506 / 580
11章 新たな都市の建設
463 王国民の危機感
しおりを挟む
ファーガロン様の問いかけの意味がよく分からない。分からないので素直に聞くか。
「えーと、質問の意味がよく分かりません。王国に興味があるかないかと言われても、漠然としすぎてて答えようがないと言うか」
「興味がないっていうのは、トーマさんたちの行動に対して僕たち王国民がどう反応しても、別に構わないって感じていないかい? ってことだよ。以前はそんな感じじゃなかったと思うけど」
え、そう?
元々王国民の反応はどうでもいいってスタンスじゃなかったっけ?
「ん~。自分ではあまりよく分からないですね。元々王国とは敵対せずに協力関係を築いていくつもりでしたし、実際そうやってきたと思うんですけど」
「そう、協力関係だ。トーマさんは今まで、王国に対して協力を願うことが少なくなかった。そして今回も一見同じように見えたけど、トーマさんはあっさり引いてしまったよね? あれはどうして?
今までだったらもっと僕達を説得しようとしてたでしょ?」
「ああ、単純な話、協力が得られても得られなくても影響がないからですね。フィールダーとゲイザーを保護できなかったからといって、王国が滅亡したりするわけじゃないですし。
緊急性も重要度も低かったから、すぐに引いただけですよ。ファーガロン様があの場で言われた通り、断られても何も困りませんし」
今までの要望だって、断られたら別の手段探してたと思うよ?
でも今は王国の協力を得られなくても、そんなに問題ない程度の能力が身についてしまったしな。
「多分先ほどの会議で、王とディオーヌ殿は僕と同じ危機感を抱いたと思うんだよね。
トーマさんはもう、王国の助力を必要としていないんじゃないかって。
今までだってトーマさんに頼りきりだった案件は多かったけど、それでも僕たちが力になれることも多かったと思うんだ。でも今日のトーマさんの反応を見たとき、異風の旋律はリヴァーブ王国の支援を一切必要としないほどの存在になってしまったんだと、そんな恐怖を抱いたのさ」
ファーガロン様に言われた事を、改めて自分で考えてみる。
よくよく考えると、確かにもう王国に協力して欲しいって案件は特にないな。
今回の保護区の件だって、王国内がダメだったら別の土地に無理矢理保護区を作ることも出来るし、そもそもやめても何も困らない。動物達だって別に、保護されることを望んでるわけでもないわけだしね。
仮に迷宮の氾濫が起こったとしても、ボールクローグで起こった程度の規模なら、もはや俺1人であっさり鎮圧できてしまえる気がする。刃紋も閃空もあるし。
大体にしてエリアキーパーとの戦いが始まった辺りから、俺って王国に何の支援も受けてなくない?
エリアキーパーの居場所に辿り着いたのも、実際に討伐したのも、ルイナスリーム建設だったり、スキップオーブの提供だったり、俺の方が一方的に支援してるだけの気がするんだけど、その状況で今さら危機感とか言われてもなぁ。
「ふむ。確かに王国の支援がなくても、もう十分生きられそうではありますけど。でもそれって前から言ってませんでした? 最近だって、俺は1人で生きていける気がするとかなんとか言われた記憶あるんですけど」
「あの時は冗談だったけど、今思うと結構前から危うかったかもしれないね。今まではなんだかんだ言って、トーマさんたちも王国と共存していかないと生きていけないと思えたんだ。
でも今日の会議では、トーマさんは本当に王国側の意見はどうでも良さそうにしてただろ? そしてブルガーゾ殿に言ったことも、本気を孕んでいるように聞こえたんだ。実際本気だったんだろうけどさ。
もうトーマさんや異風の旋律のメンバーは、王国の支援なんかなくても、何の問題もなく生きていける強さを手に入れてしまった。じゃあ逆に王国側は? 異風の旋律が居なくなって、リヴァーブ王国は生きていけるのか? って話になっちゃうわけ」
「いやいやいや。そりゃ問題なく王国は存続していけるでしょ。そもそもの話、異邦人はこの世界にとって異物なんですから。居なくなっても全く問題は起こりませんよ」
「……本当に? 本当に異風の旋律が王国を去った場合、リヴァーブ王国はやっていけるのかな?
旋律の運び手の活動だって、君達がいるからこそ成立している。ルイナスリームだってそうだ。君達が去った後、最早あって当然となった様々な要素が瓦解し始めたとしても、不思議ではないだろう?」
「ん~、それは大丈夫じゃないですかねぇ。カンパニーもルイナスリームも、既に俺の手を離れて勝手に動き出してますよ。元々俺が居なくても成立するように目指して作ってましたし。
それに、仮にファーガロン様が仰る通り、王国が俺達無しでは成立しなくなっていたとして、それでどうするんだって話ですよ。そんなのは流石に俺の知ったことじゃない。それは王国側の問題であって、その責任を俺に押し付けられても困ります」
「……だから困ってるんだよねぇ。分かっちゃ居るんだけど、王国だってそう簡単には変われないからさ。
僕やディオーヌ殿に出来る事は、こうやって個人的に交友を深めて、少しでもトーマさんの中のこの国の重要度を高めるくらいしかないんだよなぁ」
「そこまで卑屈にならなくても、王国だってこれからゆっくり発展していけばいいじゃないですか。王国の為に俺が出来ることなんて、もう何もないと思いますよ? 保護区の件だって、別に王国のためにご提案したわけじゃありませんしね」
王国よりも動物のほうが優先度は上です。
でもそれは今に始まったことじゃないしなぁ?
「ま、トーマさんが言った通り、王国の人々も成長しているからさ。急に見捨てたりしないでくれればそれでいいよ」
流石にそんな気はないけどなぁ。
でもまぁ、今までが色々動きすぎてたんだよね。俺は本来もっと怠け者のはずだから。
まさか保護区の話をしに行って、王国不要論に発展するとは思わなかったわ。
「えーと、質問の意味がよく分かりません。王国に興味があるかないかと言われても、漠然としすぎてて答えようがないと言うか」
「興味がないっていうのは、トーマさんたちの行動に対して僕たち王国民がどう反応しても、別に構わないって感じていないかい? ってことだよ。以前はそんな感じじゃなかったと思うけど」
え、そう?
元々王国民の反応はどうでもいいってスタンスじゃなかったっけ?
「ん~。自分ではあまりよく分からないですね。元々王国とは敵対せずに協力関係を築いていくつもりでしたし、実際そうやってきたと思うんですけど」
「そう、協力関係だ。トーマさんは今まで、王国に対して協力を願うことが少なくなかった。そして今回も一見同じように見えたけど、トーマさんはあっさり引いてしまったよね? あれはどうして?
今までだったらもっと僕達を説得しようとしてたでしょ?」
「ああ、単純な話、協力が得られても得られなくても影響がないからですね。フィールダーとゲイザーを保護できなかったからといって、王国が滅亡したりするわけじゃないですし。
緊急性も重要度も低かったから、すぐに引いただけですよ。ファーガロン様があの場で言われた通り、断られても何も困りませんし」
今までの要望だって、断られたら別の手段探してたと思うよ?
でも今は王国の協力を得られなくても、そんなに問題ない程度の能力が身についてしまったしな。
「多分先ほどの会議で、王とディオーヌ殿は僕と同じ危機感を抱いたと思うんだよね。
トーマさんはもう、王国の助力を必要としていないんじゃないかって。
今までだってトーマさんに頼りきりだった案件は多かったけど、それでも僕たちが力になれることも多かったと思うんだ。でも今日のトーマさんの反応を見たとき、異風の旋律はリヴァーブ王国の支援を一切必要としないほどの存在になってしまったんだと、そんな恐怖を抱いたのさ」
ファーガロン様に言われた事を、改めて自分で考えてみる。
よくよく考えると、確かにもう王国に協力して欲しいって案件は特にないな。
今回の保護区の件だって、王国内がダメだったら別の土地に無理矢理保護区を作ることも出来るし、そもそもやめても何も困らない。動物達だって別に、保護されることを望んでるわけでもないわけだしね。
仮に迷宮の氾濫が起こったとしても、ボールクローグで起こった程度の規模なら、もはや俺1人であっさり鎮圧できてしまえる気がする。刃紋も閃空もあるし。
大体にしてエリアキーパーとの戦いが始まった辺りから、俺って王国に何の支援も受けてなくない?
エリアキーパーの居場所に辿り着いたのも、実際に討伐したのも、ルイナスリーム建設だったり、スキップオーブの提供だったり、俺の方が一方的に支援してるだけの気がするんだけど、その状況で今さら危機感とか言われてもなぁ。
「ふむ。確かに王国の支援がなくても、もう十分生きられそうではありますけど。でもそれって前から言ってませんでした? 最近だって、俺は1人で生きていける気がするとかなんとか言われた記憶あるんですけど」
「あの時は冗談だったけど、今思うと結構前から危うかったかもしれないね。今まではなんだかんだ言って、トーマさんたちも王国と共存していかないと生きていけないと思えたんだ。
でも今日の会議では、トーマさんは本当に王国側の意見はどうでも良さそうにしてただろ? そしてブルガーゾ殿に言ったことも、本気を孕んでいるように聞こえたんだ。実際本気だったんだろうけどさ。
もうトーマさんや異風の旋律のメンバーは、王国の支援なんかなくても、何の問題もなく生きていける強さを手に入れてしまった。じゃあ逆に王国側は? 異風の旋律が居なくなって、リヴァーブ王国は生きていけるのか? って話になっちゃうわけ」
「いやいやいや。そりゃ問題なく王国は存続していけるでしょ。そもそもの話、異邦人はこの世界にとって異物なんですから。居なくなっても全く問題は起こりませんよ」
「……本当に? 本当に異風の旋律が王国を去った場合、リヴァーブ王国はやっていけるのかな?
旋律の運び手の活動だって、君達がいるからこそ成立している。ルイナスリームだってそうだ。君達が去った後、最早あって当然となった様々な要素が瓦解し始めたとしても、不思議ではないだろう?」
「ん~、それは大丈夫じゃないですかねぇ。カンパニーもルイナスリームも、既に俺の手を離れて勝手に動き出してますよ。元々俺が居なくても成立するように目指して作ってましたし。
それに、仮にファーガロン様が仰る通り、王国が俺達無しでは成立しなくなっていたとして、それでどうするんだって話ですよ。そんなのは流石に俺の知ったことじゃない。それは王国側の問題であって、その責任を俺に押し付けられても困ります」
「……だから困ってるんだよねぇ。分かっちゃ居るんだけど、王国だってそう簡単には変われないからさ。
僕やディオーヌ殿に出来る事は、こうやって個人的に交友を深めて、少しでもトーマさんの中のこの国の重要度を高めるくらいしかないんだよなぁ」
「そこまで卑屈にならなくても、王国だってこれからゆっくり発展していけばいいじゃないですか。王国の為に俺が出来ることなんて、もう何もないと思いますよ? 保護区の件だって、別に王国のためにご提案したわけじゃありませんしね」
王国よりも動物のほうが優先度は上です。
でもそれは今に始まったことじゃないしなぁ?
「ま、トーマさんが言った通り、王国の人々も成長しているからさ。急に見捨てたりしないでくれればそれでいいよ」
流石にそんな気はないけどなぁ。
でもまぁ、今までが色々動きすぎてたんだよね。俺は本来もっと怠け者のはずだから。
まさか保護区の話をしに行って、王国不要論に発展するとは思わなかったわ。
0
あなたにおすすめの小説
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)
みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。
在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
第2の人生は、『男』が希少種の世界で
赤金武蔵
ファンタジー
日本の高校生、久我一颯(くがいぶき)は、気が付くと見知らぬ土地で、女山賊たちから貞操を奪われる危機に直面していた。
あと一歩で襲われかけた、その時。白銀の鎧を纏った女騎士・ミューレンに救われる。
ミューレンの話から、この世界は地球ではなく、別の世界だということを知る。
しかも──『男』という存在が、超希少な世界だった。
痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~
ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。
食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。
最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。
それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。
※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。
カクヨムで先行投稿中!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる