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可愛い人。(第3王子視点)
しおりを挟む「ラインハルト、大変よ!」
珍しく、母上が僕の部屋を訪ねてきた。
何が大変なのだろうか。
首を傾げる僕に、スペンサー伯爵の娘が王宮にやって来るらしく、急遽お茶会を開催するから僕にも偶然を装って参加しろという。
スペンサー伯爵の娘?
まだ話を理解出来ない僕に、焦れたように母が言う。
「ミルクスープのリリーちゃんよ。あなた、興味を持っていたでしょ?せっかく出会いの場を作ってあげたのに。」
あー、母上がお忍びの時に出会った娘か。
確かに興味はある。
プリプリしている母上にお礼は言っておくか。
出会いの場を作ってあげたと言いながら、絶対自分が楽しんでいるに決まってるけど。
お礼を言って、あとで応接室で合流する約束をした。
そろそろ応接室に顔を出すかな。
頃合いを見計らって、僕は城の応接室へ移動をした。
実際はどんな娘なのだろう。
少し期待をしている自分がいた。
応接室まであとわずかという場所で、開いている扉のせいか、部屋の中の会話が漏れ聴こえた。
「いえいえ、あそこは牛以外何もないところですから。王妃様にはふさわしくないかと・・・」
焦ったスペンサー伯爵の声だ。
また母上が何か無茶を言ったのだろう。
僕が苦笑した時、同じ年頃の女の子の甘い、しかし凛とした声がした。
「お父様、確かに何もないところかもしれないですが、全てがあるところだと私は思っています!!」
ガツンとやられた気がした。
ずっと王宮育ちで何一つ不自由なく育った僕に、初めて足りないものを自覚させる言葉だった。
期待は膨らみ、僕は応接室に足を踏み入れた。
「母上、お茶会ですか?僕も加わってもいいですか?」
リリーは丸い目と、エメラルド色の瞳が印象的な娘だった。
可愛らしい顔立ちだが、よく声をかけてくる令嬢達とは明らかに雰囲気が違った。
きょとんとした表情で僕を見つめている。
さっきの凛とした発言から見ても、きっと冷静で大人びた令嬢なのだろうと思っていたら。
僕が王子だとわかった途端に、リリーの印象はガラッと変わった。
赤くなったり、青くなったり、緊張からかプルプルしている様はまるで小動物のようだ。
あまりに可愛くて目が離せなかった。
『王子様にミルクスープを作ってあげるのが夢』だと母上にばらされた時は最高だった。
僕はもう知っていたことだけど、何とか無かったことにしてやり過ごそうとしているリリーを、つい苛めたくなってしまう。
僕って、気になる子にちょっかい出したくなるタイプだったらしい。
スープを作ってもらう約束を取り付けて、とりあえず次に会う約束は出来た。
満足していたら、母上がさらにパスを出してくれた。
庭の案内なんて、二人きりになれるチャンスだ。
僕がこの機会を逃すはずがないのに、諦めの悪いリリーは一生懸命断ろうとしている。
その必死さがまた可愛い。
結局僕達に勝てずに、案内されることになったリリー。
「じゃあリリー、行こうか。」
僕は笑顔で誘った。
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