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王子様に勝てる気がしません。
しおりを挟むどのくらいの時間が経ったのだろうか。
リリーはまだラインハルトの腕の中にいた。
現実を受け止めきれず、リリーは現実逃避の最中である。
これは夢だわ。
私が王子様に抱き締められるはずがないもの。
大体、今日は王宮に行くとか、王妃様にお会いするとか、突然あり得ないことばかりだったものね。
うふふ、そうよ、最初から全部夢なのよ!
リリーが自分を保つ為、頭の中でグルグル考えていると、身体に回されていた腕が外れた。
何故か少し寂しく感じる。
「ふぅ、とりあえず今は満足したから離してあげる。リリー反省した?」
とりあえず今は?
気になる言葉ではあったが、急に現実に引き戻され、リリーを覗き込んでくるラインハルトに焦り、リリーはコクコクと頷いてみせる。
するとラインハルトは機嫌良く、
「じゃあ、そろそろ戻ろうか。バラはまた今度見せてあげるね。」
そう言って、リリーの手をとり、歩き出す。
「あ、あの、大丈夫ですから。一人で歩けますから。」
繋いだ手が恥ずかしくて、それとなく離してほしいと訴えたつもりのリリーだったが、
「駄目。」
一言で却下された。
なんで?
意識すると手に汗をかいてしまいそうで、なんとか話を変えることにする。
「あの、さっき木に登ったこと、内緒にしてもらえますか?」
王宮で木登りなんて、リリーに甘い家族でもきっと怒るだろう。
ヒヤヒヤしながらお願いすると、
「わかった、誰にも言わないよ。」
とあっさり承諾の返事があり、安心する。
最後にボソッと、「僕はね」と聴こえた気がしたが。
ついでに気になっていたことも尋ねてしまおう。
「私が登っていた時、もしかしてスカートの中って見えてしまいましたか?」
「ふふっ、大丈夫だよ。護衛の者は真下に来ないように言っていたからね。見えたのは僕だけだから安心して?」
きゃーーーっ!!
リリーは今日何度目になるかもわからない悲鳴を、またしても心の中であげる。
やっぱり見えてしまっていたわ!
僕だけって、ラインハルト様に見られちゃったなんて、全然安心出来ません!
「もうお嫁にいけない・・・」
呟きながら足元がふらつくリリーを、ラインハルトが「それは心配要らないよ。」と言いながら支えてくれたが、リリーには聴こえていなかった。
その後、ショックで朦朧としているリリーに、
「僕のことはハルトって呼んで欲しいな。僕とリリーの仲だものね。」
とお願いされ、有無を言わさないラインハルトの笑顔の圧に、なし崩し的に了承させられた。
王子様ってすごい・・・
勝つつもりなんてないけれど、全然勝てる気がしないわ・・・
田舎暮らしが長く、今まで割と自分のペースで生きてきたリリーだったが、ラインハルトの前では自分が自分でなくなる時があるのを感じ始めていた。
リリーの父、ウィリアムはリリーを心配し、今か今かと二人の帰りを庭園の入口で待っていた。
つい、リリーと帰ることを優先し、ラインハルトと散歩に行かせてしまったことを後悔していた。
あんな純粋で可愛い娘を、王子とはいえ男と二人きりにしてしまった!
私はなんてバカなことを!!
後悔むなしく、手を繋ぎながら、「リリー」「ハルト様」とお互いを呼び会う仲良さげな様子を見せつけられ、ウィリアムはしばらく立ち直れなかったという。
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