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第3章 アカデミー5年生
28 魔法試験4
しおりを挟む「やりたい事、とは?」
先生は戸惑いながら聞いてきた。まあ、わからんよな。
「先生、魔物は討伐されるモノですよね。魔物は人間に害をなすから。ここにいる子達のように、大人しいのを除いて。いや、こいつらだって人間に牙を剥いたら始末される。
こいつらは、人間に敵わないのを分かってるから襲ってこないだけ。…でもそこの鹿は人間より強いですね。彼らは穏やかな種類なんでしょう。…うん、多分。」
〈アニマル〉の精度が高くなってきたので、簡単な会話も出来るようになってきた。
鹿になんで人間襲わないの?と聞いたら、人間不味いから。と返ってきた。…食った事あんの?
それは置いといて。
「魔物が人間を襲うのは食うため、生きるための本能だ。俺ら人間の食欲、睡眠欲、性欲と同じ。無くてはならない欲求。
それでも、稀にいるんですよ。凶暴な魔物の中にも、人間を襲わない個体が。アスラのように。
あいつは運良く師匠に保護された。そうでなかったら、きっと殺されてたでしょうね。無抵抗だとしても、ライオンだからというだけの理由で。」
先生は、静かに俺の話を聞いている。
「俺も心当たりがありまして。イメージだけで判断されて、迫害されていた奴らに。まあ長くなるので省略します。
ともかく。俺はそんな魔物を救いたいんです。そのために俺は、騎士になります。」
「…なぜそこで騎士が出てくるんだい?」
「騎士団は、魔物討伐も仕事でしょう?俺はそこを目指します。
先に言っておきますけど、俺だって通常の魔物は討伐しますよ?人里を襲い、人肉を喰らう獣は。そこに抵抗はありません。
俺が救いたいのは、あくまでもアスラのように猛獣でも人間を襲わないやつだけですよ。こういう小魔物なんかは既に保護されてるし。」
足元にいるウサギと狸を交互に並べてみる。かちかち山。なんつって。
「それと、困ってる人間に手を差し伸べるのも他の人に任せます。そういうの希望する奴も多いでしょう。まあ目の前で誰かが困ってたら助けますけど?
でもそれが許されず、「魔物なんか皆殺しにして、人間を救え!」とか言われたら…。」
「…言われたら?」
先生は、少し難しい顔で続きを促してきた。
「…秘密です。」
でも俺はこれ以上は答えない。
この会話だって他人に聞かれてるだろうしな。
「へえ。お前そんな事考えてたんだ。」
「まあ、難しいでしょうけどね。」
「あ。セイル、アンジュ。」
気付かんかった。わざわざ魔法で気配消してたな?2人は俺に近付いてきた。
「先にゴールしたのは兄貴か。でも、評価はまだ分からないよな?」
「そうだなー。負ける気はねえけどな。最後の点稼ぎ頑張れよ?」
「ふふ、見せて差し上げます!」
「という訳で理事長先生、彼らの試験お願いしますね。」
「…ああ、始めようか。」
さっきの俺との会話、先生はどう受け止めたのかな?
俺ってやっぱり、人間より獣のほうが好きかも。
そして2人の試験。せっかくなので俺も見学する。セイルはデカい氷塊を作り出してみせた。うん、小さい一軒家くらいの大きさあるわ。
ただその後どうするか考えていなかったようで、理事長先生が砕いた。破片が降り注いで大変だった。なるほど、父さんが山火事を起こしかけたのはこんな感じだったんだろうな…。
アンジュは空に大きな花火をあげたり、炎を操って色々な形にしてみせた。そしてちゃんと、炎を霧散させた。
「はい、結構だ。2人も素晴らしい力を持っているね。君達の今後の活躍を期待しているよ。」
よっしゃー!と喜び合った。道中こいつらと遭遇したら、もっと面白いことになっただろうになー。
他にも誰か来るかもって事で、俺らも山頂に残った。先生を交えて魔法トークをする。
そして残り時間5分というところで。
「委員長、副委員長。それとヴァレンシアンジュ嬢?」
「あ、アッシュ!」
風紀仲間のアッシュがきた。同じクラスなのに、中々顔合わせないんだよな。
「早いですね。他の方はいないんですか?」
「うん、俺らだけ。」
「君はアッシュ・ダイク君だね。さあ、こちらに。」
「はい。」
そしてアッシュは、植物を操ってみせた。木の根を伸ばしたり葉っぱを飛ばしたり。…俺もやってみたいナー。
《3、2、1…そこまで!Aクラスの試験を終了する。山頂まで辿り着いたのはシャルトルーズ、ヴァレンシアンジュ・ブーゲンビリア、セイル、アッシュ・ダイクの4名だ。
よくやったな。では各々、下山しなさい。》
「自力で降りんのかい!」
「残念ながらね。でも君達は全員転移を使えるだろう?」
「え、アッシュも?」
「はい、一応。」
しかし他の生徒達は、もし山頂近くにいたら下りんの大変そうだな。ファル達だけでも拾ってくか?
マッピングで皆の現在地を確認しようとすると…
《おいそこ!何をしている!》
「え!?ダメだった?!?」
「いや兄貴。多分ちげえ。」
あ、俺じゃないのね。
なにやら実況席が騒がしいようだ。
《セッキ、その細剣を下ろせ!》
「ちょっと俺先に行くわ!」
あいつやらかしおった!!皆を残して急いで転移する。
そして見たものは。
刀を構える刹鬼とその後ろに匿われているマル。刀を向けられているのはパストル・カナリー?やっぱりか…。
「刹鬼、刀下ろして。説明頼む。」
刹鬼は俺の言う通りにしてくれた。
ちなみに人前では、俺は彼らの主人のように振る舞うことにしている。刹鬼の提案で、「私に言う事を聞かせたいと吐かすうつけ者が多くてな。私達が従うのは君だけだと教えてやれ。」との事。
「承知した。君の望み通りマルベリーの護衛をしていた。あの子供が彼女に因縁をつけ、腕を強く引いたので私が出てきた。」
「あのあの、お兄ちゃん。セッキさんさっきの袋から出てきたよ!?」
「なるほど。」
マルにお守り渡して大正解。実は最近、刹鬼達は本以外に入ってる事が多い。
やっぱ前みたいに魔具を取り上げられた時とかに不便だからな。刹鬼はお守り、岩鬼は髪紐、玖姫はブレスレットに宿ってる。もしくは本の中。
俺はカナリーに向き直る。
「今刹鬼が語ったことは真実ですね?ここには大勢の証人がいますので、隠し立てすることはおすすめしません。
俺の妹に何かご用ですか?」
威嚇も兼ねて睨んでみる。返答次第によっては、どうしてくれようか?
相手は少し怯んだが、気丈にも睨み返してきた。
「ふん、平民風情が私の視界を遮ろうとしていたからな。身の程を教えてやろうとしただけだ。」
「なるほど。…マル、今までこういったこと他にあったか?
こう、平民の分際でーとか、お前の兄貴生意気なんだよーみたいな。」
「んー…ない、かな?そもそも貴族のかたにあんまり近づかないし。」
「そんじゃ、あのカナリー様にタックルしたとか、頭のてっぺんから飲み物ぶっかけたり足踏んづけて骨折ったりした?もしくは奇声を発して超音波で鼓膜破った?」
「してないよー。そもそも触ってないし、しゃべってないよ。」
ふむ…。ふむ。
「と、言う訳だ。マルベリーに非はない。故に少々懲らしめ…処罰しようと思ってな。」
「刹鬼、落ち着けって。」
相変わらず血の気が多いなあ。さて、どう収集つけようか?
俺が脳みそフル回転で思考を巡らせていたら…。
「パストル様?どうなさったのですか?」
「っ!ああセーラ、なんでもないよ。」
カナリーが先程までとは違い、蕩けるような笑みを浮かべた。きもっ。
相手は、セーラ・カージナル…?…オタクらそういうご関係で?いや、そんなこたどうでもいい。チャーンス!
「ああ、カージナル様、ご機嫌よう。俺らの用は済みましたので、失礼いたします。」
カナリーが何か言いかけたが、無視してマルを抱える。刹鬼はお守りに戻し、さくっと転移して逃げた。相手してらんないので!
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