最後の人生、最後の願い

総帥

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第2章 アカデミー1年生

32 シャルの実力※他視点あり

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 脳筋でも不審者でも。陛下に不敬を働こうとも理事長のグラサンを奪おうとも。...とにかくあれでも俺の父さんだ。
 世間が言う英雄なんぞどうでもいい。大切なのは俺にとっては尊敬できる父親だということ。

 他人が、テメエのような野郎が貶めていい男じゃねえっっ!!!



 「剣をお望みですか。いいでしょう。ただ俺は長剣より短剣の方が得意でして。そちらでお相手しますよ。」


 「なっ!君は何を言っている!?相手はあれでも騎士だ。子供が、しかも短剣なんかで」
 「隊長様。」





 
 「俺を、誰の息子とお思いで?」

 俺は不敵に笑ってみせた。引いてる。ちょっとショック。

 「しかし今持ち合わせがありません。どなたか短剣を貸していただけませんか?」


 俺の言葉に戸惑う騎士様。心配いらないのに。



 「はい、これどうぞ。私の護身用だけどね。」

 「ありがとうございます、殿下。充分です。」

 「でも君が危険だと思ったらすぐ止めるよ?」

 「その必要はありませんよ。」

 殿下より短剣を借り前に出る。その前にセイルに止められた。


 「シャル!お前の実力は知らんけど、早まんなよ!お前の父親が馬鹿にされて苛立ってんのはわかるけど、相手はアレでも騎士だぞ!?」

 「セイル。心配してくれるのは嬉しいがまあ見てろ。あの腐った騎士の鼻っ柱へし折ってくるだけだから。」

 「シャル...?」

 セイルにひらひらと手を振り今度こそ対峙する。





 「どこからでもどうぞ、騎士様。最初に言っておきますが手加減は無用ですからね?なんなら練習用ではなく刃のついた剣でどうぞ。
 「相手が子供だったから本気を出せなかった」という言い訳は結構ですので。な、お坊ちゃん?」

 俺は手をくいくいっとやってみせる。かかってこいやってな。


 「貴様アァッ!!!」

 剣を構えて飛びかかってくる。もちろん実戦用。煽り耐性ひっくいなー。周囲は騒いでるがどうでもいい。黙って見てろ。


 さあ、遊んでやるよ。
 











※※※※※※※※※




 一体何が起きたのか。俺は呆然とつっ立っていた。

 シャルが無茶しようとしてたから引き止めたのに、なんでもないように行ってしまった。まあいざとなったら隊長さんも宮廷魔法師の王弟もいる。なんとかなるとは思うけど...。


 なんて心配、本当に必要無かった。今シャルの足元には、白目むいた騎士が倒れている。あっさりと勝敗は決した。
 
 まず斬りかかった騎士の剣をあっさりと受け止めた。そう、流したのではなく真正面から受け止めやがった。
 そのまま腕力のみで押し返し、相手がよろめいた所に一瞬で距離を詰め下から斬りかかる。相手もなんとか受け止めようとしたが、そのまま剣を弾き飛ばされてしまった。
 そして素早く背後に回り込み、服を引っ張り後ろに倒れさせて頭を殴った。圧勝だった。



 周囲の騎士達も何も言えない。なんだこいつは!?俺と同い年で、俺より細っこいくせに!どんな筋力と瞬発力してんだよ!?



 「はっ、ざまあねぇな。テメェよく騎士になれたな?こんなガキにあっさりやられちゃあ、面目丸つぶれだな。」


 シャルは相手に聞こえてないもんだから言いたい放題だ。いや、聞こえてても言う気がする...。
 こいつはいつも貴族には丁寧に対応する。だが普段は結構口が悪い。俺といい勝負だ。こんなに相手を見下すような発言は初めて聞いたな...。それにその表情は、背筋が凍りそうなほどに冷めていた。


 足元で意識のない相手に一瞥もくれずにこっちに歩いてくる。その時にはいつものシャルに戻っていた。...この友人は、本当に底が知れない...。







※※※※※※※※※



 「ありがとうございました、殿下。いやー流石王族御用達。護身用とはいえ見事な意匠に性能ですね。長剣を物ともしないとは。」


 そう言いながら目の前の少年は私に短剣を返す。それは短剣の性能ではなく君の腕が良かったからだろう、と思ったけど言わなかった。

 何者だ?この少年は。いくら英雄の子とはいえ、今のは8歳の動きではない。しかも動きだけでなく、その佇まいも百戦錬磨の騎士並みだ。


 「お見事だったね。どこで剣を教わったんだい?やはりお父上からだろうか?」

 この流れなら聞いてもおかしくはないだろう。私だけでなく騎士達も知りたそうにしている。最早誰も倒れているマクガラなど気にも留めていない。


 「父にも教わりましたが、ほぼ我流ですね。」

 なんでもないように言い放つ少年。...嘘をついているようではないな。しかし信じられない。それに魔法で身体能力を上げた訳でもないのに、素晴らしい能力だ。成長したら...もしも敵になったらと思うと恐ろしい。今のうちに兄上にも相談して、彼を手に入れておかないとな。



 しかし先程まで兄上に怯えていた少年と、ついさっき戦っていた少年は本当に同一人物なのだろうか...。





※※※※※※※※※




 やり過ぎたかな。こんなガキが腐っても騎士様を瞬殺しちゃったからねー。スッキリした。



 「き、君。将来騎士になる気はあるか?」

 隊長さんが聞いてきた。まあ優秀な人材確保だよな。自分で言うのもなんだが俺は強い。
 これまでの経験だけではなく、俺にはこの世界にはない妖力がある。その力を糸にしたり身体能力に変換できる。だから俺は筋力はそこそこに怪力を使える。でも、騎士ねぇ...。



 「少なくとも今の騎士団に入るつもりはありませんね。」

 足元のゴミを見ながら言う(スネチャマはス◯夫に失礼なのでやめた)。隊長さんはビクッとした。


 「それに俺の戦闘スタイルは騎士様向きではないですよ。俺は勝つためなら手段は選ばない派です。さっきのだって、背後に回らなければもうちょびっと苦戦しましたから。
 ...どっちかっていうと暗殺者向きですね。」


 アハハーと言ってみたが失敗だったようだ。みんな顔を青くしている。ジョークなのにぃ。




 「そんな事より、余計な時間を食ってしまいましたね。俺たちはもう帰ります。」


 「そうだね。さ、送ろう。掴まって。」

 セイルと俺は殿下に掴まる。あー、疲れた。とっとと帰って寝よ。



 「それではお騒がせしました。」

 「あ、ありがとうございました。」



 シュッ




 「...末恐ろしい少年だな...。」

 隊長の呟きに誰もが心の中で同意するのだった。










 「はい、ここでいいかな?」

 殿下は1年の教室近くに送ってくれた。


 「はい、ありがとうございます。っと、理事長に報告に行かないと...。」

 「ああ、私が言っておくよ。別件もあるしね。」


 ...ああ。俺の事を報告すんのね。当然か。


 「では俺たちはこれで失礼します。」

 並んで頭を下げる。そして教室にカバンを取りに行き帰った。





 「なあシャル。お前は何者だ?」



 帰り道、セイルが聞いてきた。俺は寮だからこの辺でお別れだ。

 「俺は、俺だよ。英雄の息子とやらで、平民のシャルトルーズ。それ以上でも以下でもないよ。」


 真っ直ぐにセイルの目を見て言う。前世なんぞの話をする気はないし、これが俺に出来る答えだ。



 「セイルとアルトとリアの友人で。ファルとリク兄上の従兄弟で。ルカとライラっつー...あいつらは...ライバルがいて。そんな、ただの子供だよ。」


 人外の友人も3人いるが、いつか必ず紹介するからな。





 「......そうか。うん、わかった。

 いつか、お前と並べるように俺も頑張るからな!じゃあ、また明日だ!」


 「おう!じゃあなー!」


 セイルは走り去った。頑張れよ。

 うーん。なんか青春してるな、俺。




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