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12章 俺が望んだ異世界生活
497 エリアキーパーと王国民
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予想通り、陽天の報せ前に登り終えることが出来た。
貴族の皆さんはどうだか知らないけど、護衛の人たちはかなりの実力者なんだろうしな。スキルもいっぱい持ってるだろうし、登山くらいで音を上げる人達じゃないはずだ。
その護衛の人たちですら、遠くに見える巨人の寝顔を目の当たりにして、何の反応も出来ずにいる。
アサヒとカンナがユリバファルゴアに遭ったときと比べると、錯乱しているわけじゃなさそうかな?
とりあえず皆さんが動き出すまで、果物でも齧りながら待つ事にする。
「あれが南のエリアキーパー、グラメダワルケアですか……。
ええ、間違いなくあれはエリアキーパーですね。見ただけで理解させられてしまいますわ……」
「今まで確認されたことがないと言われているグラメダワルケアの顔を、こんなにあっさり見れるとは思ってなかったよ……。
巨人か。本当に顔のつくりは人と同じようにしか見えないね……」
「これが……、こんな存在がこの世界に……!
歴代の王は、なんというものを精霊家に押し付けてきてしまったのだ……!」
流石にエリアキーパーを見た事があるっていう、ディオーヌ様とファーガロン様の立ち直りは早いな。
王はエリアキーパーを見た事はなかったんだなぁ。
護衛の皆さんも徐々に落ち着きを取り戻してきているようだ。流石は精鋭だな。
「それにしても、ザルトワシルドアと比べてかなりの巨体ですね。
どれほどの距離があるのかすら分かりません。山を大きく越えるほどの魔物とは……」
「そうですねぇ。ザルトワシルドアはこの山の4分の1くらいの大きさでしたから、グラメダワルケアに比べれば小さかったですね。
でもユリバファルゴアはグラメダワルケアと比べても、比べ物にならないほどの巨体でしたからねぇ。視界に収まるだけ、俺にはまだ常識的なサイズに見えますよ」
「空を飛んでいるのに先が見渡せないほどの巨体って報告だったもんね……。正直想像も出来ない大きさなんだけど、グラメダワルケアを常識的と言ってしまうのはどうかと思うよ?」
「エリアキーパーって何もかもが規格外なんですよね。
例えば俺なら、ここからグラメダワルケアの首を斬り飛ばす事が可能ではあるんです。ですけどエリアキーパーって首を落とした程度じゃ死んでくれないんですよね。どうやって殺せばいいのか探るところから始まるんですよ、エリアキーパーって」
一見人型にしか見えないグラメダワルケアだけど、首を落としたくらいで死んでくれるとはとても思えない。
地球にすら、命を何個も持ってるなんて英雄の話があるくらいだからなぁ。
「あっさりとここから首を飛ばせるなんて仰るトーマさんが、規格外を語らないでもらえます?
それでどうしたものでしょうか。この光景を冒険者に見せる事が、どのような影響を及ぼすのか読めないですわ」
「そうだねぇ。護衛の反応を見るに心折れる事はないだろうけれど、ここから奮起するか諦めてしまうのか、どちらに転ぶかは全く読めないよ」
諦めちゃう奴、やっぱり出ちゃうかなぁ?
この世界ってスキルと魔法で何処までも強くなれるんだから、奮起してもらいたいところなんだけど。
「ディオーヌ様、ファーガロン様。発言をお許し願えますか?」
そんな時に、昨夜話した護衛さんが口を挟んできた。
「ん。思う事があるなら言ってみてほしい。
実際に戦闘の場に出る人間の目から見て、今回の件は必要かどうかの判断が聞きたい」
ファーガロン様が護衛に返答する。
そう言えばこの人シルグリイド家の人間だって言ってたっけ。
「はっ。発言をお許し頂き感謝致します。
それでは私も1人の戦士として言わせてもらいます。この登山は絶対に必要です。なるべく早く公開すべきかと」
「エリアキーパーは既に一般的な情報として公開済みだけど、それとは別に目で確認する必要があると、そう思うのは何故なのかな?」
「はっ。正直申し上げまして、私はエリアキーパーを侮っていたと痛感致しました。
決して侮っていたつもりはなく、最大限に警戒をしていたつもりでしたが、エリアキーパというのは私の想像の限界を超えた存在なのだと、実際に目の当たりにすることで実感できたからです。
文字情報による発信程度では、エリアキーパーの危険性は全く伝わらないのだと、そう強く認識した次第であります」
あー……。確かに見てみないと分からないこともあるよな。
空を飛んでいるのに体の先が見えないほどの巨体、とか言われても想像出来ないか。
「それで冒険者達が挫折してしまう可能性はないのかい?」
「はっ。挫折する者が出るのは仕方ないのではと思います。ですがこれほどの存在がいると目の当たりにしなければ、エリアキーパーという存在を正しく認識するのは絶対に無理です。
そしていつか王国民がエリアキーパーを打倒しなければならないというのなら……。安全に視認できるこの場所は、非常に重要な意味を持ってくると思います」
「なるほど……。確かに彼の言う通り、いつか王国民でエリアキーパーを倒さなければならぬのは間違いない。だがエリアキーパーを見たことがない者に、エリアキーパーを想定して鍛錬を積むのは不可能であると。
ディオーヌ、ファーガロン。私は王として、この場所は必要な施設だと考える。2人は如何か?」
御2人とも異論はないようだ。これでこの場所は広く公開される事になった。トイレ設置してて良かった。
エリアキーパーという規格外の存在を知れば、アラタみたいに慢心する事は絶対に出来なくなるだろう。
どうにかして、今まで以上の強さを手に入れようと必死になるだろう。
王国民がエリアキーパーを倒せるようになる、その第1歩がこの登山道ということになるわけだ。
王国への支援を止めると言いながら支援しちゃった気もするけど、今回は仕方ないと思おう。
王国民の成長を促す為には必要なことだと思うから。
貴族の皆さんはどうだか知らないけど、護衛の人たちはかなりの実力者なんだろうしな。スキルもいっぱい持ってるだろうし、登山くらいで音を上げる人達じゃないはずだ。
その護衛の人たちですら、遠くに見える巨人の寝顔を目の当たりにして、何の反応も出来ずにいる。
アサヒとカンナがユリバファルゴアに遭ったときと比べると、錯乱しているわけじゃなさそうかな?
とりあえず皆さんが動き出すまで、果物でも齧りながら待つ事にする。
「あれが南のエリアキーパー、グラメダワルケアですか……。
ええ、間違いなくあれはエリアキーパーですね。見ただけで理解させられてしまいますわ……」
「今まで確認されたことがないと言われているグラメダワルケアの顔を、こんなにあっさり見れるとは思ってなかったよ……。
巨人か。本当に顔のつくりは人と同じようにしか見えないね……」
「これが……、こんな存在がこの世界に……!
歴代の王は、なんというものを精霊家に押し付けてきてしまったのだ……!」
流石にエリアキーパーを見た事があるっていう、ディオーヌ様とファーガロン様の立ち直りは早いな。
王はエリアキーパーを見た事はなかったんだなぁ。
護衛の皆さんも徐々に落ち着きを取り戻してきているようだ。流石は精鋭だな。
「それにしても、ザルトワシルドアと比べてかなりの巨体ですね。
どれほどの距離があるのかすら分かりません。山を大きく越えるほどの魔物とは……」
「そうですねぇ。ザルトワシルドアはこの山の4分の1くらいの大きさでしたから、グラメダワルケアに比べれば小さかったですね。
でもユリバファルゴアはグラメダワルケアと比べても、比べ物にならないほどの巨体でしたからねぇ。視界に収まるだけ、俺にはまだ常識的なサイズに見えますよ」
「空を飛んでいるのに先が見渡せないほどの巨体って報告だったもんね……。正直想像も出来ない大きさなんだけど、グラメダワルケアを常識的と言ってしまうのはどうかと思うよ?」
「エリアキーパーって何もかもが規格外なんですよね。
例えば俺なら、ここからグラメダワルケアの首を斬り飛ばす事が可能ではあるんです。ですけどエリアキーパーって首を落とした程度じゃ死んでくれないんですよね。どうやって殺せばいいのか探るところから始まるんですよ、エリアキーパーって」
一見人型にしか見えないグラメダワルケアだけど、首を落としたくらいで死んでくれるとはとても思えない。
地球にすら、命を何個も持ってるなんて英雄の話があるくらいだからなぁ。
「あっさりとここから首を飛ばせるなんて仰るトーマさんが、規格外を語らないでもらえます?
それでどうしたものでしょうか。この光景を冒険者に見せる事が、どのような影響を及ぼすのか読めないですわ」
「そうだねぇ。護衛の反応を見るに心折れる事はないだろうけれど、ここから奮起するか諦めてしまうのか、どちらに転ぶかは全く読めないよ」
諦めちゃう奴、やっぱり出ちゃうかなぁ?
この世界ってスキルと魔法で何処までも強くなれるんだから、奮起してもらいたいところなんだけど。
「ディオーヌ様、ファーガロン様。発言をお許し願えますか?」
そんな時に、昨夜話した護衛さんが口を挟んできた。
「ん。思う事があるなら言ってみてほしい。
実際に戦闘の場に出る人間の目から見て、今回の件は必要かどうかの判断が聞きたい」
ファーガロン様が護衛に返答する。
そう言えばこの人シルグリイド家の人間だって言ってたっけ。
「はっ。発言をお許し頂き感謝致します。
それでは私も1人の戦士として言わせてもらいます。この登山は絶対に必要です。なるべく早く公開すべきかと」
「エリアキーパーは既に一般的な情報として公開済みだけど、それとは別に目で確認する必要があると、そう思うのは何故なのかな?」
「はっ。正直申し上げまして、私はエリアキーパーを侮っていたと痛感致しました。
決して侮っていたつもりはなく、最大限に警戒をしていたつもりでしたが、エリアキーパというのは私の想像の限界を超えた存在なのだと、実際に目の当たりにすることで実感できたからです。
文字情報による発信程度では、エリアキーパーの危険性は全く伝わらないのだと、そう強く認識した次第であります」
あー……。確かに見てみないと分からないこともあるよな。
空を飛んでいるのに体の先が見えないほどの巨体、とか言われても想像出来ないか。
「それで冒険者達が挫折してしまう可能性はないのかい?」
「はっ。挫折する者が出るのは仕方ないのではと思います。ですがこれほどの存在がいると目の当たりにしなければ、エリアキーパーという存在を正しく認識するのは絶対に無理です。
そしていつか王国民がエリアキーパーを打倒しなければならないというのなら……。安全に視認できるこの場所は、非常に重要な意味を持ってくると思います」
「なるほど……。確かに彼の言う通り、いつか王国民でエリアキーパーを倒さなければならぬのは間違いない。だがエリアキーパーを見たことがない者に、エリアキーパーを想定して鍛錬を積むのは不可能であると。
ディオーヌ、ファーガロン。私は王として、この場所は必要な施設だと考える。2人は如何か?」
御2人とも異論はないようだ。これでこの場所は広く公開される事になった。トイレ設置してて良かった。
エリアキーパーという規格外の存在を知れば、アラタみたいに慢心する事は絶対に出来なくなるだろう。
どうにかして、今まで以上の強さを手に入れようと必死になるだろう。
王国民がエリアキーパーを倒せるようになる、その第1歩がこの登山道ということになるわけだ。
王国への支援を止めると言いながら支援しちゃった気もするけど、今回は仕方ないと思おう。
王国民の成長を促す為には必要なことだと思うから。
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