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11章 新たな都市の建設

468 異風の旋律排除運動

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 反異風の旋律運動? 何ですかそりゃ?


「う~ん。意味が分からないんだけど、放置はダメ? あんま興味無いわ」

「済みませんけど明日ヴェルトーガにおいでください。
 トーマさんたちが良くても、こちら側が平気じゃないんですよ」


 仕方ないので明日ディオーヌ様のところに伺う事を約束すると、スカーさんは帰っていった。


「う~ん。僕たち何かしたっけ? と言いたいところだけど、まぁまぁ色々やらかしてるかもしれないね。ミルズレンダの件なんか最たるものだし」

「それ以上に貢献してると思いますけどね。でもまぁこういう事態が起こりうると想定してルイナスリームを作ったわけですし、ある意味想定内ではありますか?」

「うん。そこまで深刻な状況ではないよね。でも敵意が異邦人じゃなくて異風の旋律に向いているのが気になるね。トーマ、最近なにかやらかしたりしたのかな?」

「最近っていうと、それこそ動物関係のことが真っ先に思い浮かぶけど……。
 それ以外だとお金を払ったり支援したり、むしろ感謝されることの方が多いんじゃないかなぁ……?」


 それ以外だとブルガーゾをディスったこととか?
 でもわりと前からやってる気はするよな。ブルガーゾディスは。


「もしくはあれかぁ? 昨日ミルズレンダに足を踏み入れたのが引き金になったとか、そんな感じじゃねぇだろうなぁ。流石にそこまで落ちぶれちまったとは思いたくはねぇんだけどよぉ」

「異邦人じゃなくて異風の旋律に絞ってるのが不思議っすね? 国のトップ連中は基本的に私たちとは対立するつもりはないって言ってるみたいっすし、いったい誰が始めたことなんすかねぇ?」

「異風の旋律に敵対しても、特にメリットないわよね? 仮に動物達が狙いだとしても、異風の旋律が居なくなっても動物が懐いてくれるかは分からない部分だし」

「まーまーあんまり気にしなくていいんじゃないのー? 最悪、私たちは別荘で問題なく暮らせるから、出産に対してもあまり心配はしてないしねー。
 明日のお話は、私たちの事はあまり気にしなくても大丈夫だからね? トーマのしたいようにしていいよー」


 ふふ。まったく、センパイには敵いませんなぁ。
 王国と敵対する気は全くないけど、逆に気を遣い過ぎる必要もないって言ってくれてるんだろうな。


 次の日は結局ベイクとヴェルトーガの迷宮でそれぞれソロ探索を済ませ、朝食後にヴェルトーガにまた移動する。
 例によって馬車が待機していたので、大人しく連行される。

 ちなみにヴェルトーガに来たのは俺1人だ。
 王国と敵対しようが融和路線を取ろうが、仲間は俺についてきてくれるそうだ。だから話し合いには付いていかなくていいよね? という理屈らしい。信用されていると喜べばいいのやら、見捨てられたと悲しめばいいのやら。


「あら? トーマさんお1人なんですか? 少なくともシンくんは一緒に来ると思ったんですけど」

「おはようございます。シンはルイナスリームと保護区の方を優先したいとの事で、今日は俺だけで伺いました。ちゃんとあとで情報は共有しますのでご心配なく」


 ディオーヌ様の様子を見る限りでは、そこまで大変なことになっているようには感じられない。
 そもそも昨日各地を回った時にも、そんな違和感なかったしなぁ。


「それでは早速ご報告差し上げますね。
 現在王国の複数の都市で、異風の旋律を排除しようとする動きが見受けられます。
 私たちで調査した結果ですと、カンパニー『旋律の運び手』の活動していない都市から、その動きは始まっているようですね。
 彼らの言い分としては、自分達の都市が旋律の運び手の恩恵を受けられないのは、異風の旋律のせいである、という主張のようですよ」

「はぁ。そうなんですね。
 それでなにか具体的な動きとかはあるんですか? 遠くで騒いでるだけならご自由にしてもらって構わないんですけど」

「今のところは貴方達の悪評を広めているくらいですわね。
 ですが少し気になる動きがあります。その運動の関係者が、カルネジア家とメーデクェイタ家に接触している可能性あり。そしてその動きは、王都でも活発化しているらしいと」

「へぇ。カルネジア家とメーデクェイタ家、更には王家が手を組んで、異風の旋律の排除しにかかったのかな?
 それにしても急な話ですよね? なにかきっかけみたいなものがあったんですか? ブルガーゾをこき下ろしたのが引き金になってるとか」

「いえ、どちらかと言うと、鳥獣保護区の設定が引き金になっているようですわね。
 異風の旋律は王国領を私的な理由で切り取った。彼らはいずれ王国そのものを乗っ取る気なのだ、というのが彼らの言い分です」

「なるほどなぁ~。確かに領土を切り取られて喜ぶ人はいないでしょうし、仕方ない流れかもしれませんね。
 まぁ俺たちへの不要論はむしろ歓迎したい流れですよ。俺達に頼らない、強い王国を作りたいって事でしょ? むしろ応援してもいいくらいです」

「トーマさん。貴方は良くても、貴方の家族だって巻き込まれる話なのですよ? もう少し真剣にお考えになっていただけませんか?」

「いやぁ、異風の旋律って、冤罪での犯罪奴隷に落ちた奴とか、こっちに来たばかりなのにチート能力者に狙われてしまった奴とか、12年間蔑まれて死ぬ直前だった奴とか、身内が主導した街ぐるみの迫害を受けた奴とか、今さら王国全部を敵に回したって揺らぐような奴は居ないと思いますよ?
 俺達に直接挑んでくるようなら返り討ちにしますけど、自立する為に頑張ってる奴の仮想敵になるくらいなら可愛いもんですよ」

「……トーマさんがいいのであれば、私からは何も言いませんが。
 カルネジア、メーデクェイタ、そして王家までが手を組んだとなったら、私もファーガロン様もおいそれとは味方できなくなりますよ?」

「ディオーヌ様にもファーガロン様にも、今まで本当に沢山助けていただきましたからね。これ以上ご迷惑をかけるつもりはありませんよ。どうぞご心配なく」


 やってもない事を吹聴して回ってるわけじゃなく、実際に起こった事を邪推してるくらいなんだから、思っていたよりは真っ当な集団にすら思える。

 異風の旋律を解散するわけには行かないけど、旋律の運び手は別にジーンさんあたりに譲ってもいいし、俺たちの不要論が起こるのは、必ずしも悪い事ばかりでもないだろう。

 でもまぁ、誰が何のためにやってんだろうな?
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