3 / 34
蝋燭に火を灯しました
しおりを挟む
二人の男性がアンリの前に並び立った。
一人はサラサラとした長い銀髪で青い瞳。
慈愛に満ちた微笑みを浮かべ、聖職者のような服を着ている。
もう一人は金色の短髪で緑の瞳。
銀色の髪の男性と比べると、凛々しい顔付きで、まるで王子様のようなきらびやかな格好である。
二人とも20代中頃だろうか。
長身で、端正な顔立ちをしている上、身分がとても高そうだ。
アンリは居心地が悪かった。
所在なく立っているアンリに、銀髪の男性が朗らかに声をかけた。
「突然の召喚、申し訳なく思っています。私はクラウスと申します。司祭をしております。こちらはこの国の王、ディラン様です。聖女様のお名前を教えていただけますか?」
聖女様だとか、金髪の男性が王様だとか、気になることはたくさんあるが、とりあえず返事をすることにする。
「私はアンリと言います」
「アンリ様ですね。ありがとうございます。それではアンリ様、1つ確認をさせていただきたいのですが、アンリ様は魔法を使えますか?」
一気に場の空気が緊張に包まれた。
目の前の大勢の人が静まり、目を見開いてこちらを見ている。
クラウスの顔も真剣そのものだ。
なんで魔法?
とは思ったが、群衆が固唾を飲んでアンリの返事を待っているようだ。
いまだ理解が追い付かないまま、アンリは答えた。
「はい……」
ワアアアアアアッと一斉に歓声が上がり、アンリは焦った。
「少しですが」と続ける前に歓声でかき消されてしまったからだ。
クラウスがホッとしたように微笑み、言った。
「早速で申し訳ないのですが、今から魔法を使っていただいてもよろしいでしょうか。集まった者達に力を見せてやってほしいのです。その後にゆっくりとご説明致しますので」
アンリは困ってしまった。
魔法ってなんの魔法かしら。
私の魔法、村で一番弱いのに……。
がっかりさせてしまうに決まっているわ。
そうこうしている内に、アンリの前に1本の蝋燭が置かれた。
「アンリ様、こちらの蝋燭に火を灯すことは可能でしょうか。突然、不躾なお願いをしているのはわかっております。あ、無理でしたら、もっと細い蝋燭もご用意出来ます」
えーと……。
この蝋燭に灯すだけでいいの?
もっと高度な魔法を期待されると思い、身を固くしていたアンリだったが、一気に力が抜けた。
いやいや、蝋燭からどんどん難しくなるのかも。
もう一度緊張感に包まれながら、アンリは蝋燭に手をかざした。
ポッ。
蝋燭に火が点いた途端、割れんばかりの歓喜の声に包まれた。
えっ、これだけで?
慌てるアンリに、
「素晴らしいです。感動致しました」
拍手をしながら近付くクラウス。
その隣でディランも鷹揚に告げる。
「見事な力だな。突然の我々の要望によく応えてくれた。礼を言う。疲れていないか?」」
いえいえ、蝋燭1本点けただけなので。
全く疲れはないですが。
あれ?もう終わりですか?
人々の興奮の中、誉められることに慣れていないアンリは、一人あたふたとしていた。
一人はサラサラとした長い銀髪で青い瞳。
慈愛に満ちた微笑みを浮かべ、聖職者のような服を着ている。
もう一人は金色の短髪で緑の瞳。
銀色の髪の男性と比べると、凛々しい顔付きで、まるで王子様のようなきらびやかな格好である。
二人とも20代中頃だろうか。
長身で、端正な顔立ちをしている上、身分がとても高そうだ。
アンリは居心地が悪かった。
所在なく立っているアンリに、銀髪の男性が朗らかに声をかけた。
「突然の召喚、申し訳なく思っています。私はクラウスと申します。司祭をしております。こちらはこの国の王、ディラン様です。聖女様のお名前を教えていただけますか?」
聖女様だとか、金髪の男性が王様だとか、気になることはたくさんあるが、とりあえず返事をすることにする。
「私はアンリと言います」
「アンリ様ですね。ありがとうございます。それではアンリ様、1つ確認をさせていただきたいのですが、アンリ様は魔法を使えますか?」
一気に場の空気が緊張に包まれた。
目の前の大勢の人が静まり、目を見開いてこちらを見ている。
クラウスの顔も真剣そのものだ。
なんで魔法?
とは思ったが、群衆が固唾を飲んでアンリの返事を待っているようだ。
いまだ理解が追い付かないまま、アンリは答えた。
「はい……」
ワアアアアアアッと一斉に歓声が上がり、アンリは焦った。
「少しですが」と続ける前に歓声でかき消されてしまったからだ。
クラウスがホッとしたように微笑み、言った。
「早速で申し訳ないのですが、今から魔法を使っていただいてもよろしいでしょうか。集まった者達に力を見せてやってほしいのです。その後にゆっくりとご説明致しますので」
アンリは困ってしまった。
魔法ってなんの魔法かしら。
私の魔法、村で一番弱いのに……。
がっかりさせてしまうに決まっているわ。
そうこうしている内に、アンリの前に1本の蝋燭が置かれた。
「アンリ様、こちらの蝋燭に火を灯すことは可能でしょうか。突然、不躾なお願いをしているのはわかっております。あ、無理でしたら、もっと細い蝋燭もご用意出来ます」
えーと……。
この蝋燭に灯すだけでいいの?
もっと高度な魔法を期待されると思い、身を固くしていたアンリだったが、一気に力が抜けた。
いやいや、蝋燭からどんどん難しくなるのかも。
もう一度緊張感に包まれながら、アンリは蝋燭に手をかざした。
ポッ。
蝋燭に火が点いた途端、割れんばかりの歓喜の声に包まれた。
えっ、これだけで?
慌てるアンリに、
「素晴らしいです。感動致しました」
拍手をしながら近付くクラウス。
その隣でディランも鷹揚に告げる。
「見事な力だな。突然の我々の要望によく応えてくれた。礼を言う。疲れていないか?」」
いえいえ、蝋燭1本点けただけなので。
全く疲れはないですが。
あれ?もう終わりですか?
人々の興奮の中、誉められることに慣れていないアンリは、一人あたふたとしていた。
10
あなたにおすすめの小説
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました
鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」
そう言ったのは、王太子アレス。
そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。
外交も財政も軍備も――
すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。
けれど功績はすべて王太子のもの。
感謝も敬意も、ただの一度もない。
そして迎えた舞踏会の夜。
「便利だったが、飾りには向かん」
公開婚約破棄。
それならば、とレイナは微笑む。
「では業務も終了でよろしいですね?」
王太子が望んだ通り、
彼女は“確認”をやめた。
保証を外し、責任を返し、
そして最後に――
「ご確認を」と差し出した書類に、
彼は何も読まずに署名した。
国は契約で成り立っている。
確認しない者に、王の資格はない。
働きたくない公爵令嬢と、
責任を理解しなかった王太子。
静かな契約ざまぁ劇、開幕。
---
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。
蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。
これで、貴方も私も自由です。
……だから、もういいですよね?
私も、自由にして……。
5年後。
私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、
親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、
今日も幸せに子育てをしています。
だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。
私のことは忘れて……。
これは、すれ違いの末に離れ離れになった夫婦の物語。
再会したとき、二人が選ぶのは「離婚」か、それとも「再構築」か。
妻を一途に想い続ける夫と、
その想いを一ミリも知らない妻。
――攻防戦の幕が、いま上がる。
【完結】召喚された2人〜大聖女様はどっち?
咲雪
恋愛
日本の大学生、神代清良(かみしろきよら)は異世界に召喚された。同時に後輩と思われる黒髪黒目の美少女の高校生津島花恋(つしまかれん)も召喚された。花恋が大聖女として扱われた。放置された清良を見放せなかった聖騎士クリスフォード・ランディックは、清良を保護することにした。
※番外編(後日談)含め、全23話完結、予約投稿済みです。
※ヒロインとヒーローは純然たる善人ではないです。
※騎士の上位が聖騎士という設定です。
※下品かも知れません。
※甘々(当社比)
※ご都合展開あり。
【完結】二度目の子育て~我が子を可愛がったら溺愛されました
三園 七詩
恋愛
私は一人娘の優里亜の母親だった。
優里亜は幼い頃から体が弱く病院でほとんどの時間を過ごしていた。
優里亜は本が好きでよく私にも本の話をしてくれた。
そんな優里亜の病状が悪化して幼くして亡くなってしまう。
絶望に打ちひしがれている時事件に巻き込まれ私も命を落とした。
そして気がつくと娘の優里亜が大好きだった本の世界に入り込んでいた。
【完結】番としか子供が産まれない世界で
さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。
何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。
そんなニーナが番に出会うまで
4話完結
出会えたところで話は終わってます。
冷遇された聖女の結末
菜花
恋愛
異世界を救う聖女だと冷遇された毛利ラナ。けれど魔力慣らしの旅に出た途端に豹変する同行者達。彼らは同行者の一人のセレスティアを称えラナを貶める。知り合いもいない世界で心がすり減っていくラナ。彼女の迎える結末は――。
本編にプラスしていくつかのifルートがある長編。
カクヨムにも同じ作品を投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる