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11章 新たな都市の建設
434 連鎖を止める
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「あっと、非戦闘員同行制度は、健康な人の場合は最低でも20歳以上からの適用にしてください。戦える者が使ったり、分別のつかない子供を迷宮に連れて行くことのないように」
「むぅ? なぜだ? スキルを早期取得できる事には利点しかなかろう?
むしろ若い頃からスキルを取得させて鍛え上げたほうが良かろうが」
「それは大人の意見ですよ。自分が何もしなくてもスキルが得られた人間は、その後努力をするのが難しくなります。そしてそんな人間を周囲は不公平だと言って、正当に評価してくれなくなるでしょうね。
というかカルネジア家にも居たでしょう? 生まれ持った才能に胡坐をかいて碌に腕を磨かず、結果的に7等級冒険者如きに敗れ去った獅子の獣人が。
才能至上主義を否定する気はないけど、いい加減現実見ろよブルガーゾ。自分の意思で手に入れた力じゃなければ、この世界じゃ役に立たねぇんだよ」
「――――正当に評価されなくなる……。それは、マーサルシリルのことを申し上げているのでしょうか」
ここで否定しても仕方ないか。
というか否定すべきじゃない。ミルズレンダのためにも、俺達のためにも。
「その通りです。ミルズレンダの工房に生まれたマーサルシリルは、まだ物心もつかない赤子の頃から、祖父であったローサルグインの手によって迷宮に連れて行かれていました。
その結果マーサルシリルは物心つく前には、職人に必要な全てのスキルを取得に成功しました。その結果彼女に待っていたのは、ミルズレンダで迫害される日々。
こんなくだらない話、繰り返すわけには参りませんよ」
「……なんなのだ? いったいなんなのだその話は!? なぜ才能あるものが虐げられなければならんのだ!?
ミルズレンダの職人達は、いったいなにを考えているのだ!?」
「ブルガーゾ、っていうかカルネジア家はさぁ。獅子の獣人っていう恵まれた種族に生まれついたせいか、弱者の気持ちってもんが全く理解できてないんだよな。
おかげで危うくボールクローグを滅亡させて、その勢いで王国まで滅ぼしかけたってのに、未だに弱者の脅威ってものに対する認識が甘すぎるぜ。
人ってのは団結もするし、協力することも、思考することも出来る。弱者が手を取り合って、異邦人という手段を手に入れた結果、カルネジア家の戦力を大きく上回って滅ぼされかけたんだろうがよ。
いつまでカルネジア家が好き勝手振舞えると思ってんだ? 現実見ろって言ってんだろ。
スキルが浸透すればするほど、獅子の獣人っていう種族的優位が失われていってるって事に、いい加減気付けよ」
カルネジア家は遠くない未来に滅びるかもしれないなぁ。
現時点だってボールクローグの住民が支持するのをやめたら、カルネジア家の戦力で住民を鎮圧するのは無理だろう。
「弱者の力で虐げられる強者、ですか。なんともおかしな話に聞こえますが、実際にはおかしくもなんともないのですよね。
人というのは1人では生きられる生き物ですから。それは王であっても、我ら精霊家当主であっても同じこと。たった1人の力でこの世界を生き抜くことなんて出来ないのですから。
と言いたいのですけど、トーマさんを見ていると1人でも余裕で生き抜いていきそうで……」
「そこでオチをつけなくていいと思うけど、実際トーマさんは1人でも生きていけそうなんだよねぇ。1人じゃ出来ないことって何かあるの?
エリアキーパーを打倒する戦闘力、この世界の職人を超える魔導具製作能力、生活魔法でどんな環境でも生活できそうだし」
「はは。結果論過ぎますよ。エリアキーパーを打倒できるようになったのも、魔導具製作能力を持てたのも、生活魔法を覚えられたのも、全て俺を助けてくれる誰かが居たからです。
俺はこの世界にきて15日以上ずっと迷宮に篭っていたけど、その間ずっと1階層で戦ってたんですよ? 才能なんてモノはありませんし、1人で生きてこれたとはとてもとても。
俺は関わった人みんなに強くしてもらって、今こうして1人でも生きていける強さを身につけたってだけです。それは俺と敵対した相手のことも含まれてますよ。それこそハロイツァとの戦いが、異風の旋律の成長のきっかけだったと思って間違いないでしょうし」
ハロイツァとの戦い。ヴェルトーガでの戦闘。グリーンドラゴンとの遭遇。ミルズレンダでの襲撃。ボールクローグでの騒動。ランドビカミウリの討伐から始まったエリアキーパーとの戦い。全部繋がってる。1つでも順番が違っていれば間違いなく死んでいた。
リンカーズは才能なんかよりも、スキル取得のほうがずっと重要だ。
自分自身の成長の意志こそが、何よりも重視される世界なんだ。
だからこそ、判断もつかない子供たちにスキル取得を強制させるわけには、絶対にいかないんだ。
「王国だって、異邦人に頼らずに発展しようとしているでしょう? 子供の内から強制的に迷宮に連れ出すというのは、この王国の発展を全部異邦人に任せきりにして、自分達の意思を放棄する行為に他なりません。
この世界は本人の意思次第でどこまでも強くなれるし、どこにだっていける世界なんです。その意思を鍛える場を奪うような事は看過できません」
「ふむ……。
与えすぎることは、かえって可能性の芽を摘む行為であるということかの。
トーマの言い分は理解した。迷宮への非戦闘員同行制度は20歳を下限としようぞ。勿論身体に何らかの瑕疵がある場合はその限りではないがな」
強くてニューゲームだって悪くはないだろうけどな。この世界にはマッチしてないんだよ。
だってエリアキーパーって、効果大スキルを取っても、触れることすら難しい相手なんだからな。
スキルの先の強さを身に付けないと、この世界で生きていくのは難しい。
先天的に与えられたスキルなんて、この世界じゃ役に立ちはしない。
どんなチートを持っていたって、エリアキーパーには通用しないんだからな。
「むぅ? なぜだ? スキルを早期取得できる事には利点しかなかろう?
むしろ若い頃からスキルを取得させて鍛え上げたほうが良かろうが」
「それは大人の意見ですよ。自分が何もしなくてもスキルが得られた人間は、その後努力をするのが難しくなります。そしてそんな人間を周囲は不公平だと言って、正当に評価してくれなくなるでしょうね。
というかカルネジア家にも居たでしょう? 生まれ持った才能に胡坐をかいて碌に腕を磨かず、結果的に7等級冒険者如きに敗れ去った獅子の獣人が。
才能至上主義を否定する気はないけど、いい加減現実見ろよブルガーゾ。自分の意思で手に入れた力じゃなければ、この世界じゃ役に立たねぇんだよ」
「――――正当に評価されなくなる……。それは、マーサルシリルのことを申し上げているのでしょうか」
ここで否定しても仕方ないか。
というか否定すべきじゃない。ミルズレンダのためにも、俺達のためにも。
「その通りです。ミルズレンダの工房に生まれたマーサルシリルは、まだ物心もつかない赤子の頃から、祖父であったローサルグインの手によって迷宮に連れて行かれていました。
その結果マーサルシリルは物心つく前には、職人に必要な全てのスキルを取得に成功しました。その結果彼女に待っていたのは、ミルズレンダで迫害される日々。
こんなくだらない話、繰り返すわけには参りませんよ」
「……なんなのだ? いったいなんなのだその話は!? なぜ才能あるものが虐げられなければならんのだ!?
ミルズレンダの職人達は、いったいなにを考えているのだ!?」
「ブルガーゾ、っていうかカルネジア家はさぁ。獅子の獣人っていう恵まれた種族に生まれついたせいか、弱者の気持ちってもんが全く理解できてないんだよな。
おかげで危うくボールクローグを滅亡させて、その勢いで王国まで滅ぼしかけたってのに、未だに弱者の脅威ってものに対する認識が甘すぎるぜ。
人ってのは団結もするし、協力することも、思考することも出来る。弱者が手を取り合って、異邦人という手段を手に入れた結果、カルネジア家の戦力を大きく上回って滅ぼされかけたんだろうがよ。
いつまでカルネジア家が好き勝手振舞えると思ってんだ? 現実見ろって言ってんだろ。
スキルが浸透すればするほど、獅子の獣人っていう種族的優位が失われていってるって事に、いい加減気付けよ」
カルネジア家は遠くない未来に滅びるかもしれないなぁ。
現時点だってボールクローグの住民が支持するのをやめたら、カルネジア家の戦力で住民を鎮圧するのは無理だろう。
「弱者の力で虐げられる強者、ですか。なんともおかしな話に聞こえますが、実際にはおかしくもなんともないのですよね。
人というのは1人では生きられる生き物ですから。それは王であっても、我ら精霊家当主であっても同じこと。たった1人の力でこの世界を生き抜くことなんて出来ないのですから。
と言いたいのですけど、トーマさんを見ていると1人でも余裕で生き抜いていきそうで……」
「そこでオチをつけなくていいと思うけど、実際トーマさんは1人でも生きていけそうなんだよねぇ。1人じゃ出来ないことって何かあるの?
エリアキーパーを打倒する戦闘力、この世界の職人を超える魔導具製作能力、生活魔法でどんな環境でも生活できそうだし」
「はは。結果論過ぎますよ。エリアキーパーを打倒できるようになったのも、魔導具製作能力を持てたのも、生活魔法を覚えられたのも、全て俺を助けてくれる誰かが居たからです。
俺はこの世界にきて15日以上ずっと迷宮に篭っていたけど、その間ずっと1階層で戦ってたんですよ? 才能なんてモノはありませんし、1人で生きてこれたとはとてもとても。
俺は関わった人みんなに強くしてもらって、今こうして1人でも生きていける強さを身につけたってだけです。それは俺と敵対した相手のことも含まれてますよ。それこそハロイツァとの戦いが、異風の旋律の成長のきっかけだったと思って間違いないでしょうし」
ハロイツァとの戦い。ヴェルトーガでの戦闘。グリーンドラゴンとの遭遇。ミルズレンダでの襲撃。ボールクローグでの騒動。ランドビカミウリの討伐から始まったエリアキーパーとの戦い。全部繋がってる。1つでも順番が違っていれば間違いなく死んでいた。
リンカーズは才能なんかよりも、スキル取得のほうがずっと重要だ。
自分自身の成長の意志こそが、何よりも重視される世界なんだ。
だからこそ、判断もつかない子供たちにスキル取得を強制させるわけには、絶対にいかないんだ。
「王国だって、異邦人に頼らずに発展しようとしているでしょう? 子供の内から強制的に迷宮に連れ出すというのは、この王国の発展を全部異邦人に任せきりにして、自分達の意思を放棄する行為に他なりません。
この世界は本人の意思次第でどこまでも強くなれるし、どこにだっていける世界なんです。その意思を鍛える場を奪うような事は看過できません」
「ふむ……。
与えすぎることは、かえって可能性の芽を摘む行為であるということかの。
トーマの言い分は理解した。迷宮への非戦闘員同行制度は20歳を下限としようぞ。勿論身体に何らかの瑕疵がある場合はその限りではないがな」
強くてニューゲームだって悪くはないだろうけどな。この世界にはマッチしてないんだよ。
だってエリアキーパーって、効果大スキルを取っても、触れることすら難しい相手なんだからな。
スキルの先の強さを身に付けないと、この世界で生きていくのは難しい。
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どんなチートを持っていたって、エリアキーパーには通用しないんだからな。
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