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休憩中の出来事
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「さあ、最終確認を始めましょう!」
ヴァレリー公爵夫人がうきうきした様子で仕切りだし、足りないものがないかチェックをし始めた。
夫人に急かされるように私たち他の実行委員も、それぞれの段取りや立ち位置を確かめていく。
「結構忙しいわよね」
「移動が多いものね。実際この場に立ってみると、予想していたよりも広く感じるし」
グレースと話していたら、アレクシスがやって来た。
「大丈夫だよ。どういう流れか理解さえしておけば、近くの者が喜んで手を貸してくれるさ」
「……それもそうね」
確かに自分の傍で王太子がカードを並べたり、列の整理などをしていたら、「ひいぃ~、そんなことはわたくしめが~」となるに違いない。
いや、ならないとおかしいだろう。
うん、アレクが委員長で良かった。
私だって公爵令嬢なんだから、令息たちが我先にと助けてくれてもいいはずなんだけど、そんなこと今までもなかったしな。
まあ、アレクがいつも私の周りをウロチョロしてるから遠慮したのかもしれないけど。
一通りの確認が終わった頃には開場時間が迫っていて、夫人らは「頑張りましょうね!」と私の手を握ると、パートナーである夫の元へと向かった。
私はとりあえず王族専用の控室にお邪魔し、しばらくの間は待機となる。
王太子アレクシスのエスコートで、最後の方に入場しないといけない為、それまで時間を潰さねばならないのだ。
ほんっと、勘弁してほしいわ。
アレクと並んで入場する時の皆のあの視線、いまだに慣れないんだよね。
まあ、うちの爵位が高いおかげか、敵視というよりは温かい眼差しって感じなんだけど、それが余計怖いんだよぉ!
なんでそんなに好意的なのよ?
あんなアイドル並みの人気なんだから、もっとこう、いかにもな恋敵への射殺すような視線を感じるものじゃないの?
……ん、待てよ?
もしやアレクって、観賞用で実はモテないとか?
イケメン王子様なのにウケるー!
ププッっと笑いながら、つらつらと失礼なことを考えていると、いつの間にか隣にアレクシスが座っていた。
マドレーヌが積まれたお皿を持っている。
「始まる前につまんでおくといい。この前のお腹が鳴っていたセラは面白かったけどね。ほら」
「フゴッ。うるひゃいな! ふぇもおいひい……」
「それは良かったな」
モゴモゴ言いながらマドレーヌを咀嚼しているうちに、なぜか髪を触られ、勝手に髪飾りを着けられていることに気付いた。
ピンで挟むタイプのものらしく、おでこの右上の部分がなんだか重たく感じる。
「ん? 何したの?」
「ああ、母上のサンゴの髪飾りだよ。セラがピンクのドレスを着ているから、よかったら使って欲しいって」
「おばさまが? 去年のコスプレの時のサンゴかな? ……じゃあありがたくお借りします。鏡が確かここに……。うん、可愛い!」
「セラに似合っているな。夜会の間、ちゃんと着けているんだよ?」
失くすなってこと?
確かにおばさまの物なら扱いには気を付けないとね。
「おばさまは? お礼を言いたいんだけど」
「ああ、支度に手間取ってまだ時間がかかるみたいなんだ。返す時で大丈夫だろう」
「うん。そうするわ」
私が素直に頷けば、アレクは満足げに微笑んでいた。
この髪飾りが特別な意味を持つなんて、この時の私はまだ知らなかった。
ヴァレリー公爵夫人がうきうきした様子で仕切りだし、足りないものがないかチェックをし始めた。
夫人に急かされるように私たち他の実行委員も、それぞれの段取りや立ち位置を確かめていく。
「結構忙しいわよね」
「移動が多いものね。実際この場に立ってみると、予想していたよりも広く感じるし」
グレースと話していたら、アレクシスがやって来た。
「大丈夫だよ。どういう流れか理解さえしておけば、近くの者が喜んで手を貸してくれるさ」
「……それもそうね」
確かに自分の傍で王太子がカードを並べたり、列の整理などをしていたら、「ひいぃ~、そんなことはわたくしめが~」となるに違いない。
いや、ならないとおかしいだろう。
うん、アレクが委員長で良かった。
私だって公爵令嬢なんだから、令息たちが我先にと助けてくれてもいいはずなんだけど、そんなこと今までもなかったしな。
まあ、アレクがいつも私の周りをウロチョロしてるから遠慮したのかもしれないけど。
一通りの確認が終わった頃には開場時間が迫っていて、夫人らは「頑張りましょうね!」と私の手を握ると、パートナーである夫の元へと向かった。
私はとりあえず王族専用の控室にお邪魔し、しばらくの間は待機となる。
王太子アレクシスのエスコートで、最後の方に入場しないといけない為、それまで時間を潰さねばならないのだ。
ほんっと、勘弁してほしいわ。
アレクと並んで入場する時の皆のあの視線、いまだに慣れないんだよね。
まあ、うちの爵位が高いおかげか、敵視というよりは温かい眼差しって感じなんだけど、それが余計怖いんだよぉ!
なんでそんなに好意的なのよ?
あんなアイドル並みの人気なんだから、もっとこう、いかにもな恋敵への射殺すような視線を感じるものじゃないの?
……ん、待てよ?
もしやアレクって、観賞用で実はモテないとか?
イケメン王子様なのにウケるー!
ププッっと笑いながら、つらつらと失礼なことを考えていると、いつの間にか隣にアレクシスが座っていた。
マドレーヌが積まれたお皿を持っている。
「始まる前につまんでおくといい。この前のお腹が鳴っていたセラは面白かったけどね。ほら」
「フゴッ。うるひゃいな! ふぇもおいひい……」
「それは良かったな」
モゴモゴ言いながらマドレーヌを咀嚼しているうちに、なぜか髪を触られ、勝手に髪飾りを着けられていることに気付いた。
ピンで挟むタイプのものらしく、おでこの右上の部分がなんだか重たく感じる。
「ん? 何したの?」
「ああ、母上のサンゴの髪飾りだよ。セラがピンクのドレスを着ているから、よかったら使って欲しいって」
「おばさまが? 去年のコスプレの時のサンゴかな? ……じゃあありがたくお借りします。鏡が確かここに……。うん、可愛い!」
「セラに似合っているな。夜会の間、ちゃんと着けているんだよ?」
失くすなってこと?
確かにおばさまの物なら扱いには気を付けないとね。
「おばさまは? お礼を言いたいんだけど」
「ああ、支度に手間取ってまだ時間がかかるみたいなんだ。返す時で大丈夫だろう」
「うん。そうするわ」
私が素直に頷けば、アレクは満足げに微笑んでいた。
この髪飾りが特別な意味を持つなんて、この時の私はまだ知らなかった。
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