【完結】夜会で借り物競争をしたら、イケメン王子に借りられました。

櫻野くるみ

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イケメン王子に借りられました

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どうやらアレクシスは私のことが好きだったらしい。

早く言ってよ~!
てっきり手が届かない人だと思って、諦めモードだったじゃないの。

「言ってくれたら良かったのに。わかっていれば私だって……」
「『私だってアレクのこと好きだし、もっとラブラブできたのに~』?」
「そうそう、もっとラブラブ……って! そんなこと思ってないわよ!」
「そう? でもセラが僕のことを好きなのは事実なんだよね?」

クスクス笑いながらアレクシスが立ち上がる。
やはり長身で堂々としているところは悔しいけれど格好いい。
それに、いつもと同じように自信たっぷりに見えるアレクシスだが、やはり少しは緊張しているみたいだ。
両思いの確信があるようでいて、時々頼りない視線が混ざるところにキュンとなってしまう。
ま、これも私だからこそ気付けるくらいの違いだけれど。

「う~~~、そうね、そうかもしれないわね」
「セラ? セラの気持ちを僕に聞かせて?」

ずるい、ずるすぎる!
自分で勝手に『未来の妻』のお題で私を借りておいて、私にもこんな観衆の中で告白させるなんて。
……でも、そんな不安と期待を混ぜたような顔をされたら、断ることなんてできないじゃないの。

「わ、私も好きよ? アレクのこと……」
「セラ!」

小声で囁いた私は、一瞬のうちにアレクの腕に捕らわれ、包まれていた。
ぎゅうぎゅうと抱きしめられるし、周囲はこれ以上ないほどに煩いし、恥ずかしくて堪らない。

「おめでとうございます、アレクシス殿下」
「見事な証明でございました」

ヴァレリー夫人とシュナイダー夫人が拍手をしながら近付いてくる。
その後ろにはグレースとロイバーも笑顔で揃っていたが、そこでグレースが妙なことを言い出した。

「まあ、セラフィーヌがあの髪飾りを着けて現れた時点で、こうなるのはわかっていたけどね」

ん?
髪飾りって、このサンゴの髪飾りのことかしら?

アレクシスの腕からモゾモゾと抜け出すと、ムッとしたような顔をして今度は腰を抱かれてしまった。
彼がこんなにくっつきたがりだったとは意外だ。

「この髪飾りって何か特別なの? 確かに視線は感じていたし、意味深なことを言ってくる方々もいたけれど」
「嘘でしょう? その髪飾りの意味を知らないだなんて! え、そのドレスだって色を合わせて殿下が贈ったものでしょう?」

グレースが呆れたのと同時に、会場全体がどよめいていた。
え、知らないのってもしかして私だけ?
このドレスもアレクからの贈り物だったの?

「その髪飾りは、王家に伝わるものなのよ。代々、未来の王妃に受け継がれるの」

現王妃がお茶目な表情で説明してくれた後、国王と「ねー」と頷きあっている。
うん、仲がよろしくて結構だが、そんなの初耳である。

はあぁ?
聞いたことないし、アレクってば私の髪に勝手に着けてたわよね?
マドレーヌに気を取られているうちに。
……この、策士め!
おばさまも教えてくれたら良かったのに!!

「でも今更よね。二人が相思相愛なのは皆わかっていたし、いつくっ付くかと気を揉んだわ」
「そもそも陛下にモノマネをさせる令嬢なんて前代未聞だし、誰も王家の人間にあんなに気安く接するなんてできないですものね」
「セラフィーヌさんを目にした時のアレクシス殿下は、いつも愛おしい者を見る優しいまなざしをしていますもの」

グレースと二人の夫人が追い打ちをかけてくる。

そうか、そうだったのか……。
思っていたよりも私はアレクシスに愛されていて、私の気持ちは駄々洩れていたらしい。

でも、おじさまとのモノマネショーがそういう風に受け取られていたとはね。
確かに、借り物競争でグレースと宰相様の様子を見たときは、お父さんに認められたってことはもうカップル成立ね!とか思ったのに、自分とおじさまの仲の良さは考えたことがなかったわ。
これって、やっぱり鈍感ってこと?

「ガーーン……」
「もしかして自分の鈍感さにショックを受けているの? 気にすることはないさ、僕はずっと鈍いセラが好きだったんだから。むしろ可愛いとすら思っている」

笑みを浮かべたアレクシスが、髪飾りを避けながら愛おし気に髪を撫でてくる。
甘い!
アレクシスとはこんな男だっただろうか。

「アレク! なんだか急にくっ付くし、甘い台詞を吐くし、どうしちゃったの!?」
「ん? 今までやりたくても我慢していたからその反動かな。でも、基本的には以前と変わっていないと思うけど」
「いやいや、そんな馬鹿な……」

しかし、国王夫妻や貴族たちも、アレクシスの変貌に驚くこともなく、祝福するような目でこちらを見ている。

どうやら彼らにはずっとこの甘いアレクシスが見えていたようだ。
まさか、私たちが並んで立った時のあの何とも言えない視線が、甘酸っぱいカップルを見る目だったとは……恥ずかしすぎる。

「殿下、仕込んでいたものがうまくいって良かったですね」
「ロイバー、それはバラすなよ」

訊けば、借り物競争で私が引いたカードも、アレクシスが引いたカードも、あらかじめ仕込んであったものらしい。
私と国王の親密さをアピールできたらと思っていたら、国王に思いがけず自分のモノマネをされて、そんなに自分の想いはわかりやすかったのかと照れていたんだとか。
ーー私は全く気付いていなかったけどね!

「アレクはいつからプロポーズを計画してくれていたの?」
「それはもちろん、セラが借り物競争を提案してきた時だ。これは絶好の機会になると思ったよ」

まさかこんなイロモノ的な、夜会には不似合いな借り物競争で、自分が王子様にプロポーズをされるとはビックリである。
思ったよりも借り物競争のポテンシャルは高かったようだ。

「本当に侮れなかったわね、借り物競争……。こうなったら本当に体育祭も提案してみようかしら?」
「ん? 『たいいくさい』とは何だ? セラフィーヌのことだ。また面白そうなことを思い付いたに違いない!」
「あら、いつ開催します?」

私の呟きに、余興好きな国王夫妻がすぐさま目を輝かせた。
反応が早い。

「「私たちもお手伝いしますわ」」
「私も! ロイバー様もまた一緒にやりませんこと?」
「もちろんお手伝いさせていただきます」

借り物競争実行委員のメンバーもノリノリで委員に立候補してきた。
これは、体育祭実行委員に任命される日も近いかもしれない。

「父上、でしたら我々の結婚式でお願いします」
「よし、では二人の結婚式で『タイイクサイ』とやらを行う!」

『うわぁぁ!』と歓声が上がる。

は?
結婚式で体育祭!?
それはまた素晴らしいごった煮ですこと……。

「まあ……それもありかな? 二人三脚だったら『初めての共同作業』的な感じになるし?」
「セラ、『ニニンサンキャク』とは何だい? セラとなら何でも楽しそうだ」
「ふふっ、そうね。二人で幸せのゴールテープを切っちゃいましょうか」

背伸びしてアレクシスの頬にくちづけた私の脳裏には、タキシードとウェディングドレスで走る少し未来の私たちの姿が浮かんでいたのだった。


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感想 5

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みんなの感想(5件)

はなここ
2025.10.11 はなここ

楽しかったです✨😄
私もタイイクサイ編を読んでみたいです!🤸

解除
ミカン
2024.12.04 ミカン

続きのタイイクサイを読みたいです。
よろしくお願いいたします。

解除
まり
2024.06.19 まり

何という平和な世界……!
周囲にはバレバレなアレクシスの溺愛、素敵ですね。
温かく見守られている2人にほっこりしました。
そして国王様のモノマネ最高です!
特に宰相様のモノマネが好きです笑
楽しいお話をありがとうございました✨

2024.06.21 櫻野くるみ

確かに平和でしたよね、借り物競争なんてやっているくらいに(笑)
敵もいなかったので、ひたすら溺愛されるだけのお話でしたが、書いていて楽しかったです。
宰相様のモノマネがお好きとは通ですね!(笑)
細かいところまで読んでいただけて嬉しいです。
こちらこそ楽しいご感想をありがとうございました!

解除

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