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第2章 アカデミー1年生
27 私/俺の集大成、それがシャル
しおりを挟む懐かしい夢を見ていた。
今までの俺/私の記録といってもいい。
現在のシャルトルーズを作り上げた過去の私/俺達。出会い、別れ、行動、全てがシャルトルーズを形成するのに欠かせない要因だ。
正直言って、あの蜘蛛が願った人間というものは曖昧過ぎる。人間に生まれたいとは思ったが繰り返したいとは願ってない。という事は、蜘蛛の理想の人間になる必要があるのでは?
ふざけんなこの野郎(?)。お前の理想なんて知らねーわ!温かい家族が欲しいのであれば、何度も機会はあった。それに今の家族も俺は大好きだ。
そして繰り返しの中で知識と感情というものをどんどん吸収していった。一般的に俺はほぼ人間らしいと言えるだろう。
つまり今の俺、シャルトルーズが自分の人生に満足し、悔いはないと心の底から思えれば転生は終わるだろうか。...多分。
前回、文太は死ぬ直前に妖力をフル解放した。全て使っていいから終わらせたいと願った。別に妖力って無くならないけどね。もうとっくに全快してるわ。
その結果時空を超えてこの世界に来た。つまり?この世界でなら俺/私の願いが叶う?
...わからん。また今度考えよう。
それに懐かしい人達を思い出した。
刹鬼に岩鬼、そして玖姫。人間の親友はまた別だが、絢のかけがえのない友人で家族だ。
...正直に言おう。最近の人生、特にこの世界に来てからはあまり思い出していなかった。
彼らは俺/私達にとっても大切な存在なのは確かだが、やはり絢の大切な人達という印象が強かった。大丈夫とは思うけど、呼び出して絢はどこだ。とか言われたら俺の精神ダメージはハンパじゃねえ。でも、約束したんだから。
...後で呼んでみよう。
とにかく、そろそろ起きないと!あのニンフに怯えてる場合じゃねえ。
あの女はアレだ。責任逃れ男と同じタイプの人間だ。私/俺がいっちばん嫌いな性質。もうこれ以上ビビってやんねえからな。
俺は今医務室で寝ているはず。ゆっくりと瞼を持ち上げ、覚醒する。目の前には。
7人の顔があった。
「ぎぃやああああぁぁぁーーーー!!!」
俺の絶叫が木霊した。
「ごーめーんってばー。機嫌なおしてよー。」
「そもそもお前が目覚め早々絶叫したのが原因だろーが。」
「お前らが雁首揃えて俺をガン見してたのが原因だっっ!!」
俺は今絶賛不機嫌だ。あの後全員で俺のこと笑いやがるんだから!
「みんな君を心配してたんだぞ?眠り始めてから2時間の間、呼吸以外微動だにしなかったらしいじゃないか。」
ここにいるのはアルト、セイル、ファル。あとノーイット先生。ここまでは分かる。
「リアも来てくれたのか。」
「アルトに聞いたわ。」
「そっか。ありがとう。」
純粋に嬉しい。俺は彼女を友人と思っているが、相手は分からない。でもこうしてお見舞いに来てくれたし、自惚れてもいいかもしれない。
「...うん。」
で、問題は。
「なんで兄上とジル先生がいるんです?」
「なんでって。昼休みにファルから聞いたからだよ?授業サボってしまったね。」
「僕はノーイット先生から報告されて来た。今の時間は授業ないから問題ない。」
「はあ...、って今何限目?」
「5限目がそろそろ終わるよ。」
「もうそんな時間か。じゃ、チャイムが鳴ったら戻るか。ノーイット先生、お世話になりました。」
「いいえ。それより貴方、戻って大丈夫なの?セイル君に聞いたけど、原因はまだ取り除けてないんでしょ?」
「ああ、それですけど。
もう、大丈夫です。」
え。とみんなが言う。そんなに心配しなくていいのに。リアやジル先生、兄上も、俺が倒れた原因を聞いたんだろうな。
でも本当に大丈夫なんだよ。
「あ。チャイム鳴ったな。さ、教室に戻ろうぜ。」
俺は、歩き出す。止まってる暇はないんだから。みんなが慌てて後ろから付いてくる音が聞こえる。1人じゃないから、俺は頑張れるんだよ。
「シャルトルーズ様!心配しました!お加減はもうよろしいんですの?
それと魔法についてですけど。儀式が終わった次の授業、隣で受けさせてくださいね。もちろんお礼しますので!」
早速来た。
こっちにお加減を聞いといて返事は聞かない。授業について勝手に決める。俺がお礼に釣られると思ってる?いい加減にしろ。つかあのオドオドした感じどこいった。
「ニンフ様。僕はこれから自分の魔法を極めるのに忙しいのであなたと一緒に受ける事は出来ません。隣で見学されるのは構いませんが、どうか声をかけないようお願いいたします。もちろんお礼は結構です。それでは。」
俺は一息で言い切った。すげえアホヅラしてるがどうでもいい。
これで引き下がるとは思えないが、ひとまず牽制しておかないと。それに大丈夫とは言ったけど、完全に克服したわけじゃない。なるべく目も合わせたくないし近付きたくない。
俺は別にいい子ちゃんじゃないからね。嫌いな奴は嫌いだよ。もし目の前で死にそうになってて、俺が助けられるならまあ助けるけどさ。
なんか後ろで聞こえる。気のせいだな。
とっととHR終わらせて魔法の特訓だ!
という事で放課後。室内練習場です。
「さて、2人は何か魔法を使いたいのか?」
「えーと、俺はシャルの魔法見たかっただけなので。」
「え、そうなの?」
びっくり。そんなに興味あった?
「そうだよ。俺は四大元素が使えるようになったら本格的に学びたいんだ。
でもお前の魔法、チラッと見たけどすごかった。あの女じゃないけど見せてもらっていいか?」
「いいに決まってんじゃーん!でもそうだよなあ。四大元素が必要な魔法ばっかりだよなー。」
やっぱその方が魔法!って感じするよな。炎を出したり水を操ったり。早く週明けないかなー。
「あ、そうだ。僕もお前のその魔具に興味がある。使って見せてくれないか?」
「え!もちろんいいですよ!いやー、先生もやっっっとこの魔本の格好良さに気付いたんですね!」
「(興味あるのは性能のほうだが...)まあ、そうだな。」
「(先生性能しか興味なさそうだな)じゃ俺はまず見学するわ。」
「おー!でも俺、今日は熟練度上げるだけのつもりなんだ。
そうだ!セイル、ちょっと手伝って。」
「俺にできる事ならな。」
俺はセイルを練習場の真ん中に立たせる。そして本を取り出し、大きくする。
「今からちょっと浮かすけど、心配すんなよ。上下の働きがなくなるから自由に動いてみろ。」
「おお...?」
「セイルの周囲...4立方メートル〈ゼログラビティ〉」
「うおっ!?」
「うん、範囲が広げられたな。まずは5立方メートルを目指そう。その後は声に出さないように。最後に範囲の移動だな。」
「おーおぉー。お~...。」
なんか楽しんでるな...。わかる。超わかるぞセイル!さて、検証だ。俺は気になっていたことを聞いてみた。
「ちょっと聞くが、それは範囲が決められた魔法だ。どこかに境界があると思うから、近づいてみてくれ。こう、泳ぐ感じで進んでみ?
先生。大丈夫とは思うけど、もしもセイルが落っこちたら掴まえてください。」
「ふむ、わかった。」
「おう。んー...。......あるな。」
「どうだ?出れるか?」
「.........いや、無理だ。なんかこう...これ以上進めないっていうか、綿のような壁がある感じ?」
「へえ!メモメモ。これなら安全だな。...敵を捕まえるのにも使えそうな...要検証っと。
じゃ、先生。今度は先生が近付いてみてください。」
「まあ、いいけど...。この辺りか?」
「そうですねー。さ、どうぞ!」
「どれ、うおぁっ!?」
先生が手を近づけると、無重力に引っ張られた。今はセイルと一緒に浮かんでる。
「なーる。来るもの引き込む去るもの追う、と。
はい!検証は終了です。じゃあ解くので、2人とも地面に足向けて。......はい、〈解除〉」
2人を降ろしたあと、〈インビジブル〉と〈ニュートン〉も検証した。
結果。〈ニュートン〉は特に新発見なし。〈インビジブル〉はイメージ次第で手を増やせた。今は3本の腕を操れるぜ!
この後俺は時間ギリギリまで魔法の特訓に明け暮れたのだった。
俺はホクホクだったが、セイルと先生は疲れ切っているようだった。
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