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攻略対象者⑤商人の息子登場
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「アリス、紹介しよう。ベクターだ。アリスと同じ1年だから、これから関わりも出てくるだろう」
ユリウスが最後の生徒会メンバーであり、5人目の攻略対象者でもあるベクターを私に紹介してくれた。
背が私より少し高いくらいで、華奢な体型をしている為、まだ少年のような幼い見た目だ。
明るいオレンジの髪はフワフワと柔らかそうに揺れ、丸いクリクリとした瞳が小動物みたいに可愛らしい。
イケメンというより、とびっきりの美少年といった感じだ。
「アリスです。B組です。よろしくお願いします」
私が頭を下げると、ベクターは人懐っこい顔で笑い、握手を求めてきた。
「ボクはベクター、A組だよ。女の子が入ってくれて嬉しいよ!あ、同級生だし、敬語はナシね」
繋いだ手をブンブン振りながら可愛い笑顔で言われてしまえば、頷くしかない。
声も男性にしては高く、まるで同性と話している錯覚を起こしそうだ。
すごいな。
予想とは全然違った、天使みたいに可愛い男の子が現れたよ。
モニカがこういう子がタイプだったとはね。
「ねぇ殿下、さっきの料理、やっぱり頼みすぎじゃないかな?アリス、女の子だもん。余っちゃわない?」
ベクターが首をコテンと傾げ、人差し指を顎にあてながらシリウスに話しかけている。
むむっ、なんてあざと可愛いの!
ヒロインの私よりヒロインっぽいなんて……。
しかも王太子のユリウスに対して、なんて無敵な態度!!
「ふふっ、それなら大丈夫だよ」
「ベクター、彼女を甘く見ないほうがいい。むしろ僕は足りない可能性も視野に入れているくらいだ」
ブッとジェイルが吹き出しているが、一体何の話をしているのだろう。
彼女っていうことは、私が関係しているってこと?
「あの、何のお話ですか?料理って?」
「歓迎会さ。今日の放課後、アリスの歓迎会をここで開こうと思って、カフェテリアに配達を頼んできたってわけだ」
ジェイルが答えてくれたが、歓迎会という言葉に戸惑ってしまう。
「え?そうなんですか?でも仕事が忙しいと言っていましたし、私の為にそんなの悪いですよ」
歓迎会なんていかにもなイベント、早速5人との距離が縮んでしまいそうで、慌てて断ろうとしたのだがーー。
「ええーーっ、そんな悲しいこと言わないで?せっかく美味しそうな料理をたくさんお願いしてきたんだから。お願い!!」
目を潤ませながらベクターが訴えてくる。
うん、これは断れないやつだな。
こんな可愛い子のお願いを断れる人間などいない。
モニカにも殴られそうだし。
「じゃあお言葉に甘えて。放課後楽しみにしてるね」
「やったーっ!!ボクの家が特別に学園に卸しているフルーツもあるからね。あ、ボクの家は商会をやってるんだ」
はい、存じておりますとも。
商人の息子だもんね。
でも知らない振りをしないと。
「そうなの?特別なフルーツって気になるなぁ」
これは本心だ。
食べ物に罪は無い。
「でしょでしょ?ね、アリスって昨日編入してきたんだよね?王都にも住んでいなかったって聞いたよ」
「うん、男爵家に引き取られたばかりで。それまでは平民として生活してたの」
「そうなんだね!ボクも元平民なんだ。たまたま家業が軌道に乗って、爵位をいただけただけで。でもここのメンバーは身分とか気にしない人達だから、安心して平気だよ!ね?」
ベクターが見回すと、「もちろんだよ」「当然だな」「そんな低脳はここにはいない」「アリス君はアリス君です」と皆バラバラながら、同じ内容の温かい返事をくれた。
「ありがとうございます」
私も笑顔でお礼を言ったのだった。
歓迎会は放課後なので、まずは朝礼に間に合うように教室へと移動していたら、またしてもオフィーリアに遭遇してしまった。
というより、私の事を待ち伏せしていたようで、コソコソと物陰に引っ張り込まれてしまう。
「どうしたんですか?こんな人気の無いところまで」
「これを渡す為ですわ」
手渡されたのは、可愛くラッピングされたパウンドケーキだった。
「へ?なんで?あ、そういうシナリオがあるんですね?悪役令嬢に毒を盛られるシーンとか……あ、痛っ」
おでこをデコピンされてしまった。
「本当に馬鹿なヒロインですわね。これはゲームとは関係無い、昨日のお礼ですわ。私達3人のことをフォローしてくれましたでしょう?シナリオ的にはまずいのですけれど、嬉しかったのですわ。あ、誰かに見られては大変ですので、これにて失礼」
オフィーリアはサッと離れると、何事もなかったかのように、堂々とした歩き方で去って行った。
プッ、なんだかなー。
悪役令嬢役じゃなかったら仲良くなれそうなのに。
あの性格、かなり好きなんだけどな。
私はせっかく揃った5人の攻略対象よりも、むしろ悪役令嬢と仲良くなりたいと思い始めていた。
ユリウスが最後の生徒会メンバーであり、5人目の攻略対象者でもあるベクターを私に紹介してくれた。
背が私より少し高いくらいで、華奢な体型をしている為、まだ少年のような幼い見た目だ。
明るいオレンジの髪はフワフワと柔らかそうに揺れ、丸いクリクリとした瞳が小動物みたいに可愛らしい。
イケメンというより、とびっきりの美少年といった感じだ。
「アリスです。B組です。よろしくお願いします」
私が頭を下げると、ベクターは人懐っこい顔で笑い、握手を求めてきた。
「ボクはベクター、A組だよ。女の子が入ってくれて嬉しいよ!あ、同級生だし、敬語はナシね」
繋いだ手をブンブン振りながら可愛い笑顔で言われてしまえば、頷くしかない。
声も男性にしては高く、まるで同性と話している錯覚を起こしそうだ。
すごいな。
予想とは全然違った、天使みたいに可愛い男の子が現れたよ。
モニカがこういう子がタイプだったとはね。
「ねぇ殿下、さっきの料理、やっぱり頼みすぎじゃないかな?アリス、女の子だもん。余っちゃわない?」
ベクターが首をコテンと傾げ、人差し指を顎にあてながらシリウスに話しかけている。
むむっ、なんてあざと可愛いの!
ヒロインの私よりヒロインっぽいなんて……。
しかも王太子のユリウスに対して、なんて無敵な態度!!
「ふふっ、それなら大丈夫だよ」
「ベクター、彼女を甘く見ないほうがいい。むしろ僕は足りない可能性も視野に入れているくらいだ」
ブッとジェイルが吹き出しているが、一体何の話をしているのだろう。
彼女っていうことは、私が関係しているってこと?
「あの、何のお話ですか?料理って?」
「歓迎会さ。今日の放課後、アリスの歓迎会をここで開こうと思って、カフェテリアに配達を頼んできたってわけだ」
ジェイルが答えてくれたが、歓迎会という言葉に戸惑ってしまう。
「え?そうなんですか?でも仕事が忙しいと言っていましたし、私の為にそんなの悪いですよ」
歓迎会なんていかにもなイベント、早速5人との距離が縮んでしまいそうで、慌てて断ろうとしたのだがーー。
「ええーーっ、そんな悲しいこと言わないで?せっかく美味しそうな料理をたくさんお願いしてきたんだから。お願い!!」
目を潤ませながらベクターが訴えてくる。
うん、これは断れないやつだな。
こんな可愛い子のお願いを断れる人間などいない。
モニカにも殴られそうだし。
「じゃあお言葉に甘えて。放課後楽しみにしてるね」
「やったーっ!!ボクの家が特別に学園に卸しているフルーツもあるからね。あ、ボクの家は商会をやってるんだ」
はい、存じておりますとも。
商人の息子だもんね。
でも知らない振りをしないと。
「そうなの?特別なフルーツって気になるなぁ」
これは本心だ。
食べ物に罪は無い。
「でしょでしょ?ね、アリスって昨日編入してきたんだよね?王都にも住んでいなかったって聞いたよ」
「うん、男爵家に引き取られたばかりで。それまでは平民として生活してたの」
「そうなんだね!ボクも元平民なんだ。たまたま家業が軌道に乗って、爵位をいただけただけで。でもここのメンバーは身分とか気にしない人達だから、安心して平気だよ!ね?」
ベクターが見回すと、「もちろんだよ」「当然だな」「そんな低脳はここにはいない」「アリス君はアリス君です」と皆バラバラながら、同じ内容の温かい返事をくれた。
「ありがとうございます」
私も笑顔でお礼を言ったのだった。
歓迎会は放課後なので、まずは朝礼に間に合うように教室へと移動していたら、またしてもオフィーリアに遭遇してしまった。
というより、私の事を待ち伏せしていたようで、コソコソと物陰に引っ張り込まれてしまう。
「どうしたんですか?こんな人気の無いところまで」
「これを渡す為ですわ」
手渡されたのは、可愛くラッピングされたパウンドケーキだった。
「へ?なんで?あ、そういうシナリオがあるんですね?悪役令嬢に毒を盛られるシーンとか……あ、痛っ」
おでこをデコピンされてしまった。
「本当に馬鹿なヒロインですわね。これはゲームとは関係無い、昨日のお礼ですわ。私達3人のことをフォローしてくれましたでしょう?シナリオ的にはまずいのですけれど、嬉しかったのですわ。あ、誰かに見られては大変ですので、これにて失礼」
オフィーリアはサッと離れると、何事もなかったかのように、堂々とした歩き方で去って行った。
プッ、なんだかなー。
悪役令嬢役じゃなかったら仲良くなれそうなのに。
あの性格、かなり好きなんだけどな。
私はせっかく揃った5人の攻略対象よりも、むしろ悪役令嬢と仲良くなりたいと思い始めていた。
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