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31 ノアが欲しい
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俺の気持ちは、ノアにちゃんと伝わっているのだろうか。ノアを大切に思う気持ちも愛する気持ちだって、これまでノアに示して来たはずなんだ。
しかし、ノアは全然分かっていない気がする・・俺に対して、まだまだ警戒心の強い子猫のようだ。
ノアを返してもらう為に兄上の私室に来た俺は、ノアが兄上の腕の中でスヤスヤ眠っているのを見て一瞬思考が止まった。
ノアは完全に油断しきっていて、安心しているような顔をして眠っている。
俺からノアを無理矢理奪っておきながら、兄上は自分の事を信頼までさせているのか・・
ノアを世話して俺に依存させたかったのに、すでに兄上に奪われてしまったのではないのか?無性に怒りが湧いてくる。
「ユージーン、そんなに怖い顔をするな。ノアが起きたら驚くぞ?」
「何なんですか!?本当に!あんまりじゃないですか!兄上!!」
「しー!静かに。お前の言いたい事は分かるよ。とにかく聞いていれば分かる。黙って見ていろ、ユージーン」
「・・っ!ぐぐっ!」
何がだよ!!
俺は抗議も嫌味も言いたいのを我慢して、兄上の言うように黙ってノアを見ていた・・俺以外の男の腕の中で、そんなに安心した顔をして!
「むぅ、ん・・」
「ふふっ・・ノア、いい子だね」
「んー・・でん、か」
「起きたの?ふふっ、ノア?可愛いね?」
何がいい子だよ!
可愛い!?そんなふうに言うなんて!
兄上は俺の気持ちを知っているくせに、ノアの心を奪うつもりかよ!!
「ゆ、じん、でんか・・ゆーじーん、でんか」
「うん?会いたいの?」
「え・・」と俺の声が掠れて出た時に、ノアが悲しげに泣き出して、また俺の名を呼ぶノアの声が聞こえた。
「ふぇ・・ん、ぅうっ・・会いたいの、ユージーンでんかぁ・・」
「そうだね?ユージーンに会いたいね?ほら、キャンディをあげるよ?ノアの好きな甘いミルク味だよ?」
「んむぅ・・おいし・・」
「ね?おいしいね?いい子いい子」
兄上が与えたキャンディを口の中で転がしながら、ノアはまだえんえんと泣いている。
可愛い・・俺に会いたがっている。俺に会えなくて、泣いているのか・・
兄上が俺に目配せしてくる。
「ノア・・?」
目を瞑ったまま泣いているノアに声を掛ける。俺の声が、分かるだろうか。
「ユージーン、殿下?殿下・・?ふえっ・・グスッ・・うぅっ!会いたいよ、会いたい・・」
「ノア!俺だよ!ユージーンだ!ノア、おいで」
俺は兄上の腕の中からノアを抱き上げると、強く抱き締めた。
そっと下ろして正面から抱き締めて、見つめて髪を撫でて・・ノアが俺を見上げて「ユージーン、殿下」と言って切なそうに笑った。
俺は、ノアが泣きながら俺の名を何度も呼ぶから、なぜもっと早く迎えに来なかったのかとひどく後悔した。
「ノア・・会いたかった!ノア、もうお前を離さない!1人にしないから!」
「ユージーン、殿下、今日・・して、くれますか?」
「ははっ、するよ?沢山する。俺がしたいんだ」
「僕も、したい・・です」
俺は堪らずノアの唇にキスをする。
食みながら、唇を舐めながら、舌を絡めようとノアの唇を割って差し入れる。
「私がいることを忘れるな、ユージーン。続きはお前たちの部屋でやれ」
「・・すみません・・つい」
兄上はくすりと笑って立ち上がると、俺と向き合って真剣な顔をする。
「ユージーン、すまない・・私に、アリア王女を譲って欲しい。お前にアリアとの結婚を薦めておきながらこんな事を言うなんて、自分でも非常識だと思っている。お前がアリアを幸せにしてくれるならばと、気持ちを抑え込もうとした。だが私はずっと・・出会った頃からずっとアリアを愛している。この気持ちを、どうしても抑えきれなかったんだ。ユージーン、私とアリアの結婚を許してくれないか?」
兄上はアリア王女を愛している?
なるほど・・だからアリア王女の幸せばかり気に掛けていたのか。
俺とノアの事で、アリア王女が悲しまないように兄上は・・本当に、このお方にしては不器用な愛し方だな。
「許すも何も、俺は兄上の幸せを願っていますよ。アリア王女は、黒髪の庭師を、ふふっ、兄上を愛していると言っていました。俺は出会った瞬間に、アリア王女にあっさりと振られたんですよ」
「ユージーン・・すまない・・」
「兄上、俺にノアを返して下さい。俺はもう、ノアを離すつもりはありません」
「・・そうだな、分かった。ノア?ユージーンと幸せになるんだよ?」
「はい・・ソルヴィン殿下、僕・・僕の事を、大切にしてくれて、ありがとうございました」
「ふふっ、ノアは可愛いな?私はノアの心を少しは癒させたかな?また私の所にも甘えにおいで?」
兄上はノアの頬を優しく撫でて微笑んだ。まるで子どもをあやす様に、甘やかして大切に扱うように。
兄上は、ノアの警戒した心をすっかり解いて癒してしまった。
「兄上、ノアを、ありがとうございます」
「ああ。ユージーン、ノアと幸せになれ。父上と母上には、共に許しをもらいに行こう」
「はい!」
コリン子爵家の当主であるノアを俺に嫁がせて、子爵家を解体してしまえばいい。コリン子爵家は田舎貴族で、統治している領地はすでに信頼を失い荒れている。そんな辺境の土地は全て、辺境伯へ統治を譲ればいい。
俺はいずれ大公になる。ノアを必ず幸せにする。
やっと、ノアが俺の腕の中に戻ってきた。
これからは、俺がノアを甘やかして温めてやるよ。
しかし、ノアは全然分かっていない気がする・・俺に対して、まだまだ警戒心の強い子猫のようだ。
ノアを返してもらう為に兄上の私室に来た俺は、ノアが兄上の腕の中でスヤスヤ眠っているのを見て一瞬思考が止まった。
ノアは完全に油断しきっていて、安心しているような顔をして眠っている。
俺からノアを無理矢理奪っておきながら、兄上は自分の事を信頼までさせているのか・・
ノアを世話して俺に依存させたかったのに、すでに兄上に奪われてしまったのではないのか?無性に怒りが湧いてくる。
「ユージーン、そんなに怖い顔をするな。ノアが起きたら驚くぞ?」
「何なんですか!?本当に!あんまりじゃないですか!兄上!!」
「しー!静かに。お前の言いたい事は分かるよ。とにかく聞いていれば分かる。黙って見ていろ、ユージーン」
「・・っ!ぐぐっ!」
何がだよ!!
俺は抗議も嫌味も言いたいのを我慢して、兄上の言うように黙ってノアを見ていた・・俺以外の男の腕の中で、そんなに安心した顔をして!
「むぅ、ん・・」
「ふふっ・・ノア、いい子だね」
「んー・・でん、か」
「起きたの?ふふっ、ノア?可愛いね?」
何がいい子だよ!
可愛い!?そんなふうに言うなんて!
兄上は俺の気持ちを知っているくせに、ノアの心を奪うつもりかよ!!
「ゆ、じん、でんか・・ゆーじーん、でんか」
「うん?会いたいの?」
「え・・」と俺の声が掠れて出た時に、ノアが悲しげに泣き出して、また俺の名を呼ぶノアの声が聞こえた。
「ふぇ・・ん、ぅうっ・・会いたいの、ユージーンでんかぁ・・」
「そうだね?ユージーンに会いたいね?ほら、キャンディをあげるよ?ノアの好きな甘いミルク味だよ?」
「んむぅ・・おいし・・」
「ね?おいしいね?いい子いい子」
兄上が与えたキャンディを口の中で転がしながら、ノアはまだえんえんと泣いている。
可愛い・・俺に会いたがっている。俺に会えなくて、泣いているのか・・
兄上が俺に目配せしてくる。
「ノア・・?」
目を瞑ったまま泣いているノアに声を掛ける。俺の声が、分かるだろうか。
「ユージーン、殿下?殿下・・?ふえっ・・グスッ・・うぅっ!会いたいよ、会いたい・・」
「ノア!俺だよ!ユージーンだ!ノア、おいで」
俺は兄上の腕の中からノアを抱き上げると、強く抱き締めた。
そっと下ろして正面から抱き締めて、見つめて髪を撫でて・・ノアが俺を見上げて「ユージーン、殿下」と言って切なそうに笑った。
俺は、ノアが泣きながら俺の名を何度も呼ぶから、なぜもっと早く迎えに来なかったのかとひどく後悔した。
「ノア・・会いたかった!ノア、もうお前を離さない!1人にしないから!」
「ユージーン、殿下、今日・・して、くれますか?」
「ははっ、するよ?沢山する。俺がしたいんだ」
「僕も、したい・・です」
俺は堪らずノアの唇にキスをする。
食みながら、唇を舐めながら、舌を絡めようとノアの唇を割って差し入れる。
「私がいることを忘れるな、ユージーン。続きはお前たちの部屋でやれ」
「・・すみません・・つい」
兄上はくすりと笑って立ち上がると、俺と向き合って真剣な顔をする。
「ユージーン、すまない・・私に、アリア王女を譲って欲しい。お前にアリアとの結婚を薦めておきながらこんな事を言うなんて、自分でも非常識だと思っている。お前がアリアを幸せにしてくれるならばと、気持ちを抑え込もうとした。だが私はずっと・・出会った頃からずっとアリアを愛している。この気持ちを、どうしても抑えきれなかったんだ。ユージーン、私とアリアの結婚を許してくれないか?」
兄上はアリア王女を愛している?
なるほど・・だからアリア王女の幸せばかり気に掛けていたのか。
俺とノアの事で、アリア王女が悲しまないように兄上は・・本当に、このお方にしては不器用な愛し方だな。
「許すも何も、俺は兄上の幸せを願っていますよ。アリア王女は、黒髪の庭師を、ふふっ、兄上を愛していると言っていました。俺は出会った瞬間に、アリア王女にあっさりと振られたんですよ」
「ユージーン・・すまない・・」
「兄上、俺にノアを返して下さい。俺はもう、ノアを離すつもりはありません」
「・・そうだな、分かった。ノア?ユージーンと幸せになるんだよ?」
「はい・・ソルヴィン殿下、僕・・僕の事を、大切にしてくれて、ありがとうございました」
「ふふっ、ノアは可愛いな?私はノアの心を少しは癒させたかな?また私の所にも甘えにおいで?」
兄上はノアの頬を優しく撫でて微笑んだ。まるで子どもをあやす様に、甘やかして大切に扱うように。
兄上は、ノアの警戒した心をすっかり解いて癒してしまった。
「兄上、ノアを、ありがとうございます」
「ああ。ユージーン、ノアと幸せになれ。父上と母上には、共に許しをもらいに行こう」
「はい!」
コリン子爵家の当主であるノアを俺に嫁がせて、子爵家を解体してしまえばいい。コリン子爵家は田舎貴族で、統治している領地はすでに信頼を失い荒れている。そんな辺境の土地は全て、辺境伯へ統治を譲ればいい。
俺はいずれ大公になる。ノアを必ず幸せにする。
やっと、ノアが俺の腕の中に戻ってきた。
これからは、俺がノアを甘やかして温めてやるよ。
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