53 / 111
第2章 アカデミー1年生
28 再会(感動の、とは言ってない)
しおりを挟むその日の夜。俺は日課の瞑想を終わらせ、精神統一する。
絢の友人達を呼ぶために。
特別な言葉は必要ない。ただ相手を思い、名を呼ぶだけ。今までずっと後回しにしていた。もう、これ以上彼らを待たせるわけにいかない。
(なあ、絢ばあさん。あいつらに会いたいだろう?だから、俺に教えてくれ。あいつらの事を。)
「......いくぞ。」
頭の中に次々と浮かび上がるかつての光景。共に狩りをし、眠り、遊び、過ごした日々が。感情の薄かった絢ばあさんよりも、よっぽど人間らしかった彼らの姿が。
俺の周囲を妖気の渦が発生する。...いける。
最後に、声が聞こえた。気がした。
ーーー誰がばあさんだ!クソガキ!ーーー
「ふふ...ったく。ーーーさあ、来い!
刹鬼!岩鬼!玖姫!
俺の声に、応えてくれ...!」
...!来る...!妖気が、一層濃くなり...!
バアアァァァアアン!!
爆発した。
どたどたどた!ゴンゴン!
「どうしましたかシャルトルーズ君!」
ガチャ
「あ、寮監さん。ごめんなさいうるさくて。」
「本当に、すごい音しませんでした!?魔力は感じなかったから、魔法を使った訳ではないのでしょう!?」
「ええ、大丈夫です。いやーはっはっは。部屋も壊れたりしてませんから、問題ありません。ちょっと散らかりましたけどね!」
「えぇと...一応部屋の中を...」
「いやーすいません!俺の部屋、今エロ本が散乱してるんで勘弁してくれませんかね!!」
「キミは大声で何言ってるの!?ああもう、部屋に入られたくないんですね!
はあ...わかりました。怪我がなければいいです。でも一応フェルト先生に報告しておきますね。」
「ええ、お願いします。では、おやすみなさい!」
「ええ...おやすみなさい。」
バタン、ガチャ!
俺は部屋を見渡す。
「なんてこった...。」
なんという大惨事。かろうじて家具は壊れてはいないが、まるで台風が去った後のよう。教科書類や服は散乱し、食器は割れて小物が全て足元に落ちている。
そしてその中心に2人の鬼と1人の人魚が正座していた...。
「説明。してもらおうかぁ?」
俺は小さな体で凄んでみた。怯んでる。効果は抜群だ!
「えぇ~と...ねえ?いえね?ワタシ達ずっと待ってたのよ。」
それはごめんね。
「それで。ついに呼ばれて嬉しくて、感情のタガが外れてしまったようで。」
要するに?
「......暴走した。」
.........。
俺は深く深くため息をついた。
感動の再会どこ行った?しかし待たせた私/俺にも責任はあるし、何よりこんな事が全てどうでもいいくらいに。
「待たせて、ごめん。...逢いたかった。会えて、嬉しい!」
「「......!」」
「俺も、嬉しい。」
「あ、抜け駆けすんじゃないわよ!ワタシもよ!すっごい待ったんだからぁ!貴方今は男の子なのね。なかなか可愛いじゃない!」
「私もだ。君と会える日を心待ちにしていた。君の名前を教えてくれないか?絢と同じ性質を持つ少年。」
「俺はシャルトルーズ。シャルと呼んでほしい。そして初めまして、絢の大好きな友人であり家族のみんな。これから、よろしくな!」
俺たちは笑い合った。みんな絢ではない俺を認めてくれた。分かってはいたが、不安だった。それでもこうして懐かしい家族と再会できた。
時代も世界すらも違うけど、これから俺たちはまた同じ時間を生きていく。ああ、絢ばあさん。そうだよ、これが、あんたの幸せなんだな。
「ま、とりあえず!みんなで掃除からだ!」
おー!と気合を入れて掃除を始めるのだった。
「シャル。これは?」
「あー、それはこっちとまとめて机の上ね。」
「わかった。」
「...にしても。」
俺は掃除しながらみんなの姿を観察する。
「なんか、絢の記憶と服装違うな?昔はみんなボロい着物だったじゃん。」
そう。なんか見た目グレードアップしてる。
まず玖姫。以前は胸元のみ簡単に布で隠してた。下は魚だしね。今は上半身のみ蝶の刺繍が入った甚兵衛を着ている。そして装飾品を多数付けている。
「海で拾ったのよ。結構良いんじゃない?それに見て!ワタシ空中移動出来るようになったのよ!以前は地面の上でビチビチしてるだけだったから、歯痒かったのよー!」
ふよふよ漂ってる。すっげえ。
次、刹鬼。なんつーか、アレ。学ランに外套着て帽子被って(角が突き刺さってる)大正!!って感じ。バンカラだっけ?腰に刀も差している。
「私は大体この時代まで生きていたんだ。この服装は気に入ってる。」
うん、超似合ってる。そしてカッコいい!
最後岩鬼。こりゃいわゆる戦国時代の甲冑だ。武将みたいでかっけえ。刀と脇差を差している。でもそれ普段は脱げないの?
「脱げる。」
おお。袴姿になった。刹鬼が語るには、岩鬼はこの甲冑に惚れてずっと着るようになったとか。わかるー。
みんなタイプは違うがそれぞれ美しい。刹鬼は正統派イケメン。岩鬼はワイルド系。玖姫は妖艶系傾国の美女って感じ。服装も相まって、そこらの芸能人じゃ足元にも及ばねえぜ。
「貴方も相当じゃない?まだ小さいけど大きくなれば通りがかった女皆落ちるわよ!」
そりゃどうも。うん、まあ自分で言うのもなんだが、俺は容姿が整っている。
そもそも強力な妖怪は総じて美しい。母(蜘蛛)も美女に化けてたし。美形の方が人間って弱いもんな!
なので強力な妖気を持つ俺は、いつの場合も美形だった。嫉妬で面倒なことになったりもするが。今のシャルも両親の要素を継ぎつつも、まだ子供ながらにイケてると思う。将来は爽やか系イケメンを目指そう。
そして掃除も終えて、寝ようとした。全員ベッドに乗ってきた。
「「「「狭い!!!」」」」
クイーンなのにー!!
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
十六歳の妹の誕生日、私はこの世を去る。
あいみ
恋愛
碌に手入れもされていない赤毛の伯爵令嬢、スカーレット。
宝石のように澄んだ青い髪をした伯爵令嬢、ルビア。
対極のような二人は姉妹。母親の違う。
お世辞にも美しいと言えない前妻の子供であるスカーレットは誰からも愛されない。
そばかすだらけで、笑顔が苦手な醜い姉。
天使のように愛らしく、誰からも好かれる可愛い妹。
生まれつき体の弱いルビアは長くは生きられないと宣告されていた。
両親の必死に看病や、“婚約者の献身的なサポート”のおかげで、日常生活が送れるようになるまで回復した。
だが……。運命とは残酷である。
ルビアの元に死神から知らせが届く。
十六歳の誕生日、ルビアの魂は天に還る、と。
美しい愛しているルビア。
失いたくない。殺されてなるものか。
それぞれのルビアを大切に思う想いが、一つの選択をさせた。
生まれてくる価値のなかった、醜いスカーレットを代わりに殺そう、と。
これは彼女が死ぬ前と死んだ後の、少しの物語。
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
王様の恥かきっ娘
青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。
本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。
孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます
物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります
これもショートショートで書く予定です。
ねえ、今どんな気持ち?
かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた
彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。
でも、あなたは真実を知らないみたいね
ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる