異世界で目指せハーレム生活! でも仲間のほうがモテモテです

りっち

文字の大きさ
437 / 580
10章 壁外世界

397 暁と透月

しおりを挟む
「トーマ。待たせちまったがダガーが完成したぜ。受け取ってくれ」


 釘打ちを始めて3日も経った頃、夕食後にマーサに2本の短刀を渡される。

 燃えるような赤い刀身をした短刀と、透き通るような薄青い刀身をした短刀だった。


「今のところ最強の素材はユリバファルゴアだからな。エリアキーパーの素材を使って装備品を1つも作らないってぇのは、鍛冶職人としての矜持が許さねぇってもんだぜ。
 ユリバファルゴアの鱗から削りだした2本のカタナって奴だ。残念ながら頭部の素材は跡形もねぇしよ」


 頭部素材はなー……。流石にそんなもの気にしてられる余裕は全くなかった。
 素材と言えば、地中深くにも相当量の胴体を斬り捨ててきちまったんだよなぁ……。

 それでも有り余ってるけどさ。


「ん? 2本ともユリバファルゴアの鱗から削りだした? ならなんで2本の色が違ってるんだよ?」

「あっはっは! 正直わかんねぇ!
 2本を作り上げたときは普通だったんだがよ? 心核を使ったら色が変わっちまったんだよなぁ」


 へぇ。流石は謎の多い素材だわ。
 心核を使うことで性質が変化する、か。ありうる話だ。鈴音を見てると納得してしまう。


「つーわけで、今回も私は名付けてねぇんだ。鈴音の例もあるしよ。こいつらの名前はトーマが決めてくれよ」


 赤と青の対の短刀かぁ。


「じゃあ……。赤い方を『あかつき』。青い方を『透月とおつき』にしようかな」


 名前を付けた瞬間、2本から魔力の波が放たれたように感じた。
 気に入って、くれたのかな?


「うん。暁は夜明けを意味する言葉だし、『炎魔法』使いのアサヒを連想するにはピッタリの赤い刃だよね。
 透月は十月とかけたのかな? 神無月だもんね。それに『氷魔法』使いのカンナにピッタリの青い刃だし」

「ハルさん、お宅はエスパーか何かですか? っていうか口に出すの止めてもらえませんかねぇ!?」


 嫁の名前を武器につけるなんて暴露されたら堪ったもんじゃねぇんだよ!

 鈴音があるからもう手遅れなんだけどさぁ!


「あっはっはっはっはー! トーマってうちらのこと好きすぎっしょー! 恥ずかしがらなくてもいいんすよー?」

「実力的にも短刀くらいがちょうどいいかしらね?
 ねぇトーマ。ハルの言ってたことが当たってるなら、私達にも持たせてくれないかしら?」

「うるせぇな! 年齢半分の嫁に好きとか、恥ずかしいに決まってんだろが!
 ……たく、ほらよ」


 アサヒに暁を、カンナに透月を差し出す。

 それぞれが触れた瞬間、暁と透月から伝わってくるものがあった。
 この2本は、今完成したのだと。


「その様子だと、トーマも感じたみたいっすね? 手を触れた瞬間、暁が私の深いところと繋がったような感覚を覚えたっすよ」

「私もだわ。透月に魔力を吸われたような気がしたけれど、アサヒが言う通り、繋がったと言った方が正確かも」


 なんだろうな? やっぱり心核武器って特殊な気がする。
 他のみんなの武器も、こんな感覚を持っているんだろうか?


「今さら取り繕っても仕方ないからな。この2本を2人だと思って戦場に連れて行くよ。
 マーサもいつもありがとな。最高の出来栄えだぜ」

「はっ! この2本を完成させたのは私じゃねぇ気もすっけどな。ありがたく礼を受け取っておくぜ」


 鈴音の例もある。この2本にも何らかの魔法効果が付与されていそうだ。
 でも鈴音の威力を考えると、ちょっと気軽に試せないよな。

 ソロ探索のときにでも確かめてみよう。
 武器だけじゃない繋がりを確かめてから、この日は眠りについた。



「……やっぱ心核武器は頭おかしいわ……」


 鈴音の能力は音魔法。なので俺専用武器は生活魔法と親和性が高い。
 そう睨んで試した見た結果、暁は火魔法、透月は熱魔法との相性が抜群に良かった。

 2本とも生活魔法の効果を限界以上に高め、暁は火魔法で刀身に炎を纏うことが出来、透月は熱魔法で氷を纏うことが出来るようだった。

 やべぇ。この世界に存在しないはずの氷魔法使いに、俺もなっちゃったじゃん……。

 性能が有用なのは間違いないので、暇を見て色々考えてみようかな。




「へぇ? 炎魔法と氷魔法を使えるようになっちゃったの? これでトーマがチートを持ってないって説は否定されたね。むしろ2つも持ってることになるじゃないか」

「いやいや、俺の能力は出来た嫁達から賜ったものしかないから。
 でもま、出来る事が増えたのは素直にありがたいかな。
 それじゃ今日も宜しくっと」


 4日目ともなると、俺もシンも完全に作業になってしまって、行きも帰りも普通に撃鉄を使って移動をしてしまった。
 慣れてくると結構快適だったり? まさにロケットスタートって感じで。


 しかし4日も潜っているのに、原生生物が全く見当たらないのはどうしたものか。

 俺たちってスキルのおかげで深海エリアを生身で歩いているけど、『環境適応:小』までしか持っていないはずの原生生物達は、もっと浅い海域に住んでる可能性も少なくない気がするなぁ。
 勿論スキルのおかげで、普通では考えられないような深さにも潜れるかもしれないけど。

 う~ん。音魔法での魔物釣りの最中にも、1度も姿を表してくれないんだよねぇ。


 このまま進んでいけば、いつかエリアキーパーと遭遇する可能性は極めて高い。エリアキーパー相手に逃げ切れる程度の速度を持った生物だと良いんだけどな。

 そんなことを考えながら釘を打ち込み続けていると、遠見を使った先の浅い海域に、1匹のウミガメが泳いでいるのが見えた。
しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

第2の人生は、『男』が希少種の世界で

赤金武蔵
ファンタジー
 日本の高校生、久我一颯(くがいぶき)は、気が付くと見知らぬ土地で、女山賊たちから貞操を奪われる危機に直面していた。  あと一歩で襲われかけた、その時。白銀の鎧を纏った女騎士・ミューレンに救われる。  ミューレンの話から、この世界は地球ではなく、別の世界だということを知る。  しかも──『男』という存在が、超希少な世界だった。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

異世界でただ美しく! 男女比1対5の世界で美形になる事を望んだ俺は戦力外で追い出されましたので自由に生きます!

石のやっさん
ファンタジー
主人公、理人は異世界召喚で異世界ルミナスにクラスごと召喚された。 クラスの人間が、優秀なジョブやスキルを持つなか、理人は『侍』という他に比べてかなり落ちるジョブだった為、魔族討伐メンバーから外され…追い出される事に! だが、これは仕方が無い事だった…彼は戦う事よりも「美しくなる事」を望んでしまったからだ。 だが、ルミナスは男女比1対5の世界なので…まぁ色々起きます。 ※私の書く男女比物が読みたい…そのリクエストに応えてみましたが、中編で終わる可能性は高いです。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

処理中です...