。
シンが頷くのを待ってから、ウミガメの居る場所まで急ぐ。
ウミガメってあんまり詳しくないんだけど、発見してもいきなり近寄ったりしちゃダメなんだっけ?
でも人懐っこいとかいう話も聞いたことある。
まぁ日本に居た時に聞いた話を参考にしすぎても仕方ない。当たって砕けよう。
『遠目』がなくとも視認できる距離まで接近する。
あちらもこっちには気付いたようだが、特にリアクションはない。
近付こうとも逃げようともしない。あんまりこっちに興味ないのかな?
驚かせないように、スクリューは作動させずに生活魔法操作でゆっくり近付いていく。
へぇ。近くに来ると結構大きいな。2~3メートルくらいはありそうか。
確かウミガメって元々大きめの生物なんだっけ。地球でも2メートルくらいのウミガメが確認されてた記憶が。
ウミガメはこちらをずっと見たままだが、ゆっくりと水を扇いでその場に留まっている。
手が届く距離になっても動かないので手を伸ばして頭を撫でてみる。
首を少し傾けて目を細めるウミガメさん。え、なにこの人可愛いんですけど。
――――!
頭を撫でたら、ウミガメから耳では聞き取れない音が発せされたのを探知した。
これって超音波か?
警戒心や警告みたいな色は感じないな。
ん~、あえてこの音の説明をするとするなら……、好奇心の発露?
音でコミュニケーションが取れるなら、音魔法を試してみよう。
(初めましてウミガメさん。俺はトーマ。この辺には今日初めて来たんだよ)
話しかけるとウミガメさんからも音が返ってくる。興味を示してくれているみたいだ。
(ウミガメさん。俺は今海の底で作業してたんだけど、ウミガメさんもそこまで来てみるかい?)
俺の問いかけに、少し不快感を伴った音が返される。
これは拒否されたってことかな? もしかしたら深海まで潜るのは難しいのかも。
(了解だ。じゃあ今も海底で待っててくれてる俺の仲間を紹介してもいいかな? 会ってくれるかい?)
今度は好意的っぽい音が返ってきた。どうやらシンに会ってくれるらしい。
ウミガメさんにここで待っていて欲しいと伝えると、同じ音が返された。恐らく了承ってことかな。
今度はスクリューも総動員して全力でシンの元に戻る。
(原生生物と接触できた。でもあまり深いところまでは潜れないらしいんだ。
シンにも会ってくれそうだから、釘は一旦ここにおいて、俺と一緒に1度浮上してくれないか?)
シンが首肯するのを確認して、2人で海面に向かって急浮上していく。
これスキルがなかったらブラックアウトとかするんだろうなぁ。そもそもスキルなしじゃこの深さまで潜れないけど。
ウミガメさんの元に戻る。
シンの姿を見たウミガメさんは興味津々の様子で、好意的な音を連発している。
それにしても、これって音魔法なのかな?
それとも人の耳には知覚出来ない音域ってだけの、普通の鳴き声なのかなぁ。
(コイツはシン。俺の仲間だよ。宜しくしてやってくれ)
シンを紹介すると、手が触れられる距離までウミガメさんのほうから近付いてきた。
シンが頭を撫でると、嬉しそうな音色の音が短く連続して発せられている。何だこの人可愛いんですけど。
ナデナデしたり一緒に泳いだりして遊ぶ。
肌の質感はさすがの爬虫類肌をしていて、思ったよりも柔らかい。
その分なのか甲羅はかなり硬い感触で、それなりに高い防御性能を発揮しそうな感じだ。
さてと、せっかく仲良くなれたので残念ではあるけど、俺たちもやるべきことがあるからな。
ただ仲良くなっただけなら、そろそろさよならしないといけない。
俺たちと一緒に来てくれるかどうか確認しないと。
(ウミガメさん。俺たちはここからちょっと離れた場所にある陸地で生活してるんだよ。ウミガメさんさえ良ければ、そこで俺たちと一緒に暮らしてみないか?)
完全にナンパである。
嫁には自分からアプローチしないくせに、動物には積極的にアプローチを仕掛ける俺。
俺の言葉を聞いたウミガメさんは、短い音を発した後に俺たちから離れ始めた。
ん、交渉決裂か。まぁしょうがない。ウミガメさんにはウミガメさんの生き方がある。
なんて思いながら離れていくウミガメさんを見送っていたのだが、ある程度離れたウミガメさんは首だけ伸ばして振り返り、こちらに向かって短く何度も音を飛ばしてくる。
なんだろ? お別れの挨拶ってワケじゃなさそうだけど。
(もしかして、付いて来いって言ってる? どこかに案内してくれるのか?)
俺の言葉を聞いたウミガメさんは、まるでその通りだと言わんばかりに短く音を発して、また前に泳ぎ始めた。
付いて来いと言うなら行かないという選択肢はないな。シンと2人で頷き合って、ウミガメさんの後ろに付いていく。
確か地球のウミガメってあまり早く泳げないという話だった気がするのだが、このウミガメさんはゆったりした動きなのに結構早い。
これはあれか? 『環境適応:小』で水の抵抗を減らしているからこのスピードが出せるんだろうか?
まぁ亀にしては早く感じる、というくらいの早さなので、魔物に追われたらすぐに追いつかれちゃうんだろうなとは思うけど。
体感で2時間くらい泳いでいると、海底が近づいてきている事に気付く。
水深が浅くなってきている? ということは、近くに陸があるのか? ヴェルトーガとは全くの別方向なんだけど。
砂漠と違って、海はかなり積極的に魔物が襲い掛かってくる。その度に返り討ちにしているのだが、ウミガメさんは魔物の死体に興味を示さないようだ。肉食はしないのかな? ウミガメってなに食べるんだろ。
更に2時間前後進み続け、日が大分傾いてきた頃、前方に陸地が見えてきた。
それほど大きいな陸地には見えない。恐らくは小さな島なんだろう。
あそこがウミガメハウスなのかな?
ふふふ、今日初めて会った相手の家に御呼ばれされてしまったぜ。
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