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10章 壁外世界
409 vsザルトワシルドア④ 奈落へ
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数十秒に1度、巨大な爆発が起こる。
俺とシン、交互にザルトワシルドアの投影体を散らす時に起こす衝撃波だ。
海中に身を浸した様態でこの衝撃波を受けるのは結構辛いが、最高級の装備と、自然治癒強化とリペアの重複効果でなんとか耐え切れている。
交互に水面をぶっ叩く俺とシン。なんか餅つきみたいだな。
ザルトワシルドアが今のところ特に行動を起こさないのは、俺たちの魔力切れを待っているからだと思う。
これだけ魔法効果の乗った打撃を繰り返しているんだ。間もなく魔力切れを起こすと判断するのは不思議ではない。
投影体に気付かず、無駄に魔力を消費して足掻く愚かな獲物だとでも思ってるのかもしれない。
今のうちに好きなだけ調子乗ってやがれ。
「とんでもない罠だったね。逃げる獲物の前に投影体を出現させることで、まさか本体と遠ざかっているのにどんどん削られ続けていくなんて、ねぇっ!」
水面が爆発する。
「マジでとんでもねぇよな。あいつ、俺たちがあれだけの距離を降りてくるのを待ってたんだぜ? 逃げ切らないから戦う覚悟を決めたってのに、まさか偽物と戦わされてたとはなぁ。
スクリューを開発してなかったら、無意味な消耗戦を強いられて、そのまま魔力が尽きて嬲り殺しにされるしかなかった、かなっ!」
海が爆ぜる。
「ザルトワシルドアの誤算は、僕たちの浮上速度と魔力回復速度だったってわけだね。
魔力が回復したら決戦に向かうわけだ。そしたらもう戻れないよ? 勝つ覚悟は出来てる? かなっ!」
ウォーハンマーが水面を叩く。
「どっちにしても、こいつを倒さない限り、もう海には入れなくなっちまうからな。
ウミガメさんたちとも遊べなくなるし、別荘でも暮らしにくくなっちまう。そんなのはごめんだ、なっ!」
ガントレットが海を殴る。
交互に投影体を散らしながら、ザルトワシルドアとの決戦に備えて情報を共有していく。
「本体の能力は未知数だが、投影体の能力は水の圧縮だ。海水を固めて発射する。基本的にそれしかない。
もう慣れたろ? あの攻撃を回避するのは」
「そうだね。あの程度なら問題ないと思う。でも僕たちが本体に向かっている事に気付いたら、確実に妨害されるだろう。攻撃が激化するのは覚悟すべきかな」
「はっ! こちとらシューティングゲーム全盛期の人間だぜ。弾幕ゲーだってそれなりに経験してきたからな。
自機の操作にも慣れたし、今さらあの程度の弾幕なんざ屁でもねぇよ」
「何言ってるのかはさっぱりわからないけど、自信があるのだけは伝わってきたよ。
魔力の方はどうかな? そろそろいけそう?」
「ああ、ほぼ全快だ。これ以上は大差ないだろ。行こう。
次に俺がガントレットで投影体を吹っ飛ばしたら出発だ。奈落の底まで突っ切るぞ」
「了解。ウォーハンマーは返すね。
本体が投影体と同じ能力とは考えにくい。魔力還元が起こるまで、全力でいこう」
「ああ、俺たちならいけるさ。
さぁ投影体が姿を現してきたぜ。出発の合図だ。いっくぜぇ!」
水面が爆発する。それが俺たちのスタートの合図だ。
ゴールは奈落の底のザルトワシルドア。自由落下にスクリューの加速を加えてかっ飛ばせ!
初めて見た時は恐怖しか感じなかった奈落の底に、最高速度で突っ込んでいく。
はっ。この先に何があるのか、この先には終わりがあるのか、そんなことばかり考えて勝手にビビッてたけど、この先に確実にザルトワシルドアが居ると思ったら、そこはもう未知の場所じゃなくて目標地点でしかなくなったってことか。
目の前にザルトワシルドアの投影体が現れる。今度は急速潜行しているというのに目の前に現れる。
やっぱりコイツは相手にするだけ無駄のようだ。
本体は安全なところに隠れて敵を自動で攻撃し続ける便利な能力みたいだが、欠点もなくはないらしい。
攻撃手段が単調な上に、敵の後方を取ることが出来ない模様。
雨あられと弾幕が張られる。でももう流石に飽きたぜザルトワシルドアさんよ。
いくら無限の弾幕攻撃と言えど、人間慣れたら躱せちゃうもんなんだよなぁ。
自機の判定は分かりやすい。俺の体そのものが当たり判定だ。
細かい挙動にも慣れてきた。
スクリューは常に潜行し続けろ。
細かい姿勢制御で弾幕を回避しろ。
1発アウトの残機無しの弾幕シューティングとかクソゲーすぎるけど、あれだけ練習時間が取れた後なら、むしろ当たる方が失礼ってもんだ。
顔の横を不可視の弾丸が通り過ぎる。
回避は最小限。潜行を優先。弾幕回避なんてついでの作業だ。俺たちの障害になんてなりえない。
圧縮弾が通り過ぎるだけで、恐らく強力な水流も生まれているんだろうな。
それを全く感じさせない、『環境適応:大』のおかげで、自分の制御だけに集中できる。
水圧も風圧も感じず、実弾だけ良ければオッケーなんて、マジでシューティングゲームじゃんか。
回避が楽しくなってくる。
どこまで動きを小さく出来るか、無駄をそぎ落としていく。
回避行動は小さければ小さいほどいい。
弾幕は撃たれる前に軌道を計算し、常に先を考えて回避ルートを構築しろ。
自機狙いなんてむしろご褒美だ。
自分の動きで相手の動きを逆にコントロールしてしまえばいい。
はは! ははは! あはははははーー!
なんだこれ! 超楽しい! ボス前の高速ステージかよ!
当たり判定や挙動にも一切のストレスがない回避ゲーとか面白すぎだろおお!?
だけど楽しい時間というのはあっという間に過ぎ去ってしまう。
投影体との距離が縮まる。これ以上先がないってことだ。
つまり、ゴールに到達した模様。
投影体とは別に居る、ザルトワシルドアに向かって閃空を放つ。
凄まじい速さで閃空を回避したザルトワシルドアは、1度巨大な瞳を閉じる。
すると投影体が水中に解けていった。
はるばる奈落の底までやってきたんだ。
胸焼けするほど付き合ってもらうぜ、ザルトワシルドアさんよぉ!
俺とシン、交互にザルトワシルドアの投影体を散らす時に起こす衝撃波だ。
海中に身を浸した様態でこの衝撃波を受けるのは結構辛いが、最高級の装備と、自然治癒強化とリペアの重複効果でなんとか耐え切れている。
交互に水面をぶっ叩く俺とシン。なんか餅つきみたいだな。
ザルトワシルドアが今のところ特に行動を起こさないのは、俺たちの魔力切れを待っているからだと思う。
これだけ魔法効果の乗った打撃を繰り返しているんだ。間もなく魔力切れを起こすと判断するのは不思議ではない。
投影体に気付かず、無駄に魔力を消費して足掻く愚かな獲物だとでも思ってるのかもしれない。
今のうちに好きなだけ調子乗ってやがれ。
「とんでもない罠だったね。逃げる獲物の前に投影体を出現させることで、まさか本体と遠ざかっているのにどんどん削られ続けていくなんて、ねぇっ!」
水面が爆発する。
「マジでとんでもねぇよな。あいつ、俺たちがあれだけの距離を降りてくるのを待ってたんだぜ? 逃げ切らないから戦う覚悟を決めたってのに、まさか偽物と戦わされてたとはなぁ。
スクリューを開発してなかったら、無意味な消耗戦を強いられて、そのまま魔力が尽きて嬲り殺しにされるしかなかった、かなっ!」
海が爆ぜる。
「ザルトワシルドアの誤算は、僕たちの浮上速度と魔力回復速度だったってわけだね。
魔力が回復したら決戦に向かうわけだ。そしたらもう戻れないよ? 勝つ覚悟は出来てる? かなっ!」
ウォーハンマーが水面を叩く。
「どっちにしても、こいつを倒さない限り、もう海には入れなくなっちまうからな。
ウミガメさんたちとも遊べなくなるし、別荘でも暮らしにくくなっちまう。そんなのはごめんだ、なっ!」
ガントレットが海を殴る。
交互に投影体を散らしながら、ザルトワシルドアとの決戦に備えて情報を共有していく。
「本体の能力は未知数だが、投影体の能力は水の圧縮だ。海水を固めて発射する。基本的にそれしかない。
もう慣れたろ? あの攻撃を回避するのは」
「そうだね。あの程度なら問題ないと思う。でも僕たちが本体に向かっている事に気付いたら、確実に妨害されるだろう。攻撃が激化するのは覚悟すべきかな」
「はっ! こちとらシューティングゲーム全盛期の人間だぜ。弾幕ゲーだってそれなりに経験してきたからな。
自機の操作にも慣れたし、今さらあの程度の弾幕なんざ屁でもねぇよ」
「何言ってるのかはさっぱりわからないけど、自信があるのだけは伝わってきたよ。
魔力の方はどうかな? そろそろいけそう?」
「ああ、ほぼ全快だ。これ以上は大差ないだろ。行こう。
次に俺がガントレットで投影体を吹っ飛ばしたら出発だ。奈落の底まで突っ切るぞ」
「了解。ウォーハンマーは返すね。
本体が投影体と同じ能力とは考えにくい。魔力還元が起こるまで、全力でいこう」
「ああ、俺たちならいけるさ。
さぁ投影体が姿を現してきたぜ。出発の合図だ。いっくぜぇ!」
水面が爆発する。それが俺たちのスタートの合図だ。
ゴールは奈落の底のザルトワシルドア。自由落下にスクリューの加速を加えてかっ飛ばせ!
初めて見た時は恐怖しか感じなかった奈落の底に、最高速度で突っ込んでいく。
はっ。この先に何があるのか、この先には終わりがあるのか、そんなことばかり考えて勝手にビビッてたけど、この先に確実にザルトワシルドアが居ると思ったら、そこはもう未知の場所じゃなくて目標地点でしかなくなったってことか。
目の前にザルトワシルドアの投影体が現れる。今度は急速潜行しているというのに目の前に現れる。
やっぱりコイツは相手にするだけ無駄のようだ。
本体は安全なところに隠れて敵を自動で攻撃し続ける便利な能力みたいだが、欠点もなくはないらしい。
攻撃手段が単調な上に、敵の後方を取ることが出来ない模様。
雨あられと弾幕が張られる。でももう流石に飽きたぜザルトワシルドアさんよ。
いくら無限の弾幕攻撃と言えど、人間慣れたら躱せちゃうもんなんだよなぁ。
自機の判定は分かりやすい。俺の体そのものが当たり判定だ。
細かい挙動にも慣れてきた。
スクリューは常に潜行し続けろ。
細かい姿勢制御で弾幕を回避しろ。
1発アウトの残機無しの弾幕シューティングとかクソゲーすぎるけど、あれだけ練習時間が取れた後なら、むしろ当たる方が失礼ってもんだ。
顔の横を不可視の弾丸が通り過ぎる。
回避は最小限。潜行を優先。弾幕回避なんてついでの作業だ。俺たちの障害になんてなりえない。
圧縮弾が通り過ぎるだけで、恐らく強力な水流も生まれているんだろうな。
それを全く感じさせない、『環境適応:大』のおかげで、自分の制御だけに集中できる。
水圧も風圧も感じず、実弾だけ良ければオッケーなんて、マジでシューティングゲームじゃんか。
回避が楽しくなってくる。
どこまで動きを小さく出来るか、無駄をそぎ落としていく。
回避行動は小さければ小さいほどいい。
弾幕は撃たれる前に軌道を計算し、常に先を考えて回避ルートを構築しろ。
自機狙いなんてむしろご褒美だ。
自分の動きで相手の動きを逆にコントロールしてしまえばいい。
はは! ははは! あはははははーー!
なんだこれ! 超楽しい! ボス前の高速ステージかよ!
当たり判定や挙動にも一切のストレスがない回避ゲーとか面白すぎだろおお!?
だけど楽しい時間というのはあっという間に過ぎ去ってしまう。
投影体との距離が縮まる。これ以上先がないってことだ。
つまり、ゴールに到達した模様。
投影体とは別に居る、ザルトワシルドアに向かって閃空を放つ。
凄まじい速さで閃空を回避したザルトワシルドアは、1度巨大な瞳を閉じる。
すると投影体が水中に解けていった。
はるばる奈落の底までやってきたんだ。
胸焼けするほど付き合ってもらうぜ、ザルトワシルドアさんよぉ!
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