最後の人生、最後の願い

総帥

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第2章 アカデミー1年生

過去話 6(終)

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 そしてゼルファート15歳。ついに成人を迎えた。

 ジェリンナの方が誕生日が遅いので、彼女の成人を待って結婚する。


 そしてその結婚式。寒い冬の日、彼らは国中に祝われた。




 「綺麗だよ、シェリー。」

 「貴方も素敵よ、ルファ。」

 花嫁衣装に身を包んだジェリンナは本当に美しかった。白から青色のグラデーションのドレス。豪華な刺繍が施され、下品にならない程度に宝石が散りばめられている。

 それに合わせて仕立てられたゼルファートの衣装も、今日という日に相応しい出来だ。


 「しかし、本当に君は昔から僕を好きでいてくれたんだね。僕の片想いだと思っていたんだ。」

 「ふふ、そうね。でもね...初恋は多分、ゼルブルーク様だったのよ。だけどただの憧れだったのか、気が付けば貴方を見ていたわ。」

 「そうか...ありがとう。...兄上にも祝って欲しかったなぁ。」

 「そうね。もしかしたらコッソリ来てるかも知れないわよ?」

 「だといいなぁ。...さ、時間だ。行こう。」

 「ええ。」

 ゼルファートはジェリンナをエスコートし、歩き出す。これからの未来、共に...



















 




 「そんな簡単にいかせるかーーーーあ!!!」

 ドカアアアアアン!!と轟音が鳴り響く。今ちょうど神父が誓いの言葉を言っていたのだが。

 参列者は身構えた。警備員も警戒態勢に入る。いち早く国王夫妻と王太子夫妻の安全を...あら?王太子がいない。
 どうやら魔法で音だけ出したようだ。どこも破壊されてはいないが、開かれた扉の前にいるのは...




 「兄上ぇ!!?」

 「おう!お兄ちゃんがお祝いに来てやったぜえ!!」

 数年ぶりに会う兄がいた。なんだか逞しくなっている。会えただけでも涙が滲みそうなのだが...
 
 ゼルブルークがビシィ!とポーズをキメていた。しかも1人じゃない。マリーとレストとスインがノリノリで。ヘーゼルとカルウィンが仕方なさそうに。ジェイドは恥ずかしさに顔を真っ赤にしてそれぞれキメていたのだ。全員礼服にサングラス着用だ。


 警備員も王太子がそっち側にいるもんだから下手に動けなくて困っている。参列者も異様な光景に固まるしかない。


 「お兄様先程までこちらにいらっしゃいませんでしたか!?オルドー卿も!!」

 「すまない妹よ...。私だってやりたくない...んだぜ。」

 「俺も逃げきれなかったんだぜ...。」

 これにはもうポカーンとするしかない。



 「そんなことより!!プレゼントだぜ!!まずはこちら。さあ、レスト。」

 「はい。写真立てだぜ!殿下がファル様をビンタする直前、決定的瞬間、吹っ飛ぶ様をそれぞれ切り取ってあるぜ!!」
 
 「なんでそんなものがあるんですのーー!!?」

 「私の仕業ですだぜ!!」

 「カルウィーーン!!何してくれてんですか貴方ー!!」

 「いやあ。ルブ様が婚約式を録っておいて欲しいっていうから録画してたんですけどね?その後も電源切らないでいたらいいのが録れちゃって...だぜ。」

 「その語尾なんなのよ!?」

 レストがカルウィンに写真立てを渡す。


 「お次はこれだぜ!」
 マリーが取り出したのは花束。なんの変哲も無い、地味な花束だ。

 「ルファ様が昔、殿下を想って花占いしていた花だぜ!!」

 「なんで知ってるのおおーー!!」

 「誰が教えたと思ってるんだぜ?」

 「マリーだああああ!!」

 マリーが花束もカルウィンに渡す。


 「あー...。俺からのプレゼントだぜ。あ、オルドー家からはちゃんと別にあるからな。
 で、こちら。お前らのサングラスだぜ。」

 「ルファもシェリーも俺らの仲間だからな。皆でお揃いだぜ。」

 「兄上...。」

 「ゼルブルーク様...。」

 さっきから絶叫していた2人も今は心の底から感動していた。仲間だと、言ってくれた。
 たとえその証がサングラスだとしても。


 ヘーゼルはプレゼントをカルウィンに渡す。そろそろいっぱいになってきた。

 「さてと...そろそろだな。
 ルファ。改めて結婚おめでとう。兄として心より祝福する。俺は貴族籍を抜けて平民になるが、お前らはいつまでも俺の大好きな弟と妹だ。
 それと、傷付けてごめんな。無視したり、酷い事言ったりしたよな。言い訳になるが、あれは本心じゃない。絶対に。
 だから...もし許してくれるなら。お前の子が一人前になって暇になったら、また一緒に過ごそう。うちに招待してやるよ。狭いけど。」

 「兄上...。はい!それまで精一杯頑張ります。」





 そしてゼルブルークが腕を掲げる。

 「最後のプレゼント、受け取りやがれええーーー!!」

 天井近くに氷の塊を出現させる。それをスインが粉々に砕き、同時にヘーゼルが隠し持っていた薔薇の花びらを風を起こして舞わせる。


 「素敵...。」

 誰かがそう呟いた。真っ赤な花びらが氷の粒と共にキラキラと輝いている。誰もが目を奪われた。
 そしてその隙に。

 



 「じゃあな。ルファ。それとシェリー。俺の初恋は確かにお前だったみたいだ。」

 「!ゼルブルーク様...?」

 声しか聞こえない。姿を消しているようだ。



 「そして母上。まあこんな不出来な息子でしたが、これからはルファを見てやってくださいね。」

 「...何を言っているの。貴方もいつになっても私の大事な息子です。だからそうね...孫が産まれたら見せにいらっしゃい。」

 「あれ、バレてる?流石母上。」

 「ふふ、母を侮ってはいけませんよ?」

 「なんの話ですか?母上、兄上。」

 「まだ秘密。そのうち分かるぜ!!」

 「なんですかそれ...だぜ。」

 「何貴方までノってるんですか!...だぜ。」

 あっははは!とゼルブルークが笑う。ゼルファートとジェリンナもつられて笑ってしまう。





 そして。いつの間にかゼルブルークの気配は消えていた。


 カルウィンとスインはそれぞれライミリウム邸と王城に逃げた。ジェイドとヘーゼルは参列しているため逃げられず、式が終わるまで小さくなっていたのだった。



 「ありがとうございます、兄上...。でも、結婚式に乱入したのは許しませんから!
 僕も貴方の結婚式に...は、多分無理だから、子供の結婚式にプレゼント持って突撃してやりますよ!!」


 ゼルファートは明後日の方向に決意した。






 気を付けろ。シャルトルーズ、マルベリー。


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