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第2章 アカデミー1年生
24 暴走令嬢と気弱令嬢
しおりを挟むどうしてこうなった。俺は昨日ぶっ倒れた。反省はしているが後悔はしていない。
じゃなくて、それは今はいいとして。
結局昨日はいつの間にか寮にいて、今朝は全快してたので普通に登校。
ファルたち友人に心配されつつ席に着いた。そうしたら俺を呼ぶ声が聞こえて、そちらに目をやる。そこにいたのは。
「聞いていらっしゃいますの?」
「...聞いております。」
誰、このお嬢様。
俺の席の前に立っている女生徒。透き通る白い肌、大きな琥珀色の目。グレーの長い髪をなびかせている少女。
うん、文句ない美少女と言える。俺にとってはマルのが可愛いけど。
「もう一度お聞きします。貴方、昨日の魔法実技で開始早々試験を突破なさったそうね?」
「はい、その通りですが...。」
「どの位かかりましたの?」
「そうですね...10分程度でしょうか。」
「.........。」
黙ってしまった。誰か助けて!周囲に助けを求めるが、貴族すらも目を合わせようとしない。誰だよこのお嬢様!?
「失礼。シャルが困っているよ。まず名前を教えてあげてくれないか?」
ファル...!お前、お前ってやつは...!
「...失礼致しました。私はDクラスのヴァレンシアンジュ・ブーゲンビリアと申します。貴方の名前は存じております、シャルトルーズ様。紹介は不要ですわ。」
「...はい。」
名前なっが!とは言えない。ピカソには負けるしな。
「それで、ブーゲンビリア様は僕になんの御用でしょうか...?」
「....んで」
はい?聞こえん。
「なんで!私よりも早くクリアしてますの!?」
「はいぃ!?」
「私は一昨日の授業、20分でクリアしました。今年の新入生の中で最も早かったと褒められましたの!私が一番だと思っていましたのに、貴方更に早いってどういうことですの!?」
俺の机をバシバシ叩きながら捲したてるお嬢様。やめてやめて、壊れちゃう!
「お、落ち着いてくださいブーゲンビリア様!なぜと言われましても...!」
めんどっっ!!だから目立つのは嫌なんだ!こういう奴は必ずいるんだから!
でも魔法で手を抜くのは絶対に嫌だ!
俺が口を開こうとしたら、
「何をしている。ブーゲンビリア、君のクラスは隣だろう?もうHRが始まるから、教室に戻りなさい。」
「先生!」
「...それでは私はこれで。」
先生!俺の救世主その2!先生の言葉を聞き優雅に出て行く彼女。もう来ないでね。
「災難だったな、シャル。」
「本当に。でもなんで俺の成績を他クラスの人が知ってるんでしょう?」
「......さあ?」
「なんですかその間は!先生何か知ってますね!?」
「あ。」
クラスメイトの1人が声を上げた。確か下位貴族の令嬢だったか。失礼と思いつつ、ずずいっと聞いてみる。
「何かご存知ですか?」
「ええと...フェルト先生が、ですね。昨日他の魔法教師の方々にシャルトルーズ様を自慢しておりまして。
誰よりも早く、正確に試験をクリアしたと。他にも聞いてらっしゃる方はいましたから、ブーゲンビリア様もそこから辿りついたのではないでしょうか?」
「「............。」」
先生。なんで目ぇ逸らすんですか?
「何してくれてんですかー!」
「さ、皆席に着きなさい。欠席は...」
「逃げた!
はあ...。まあ、自慢されるのは嬉しいけどさあ。あの様子じゃ、遅かれ早かれ絡んできただろうし、害がなければ放っておこう。」
...絡まれた時点で害だな。もうやだ、我儘令嬢め。
そしてまた魔法の時間!他の授業?なんの変哲も無いただの座学だよ。語るまでもなし。
まず昨日試験クリアまで行けなかったのが11人。Cクラスは25人だから、約半分か。昨日の放課後練習したみたいで、みんな次々クリア。俺の出番はなさそ...ありそう。
1人持続できてないのがいる。朝の下位貴族の令嬢だ。えーっと、確か名前は...
「シャル。あそこのニンフを頼む。」
「イエッサー!」
そうそう、ヘレナ・ニンフだ!
「ニンフ様。お手伝いしましょうか?」
「!シャルトルーズ様。よ、よろしいのですか?」
「構いませんよ。僕なりのやり方ですが。」
「お願いします!」
かくかくしかじか
「どうでしたか?」
「出来ました!ありがとうございます!!」
「どういたしまして。しかし、すぐにマスターしましたね。筋はいいと思うのですが...。」
「ええと...何故なのでしょう...?」
俺が聞きたい...。
「僕にもわかりませんが...お互いに頑張りましょう。」
「は、はい。」
ニンフ様と別れていつもの3人組で集まる。ファルはいない。
あいつは平民を差別することはしないが、俺の友人だからと親しくするやつでもない。俺も同じ。ファルの友人と親しくするつもりはない。もちろん、友人になりたいと思ったら別だが。
「おかえり。」
「お疲れさん。」
「おう。でもあの令嬢すぐ出来たぞ?お前らも2、3回失敗したのに。」
「へえ、すげえじゃん。」
「だろ。なんで自分じゃあ出来ないのかな?」
「んー。...僕ちょっとわかるかも。」
「え?」
「多分ニンフ様、自信が無さすぎるんじゃない?いつもオドオドしてる感じだし。」
「...なるほど。魔法を発動させても『これでいいんだろうか。間違ってないだろうか?』って考えちゃうんだなー。」
「そこでクラスでもいち早くクリアし、魔法科筆頭教師の先生も周囲に自慢するほどの優秀なシャル直伝。『この人が言う通りにやれば間違いない!』ってトコロか。」
「...そりゃ良くないな。そうだとしても、俺はいつまでも面倒見れないし。ま、先生に相談しておこーっと。これ以上は俺の仕事じゃないわ。」
さてさて、今日の授業はなんだろな!あと20分位しかないけど、何教えてくれんのかなー!
生徒が全員整列したので、先生が説明を始めた。何か箱を持ってるが、なんだ?
「今日の授業だが、実は浮遊の練習の続きだったんだ。皆初めての魔法だからな。時間を多めに取っておいた。一度でもなんでもいいから魔法を発動できれば、今後は楽になる。
そして来週、四大元素の習得をする。特に準備する物は無いが覚えておくように。
で、今残りの時間だが。浮遊の精度を高める簡単なゲームでもするつもりだ。
折角だから順位も設けようか?競っているうちに腕も上がるしな。入賞特典は何にしようか...。」
「はーい!はいはいはーい!!俺に案があります!」
「...言ってみろ。」
「放課後魔法の練習させてくださあい!!」
「......皆それでいいか?」
みんなの反応を見る限り、あまり嬉しそうじゃないな。なんで?
「それで喜ぶのお前だけみたいだが。」
「なんで?」
「なんでって...お前な...。
...いや、今度にしよう。じゃあお前の特典はそれでいい。僕が付き添ってやる。」
「よっし!」
放課後にまた新しい魔法覚えよーっと!
「皆はどうだ?と言っても特に欲しい物も無いか?」
えー。なんでよ?思うんだけど、みんな魔法に関心無さすぎるんじゃない?
なんつーか、「授業だから」とか「必要だから」とか「仕方なく」って感じするんだよな。俺は必要ない魔法もガンガン覚えるつもりだが。
もしかして、魔法が身近すぎるのかな。異世界から来たからしょうがないけど、俺の考えはやっぱり異端なのかな...。
...いや!俺はもう土蜘蛛じゃ無いんだから。昔の事を思い出すんじゃない。
大体なあ!魔法使いになれるって聞いてテンション上がんねー日本人はいねーよ!!いたら連れてこいって話。こられても困るけど。
「特に意見もないし、保留にしとくか。入賞したら何か簡単な望みを考えておくように。
じゃあルールを説明するぞ。今から全員に1人5枚ずつ葉っぱを配る。それを10分浮かして維持してみろ。持続時間、残った枚数で合計して順位をつける。
この葉っぱは魔法で作られている。床に落ちた時点で消える仕組みにしてあるから嘘はつけないぞ。そして僕が合図したら、何か物体に触れても消える。落ちそうになったからって掴んだりしたら終わりだ。」
...むしろそっちの魔法教えてよ。
「皆行き渡ったな?全員浮かせたら始めるぞ。あと全部落とした生徒は、ややこしいからその場に座りなさい。他の人を見て勉強することだ。」
「はー。高さ1メートル地点。50立方センチメートル。〈ゼログラビティ〉」
そこにポイポイっと葉っぱを突っ込む。
「はじめ。」
意識して見てるだけだよ。つまらん...。
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