【完結】田舎育ち令嬢、都会で愛される

櫻野くるみ

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全ては王子様の思い通り。

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国王はナムール伯爵を正面に見据えると、厳かに言った。

「ナムール伯爵、そなたは私の臣下だと申したな?」

「はい、もちろんでございます。私はあなた様の、忠実なるしもべでございます。」

伯爵は恭しく頭を下げたつもりなのだろう。
しかし、嘘臭い演技のような仰々しい礼の為、発言も口先だけのものだとすぐにわかる。
この男は国王に取り入り、自らの権力を増幅させることにしか興味がないのだ。

「ふむ、では伯爵、そなたを捕らえる。理由はもう十分だろう?私の言葉に従え。」

「は?いや、何を仰るのですか?そんな横暴がまかり通るとでも?」

明らかに動揺しながら、国王に言い募る伯爵。

「もちろんだ。私は国王だからな。そなたが大好きな権力を持っていてな、そなたを捕らえることなど容易いのだ。」

不適な笑みを称えながら、国王は伯爵を追い詰めていく。

「いや、しかし、私と国王の仲ではありませんか。そんな血迷ったことは仰らず、これからも手を携えて・・・」

「そなたの手を借りることなどない。今までも、これからも。むしろ邪魔。」

国王は伯爵の言葉を遮ると、すがる伯爵に馬鹿にしたように言った。


「力があれば、何をしてもいいというのか!!この外道が!!」

かろうじて残っていた紳士の仮面が剥がれ、伯爵が国王を罵り始めた。
国王は楽しそうに笑っている。

「本性を現したか。外道はお前だ、ナムール。権力を笠に着て、爵位の低いものや領民を苦しめ、邪魔なものを排除しようとするなど。」

「それの何が悪い!私は伯爵だ!!敬われ、尊ばれるべき存在だ!!娘を王子の妃にし、王家に連なるべき人間なのだ!!」

静かに見守っている貴族達は、伯爵をもはや哀れみの目で見ていた。
この男は爵位しか誇れるものがなく、娘すら権力を得る為の道具でしかないのである。

「話しても無駄だな。お前には貴族であるが故の義務すら理解していない。連れていけ。」

国王が兵に命じた時だった。

「偉そうに指図するな!!」

どうやって夜会に持ち込んだのか、ナイフの鞘を抜くと、伯爵は国王に斬りかかった。

ようやく抜いたか。
馬鹿なのに案外気が長いから、飽きちゃってたところだったんだよね。

ラインハルトはこの瞬間をずっと待っていた為、サッと伯爵を足払いして伯爵を倒すと、ナイフを取り上げた。

「はい、これで死罪決定。娘共々とりあえず牢屋ねー。」

兵が二人を連れていくが、周囲はポカンとした表情で見ていた。
あれ?終わり?
あっさりと解決しすぎている気が。
さっきまでは一体何だったのか・・・

「父上、お疲れ様でした。いい演技してましたよ。」

「ラインハルト、万が一ナイフが当たってたらどうするつもりだったんだ。痛いじゃないか。」

情けない顔で国王がラインハルトに訴えている。
痛いで済むのか謎であるが。

「大丈夫ですよ、あれ偽物ですから。すり替えといたんで。」

ラインハルトが懐からナイフを取り出す。

え?
いつの間に!?
しかも、どこまでが想定内だったんだ!?

皆に疑問を抱かせたまま、ラインハルトは元気に言った。

「あー、やっとリリーを迎えに行ける。父上、このままお披露目でいいですよね?あ、少し休憩を挟みましょうか。とにかく、僕は隣に行ってきます。」

嵐のようにラインハルトが去り、残された者は呆気にとられて立ち竦んでいた。

「あいつはあんな性格だったか?」

国王が王妃に確認していた。


その後、ラインハルトにエスコートされたリリーが会場に戻ってきた。
令嬢達は皆顔が上気し、笑顔とおしゃべりが絶えず、隣室のお茶会がいかに楽しかったかを物語っていた。

反対に、会場で一部始終を見守っていた貴族はどっと疲れていた。
晴れ晴れとした笑顔のラインハルトが、少し憎く見えるほどだ。


リリーは、お茶会が楽しかったことをラインハルトに語っていた。
ラインハルトはリリーの笑顔を守れたことに満足しながら、ジェシーにそっと目配せした。
ジェシーは万事上手くいったことを理解し、そっと会釈した。

こうして、リリーに害をなす者は排除され、お披露目はつつがなく執り行われた。
終始甘ったるい笑顔で嬉しそうにリリーをエスコートするラインハルトに、皆が胸焼けを起こし、絶対二人の邪魔だけはしないと心に誓った。

終わってみれば、全てがラインハルトの手のひらの上で転がされていたと、静かに見届けた王妃は苦笑したのだった。













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