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12章 俺が望んだ異世界生活
519 暗天期
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グリフォンを送ってから帰宅すると、もうすぐ夜明けを迎えそうな時間帯だった。
このまま寝ても仕方ないので、朝食の準備でもしておきますかね。
この世界は肉は豊富なんだけど、食に関して贅沢出来てる感じではないよなぁ。
塩、砂糖、胡椒、唐辛子、アルコールまで迷宮で採れるのに、そのせいで逆に迷宮外の食材の研究が全く進んでいない。
フィールダーを保護したときは馬乳とかも確保できるかなぁとか、ゲイザーから卵が貰えないかなぁとか思ったりしたもんだけど、あいつらを家畜にしたくはないし、無精卵とかもないんだよなぁ。
日本に居た頃にもう少し料理をしていれば分かったかもしれないけど、うちの女性陣もアレルギーでも無いと代替食品まで気にしたことないって言ったし、今となってはネット検索も出来ないしでお手上げ状態だ。
「あら? トーマ帰ってたのね。おかえりなさい」
「おう。おはようカンナ。ただいま。今日はカンナが朝しょんぐ」
挨拶を返していた俺の口を、カンナは自分の口を使って塞いできた。
間もなくハルも起きてくるかもしれないけど、それまでは応戦しようかな。朝食の準備もほぼ終わってるし。
カンナは一見クールっぽく見えるんだけど、嫁の中では1番積極的に甘えてくるところがある。
他の人間の目が無いところではブレーキも利かない。
というか本人にブレーキを踏む気がない。
だから俺のほうでブレーキを踏まなきゃならないんだけど、徹夜明けのテンション相まってアクセル全開してしまうなぁ。
その後すぐに現れたハルのおかげで、何とか強制終了できました。
朝食を食べながら、今回の探索の報告を行う。
「雷雨エリアって、雷がずっと降り注いでる場所があるのー?
そんなところで生き物が生きているのかなー?」
「うん。そう言えばこの世界って天候が安定してるよね? 雨とか雷って一般的に知られてるのはなんでなの?
開放型迷宮に入ったことない人だっていっぱい居るよね?」
「そう言えば異邦人が来るようになってから、暗天期は来てないんですね。
ハル、というか異邦人はまだ体験してませんが、数年に1度くらいの頻度で、王国全土が深い雲に長期間覆われる時期があるんですよね。その際に雨が降ったり雷が落ちたりってことはみんな体験してるんですよ。
10歳くらいになれば、雨や雷を経験したことのない王国民は居ないと思いますよ」
「暗天期っすか。トーマとハルが知らないんじゃ、異邦人は誰も知らないって事になるっすね。
道理で雑貨屋に雨具が置いてあると思ったっすよ。雪は降らないんすか?」
「雪は見たことねぇなぁ。雪って寒くないと降らねぇんだろ? 暗天期は雲に覆われて王国全体が暗くなっちまうけど、極端に寒くなるわけじゃねぇからな。
それにトーマが言うような視界が奪われるほどの雨や、絶え間ない落雷なんてのも記憶にねぇよ。
弱い雨が30~100日くらい続く感じだな。原因は詳しくは分かってねぇけど、空気中の魔力がなにか悪さしてんじゃねぇかって話らしいぜ。
いきなり王国全土が雲に覆われるから、発生したら結構驚くぜ」
マーサの話を聞く感じだと、雨季っていうよりは梅雨ってイメージが強いな。
それにしても突発的に発生するのか。そりゃ常に雨具を置いておかなきゃいけないわけだわ。雑貨屋も大変だな。
「それにしても、常に落雷が発生し続ける雷雨エリアねぇ。
そんな場所があるのなら、異邦人としては是非とも発電を試みたいところではあるけれど……。
この世界って電気エネルギーを普及する理由、あんまりないかしら?」
「うん。無限発生する雷なんて、もう永久機関に近いものを作れそうな気はするんだけど、この世界には魔法が完璧に普及していて、電気よりも便利な面が多いんだよね。
魔力の代替エネルギーとして考えるなら有意義だと思うけど、そもそもその雷も魔力エネルギーで発生しているなら、魔力が枯渇した時点で雷も止まるから意味無いかな?」
「レンジと戦った時にも言ってたけど、異邦人達って本当に雷を制御してたんだねぇ。
う~ん、私には信じられない話だよー」
「レンジの能力は本当に厄介だったよね……。いきなりシンが出てきた時はワケが分からなかったなぁ……」
子供をあやすふわわとつららを見ながら雷雨エリアの活用方法を考えるけど、あまりいい案は浮かばない。
自然エネルギーとしてはこの上なく有用なエリアなんだけど、科学よりも魔法の方が浸透してる世界だからなぁ。
照明も魔法で問題ないし、『暗視』があるため夜もそこまで困らない。
曖昧だった『暗視』の取得条件も既に広く知れ渡っている為、王国民にとって夜や暗所は恐怖の対象にはなりえない。
「とりあえずスキルで落雷はスルーできる事が分かったけど、『環境適応:大』を持ってない奴は近付く事も控えて欲しい。グリフォンでも進めないから、雷雨エリアの探索と調査は一旦終了だな。
あ、マーサ。移動用のターミナルを設置してくるから新しいの作っておいてくれな。山岳エリアの東西も確認してターミナルを置くかもしれないし」
「作るのは構わねぇけど、1エリアに4つもターミナル置いてたら心核がすぐ足りなくなっちまいそうだな。
今んところは余裕があるから問題ねぇけど」
心核の数にもまだ余裕はあるし、なによりも俺の個人的な調査で王国やタケルに相談するのもお門違いかねぇ?
いや、未開エリアの情報は王国にとっても有益なはずだ。
動機は個人の趣味ではあるけど、成果を共有するなら正当な対価だよな?
ルイナスリームの迷宮ガチャが続いていて、タケルも心核は全て王国に献上してると言っていたし、3桁を超える心核が王国に存在していても不思議じゃない。変に遠慮することじゃないな。
グリフォンにも1日中つき合わせてしまったし、今日は1日探索をお休みにして、ターミナルの用意を王国に交渉するとしようかな。
俺を敵視していた王女ももう居ないわけだし、ネヴァルドに行っても問題ないだろ……って、そう言えば思いっきり城ぶっ壊したんだっけ。
やっぱ問題ありそう、かな?
このまま寝ても仕方ないので、朝食の準備でもしておきますかね。
この世界は肉は豊富なんだけど、食に関して贅沢出来てる感じではないよなぁ。
塩、砂糖、胡椒、唐辛子、アルコールまで迷宮で採れるのに、そのせいで逆に迷宮外の食材の研究が全く進んでいない。
フィールダーを保護したときは馬乳とかも確保できるかなぁとか、ゲイザーから卵が貰えないかなぁとか思ったりしたもんだけど、あいつらを家畜にしたくはないし、無精卵とかもないんだよなぁ。
日本に居た頃にもう少し料理をしていれば分かったかもしれないけど、うちの女性陣もアレルギーでも無いと代替食品まで気にしたことないって言ったし、今となってはネット検索も出来ないしでお手上げ状態だ。
「あら? トーマ帰ってたのね。おかえりなさい」
「おう。おはようカンナ。ただいま。今日はカンナが朝しょんぐ」
挨拶を返していた俺の口を、カンナは自分の口を使って塞いできた。
間もなくハルも起きてくるかもしれないけど、それまでは応戦しようかな。朝食の準備もほぼ終わってるし。
カンナは一見クールっぽく見えるんだけど、嫁の中では1番積極的に甘えてくるところがある。
他の人間の目が無いところではブレーキも利かない。
というか本人にブレーキを踏む気がない。
だから俺のほうでブレーキを踏まなきゃならないんだけど、徹夜明けのテンション相まってアクセル全開してしまうなぁ。
その後すぐに現れたハルのおかげで、何とか強制終了できました。
朝食を食べながら、今回の探索の報告を行う。
「雷雨エリアって、雷がずっと降り注いでる場所があるのー?
そんなところで生き物が生きているのかなー?」
「うん。そう言えばこの世界って天候が安定してるよね? 雨とか雷って一般的に知られてるのはなんでなの?
開放型迷宮に入ったことない人だっていっぱい居るよね?」
「そう言えば異邦人が来るようになってから、暗天期は来てないんですね。
ハル、というか異邦人はまだ体験してませんが、数年に1度くらいの頻度で、王国全土が深い雲に長期間覆われる時期があるんですよね。その際に雨が降ったり雷が落ちたりってことはみんな体験してるんですよ。
10歳くらいになれば、雨や雷を経験したことのない王国民は居ないと思いますよ」
「暗天期っすか。トーマとハルが知らないんじゃ、異邦人は誰も知らないって事になるっすね。
道理で雑貨屋に雨具が置いてあると思ったっすよ。雪は降らないんすか?」
「雪は見たことねぇなぁ。雪って寒くないと降らねぇんだろ? 暗天期は雲に覆われて王国全体が暗くなっちまうけど、極端に寒くなるわけじゃねぇからな。
それにトーマが言うような視界が奪われるほどの雨や、絶え間ない落雷なんてのも記憶にねぇよ。
弱い雨が30~100日くらい続く感じだな。原因は詳しくは分かってねぇけど、空気中の魔力がなにか悪さしてんじゃねぇかって話らしいぜ。
いきなり王国全土が雲に覆われるから、発生したら結構驚くぜ」
マーサの話を聞く感じだと、雨季っていうよりは梅雨ってイメージが強いな。
それにしても突発的に発生するのか。そりゃ常に雨具を置いておかなきゃいけないわけだわ。雑貨屋も大変だな。
「それにしても、常に落雷が発生し続ける雷雨エリアねぇ。
そんな場所があるのなら、異邦人としては是非とも発電を試みたいところではあるけれど……。
この世界って電気エネルギーを普及する理由、あんまりないかしら?」
「うん。無限発生する雷なんて、もう永久機関に近いものを作れそうな気はするんだけど、この世界には魔法が完璧に普及していて、電気よりも便利な面が多いんだよね。
魔力の代替エネルギーとして考えるなら有意義だと思うけど、そもそもその雷も魔力エネルギーで発生しているなら、魔力が枯渇した時点で雷も止まるから意味無いかな?」
「レンジと戦った時にも言ってたけど、異邦人達って本当に雷を制御してたんだねぇ。
う~ん、私には信じられない話だよー」
「レンジの能力は本当に厄介だったよね……。いきなりシンが出てきた時はワケが分からなかったなぁ……」
子供をあやすふわわとつららを見ながら雷雨エリアの活用方法を考えるけど、あまりいい案は浮かばない。
自然エネルギーとしてはこの上なく有用なエリアなんだけど、科学よりも魔法の方が浸透してる世界だからなぁ。
照明も魔法で問題ないし、『暗視』があるため夜もそこまで困らない。
曖昧だった『暗視』の取得条件も既に広く知れ渡っている為、王国民にとって夜や暗所は恐怖の対象にはなりえない。
「とりあえずスキルで落雷はスルーできる事が分かったけど、『環境適応:大』を持ってない奴は近付く事も控えて欲しい。グリフォンでも進めないから、雷雨エリアの探索と調査は一旦終了だな。
あ、マーサ。移動用のターミナルを設置してくるから新しいの作っておいてくれな。山岳エリアの東西も確認してターミナルを置くかもしれないし」
「作るのは構わねぇけど、1エリアに4つもターミナル置いてたら心核がすぐ足りなくなっちまいそうだな。
今んところは余裕があるから問題ねぇけど」
心核の数にもまだ余裕はあるし、なによりも俺の個人的な調査で王国やタケルに相談するのもお門違いかねぇ?
いや、未開エリアの情報は王国にとっても有益なはずだ。
動機は個人の趣味ではあるけど、成果を共有するなら正当な対価だよな?
ルイナスリームの迷宮ガチャが続いていて、タケルも心核は全て王国に献上してると言っていたし、3桁を超える心核が王国に存在していても不思議じゃない。変に遠慮することじゃないな。
グリフォンにも1日中つき合わせてしまったし、今日は1日探索をお休みにして、ターミナルの用意を王国に交渉するとしようかな。
俺を敵視していた王女ももう居ないわけだし、ネヴァルドに行っても問題ないだろ……って、そう言えば思いっきり城ぶっ壊したんだっけ。
やっぱ問題ありそう、かな?
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