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第3章 アカデミー5年生
7 スポーツ大会全員集合
しおりを挟むその後のレクリエーションはなんとか終了した。俺達のサプライズも喜んでもらえて嬉しい。実戦向きばかりではなく、娯楽向きの魔法も増やそうかな?
さて問題の姫様だが。かなり精神の根深い所まで侵食されてるらしく、迂闊に手を出せないらしい。今俺に出来る事は、知らないふりと鍛錬のみ。手は師匠が考えてくれるが、実行するのは俺だ。でも誰にも相談できないのは辛いな…。
とにかく!今は通常通りに過ごすしかない。来週にはスポーツ大会が控えているからな。このイベントは4、5年生のみだから、俺は初参加なのだ。全力で叩き潰ーす!!下級生が応援に来てくれるしね!
「へえ、男子はテニスか。女子はバスケ。…逆が良かった…!」
「諦めろ。これが当日のプログラムだ。風紀の方も目を光らせておいてくれ。」
「りょーかーい。」
今は生徒会室でファルと話し合いだ。他の生徒会役員は席を外している。
「シャル。君は…何か隠していないか?」
話し合いはサクサク進み、今は休憩中。ファルが意を決したように聞いてきた。
「セイルが言っていた。レクリエーションの日、君の様子がおかしかったと。その後は表面上は変わらないが、週末はどこかに出掛けてるじゃないか。」
そう。今俺は週末に師匠の元に通っている。姫様を助けるためには精神に潜って元凶を切り離す必要があるらしい。玖姫が似たような術を使えるが、あれは語りかけるだけで手出しは出来ない。俺はそういった魔法の習得に励んでいる。あとは実行するタイミングも考えないと。
あの3人はもちろん姫様の事を知っている。あいつらに隠し事はできないからなあ。そして立場的には俺の使い魔なので、俺が言うなと命令すれば口を滑らせる事もない。だが友人達は違う。特に王族に近いファルには絶対に言えない。
だけど。嘘はつきたくないんだ。
「隠し事は、ある。でも今は言えない。」
ファルは膝の上で手をぎゅっと握り、唇を噛みしめた。
「…それは、僕達が弱いからか?頼りに、ならないのか?」
「違う!絶対違う。」
「じゃあ…なぜ…。」
ややややばい。ファルの目が潤んできた。どどどどうしよう!?正直に話す訳にもいかないし、でもこのまま黙っていたら絶対誤解される!
俺はファルの肩をガシィっ!と掴んだ。
「本当にすまん。でもな、俺にもどうしようもできないんだ。俺が巻き込まれたのも偶然で、現時点では師匠にしか対処できないような事態になってる。
だから今の俺には黙ってる事しか出来ないんだ。それ以上はまだ語れないが…解決したら絶対にお前らにも話す。それまで、信じていてほしい。」
ファルの目をしっかり見て話す。そうする事でしか俺は誠意を見せられん。友人達を巻き込みたくないが、誤解されるのも嫌だ。俺も結構我儘で欲張りなのだ。
暫しの沈黙。やがてファルが口を開く。
「そうか…。大賢者様が動くほどか。それは、確かに僕らじゃ力不足だな。
わかった。皆にもそう伝えておく。だから!絶対に後で説明してくれよ!?それに手伝える事があれば、些細な事でも頼って欲しい。」
「ああ…ありがとう。俺がやろうとしている事は、周りにバレる訳にいかないんだ。だから今はいつも通りに接して欲しい。」
「わかった。」
ファルはそう言ってこの会話を終了させた。うん、彼には多分力を借りると思うから、少し話せてよかった。
その後他の皆からも「なんかあったら頼れよ」とか「僕達は絶対に君の味方だから!」とか言われた。持つべきものは友よな。
さてさて本日は快晴、絶好のスポーツ日和でございます。今日はテニスをする訳だが、俺ってばソフトテニスしかした事ない。まあ似たようなもんだろ、いけるいける!硬式テニスなんて漫画でしか知らん!
「兄貴てめえええ!!またホームランしてんじゃねえーか!!!」
「うるっさいわ!!!お前だってさっきサーブで俺の後頭部アタックしたろーが!!」
「お前最初は大口叩いてたくせに、全っ然ダメダメじゃねーか!!」
「だからうっさいっての!!集中しろ!あーー!今の触んなきゃアウトだったのにー!!」
「ああ!!?俺のせいだってのか!?」
「今のは100パーお前のせいだろが!!」
「ざけんなゴラアア!!!」
「やんのかオラアアアア!!!」
「やー、僕シャルやセイルとペアじゃなくて良かったー。」
「僕もだ。なんで2人とも運動神経は抜群なのに球技はダメなんだ?」
「そういう人もいるって事ですよ。」
「ボールに追いついても、返せなきゃ意味ないね。」
「あ、ぶつかった…。」
「委員長ー!!ナイスホームランです!」
「えーとえーと、迫力では圧勝ですよ!」
「あっぶな!こっちにボール飛ばさないでもらえます!?」
俺らの試合を見ていたファル、アルト、イシアスはのほほんとそんな会話をしていた。
風紀委員もなんとか良い点を見つけようとしてくれている。その優しさがつらい。
応援に来た下級生も、俺らのコントのようなやり取りに肩を震わせてたわ。貴族ってのは人前じゃ爆笑も出来なくて大変ねー。もちろん俺らはボロ負けですよ。はい、叩き潰されました。
ちなみにその頃の女子。
「リア!パス!!」
「アンジュ様!」
パスを受け取ったアンジュは、華麗なドリブルで相手をすり抜け、
「シュウウゥゥーーート!!」
「「「きゃーーー!!!」」」
アンジュの活躍に黄色い声援が飛び交う。彼女はこの数年、淑女教育そっちのけで戦闘系を磨いてきた。マナーより魔法。ダンスより剣術。刺繍より勉強。今のアンジュは言うなれば、フィクションでよくある女子校の王子様ポジだ。女子の人気が凄まじい。
「アンジュ様…。魔法も使ってないのにダンク決めるとか、凄すぎ。」
リアは引き攣った顔で破壊されたバスケットゴールを見ていた。ちなみにこれで4回目。男子も女子も大騒ぎなのであった。
今回のスポーツ大会に、順位などはない。目的は生徒同士の交流だからだ。一応MVPもあるのだが、商品は特にない。強いて言えばメダルだな。
結果。男子のMVPはオーカー。5年生を抑えて受賞だ。女子はアンジュ。リアに聞いたが、ゴールを6回ほど壊したらしい。誰だよMVPに選んだの…。
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