【完結】田舎育ち令嬢、都会で愛される

櫻野くるみ

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お忍びデートの準備中。

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リリーがラインハルトへ気持ちを伝えてからというもの、ラインハルトからのプレゼント攻撃が始まった。
彼の中では、今まではまだ気持ちを押さえ、我慢していたらしい。
情熱的な手紙も毎回付いていた。

リリーの家族は、ますます重くなった王子の愛に唖然とし、もはや見ないフリである。
肝心のリリーが喜んでいるのだから、口を出すべきではないだろう。
出すべきではないと分かってはいるが、日によっては、王子自ら突然この屋敷まで届けに来るのはやめて欲しかった。
まだ公になってはいないはずなのに、もう貴族の中で、王子とリリーの婚約を知らないものは居ない。
ラインハルトが率先してバレるような行動をとっているのだから、当然の結果である。

その煽りを受け、急に親しげに近付いてくる一部の貴族達に、ウィリアムとアーサーは迷惑していた。
アーサーはジェシーとの婚約をすぐさま発表して、未然に防ぐ予定だったのだが、まだ諦めていない家も多く、愛人まで勧めてくる始末である。
スペンサー家は、いまや注目度ナンバーワンの家であった。


今日は、リリーがラインハルトとお忍びで街へ出かけることになっている。
リリーは目立たぬように、町娘のような地味なワンピースに着替えていた。

「アイラ、領地に居た時を思い出すわね!もっと質素なワンピースだったけれど、やっぱり私は顔も地味だから、どこから見ても庶民にしか見えないわ!!」

リリーは嬉しそうにはしゃいでいるが、はたしてそれでいいのだろうか。
仮にも第3王子の婚約者が・・・
アイラは相槌に悩んだ。

「お嬢様、いくら町娘に成りきっているからといって、街で走っては駄目ですよ?殿下にご迷惑をかけないようにして下さいね。」

「わかっているわ。いつもより走りやすいけれど、今日は我慢するわ。」

安定のお小言がアイラから発せられたが、リリーはご機嫌に返事をする。
そもそもが貴族令嬢に対する注意からズレているのだが、リリーにとってはこれが通常のお小言であった。

そんなリリーを、アーサーとジェシーが影から覗いていた。

「アーサーお兄様、お忍びって、アレですわよね?全員が気付いてて、気付かないフリを全力でする、はた迷惑なあの企画・・・」

「うん、そうだね。今回も、相当な数のサクラが配置されているらしい。町人も買収されてるか、劇団員だとか。」

王家の男性陣によるお忍び・・・
それはこの国では有名な行事だった。
婚約者を溺愛するあまり、お忍びデート自体が、大がかりな仕掛けなのである。

今の国王、王太子、第2王子の時も度々行われ、その度に貴族も庶民も大勢借り出される為、もはや皆、手慣れたものであった。

さすがにやたら芝居くさかったり、うまくいき過ぎているので、相手の令嬢は大抵途中で気付く事が多い。
王妃はあまりの不自然さに、街に着いた途端気付いたらしい。

「でも、リリーなら最後まで気付かない気がするわ。」

「そうだろうね。自分が庶民にしか見えないと思い込んでるくらいだから、尚更ね。」

ラインハルトに恋をしてから、随分垢抜け、愛らしさが増したリリーだったが、本人は気付いていない。

「アーサーお兄様、面白そうだから、私達も街に出かけましょうよ。」

「本気かい?王子に見つかったらどうするんだい?」

「あら、そんなの、『奇遇ですわね』って言えば平気よ。」

こうして、アーサーは乗り気でなかったが、ジェシーと共に、仕掛けが散りばめられた街へと出かけることになったのだった。



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