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23 ノアとアリー
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僕がソルヴィン様のお部屋で過ごすようになって、何日も経った。
ソルヴィン様はとても優しいお方だった。僕にとっても親切にしてくれて、ずっと一緒に過ごしてくれていたけれど、最近は僕にコリン子爵家の当主になるための勉強をするようにと一日中僕に教師をつけてしまった。
ありがたい事ではあったけれど当主になるなんて僕には荷が重すぎるし、二度とユージーン殿下に会えないと思うとどうしても身が入らなかった。
ある日、僕は教師の目を盗んで部屋から抜け出した。人気のない場所を潜り抜けて、たどり着いたのは王宮の裏手にある湖だった。
僕は湖の水面を見つめるひとりの少女がいる事に気が付いて、思わず少女に謝った。
「ご、ごめんなさい!僕、誰もいないと思って!」
「いいえ、大丈夫よ?あなたは・・」
「僕はノアといいます。」
「私はアリーよ?よろしくね?」
「アリー様は、ここで何をなさっていたのですか?」
僕は余計な事だと思いながらも、悲しそうな顔をするアリー様にそんな事を聞いてしまった。
「私ね?好きなお方がいるの・・でもね?私は違う人と結婚しなくちゃいけないの・・だから、ここに恋煩いしに来たのよ?」
「恋煩い・・それは悲しい、ですね。気持ち、分かります・・」
「あら、ノアも誰かに恋をしているの?」
「は、い・・僕には到底手が届かない尊いお方です。今はもう何日も会っていなくて・・会うことを禁じられてしまったから」
「何て酷い・・!禁じられるだなんて、それはどうしてなの?」
「そのお方はもうすぐ婚約のお披露目があるんだそうです。だから、僕なんかがいたら迷惑になるだけだから」
僕がそう言うと、アリーは少し驚いた様な顔をしてそれから優しく微笑んだ。
「愛しているのね?ノアは、ユージーン殿下を」
「え!?どうしてそれを・・そうですよね、婚約と言えば分かってしまいますね」
「実はね?私がその相手だからよ?だけど私は他の方に恋をしているの。ユージーン殿下との結婚を望んだりしていないのよ」
「貴方が!?お、王女様!?でもそんな!だって!僕、ユージーン殿下には幸せになって欲しいのに・・」
「あなたがユージーン殿下と幸せになればいいのよ。奪ってしまえばいいわ?」
「そんな!!僕は偉いお方に見張られていて、ユージーン殿下に会うことなんて、認めてもらえるはずがありません・・」
そうだ・・ソルヴィン様は・・ソルヴィン王太子殿下はそんな事、絶対に認めてくれるはずがない。
「私が何とかしてあげるわ?行きましょう?」
「え?ど、どこへ?僕、駄目です・・王太子殿下に叱られてしまいます」
「王太子殿下?そんなに厳しいお方なの?」
「いつも、ユージーン殿下のお相手の・・貴方様の幸せの為だっておっしゃって・・でもそれは正論です。当然の事です」
ソルヴィン殿下は、ユージーン殿下のお相手の事をとても心配している。ユージーン殿下が僕なんかに構っていれば、不愉快にさせるだろうから。
「王太子殿下が?ノア、あなたはそれでもユージーン殿下と幸せになればいいわ?愛し合う者同士が、幸せになるべきなんだから」
「愛し合って・・?いいえ、違います・・僕の勝手な片思いだから・・ユージーン殿下は婚約者の貴方の事を想っているに違いないから」
「私は一度もユージーン殿下にお会いした事がないの。国同士が勝手に決めた政略結婚だから。私は・・恋することすら許されない。そんな運命だから」
アリー様が王女様で、ユージーン殿下のお相手・・アリー様は一体誰に恋をしているんだろう。
アリー様の瞳から一粒の涙が落ちていって僕に背を向けたけど、すぐにまた笑顔を見せた。
「ノア、私たち、協力しない?お互いに恋を実らせられるように、ね?」
アリー様はどこまで本気なのか分からないけれど、僕達はそれからここで会う度に、お互いの事を話すようになった。
ある日、アリー様が僕を庭園の奥にある四阿へ連れて行った。
そこにはひとりの黒髪の男性が座っていて、静かに目を閉じていた。僕たちはその様子をそっと遠くから眺めた。
「え・・」
僕は驚いて一歩後ろへ下がると、アリー様が僕にこう言った。
「あのね、あの方はこの王宮の庭師なの。私は、彼の事が好きなの。だけど、彼は私を王女だとは知らないわ。今の私は、彼に好きだなんて言えないのよ」
「アリー、様・・ごめんなさい!僕、行かなきゃ!急用を思い出して!!さよなら!」
僕は、四阿でくつろぐアリー様の恋の相手を見て驚いてしまった・・だってあれはソルヴィン殿下だった・・
アリー様はあの方を庭師と言っていたけど、どういう事なんだろう・・あれは確かにソルヴィン殿下だった。
「良かった・・見られていなくて・・ユージーン殿下の婚約者様と一緒にいるところを見られてしまえば、ユージーン殿下にもアリー様にも迷惑をかけてしまう」
アリー様が恋している相手は・・ソルヴィン殿下!?
アリー様は気が付いていない様子だった。何しろ、ユージーン殿下とも会った事がないと言っていたくらいだから。
次にアリー様に会った時に、あれはソルヴィン殿下だと伝えた方がいいのだろうか・・
僕はいったいどうしたらいいの。
ソルヴィン様はとても優しいお方だった。僕にとっても親切にしてくれて、ずっと一緒に過ごしてくれていたけれど、最近は僕にコリン子爵家の当主になるための勉強をするようにと一日中僕に教師をつけてしまった。
ありがたい事ではあったけれど当主になるなんて僕には荷が重すぎるし、二度とユージーン殿下に会えないと思うとどうしても身が入らなかった。
ある日、僕は教師の目を盗んで部屋から抜け出した。人気のない場所を潜り抜けて、たどり着いたのは王宮の裏手にある湖だった。
僕は湖の水面を見つめるひとりの少女がいる事に気が付いて、思わず少女に謝った。
「ご、ごめんなさい!僕、誰もいないと思って!」
「いいえ、大丈夫よ?あなたは・・」
「僕はノアといいます。」
「私はアリーよ?よろしくね?」
「アリー様は、ここで何をなさっていたのですか?」
僕は余計な事だと思いながらも、悲しそうな顔をするアリー様にそんな事を聞いてしまった。
「私ね?好きなお方がいるの・・でもね?私は違う人と結婚しなくちゃいけないの・・だから、ここに恋煩いしに来たのよ?」
「恋煩い・・それは悲しい、ですね。気持ち、分かります・・」
「あら、ノアも誰かに恋をしているの?」
「は、い・・僕には到底手が届かない尊いお方です。今はもう何日も会っていなくて・・会うことを禁じられてしまったから」
「何て酷い・・!禁じられるだなんて、それはどうしてなの?」
「そのお方はもうすぐ婚約のお披露目があるんだそうです。だから、僕なんかがいたら迷惑になるだけだから」
僕がそう言うと、アリーは少し驚いた様な顔をしてそれから優しく微笑んだ。
「愛しているのね?ノアは、ユージーン殿下を」
「え!?どうしてそれを・・そうですよね、婚約と言えば分かってしまいますね」
「実はね?私がその相手だからよ?だけど私は他の方に恋をしているの。ユージーン殿下との結婚を望んだりしていないのよ」
「貴方が!?お、王女様!?でもそんな!だって!僕、ユージーン殿下には幸せになって欲しいのに・・」
「あなたがユージーン殿下と幸せになればいいのよ。奪ってしまえばいいわ?」
「そんな!!僕は偉いお方に見張られていて、ユージーン殿下に会うことなんて、認めてもらえるはずがありません・・」
そうだ・・ソルヴィン様は・・ソルヴィン王太子殿下はそんな事、絶対に認めてくれるはずがない。
「私が何とかしてあげるわ?行きましょう?」
「え?ど、どこへ?僕、駄目です・・王太子殿下に叱られてしまいます」
「王太子殿下?そんなに厳しいお方なの?」
「いつも、ユージーン殿下のお相手の・・貴方様の幸せの為だっておっしゃって・・でもそれは正論です。当然の事です」
ソルヴィン殿下は、ユージーン殿下のお相手の事をとても心配している。ユージーン殿下が僕なんかに構っていれば、不愉快にさせるだろうから。
「王太子殿下が?ノア、あなたはそれでもユージーン殿下と幸せになればいいわ?愛し合う者同士が、幸せになるべきなんだから」
「愛し合って・・?いいえ、違います・・僕の勝手な片思いだから・・ユージーン殿下は婚約者の貴方の事を想っているに違いないから」
「私は一度もユージーン殿下にお会いした事がないの。国同士が勝手に決めた政略結婚だから。私は・・恋することすら許されない。そんな運命だから」
アリー様が王女様で、ユージーン殿下のお相手・・アリー様は一体誰に恋をしているんだろう。
アリー様の瞳から一粒の涙が落ちていって僕に背を向けたけど、すぐにまた笑顔を見せた。
「ノア、私たち、協力しない?お互いに恋を実らせられるように、ね?」
アリー様はどこまで本気なのか分からないけれど、僕達はそれからここで会う度に、お互いの事を話すようになった。
ある日、アリー様が僕を庭園の奥にある四阿へ連れて行った。
そこにはひとりの黒髪の男性が座っていて、静かに目を閉じていた。僕たちはその様子をそっと遠くから眺めた。
「え・・」
僕は驚いて一歩後ろへ下がると、アリー様が僕にこう言った。
「あのね、あの方はこの王宮の庭師なの。私は、彼の事が好きなの。だけど、彼は私を王女だとは知らないわ。今の私は、彼に好きだなんて言えないのよ」
「アリー、様・・ごめんなさい!僕、行かなきゃ!急用を思い出して!!さよなら!」
僕は、四阿でくつろぐアリー様の恋の相手を見て驚いてしまった・・だってあれはソルヴィン殿下だった・・
アリー様はあの方を庭師と言っていたけど、どういう事なんだろう・・あれは確かにソルヴィン殿下だった。
「良かった・・見られていなくて・・ユージーン殿下の婚約者様と一緒にいるところを見られてしまえば、ユージーン殿下にもアリー様にも迷惑をかけてしまう」
アリー様が恋している相手は・・ソルヴィン殿下!?
アリー様は気が付いていない様子だった。何しろ、ユージーン殿下とも会った事がないと言っていたくらいだから。
次にアリー様に会った時に、あれはソルヴィン殿下だと伝えた方がいいのだろうか・・
僕はいったいどうしたらいいの。
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