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11章 新たな都市の建設
484 譲渡
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翌日、王国からの公式発表で、王国解放軍の情報と、それに関わっていたとされる人物全てのリストが公表された。
首謀者はシルヴァール王女、カルネジア家、メーデクェイタ家とされており、異邦人参加者の名前は発表されなかった。
アラタとアリスは、一応リンカーズでの居場所を失わずに済んだらしい。
あの2人がどうなってるのかなんて知ったこっちゃないが。
そして王国解放軍が行ったことも全て公開され、異風の旋律への風評被害、都市間移動馬車事業の妨害、鳥獣保護区の整備の妨害、武力を伴った妨害・脅迫行為に、異風の旋律のメンバーの誘拐事件の実行。
これらの被害を被った異風の旋律は、王国への全ての支援を打ち切ると宣言したと、王国の公式発表として王国中に通達された。
せっかくなのでこれに合わせて、旋律の運び手を引き継ぎたい人間を募集することにした。
「トーマァ! なんで、なんでカンパニーを手放すことにしたんだよっ! 俺達、トーマのカンパニーだから参加してたんだぜっ!? もう支援なんてどうでもいい! トーマの作ったカンパニーだからって! それなのに、それなのに……!」
王国の発表と、カンパニーの引継ぎ募集を見た栄光の運び手のメンバーが押しかけてきた。
「支援なんてどうでもいいって言えるくらいになってんだから、もうカンパニーに拘る必要なんてねぇんだよ。もうお前らは一人前の冒険者として生きていける強さを手に入れたんだ。
まぁ今回の件で色々迷惑を被ったのが直接の原因ではあるけどよ、もうカンパニーの支援を必要としてる人なんて、そんなに残ってないんだよ。俺のカンパニーの役目が終ったって、ただそれだけのことだ。
救貧院にいる幼く力を持たない新人を導いて行くのは俺じゃなくて、一人前になったお前らなんだよ!
俺の助けを待つんじゃなくて、俺が困ってる時に助けてくれるような凄ぇ冒険者を目指してくれよ。ボールクローグで手伝ってくれた時みたいにさ!」
王国の未来は俺みたいな部外者じゃなくて、お前らみたいな若者が作っていくもんなんだよ。
栄光の運び手のメンバーとは納得いくまで話をしてやって、背中を押して送り出してやった。
あいつ等は、誰かに手を差し伸べられるほどに強くなったんだ。心配は要らないはずだ。
「トーマ。カンパニー引継ぎの募集を見てきたんだ。あれさ、異邦人の俺でも受け付けてくれるのか?」
意外にも、カンパニーの引継ぎに対して、1番に名乗りを上げたのはタケルだった。
ディオーヌ様やファーガロン様の可能性が高いと思ってたんだがな。タケルもまぁまぁ可能性あるとは思ってたけどさ。
う~ん。ちょっと会議室で脅かしすぎたのかもなぁ。
「俺は勿論構わないんだけど、タケルの方こそ大丈夫?
カンパニーのメンバーは恐らく殆ど抜けちゃうと思うし、なのに今後現れる異邦人の世話とかに奔走しなきゃいけなくて、引き継ぐメリットは殆ど無いと思ってるけど」
「勿論構わねぇよ! メリットとかそんなの、気にする資格はねぇよ……。俺があの時あの馬鹿女を殺すのを止めたりしなければ、こんな事にはならなかったかもしれねぇんだしさ。
俺が背負うべき名前だと思ってる。どうか、俺に背負わせちゃくれねぇか!」
なんなんだお前は。仁義? 任侠? 極道かなにか?
「今のところ希望者もいないし、タケルに譲渡するのは問題ないんだけどさ。あんまり思いつめすぎんなよ?
俺はさ、今回の件は多少時期が早まっただけで、必要なことだったと思ってんだよ。あのままじゃ王国は俺に依存しすぎてたからさ。王国が成長する為に、俺たちとは距離を取らなきゃいけないとは思ってたんだ。
まぁ最悪の距離の取り方になっちまったけど、このくらい振り切った方が後腐れもなくていいだろ」
「……確かにトーマに依存しすぎてた部分はあったと思うわ。王国も、異邦人もな。
でもやっぱ、転移したばかりの異邦人への最低限の支援は必要だと思うからよ。そのくらいは引き継ぎたいと思ってんだ。
そうだな。背負うんじゃなくて、俺がやりたいことなんだ。支援活動」
「うん。タケルがやりたいなら任せるよ。このあと冒険者ギルドに行って、譲渡手続きしちゃおうぜ。
そういや馬鹿女はどうなったんだ? 先日俺の前で何か言ってたけど、聞く意味もないから無視したんだ。その後って結局どうなったの?」
「ああ、そういや済まねぇトーマ! 無理して見逃してもらったってのに、俺も見限っちまったんだ!」
「いやぁタケルが見捨てるのも無理ねぇと思うけどね。今さら『事象復元』使われても俺は困らないしどうでもいいんだけど、アイツの『事象復元』の危険性って王国中に広まってんじゃん?
王国解放軍とやらもぶっ潰されて、タケルにも見捨てられて、カンパニーにも居られなくなって、そんでどうなったのかなと思ってさ」
「……さぁな。一応あの女もよ。真面目に探索してたんだよ。全く誰にも相手されなくても、1人で冒険者やってくことは可能だろ。ベイクならソロで4階層くらいは潜れるだろうし。
まぁ、ベイクにあの女の居場所があるとは思わねぇが」
「ん? 今回王国から犯行勢力の参加者として発表されたのって王国民だけじゃん? アリスは別に情報公開されてるわけでもないし、何とかなるんじゃないの?」
「いや? 元々トーマに嫌われてるアリスは、ベイクでは扱いが悪かったんだよ。そして今回の発表で、カンパニー参加者たちからの評判も地に落ちたから、ルイナスリームにも居場所はない。
ディオーヌ様っつうか、タイデリア家の覚えも良くないからヴェルトーガも無理。
まぁ適当な都市で勝手に生きてくんじゃねぇのか? 知ったこっちゃねぇけど」
「まぁね。『事象復元』ってヤバすぎる能力とは言え、アリスを引き込むつもりがないならどうでもいい能力だからな。勝手に自滅するだけだし」
話が終わった後、オーサンに頼んでカンパニーの代表を俺からタケルに変更してもらい、異風の旋律は正式に旋律の運び手から脱退した。
まさに、肩の荷が下りたって気分だなぁ。
首謀者はシルヴァール王女、カルネジア家、メーデクェイタ家とされており、異邦人参加者の名前は発表されなかった。
アラタとアリスは、一応リンカーズでの居場所を失わずに済んだらしい。
あの2人がどうなってるのかなんて知ったこっちゃないが。
そして王国解放軍が行ったことも全て公開され、異風の旋律への風評被害、都市間移動馬車事業の妨害、鳥獣保護区の整備の妨害、武力を伴った妨害・脅迫行為に、異風の旋律のメンバーの誘拐事件の実行。
これらの被害を被った異風の旋律は、王国への全ての支援を打ち切ると宣言したと、王国の公式発表として王国中に通達された。
せっかくなのでこれに合わせて、旋律の運び手を引き継ぎたい人間を募集することにした。
「トーマァ! なんで、なんでカンパニーを手放すことにしたんだよっ! 俺達、トーマのカンパニーだから参加してたんだぜっ!? もう支援なんてどうでもいい! トーマの作ったカンパニーだからって! それなのに、それなのに……!」
王国の発表と、カンパニーの引継ぎ募集を見た栄光の運び手のメンバーが押しかけてきた。
「支援なんてどうでもいいって言えるくらいになってんだから、もうカンパニーに拘る必要なんてねぇんだよ。もうお前らは一人前の冒険者として生きていける強さを手に入れたんだ。
まぁ今回の件で色々迷惑を被ったのが直接の原因ではあるけどよ、もうカンパニーの支援を必要としてる人なんて、そんなに残ってないんだよ。俺のカンパニーの役目が終ったって、ただそれだけのことだ。
救貧院にいる幼く力を持たない新人を導いて行くのは俺じゃなくて、一人前になったお前らなんだよ!
俺の助けを待つんじゃなくて、俺が困ってる時に助けてくれるような凄ぇ冒険者を目指してくれよ。ボールクローグで手伝ってくれた時みたいにさ!」
王国の未来は俺みたいな部外者じゃなくて、お前らみたいな若者が作っていくもんなんだよ。
栄光の運び手のメンバーとは納得いくまで話をしてやって、背中を押して送り出してやった。
あいつ等は、誰かに手を差し伸べられるほどに強くなったんだ。心配は要らないはずだ。
「トーマ。カンパニー引継ぎの募集を見てきたんだ。あれさ、異邦人の俺でも受け付けてくれるのか?」
意外にも、カンパニーの引継ぎに対して、1番に名乗りを上げたのはタケルだった。
ディオーヌ様やファーガロン様の可能性が高いと思ってたんだがな。タケルもまぁまぁ可能性あるとは思ってたけどさ。
う~ん。ちょっと会議室で脅かしすぎたのかもなぁ。
「俺は勿論構わないんだけど、タケルの方こそ大丈夫?
カンパニーのメンバーは恐らく殆ど抜けちゃうと思うし、なのに今後現れる異邦人の世話とかに奔走しなきゃいけなくて、引き継ぐメリットは殆ど無いと思ってるけど」
「勿論構わねぇよ! メリットとかそんなの、気にする資格はねぇよ……。俺があの時あの馬鹿女を殺すのを止めたりしなければ、こんな事にはならなかったかもしれねぇんだしさ。
俺が背負うべき名前だと思ってる。どうか、俺に背負わせちゃくれねぇか!」
なんなんだお前は。仁義? 任侠? 極道かなにか?
「今のところ希望者もいないし、タケルに譲渡するのは問題ないんだけどさ。あんまり思いつめすぎんなよ?
俺はさ、今回の件は多少時期が早まっただけで、必要なことだったと思ってんだよ。あのままじゃ王国は俺に依存しすぎてたからさ。王国が成長する為に、俺たちとは距離を取らなきゃいけないとは思ってたんだ。
まぁ最悪の距離の取り方になっちまったけど、このくらい振り切った方が後腐れもなくていいだろ」
「……確かにトーマに依存しすぎてた部分はあったと思うわ。王国も、異邦人もな。
でもやっぱ、転移したばかりの異邦人への最低限の支援は必要だと思うからよ。そのくらいは引き継ぎたいと思ってんだ。
そうだな。背負うんじゃなくて、俺がやりたいことなんだ。支援活動」
「うん。タケルがやりたいなら任せるよ。このあと冒険者ギルドに行って、譲渡手続きしちゃおうぜ。
そういや馬鹿女はどうなったんだ? 先日俺の前で何か言ってたけど、聞く意味もないから無視したんだ。その後って結局どうなったの?」
「ああ、そういや済まねぇトーマ! 無理して見逃してもらったってのに、俺も見限っちまったんだ!」
「いやぁタケルが見捨てるのも無理ねぇと思うけどね。今さら『事象復元』使われても俺は困らないしどうでもいいんだけど、アイツの『事象復元』の危険性って王国中に広まってんじゃん?
王国解放軍とやらもぶっ潰されて、タケルにも見捨てられて、カンパニーにも居られなくなって、そんでどうなったのかなと思ってさ」
「……さぁな。一応あの女もよ。真面目に探索してたんだよ。全く誰にも相手されなくても、1人で冒険者やってくことは可能だろ。ベイクならソロで4階層くらいは潜れるだろうし。
まぁ、ベイクにあの女の居場所があるとは思わねぇが」
「ん? 今回王国から犯行勢力の参加者として発表されたのって王国民だけじゃん? アリスは別に情報公開されてるわけでもないし、何とかなるんじゃないの?」
「いや? 元々トーマに嫌われてるアリスは、ベイクでは扱いが悪かったんだよ。そして今回の発表で、カンパニー参加者たちからの評判も地に落ちたから、ルイナスリームにも居場所はない。
ディオーヌ様っつうか、タイデリア家の覚えも良くないからヴェルトーガも無理。
まぁ適当な都市で勝手に生きてくんじゃねぇのか? 知ったこっちゃねぇけど」
「まぁね。『事象復元』ってヤバすぎる能力とは言え、アリスを引き込むつもりがないならどうでもいい能力だからな。勝手に自滅するだけだし」
話が終わった後、オーサンに頼んでカンパニーの代表を俺からタケルに変更してもらい、異風の旋律は正式に旋律の運び手から脱退した。
まさに、肩の荷が下りたって気分だなぁ。
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