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第3章 アカデミー5年生
8 楽しい楽しい豪華ランチ
しおりを挟む《5年Aクラスのシャルトルーズ。今すぐ職員室に来なさい。》
「…なん?」
なんだよもう、今昼飯の時間だよ。俺は飯を注文しようとしていたのに、いきなりの校内放送に眉を顰める。
「この声はジル先生だな。飯食ってからにしよーっと。」
ジル先生は今年も俺の担任だ。仲のいい人が多くて楽しいわー。
《どうせ飯食ってからとか考えてるだろうが、今すぐ来なさい。》
「…流石だな。じゃあせめてパンでも買って…」
《飯なら理事長が奢ってくれるからとっとと来なさい。》
「はい喜んでー!!
という訳で俺は抜ける!じゃ!!」
近くにいたアルトにそう告げ俺はダッシュで学食を飛び出した。友人達は呆れ顔で手を降っている。
「失礼しまーっす!5年生のシャルトルーズ参上でーす。ご飯はどこですか!?」
にっこにこで職員室のドアを開ける。先生方はクスクス笑いながら俺の方を見ている。ジル先生は目の前に立ってた。
「メインはそっちじゃねえ!移動するぞ、付いてこい。」
「イエッサー、ティーチャー!何奢ってくれるんですか?」
「はあ…4階の学食だ。」
「…へ?」
…あの高級レストラン?俺行ったことないよ。ちなみに毎日使ってる学食は2階。近くに売店(ほぼコンビニ)もある。
俺の頭の中ははてなマークが飛び交っているが、先生は無視して歩き始める。俺は慌ててついていった。
「うわ…豪華。」
中に入ったのは3度目だが、まるで別世界だ。調度品とか壊したら弁償いくらだろう?絶対触んないぞ。
中は全て個室になっている。ここは学食だが予約制だ。その日の朝までに申請が必要となる。今日利用している生徒はいないようで、静寂に包まれている。先生は一番奥の部屋に入っていった。
「お待たせいたしました。シャルトルーズを連れて参りました。」
「よく来たね。さあ、2人とも座って。」
中に入るとそこには、理事長となぜか王弟殿下、見覚えのない青年がいた。身なりからしてかなり高貴な方だと分かるが…うん、陛下そっくり。ひとまず跪く。王弟殿下とは会ったことがあるが、目の前の方は初対面だ。最上級の礼が必要だろう。
「初めまして。私はブルーシア・クロムだ。君の話は従兄弟や叔父からよく聞かされている。とても優秀な生徒だと。」
「お初にお目にかかります。私はシャルトルーズと申します。平民のため家名はございません。
王太子殿下よりお褒めに預かり、恐悦至極に存じます。…王弟殿下もお久しぶりにございます。」
あかん。やっぱ王太子殿下だ。陛下をまるっと若返らせて短髪にした感じする。気の利いた挨拶が出てこねえ!!ひとまず微笑んでやり過ごす!
「うん、久しぶりだね。さあ楽にして席について。まずは食事を楽しもう。」
席には豪華な食事が並んでいる。いやーはっはっは。マナーが気になって食いづれえ!教わったことはあるけど実践は無いんだよ!味なんて分かるか!
だがまあ食事は和やかに進んだ。俺は質問に答えるばかりで自分から話題の提供なんぞ出来ないが。
そして今は食後のティータイム。そろそろ午後の授業始まってない?いいの?
「では、そろそろ本題に入らせてもらうね。」
王弟殿下がそう切り出す。まあ大体察しはつくが。
「まず父親としてシャルトルーズ君に謝罪とお礼を。娘が迷惑をかけて申し訳ない。そして相手をしてくれてありがとう。」
「いえ。礼には及びませんし、どうぞお顔をあげてください。」
やっぱそれか。しかし、折角の機会だ。ちょいと探っておこう。
「すまないね…あの子は昔からああだったんだ。」
「昔から…と言いますと?」
「それこそ昔からだ。最初の言葉は「ぶれーもの」だったと聞くし、動き回るようになったら使用人を殴る蹴る。幼児だったからまるで痛くはなかったらしいが。」
王太子殿下が答えてくれた。…強烈だな。そうだったんですか、としか言えん。
「私達肉親にも機嫌が悪いと癇癪を起こしてね。だが君といる間は、信じられないほど大人しかったと聞く。一体どんな魔法を使ったんだい?」
やっぱあれ大人しかったんだ。なんでかな…?俺に対してのみ態度が違う理由。恋心は無いと断言出来る。もしもそうだったとしたら、俺の近くにいたマルやリアに強く当たっていただろう。妹とか関係ない、そういうタイプだ。
彼女は何者かに憑依されてるという。ならば…本来の人格によるものか?俺の力を見込んで助けを求め…無いな。俺の魔法の腕は上がったが、総合的には王弟殿下の方がずっと上だろう。他にも宮廷魔法師がごろごろいるだろうし。
…もしや俺の近くだと支配が弱まる?いやなんでだよ。
「おい、シャルトルーズ。何もそこまで考え込まなくとも、今のは伯父上の冗談で…」
「まあ待ってブルーシア。彼なりの考えがあるみたいだよ?」
「…つかぬ事をお伺いしますが。王女殿下はレクリエーションの後も同じ態度ですか?」
「そうだよ。むしろ君と離れてすぐに戻ったらしい。」
俺の影響で支配が弱まるってのは当たらずとも遠からず?俺が他人と違う所なんて何も無い。魂が異世界産ってのは関係ないだろう。…まさか、妖気?
「お2人は、刹鬼をご存知でしょうか?」
「セッキ殿か?私もたまに手合わせして頂いた。彼の容姿には最初驚かされたが、それに見合って恐ろしく強かった。自惚れていた私の目を覚まして頂き、感謝しているんだ。
だが最近騎士団の指南役を辞めてしまったらしいな。残念だ、また手合わせをお願いしたかった。…彼を知っているのか?」
あら。王太子殿下は刹鬼が俺の友人だって知らんかったのか。つか刹鬼何してんの?と思ってたら、俺のポケット(魔本)から声が聞こえてきた。
『そこの青年なら知っているぞ。地位があり優秀で腕にも覚えがあったらしく、天狗になっていた。なのでその鼻っ柱をへし折ってやったら何故か懐かれた。』
「今どこからかセッキ殿の声が!?」
彼はガタッと立ち上がった。事情を知ってる理事長とジル先生が俺を睨んでる。俺悪くない。王弟殿下も興味津々に俺を見る。
「…彼は俺の友人です。もうお分かりとは存じますが人ではありません。ですが彼らの出生を語ることは出来ませんのでご容赦ください。」
ジル先生に以前言われた。俺があいつらを魔法生物と言い張るつもりだと告げたら、「んな嘘通じるか!いっそ正体不明の方がまだマシだわ!」だとさ。なので開き直った。
「あの、それより気になっていたのですが。何故彼らは受け入れられたのでしょう?はっきり言って外見も怪しいし、身元も不確かで危険でしょう?」
「ああ。当初はもちろん警戒されていた。だがそこのオルドー殿とゼルブルーク殿が身元は保証すると言ってな。さらにあの強さだからな。父も恐らく自棄になっていた…。」
俺は驚いて理事長を見た。彼はバツが悪そうに、俺の魔本から出てきたからだと教えてくれた。あの本は君にしか使えないのだろう、と。
なんだろう。凄く、嬉しい。今俺はものすごく締まりのない顔をしていることだろう。周りが微笑ましそうに見ているからな。
今はそれどころじゃなかった。
「刹鬼にはいずれ王宮に顔を出すよう伝えておきます。
それより…王女殿下は刹鬼と遭遇した事はありませんか?」
「…そういえば、あった。チェスラメルが私の後を付いてきて騎士団の訓練を見学していた時だ。
いつもは大声であの騎士を私の護衛に、とか今のをもう一度見たいとか騒がしいのだが…あの日は大人しかった。セッキ殿の外見に慄いていたのかと思っていたのだが、今にして考えてみるとおかしい。怖いなら早々に部屋に戻るであろう。」
王太子殿下はその時の事を考えているようだ。その答えを聞き俺も考え込む。
刹鬼相手でも同じか…?なら妖気が関係している可能性は高い。この事を師匠に伝えてみるか。
でもそうしたら俺が異世界から来たのがバレるな。でもすでに感づかれてる気がすんだよなあ。一から説明すんの面倒だ。
俺はまた周囲を放ったらかして思考の海にダイブしていた。俺を引き上げたのは王弟殿下だった。
「じゃあ次は宮廷魔法師としての話があるんだ。君、特殊魔法使えるよね?」
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