最後の人生、最後の願い

総帥

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第2章 アカデミー1年生

31 陛下と強制エンカウント

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 「皆、精が出てるな。」


 ?なんか、後ろからすげえ重低音ボイスが聞こえたが。振り向こうとしたら騎士様が全員膝をついた。ま、ま、まままさか...!?
 全身から冷や汗をかきながら、そろりと振り返る。簡素ながらも上質な上着。長い金髪を三つ編みにして横に垂らしている、40歳前後と思われるこの男性。おば様と王弟殿下にどこか似てらっしゃる。......陛下だこれーーー!!!!
(この間わずか0,5秒)


 俺は高速で跪く。過去最高に素早い動きが出来たと思うのだが。隣でセイルが慌てて俺の真似をしている。こいつも周囲の反応から目の前の人物が誰か理解しただろう。目に見えて緊張してら。俺には負けるが。



 「楽にしなさい。君達もだ。ジークリンド、この子供達は?」

 「兄上、可哀想に怯えてますよ。この子達は今年の【宝珠】です。騎士団の見学に連れて来ました。」

 「そうか。...怯えなくてもよい。名はなんという?」



 ぎゃーーーーー!!!なんで名を聞く!!?ここは「そうか、頑張りなさいよ」な感じで去ってってよ!!国王陛下のくせにこんな子供まで気にかけるなんて素敵です。でも俺だけはスルーして欲しかったぁーーー!!

 


 「セ、セイルと申します。」
 俺が答えないもんだからセイルが先に答えた。イヤアァアーーー!!

 ああもう!腹をくくれシャルトルーズ。さっきから陛下の視線バシバシでもう耐えられん。


 「シャルトルーズ、と申します...。」
 ハイ名乗ったよ!どっか行って!!



 「そうか...君はどこかで会ったことがあるか?」




 終わった...。俺目元は父さんにソックリって言われてんだよな...。
 こうなったら先手必勝!勢いよく90度に腰を折る!

 「ゼルブルークの息子でございます!陛下におかれましては我が父が大ッ変ご迷惑をおかけしたようでして僕が代わりに謝罪いたしますッ!!ごめんなさぁい!!」

 言ったったぞ!さあどうくる!?






サワサワ

ピチチチ...


アハハ... おーい...






 
 ...静かだ。色々な音がよく聞こえる。

 そろそろ腰が痛い。ちろりと陛下を見上げてみる。



 「............。」

 陛下...目を見開いたまま微動だにしない。ついでに周りを見渡すと、騎士様達も同様だ。

 「セイル...なにごと?」

 「騎士様はお前が英雄の息子だって分かって固まってんじゃねえ?陛下は分からんが...。」

 「え英雄!?そうなの?」

 「なんでお前が知らないんだよ。歴代最年少で特殊魔法を取得。先代ライミリウム家当主の悪事を暴き、共犯者を捕らえて回る。弟の初恋の為に自ら身を引いた心優しい兄。他にも数えきれない伝説が残っているんだぞ。」

 「うわ。改めて聞くと恥ずかしいな...。」




 「君が...ゼルブルークの息子?そういえばアカデミーに通うかもしれないと聞いたが。
 .........本当に?」

 復活した。

 「...残念ながら本当です。父はゼルブルーク、母はマリー。ついでに妹はマルベリーです。」

 「...娘がいるとか言ってたな。そして君はあいつによく似ているな...。」

 「そうで...しょうか...。」






 再び沈黙。そこに救いの手が差し伸べられる。


 「陛下。シャルトルーズ君が可哀想ですよ?何か声をかけてあげて下さいよ。」

 陛下の後ろの方から声が聞こえる。もしや彼は。

 「分かっている。あー...ごほん。シャルトルーズと言ったな。怖がらせてすまない。...私は別に怒ってなどいないから、謝罪も必要ない。」


 「そうなの...ですか?」

 「ああ。しかし君はあいつの息子とは思えないほどに礼儀正しいな...。なあスイン。」

 「謎の感動がありますね。」
 やはし彼はスイン様か。めっちゃウンウン頷いてる。意外とノリがいいという陛下の側近。そして父よ。俺父さんの事知る人みんなにこう言われてんだけど。


 「ああ、ゼルブルーク殿の息子か!なあんだ、知らなかったよ。」
 殿下がそう言うが、わざわざ言いふらす事でもないし...。




 「その...シャルトルーズ。今年の特待生はとても優秀だと聞いている。その調子で励みなさい。」

 「はっ、はい!!」

 うわっ!めっちゃ嬉しい!うーわー。ソワソワウキウキえへへー。


 「...どうした?シャル。」

 「え!?あ、いや。父さんが慕っていた陛下に褒められたのがすごく嬉しくて...。いやぁ。俺もっともっと頑張っちゃおうかなぁ。へへー。」

 そんな調子に乗っている俺を陛下とスイン様、殿下が目を細めて見ている。それがまた、嬉しい。




 「では、またな。シャルトルーズ、今度は個人的に招待しよう。」

 「はいっ。」


 陛下とスイン様が去っていく。後姿もかっけええ!あんなにビビってたけど、今はもう大丈夫。


 「きみ!ゼルブルーク様の息子さんだって!?」
 「騎士団入らない!?」
 「彼今どこ?」
 「わぁ~!俺英雄様に憧れてたんだ。」
 「しかも【宝玉】か。親子だなぁ。」

 騎士様達が駆け寄ってきた。みんな陛下がいなくなるのを待っていたようだ。本当に父さん英雄なんだな...。


 「ほーら。そこまで。少年達は帰る時間だ。2人とも、あまり見学出来なくて悪かったね。」

 「いえ、とても勉強になりました。」

 「俺もです。ありがとうございました!」



 
 「おい待て!」

 ...?声の方を見ると、騎士様の青年がこっちを睨んでる。

 「うん?なんだ?」

 「あ、いえ殿下ではなく...英雄のガキ!」

 「僕ですか?」

 「そうだ!」

 俺にご用か。やーな予感。



 「英雄のガキだからというだけで陛下の目に留まっただけでいい気になるなよ。そもそも我が家は英雄なんぞ認めていない。
 いえ、陛下を貶めるつもりではないのです殿下。ただ私は貴様のようなガキは認めん。それに2人共平民のくせにこんな所に来やがって。立場を弁えろ!
 いえ殿下、こいつらを連れてきた貴方を責めている訳ではないのです。」



 なんか語り出した。...この人からはス◯夫に通じるものを感じる。心の中でスネチャマと呼ぼう。
 ちらっと殿下を見上げてみる。にっこり笑って頷いた。好きにさせてくれると解釈しておこう。
 俺は一歩前に出る。

 「左様ですか。では貴方は僕に何をお望みでしょうか?」

 「ふん。今すぐ出て行き、二度と王宮に足を踏み入れるな!」

 イラ...



 「それはお約束出来ません。何より先ほど畏れ多くも陛下より招待を頂くとお言葉を頂戴いたしました。
 それに王宮には平民出身の方も多くいると伺っております。僕たちも将来お仕えする可能性もございますので、貴方の言葉を聞く事は出来ません。」

 スネチャマはぽかんとしている。反論されると思っていなかったのだろうか。お坊っちゃまだなコイツ。だんだん顔が赤くなってきた。



 「貴様ぁっ!!黙っていればいい気になりおって!!」

 黙ってなかったじゃん?
 彼は剣を構えた。お?やる気か?

 「我慢ならん!その性根を叩き直してやるっ!!剣をとれ!」
 
 お前一切我慢してねーじゃねーか!!!騎士様ざわついちゃってるけど!?今のお前幼気な少年に剣を向ける鬼畜だぞ?


 「マクガラ!何を勝手している!!」

 最初に殿下に声をかけた偉いっぽい騎士様が怒鳴る。こいつマクガラっつーのか。よし、忘れた。

 「隊長!こいつは害悪です。今のうちに叩き潰しておく必要があるのです!!」

 「馬鹿か貴様は!このような幼い子供に何を言う!何より彼はゼルブルーク卿のご子息だぞ!!」

 「それがいけないのです!あのような男、英雄などではありません。あんな野蛮な者、賊となんの違いがありましょうか!?」



 ブチ





 「俺が黙って聞いてりゃいい気になってんじゃねーぞ。」

 「「は?」」

 隊長とスネチャマが同時に振り向く。どうでもいいけど。



 俺、ちょびっとだけキレちゃった。

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