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攻略対象者① 王太子登場
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アリスは今、明日から編入することになっている学園に隣接する女子寮で、自分にあてがわれた部屋のベッドに腰かけている。
ちょうど簡単な掃除と、持参した荷物の片付けが終わったところだ。
「私もお嬢様と同じ部屋にしてもらえてラッキーでした! これで全部の恋愛イベントを特等席でガン見出来ちゃいますよ。って、よく見たらこの寮の壁紙ってゲームで見たやつじゃーん!!」
目の前でチェルシーがはしゃいでいる。
侍女のチェルシーは、男爵に自ら学園行きを立候補した結果、アリスと一緒に学園に通うことになったのである。
もちろん侍女としてではなく、同じ学生として……。
一人でも知り合いがいてくれるのはありがたいから、チェルシーが一緒に編入してくれるのは嬉しい。
だけど、これっておかしいよね?
変な時期に編入生が二名もいるのも珍しいとは思うけれど、それはまだ納得できる。頑張って納得しよう。
問題は、この短期間に都合よく物事が進み過ぎていることだよね。
私、数日前までは平民だったし、チェルシーだって男爵家の侍女だけど本来の身分は平民なんでしょ?
そんな二人が試験も受けずに、突然入学が許されるなんてことがある?
普通の学校でもありえないのに、王太子も通っている貴族だらけの学校にだよ?
セキュリティーがガバガバ過ぎるでしょ!
絶対裏で変な力が働いているのが丸わかりじゃん。
このままじゃ、本当にヒロインにさせられてしまう……って、あれ?
「チェルシー、ゲームの中では私の同室っていなかったの?」
もし『ときラビ』でヒロインのアリスが一人部屋だったのだとしたら、今の時点で内容が変わったことになり、今後のストーリーも変化する可能性が出てくるのでは?
「いいえー、特にそういう描写はなかったですよ? 私は勝手に一人だと思ってましたけど、ゲームに出てこないだけで実は二人部屋だったのかもー」
ちぇっ……。
それじゃあこの状態はまだゲーム通りってことか。
「私、アリスお嬢様が無事にハッピーエンドを迎えられるように、めっちゃ頑張りますから!!」
チェルシーが握りこぶしを作り、ムンッと鼻息荒く宣言しているが、こちらはそんなことを全く望んではいない。
むしろ迷惑である。
あーあ、一人部屋のほうが気が楽だったかも……。
アリスはこっそり溜め息を吐いた。
◆◆◆
入寮した翌日、いよいよ編入初日を迎えた。
学園生活がとうとう始まってしまうのだ。
寮から徒歩二分の学園は、茶色いレンガ造りで蔦が絡まり、いかにも乙女ゲームの舞台に相応しい雰囲気を漂わせている。
「うっわ、『ときラビ』って感じ! あ、アリスお嬢様、学園では私も同級生なので、『アリス様』と呼びますね。あとイベントの邪魔をしたくないので、なるべく離れて見守ってますから。ではお先ーっ!!」
「え、お先って……ちょ、待って!!」
アリスが呼び止めた時にはもうチェルシーの姿はそこにはなかった。
彼女もモニカ並みに足が速い。
なんで急に私を残して行くのよ……。
どうせ編入の挨拶で職員室に行くんだから、一緒でいいじゃないの。
ブツクサ文句を言っているアリスを、他の学生が興味深そうな目で見ている。
「あれってヒロインのアリスじゃないかしら?」
「うわー、とうとう『ときラビ』が始まるんだな!」
「アリス、なんて見事なピンク髪! スチルと同じ可愛さですわ。あぁ、どなたと結ばれるのか楽しみですわ!!」
期待されているのをひしひしと感じる。
いっそ逃げ出してやろうかと不穏なことを考え始めた時だった。
「君は転校生かな? 良かったら僕が職員室へ案内しよう」
背後から上品で良く通る男性の声がした。
振り返ると、輝くような金髪を風に靡かせながら微笑む長身の男性が立っている。
とびきりの美青年だ。
線が細く、顔も小さい為、まるでモデルのように見える。
「どうかしたのかな? 具合が悪いなら職員室ではなくて保健室に連れて行くけれど」
ペリドットのような緑色の瞳に吸い込まれそうになっていたせいで、思わず返事をしそびれていたことに気付く。
アリスは慌てて首と手をブンブンと振った。
「だ、大丈夫です! 私、元気モリモリですから!!」
動揺し過ぎて妙な返答をしてしまった。
モリモリって、何言ってるの私……。
「ふふっ、元気なら安心だ。さあ、職員室へ行こうか」
案内はいらないと断ったつもりだったのだが、手のひらまで差し出されてしまった。
これは……エスコート?
まさかの校門から職員室まで?
どこの王子様だよ!?
なんて思っていたら――
「まあっ、ご覧になって! 王太子殿下ルート、もう始まってますわ!」
「このシーンを見る為だけに朝早くからずっと待ってたんだよ!!」
アリスたちを取り囲むように学生が集まり、何やら騒いでいる。
ん?
王太子殿下?
……この人、やたらキラキラしていると思ったら本当に王子様なの!?
しかも、もしかしなくてもゲームの出会いイベント的なやつが発生しちゃった?
冗談ではなく、本物の王子様だったらしい。
これが一人目の攻略対象者、王太子との出会いだった。
ちょうど簡単な掃除と、持参した荷物の片付けが終わったところだ。
「私もお嬢様と同じ部屋にしてもらえてラッキーでした! これで全部の恋愛イベントを特等席でガン見出来ちゃいますよ。って、よく見たらこの寮の壁紙ってゲームで見たやつじゃーん!!」
目の前でチェルシーがはしゃいでいる。
侍女のチェルシーは、男爵に自ら学園行きを立候補した結果、アリスと一緒に学園に通うことになったのである。
もちろん侍女としてではなく、同じ学生として……。
一人でも知り合いがいてくれるのはありがたいから、チェルシーが一緒に編入してくれるのは嬉しい。
だけど、これっておかしいよね?
変な時期に編入生が二名もいるのも珍しいとは思うけれど、それはまだ納得できる。頑張って納得しよう。
問題は、この短期間に都合よく物事が進み過ぎていることだよね。
私、数日前までは平民だったし、チェルシーだって男爵家の侍女だけど本来の身分は平民なんでしょ?
そんな二人が試験も受けずに、突然入学が許されるなんてことがある?
普通の学校でもありえないのに、王太子も通っている貴族だらけの学校にだよ?
セキュリティーがガバガバ過ぎるでしょ!
絶対裏で変な力が働いているのが丸わかりじゃん。
このままじゃ、本当にヒロインにさせられてしまう……って、あれ?
「チェルシー、ゲームの中では私の同室っていなかったの?」
もし『ときラビ』でヒロインのアリスが一人部屋だったのだとしたら、今の時点で内容が変わったことになり、今後のストーリーも変化する可能性が出てくるのでは?
「いいえー、特にそういう描写はなかったですよ? 私は勝手に一人だと思ってましたけど、ゲームに出てこないだけで実は二人部屋だったのかもー」
ちぇっ……。
それじゃあこの状態はまだゲーム通りってことか。
「私、アリスお嬢様が無事にハッピーエンドを迎えられるように、めっちゃ頑張りますから!!」
チェルシーが握りこぶしを作り、ムンッと鼻息荒く宣言しているが、こちらはそんなことを全く望んではいない。
むしろ迷惑である。
あーあ、一人部屋のほうが気が楽だったかも……。
アリスはこっそり溜め息を吐いた。
◆◆◆
入寮した翌日、いよいよ編入初日を迎えた。
学園生活がとうとう始まってしまうのだ。
寮から徒歩二分の学園は、茶色いレンガ造りで蔦が絡まり、いかにも乙女ゲームの舞台に相応しい雰囲気を漂わせている。
「うっわ、『ときラビ』って感じ! あ、アリスお嬢様、学園では私も同級生なので、『アリス様』と呼びますね。あとイベントの邪魔をしたくないので、なるべく離れて見守ってますから。ではお先ーっ!!」
「え、お先って……ちょ、待って!!」
アリスが呼び止めた時にはもうチェルシーの姿はそこにはなかった。
彼女もモニカ並みに足が速い。
なんで急に私を残して行くのよ……。
どうせ編入の挨拶で職員室に行くんだから、一緒でいいじゃないの。
ブツクサ文句を言っているアリスを、他の学生が興味深そうな目で見ている。
「あれってヒロインのアリスじゃないかしら?」
「うわー、とうとう『ときラビ』が始まるんだな!」
「アリス、なんて見事なピンク髪! スチルと同じ可愛さですわ。あぁ、どなたと結ばれるのか楽しみですわ!!」
期待されているのをひしひしと感じる。
いっそ逃げ出してやろうかと不穏なことを考え始めた時だった。
「君は転校生かな? 良かったら僕が職員室へ案内しよう」
背後から上品で良く通る男性の声がした。
振り返ると、輝くような金髪を風に靡かせながら微笑む長身の男性が立っている。
とびきりの美青年だ。
線が細く、顔も小さい為、まるでモデルのように見える。
「どうかしたのかな? 具合が悪いなら職員室ではなくて保健室に連れて行くけれど」
ペリドットのような緑色の瞳に吸い込まれそうになっていたせいで、思わず返事をしそびれていたことに気付く。
アリスは慌てて首と手をブンブンと振った。
「だ、大丈夫です! 私、元気モリモリですから!!」
動揺し過ぎて妙な返答をしてしまった。
モリモリって、何言ってるの私……。
「ふふっ、元気なら安心だ。さあ、職員室へ行こうか」
案内はいらないと断ったつもりだったのだが、手のひらまで差し出されてしまった。
これは……エスコート?
まさかの校門から職員室まで?
どこの王子様だよ!?
なんて思っていたら――
「まあっ、ご覧になって! 王太子殿下ルート、もう始まってますわ!」
「このシーンを見る為だけに朝早くからずっと待ってたんだよ!!」
アリスたちを取り囲むように学生が集まり、何やら騒いでいる。
ん?
王太子殿下?
……この人、やたらキラキラしていると思ったら本当に王子様なの!?
しかも、もしかしなくてもゲームの出会いイベント的なやつが発生しちゃった?
冗談ではなく、本物の王子様だったらしい。
これが一人目の攻略対象者、王太子との出会いだった。
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