異世界で目指せハーレム生活! でも仲間のほうがモテモテです

りっち

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10章 壁外世界

396 サーチシステム

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「それじゃ始めようか。撃鉄は無しな?」

「頼まれたって御免だよ。なるべく1つ1つの距離を稼いでいこう」


 昨晩のうちに話を詰めて、今日も朝からシンと2人で海の中に潜ることになる。

 サーチの魔導具はブレスレットタイプで、海中でも問題なく作動した。
 そうなると次は、何を目印にすれば良いのかという話になってくる。

 海中には存在しなくて、強度にも信頼があり、大量に使用可能な素材。
 あれ? なんか都合のいい物を、最近大量に入手しませんでしたっけ?


 ということで、海底に沈めるサーチ対象物は、ユリバファルゴアの鱗から作った杭になった。
 杭というか釘のような形状をしており、上部が広くて丸い面になっている。
 リーンセンパイがバラバラにしておいてくれた鱗をストレージでヴェルトーガに持ち込み、リモデリングの杖を使って成型していく。
 
 現在のストレージは1辺が3メートルなので、縦に3つ繋げて約9メートルまで長くする。
 流石にビビリ過ぎかもしれないが、これが無くなると遭難の可能性が大幅に高まるので、なるべく深いところまで差し込んで固定しておきたいんだよね。

 抱き枕くらいの太さの釘とは言え、9メートルにもなったらまぁまぁの重量だ。ストレージにも入らない。
 海中だしキャリーもかけるしスキルもあるしで、1度に持っていく本数は6本ずつの合計12本とすることにした。

 出発前にもヴェルトーガのすぐ近くに1本打ち込んで、早速出発といきますかね。


 スクリューで高速で移動しつつ、一旦水面に上がり、ヴェルトーガが『遠目』を使わなくても間違いなく確認できる場所の海底に、釘を1本差し込む。
 サーチの魔導具を使うと、ヴェルトーガと今打ち込んだ釘の反応が感じられる。

 因みに、魔導具を使用することで、俺が釘の位置を感覚的に把握できる。魔法らしい、ちょっと不思議な感覚だ。


 こまめにサーチを発動させ、ヴェルトーガの釘がギリギリサーチに引っかかる距離を狙って、釘2本を打ち込む。
 
 そしてまた同じ程度に距離を取り、釘を1本打ち込んだ場所と2本打ち込んだ場所が両方サーチに引っかかるギリギリの距離を狙って、今度は3本海底に打ち込んでいく。

 常に2ヶ所の距離をサーチできる場所に打ち込んでいるのは、方角を見失わないためだ。2点を感知できるなら直線距離で進んでいるのが把握できるからな。

 打ち込む数は、1本→2本→3本→1本というように、3本までのサイクルで回していく。打ち込む数が全て1本で統一してあったり、1本→2本のローテーションだと、不測の事態に陥った時に、方角を見失ってしまう危険性があるためだ。
 その分距離は稼ぎにくくなるが、安全には変えられない。

 1度の作業で6ヶ所ほどしか進めないが、帰りは4つのスクリュー全開で帰るので、意外と苦痛には感じない。海底の景色というのも見事なもので、生身で海底を歩けているという奇跡を実感する。


 しっかしなぁ。このサーチシステムを、将来的には船の運航なんかにも役立てたいところだったんだけど、海底に打ち込んでいる以上は難しそうだな。どこかのタイミングで、水上からではサーチが届かない深さになるだろう。もしかしたらもう届かないかもしれない。

 暗視と水中視のおかげで、真っ暗な水の底も全く問題なく進めている。
 これってもう、300メートル以上の深さだよなぁ? マジで水圧感じないし、スクリューを使った急速な上昇も体調に影響する事はなかった。
 こういう部分は、異世界に来て良かったと素直に思えるよな。ちょいちょい魔物が襲ってくるのが玉に瑕だけど。


 ん? ふと思ったんだけど、ザルトワシルドアって、水中で遭遇したらどうなるんだろうな?
 確か海底に潜んでるとか言われてて、その瞳で船を沈めるとかいうエリアキーパーらしいけど、このままだったら普通にエンカウントしかねないな。スクリューで逃げ切れれば良いんだけど。

 海ってどういう扱いになってるんだろうなぁ。他の地域と同じく、1エリア分だけ海だったりするんだろうか? それとも海エリアは他と比べて巨大だったりするのかなぁ。


 3往復くらいするとかなりの距離を進めたみたいだ。
 歩いている海底は光なんて一切なくて、泳いでいる生物も大型化し始めている。
 襲い掛かってくるのは全て魔物だと判断して、返り討ちにしている。


 地球にいた頃って、人類がいまだ到達していないという海底にロマンを感じていたけれど、暗視のおかげで視界は真昼間と変わらないため、ただ変な生き物が泳いでいる普通の海にしか感じられない。
 その生き物が結構バリエーションがあって飽きない。海底散歩楽しいわ。


 海中だとあまり会話が弾まないんだよな。普通に話すと声がちょっと聞こえにくいし、殆ど音のない海底世界で大声で会話をしてしまうと、どうでもいい魔物がわんさか寄ってくるから始末に負えない。
 調査のために音魔法をばら撒いている俺が言っていいことじゃないんだけどね?

 希望的観測でしかないが、魔力に反応するのは魔物しか居ないはず。なぜなら魔物じゃない限り、祝福の儀を受けなければ『魔力探知』が使えないからだ。
 原生生物と接触するには、魔力以外の方法で引き付ける必要があるんだよな。

 そう、例えば大量の魔物の死体とかで。

 俺たちよりも餌を優先する生物は魔物じゃないはずだ。物凄く雑な考察だという自覚はあるが。


 流石に初日で当たりを引くことはできず、この日は釘を打ち込み続けただけの日だった。
 日没までひたすら海に潜っていたのに、体には何の影響もない。

 明日は何かに出会えるといいなぁ。
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