最後の人生、最後の願い

総帥

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第2章 アカデミー1年生

25 嫌悪感

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 「...10分だ。立ってる者は維持したまま前に出なさい。」


 
 やっと終わった。まあ練習と思えばいいか。地道にコツコツ、だからな。って、しまった。

 「先生、俺場所を固定しちゃってるので動けません。」

 「魔法の移動は無理か?」

 「んー...今は無理ですね。精度、いや熟練度が上がれば動かせるかと。」

 「そうか。まあ今はいい。5枚全部浮いてるな。よくやった。」

 褒められた!いや~照れますなあ。俺ってば調子乗っちゃうよ~?
 まあふざけるのは後にして、あんまりみんな残ってないな。全部浮いてたの俺だけだし。1枚だけの人も多い。多分全部は無理だから1枚に絞ったのかな。いい判断だと思うよ。

 立っているのは俺含め7人。
 ファル、セイル、ニンフ様、あと3人。セイルだけ2枚だな。

 「では1位はシャル、2位がセイルだな。それ以下は同点だ。
 じゃあ特典はセイル、何かあるか?」

 「そうですね...。特には...あ。では俺もシャルと一緒に放課後残っていいですか?」

 「!いいじゃん!一緒にやろーぜ。」

 「おうよ。」
 ニヤリ。って笑うんだよなこいつ。微笑んでるんだろうけど、外見で損するタイプだなぁ。

 「それでいいのか。わかった。さあ、そろそろチャイムも鳴る。少し早いが終了だ。今週はもう魔法学は無いから、四大元素の儀式についてはまたHRで伝える。」


 はーい、とみんな返事をして移動の支度を始める。俺らも行くかーって言ってたら、ニンフ様が近付いてきた。
 そして俺の前で手を組み、こう言った。




 「シャルトルーズ様、素晴らしい魔法でしたね!私も貴方に教わった通りにしましたのに、1枚しか残りませんでした。
 よろしければ、もっとコツを教えていただけませんか?今日の放課後、私もご一緒したいです!」


 ゾク...






 なんだ...?寒気がする。ヤバい。俺、こいつと関わりたくねえ...!



 俺の顔面はきっと蒼白だろう。自分で分かるし、変な汗もかいている。それを見たセイル達が、ニンフの前に立とうとしてくれている。
 すげえ嬉しいが、駄目だ。相手は下位でも貴族。話しかけられた俺が対応しないといけない。

 「申し訳ありません。今日はゲームの特典ですから、僕とセイルと先生だけなんです。
 それと魔法についてですが、これ以上は上手く説明出来ないんです。ご了承ください。」

 俺は声が震えないようにするので精一杯だった。本当は会話もしたくない。


 「そうなのですか?残念です...では今度はご一緒させてくださいね!教えていただけなくても、側で見ているだけでも勉強になりますので。」

 「機会がありましたら。ではニンフ様、失礼します。」

 「あっ...。」





 なるべく早足で進む。あの女と一刻も早く離れたい!



 「ッ、シャル!どうしたんだ!?」

 「おう...ファルか。」

 教室に入った途端にファルが近寄ってきた。俺の顔色が悪いから心配させてしまったんだろう。

 「わり...説明する余裕ないわ...。」
 俺は力無く言い、席に座る。立ってるのもしんどかったんだよ。
 
 「な...?君たち、アルトにセイルだったね。彼に何があったか説明してくれないか?」

 「は、はい!では僕が。」



 アルト...お前、貴族と話すの苦手なくせに。ファルと初めて顔合わせた時はパニクってたくせに。
 セイルじゃ口が悪いから前に出てくれたんだな。...本当に、俺は友人に恵まれてる。



 「先ほど3人で練習場を出ようとしていたら、ニンフ様がシャルに話しかけてきました。「先程の魔法は素晴らしかった。よかったらまたコツを教えて欲しい。それと放課後、自分も参加したい」...とおっしゃってました。だよね?」

 「ああ、大体合ってるな。
 ライミリウム様。あの令嬢はシャルに浮遊のコツを教わったんです。そん時から多分、こいつに依存しようとしてます。」



 「そうか...ありがとう。しかしヘレナ嬢か。気弱な印象しかないな...。それだけで君がこんな風になるなんて。」

 「あー...。落ち着いたら、説明してやるよ...。
 ちと俺医務室で寝るわ...。悪いんだが誰か一緒に来てくんねえ?俺1人だと、あの女がまた来る気がする...。」




 (女性(女)には紳士なシャルがあの女呼びするなんて...)
 3人は同じ事を考えていた。


 「医務室より今日はもう早退した方がいいんじゃないか?寮に帰るといい。」

 「駄目だ...放課後、魔法やるんだから。」


 「ったく...。ライミリウム様、俺が付き添います。アルト、先生に言っとけ。」

 「わかった。任せて!」

 「そうか。頼んだぞ。授業が終わったら僕らも顔を出す。」

 「はい。シャル、歩けるか?肩貸すから。」

 「さんきゅ...。なんとかいける。」






 広い廊下を歩いていく。以前レクリエーションで歩いた時は楽しかったが、今は医務室が遠くてイライラする。
 
 「大丈夫か?この学校、無駄に広いよな。」

 セイルも同じ事を考えていたらしい。少しだけ和んだ。
 


 しっかしこの程度でこんな弱るとは...我ながら情けない。はあ...。




 なんとか医務室に着いた。昨日はいなかった養護教諭がいる。

 「えーと、ノーイット先生。1年Cクラスのシャルトルーズとセイルです。シャルの具合が悪いんでベッド貸してください。」

 「あら、特待生くんね。って、酷い顔よ!?」

 「失礼...ですねぇ...。」
 
 「そんな無理して笑わないの!熱は?具合悪い?吐き気や寒気は?」

 「吐き気と寒気は、あります。でも、精神的なものなので、休めば治ります...。」

 「精神的なって...まあとにかく、それならベッドで寝てなさい。あなたは付き添う?」

 「はい。」



 俺はやっと横になれた。あー、しんど。...なんだったんだろうなあ、さっきの。




 ...昔からを持つ人間が大嫌いだった。嫌悪している。さっきの女はそれだろうな。
 俺は人の好き嫌いはさほどない。精々「この人と友達になりたいなー」や「こいつ嫌いだな。近付かんとこ」くらいだ。それは、俺のどの人格でも変わらない。


 



 「...セイル。悪いな。」

 「うっせえ。早く寝て、あんな女のことなんざとっとと忘れろ。」

 こいつは優しいな。怒られるから言わないけど。




 お言葉に甘えて眠りにつく。やっぱ付き添い頼んでよかった。安心して寝れるわ。








 懐かしい、夢を見た。


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