【完結】田舎育ち令嬢、都会で愛される

櫻野くるみ

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王宮で木登り。

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リリーはお城の庭園に向かっていた。

第3王子のラインハルトと二人で。


なんでこうなったのかしら?
私はお父様におやつを届けに来ただけだったのに。

緊張のあまり、足取り重くラインハルトの後に続くリリーに、ご機嫌なラインハルトの声がかかる。

「リリーの好きな花は何かな?今ちょうど盛りのバラがあるんだけど、今日のリリーのワンピースと同じ色なんだ。リリーとバラが並んだら、きっと素敵な光景だろうな。」

バラなんて恐れ多い!!

「わ、私は田舎育ちなので、野花や木に咲く花が好きです。うっかり踏んでしまっても丈夫ですし。」

あれ?
王子様相手に、お花を踏んづける話をしてしまったわ。

チラッと王子を見ると、少し目を丸くしていたが、すぐに笑いだした。

「あはは!確かに手をかけた華やかなバラより、可憐で地にしっかりと根付いた野花のほうがリリーらしくて美しいね。」

朗らかに笑いながら、リリーを見つめる。

曇りのないその微笑みに、リリーは、

すごいわ!
何を言っても甘い言葉で返ってくるなんて、小説の中の王子様と同じじゃない。
王子様ってみんなに優しいのね。

なんて感動し、盛大な勘違いをしていた。

その時だった。
庭園の方角から子供の泣き声が聴こえた。

「うゎーん、マイクがぁー。うぇーん。」

リリーとラインハルトは声の元へと駆け寄った。
そこには3歳くらいの男の子と、護衛らしき男性や、侍女達が集まっていた。

「どうした?ハリー。」

ラインハルトが声をかけると、男の子が走ってきて王子の膝に抱きつき、泣きながら言う。

「ハルトお兄ちゃま、マイクがぁ。」

小さな手で指差した先に目を向けると、高い木の枝の上で子猫が鳴いている。
どうやら、子猫が下りられなくなってしまったみたいだ。

話を聞くと、護衛の男性が木に登ろうとしたが無理だったそうで、踏み台を取りにいきたいが、猫が今にも落ちそうで目が離せないとのことだった。

ラインハルトもすぐさま高さを確認し、助ける方法を考え、護衛に指示を出そうとしていた。
が、隣でピョンピョン跳ね、腕を回している令嬢に気付く。

「リリー?何をしているのかな?」

「あ、私がちょっと登ってみようかと。」

けろりと言ってのけたリリーに、

「いやいやいや、令嬢が何を言っているの。危ないでしょ!」

「このくらいならいけると思うんです。今日のワンピース、動きやすくて良かったです。」

「全然良くないよ!リリーは女の子なんだから!」

「でも、悠長なことは言っていられなさそうですし。」

と、リリーが木を見上げると、さっきよりも子猫の体勢が危なっかしい。

「マイク・・・」

ハリーの涙に濡れた声を聴き、リリーは木に手をかけながら笑顔で振り向く。

「ハリー君、ちょっと待っててね。いま、マイクを連れてくるからね。」

リリーの言葉にハリーは涙を引っ込め、大きく頷いた。

さて、木登りは領地にいた頃ぶりね。
王宮の木に登ったなんてバレたら、みんなに怒られちゃうわ。
後で口止めをお願いしなくちゃ。

なんて考えながら、リリーは器用に登り始めた。




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