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リリーは鈍感令嬢。
しおりを挟む「リリー、王宮に行ったって本当?何があったの?洗いざらい教えてもらいますからね!」
王宮へ行ってから3日後。
リリーはいま、幼馴染みのジェシーから尋問を受けていた。
なんでジェシーが、私が王宮へ行ったことを知っているのかしら?
リリーは不思議に思ったが、ジェシーが興奮している為、理由を訊くのは無理そうだと考える。
「第三王子のラインハルト様と手を繋いで歩いていたっていうのは事実なのかしら?」
続けざまに尋ねられ、リリーはあの日のことを思い返していた。
3日前。
王宮からの帰りの馬車の中で、リリーは父ウィリアムにあれこれ訊かれていた。
「リリー、僕に教えておくれ。庭園で何があったのかい?王子に何か言われたり、されたりは?なんで手を繋いでいたんだい?ハルト様と呼んでいたよね?二人はもうそんなに仲が良くなったのかい?」
リリーの方へ身を乗り出して、矢継ぎ早に質問を繰り出す父に、リリーも、侍女のアイラも驚いていた。
アイラはチーズタルトを王妃様の侍女に渡した後、リリー達が帰るまで休憩室で待機してくれていたらしい。
「お父様、特に何もありませんわ。あ、子猫を連れたハリー君という男の子に庭園でお会いしましたわ。」
まさか、『木に登って子猫を助けたらうっかり足を滑らせ、王子に助けられた挙げ句に抱きしめられました』などとは父には言えない。
無難に説明しようと試みる。
「子猫を連れたハリー君?それは、王太子のご子息のハリー様ではないか?」
王太子?
それって、第一王子よね。
つまり、ラインハルト様のお兄様。
確かに、ハルトお兄ちゃまって呼んで・・・って、王太子の息子?
「お父様、どうしましょう!私ったら知らずに馴れ馴れしい態度を!」
「まあ、大丈夫だろう。ラインハルト様も一緒だったし。って、僕が訊きたいのは、手を繋いでいた理由だよ!」
お父様、ねばりますね・・・。
手を繋いだ理由。
流れで自然にだったような。
リリーは庭園に行ってからの出来事を振り返ってみる。
そして気付き、納得した。
そうよ!
ラインハルト様は王子様だし、紳士的な方なのよ!
木から落ちかけた私を心配して労り、抱きしめ、歩くときはエスコートをして下さったわ。
そして、親しみやすさも兼ね備えていて、私にハルト様と呼ぶのを許して下さったのだわ。
もう、私ってば、変にドキドキし過ぎよ。
「お父様!ラインハルト様は王子の鑑ですわ!!さりげないエスコートの数々と、思いやり。高貴な微笑みの中に、親しみやすさも持ち合わせた、まさに小説に出てくる王子様ですわ。」
リリーは一気に難問が解けたような、晴れやかな気持ちだった。
さっきまで、ラインハルトの仕草や言葉一つ一つに動揺し、胸が高鳴り、自分が自分ではないようで焦っていたのだ。
しかし、ラインハルトは王子として当然の行動をし、リリーはラインハルトが憧れの小説の王子様のようでときめいた。
ただそれだけのことだったのだ。
「いやいや、リリー?王子のあの雰囲気は、ただのエスコートにしては・・・」
「もう、嫌ですわ、お父様。ラインハルト様は誰にでも、ああやって気さくで紳士なのですわ。」
リリーだけがわかっていなかった。
ラインハルトは誰にでも優しい訳ではないし、小説の王子もヒロイン相手だからこそ優しいのだということを。
ウィリアムが娘を心配そうに見つめ、アイラが
「お嬢様は鈍感なところがおありですから。」
と、言いながら溜め息を吐いた。
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