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聖なる火らしいです
しおりを挟む蝋燭の火がゆらゆらと揺れている。
「では確認させていただきます」
確認?とアンリが不思議そうに見ている前で、クラウスが蝋燭に息を吹きかけた。
ふぅーーーっ。
炎は一瞬小さくなり、消えたかと思われたが、その後ゆらゆらと復活し、蝋燭には火が灯ったままだ。
次に水が用意され、蝋燭の火に勢いよく水が注がれた。
しかし、火が消えることはない。
続いて蝋燭が倒され、横になった。
ああっ!と焦ったような声が群衆から上がるが、火は接触しているテーブルの布には燃え移ることはなく、蝋燭は火が点いたままテーブルに横たわっている。
「さすが聖なる火ですね。使い手の意思なく勝手に消えず、燃え広がることもない」
クラウスが感嘆したように言う。
何を当たり前のことを確認しているのかしら?
アンリにとっては常識であった。
「では更に確認しましょう」
クラウスがもう1本の蝋燭を取り出し、火のついた蝋燭を近付けた。
火が燃え移り、火の付いた蝋燭が2本になる。
今度は最初に火を灯した方の蝋燭を、ディランの顔の前に持っていく。
ディランが息を吹きかけると、蝋燭の火は消えた。
おおおおっ!!
驚きでどよめく声が聴こえた。
「これが聖なる火であり、意思と共に消え、また意思と共に燃え移ることが確認されました。素晴らしい!!」
クラウスが感動したように言っているが、アンリには何がすごいのかわからない。
思わず、「それはすごいことなのですか?」と尋ねずにはいられなかった。
すると、王様自らが答えてくれた。
「この国では火にこちらの意思など通じはしない。強風の日はすぐにランプの火が消える。もっと大変なのは火が強風に煽られ、火事が多発することだ。最近は天候が荒れていて、火による災害も多い。聖なる火であれば、被害が抑えられる」
「火を起こすのも大変な労力ですから、消えないのは有難いですね」
クラウスの付け足した台詞に、ディランも頷いた。
今まで当たり前だった火魔法が、聖なる火と呼ばれる。
役に立てることは嬉しいが、もっと大きな火を出せたらとアンリは申し訳なく思ってしまう。
気付くと、クラウスの手にした火の点いている蝋燭の前に、集まっていた人々が列になって並んでいた。
持参したらしい蝋燭に、次々と火を移している。
聖なる火を拝みながら嬉しそうに火を移し、アンリに感謝の言葉を述べて去っていく人々を、アンリは複雑な気持ちで見送った。
私に力があれば、一斉に皆さんの蝋燭に火を灯すことが出来たのに……。
そんなアンリの悔しい気持ちとは裏腹に、今日この場に居たものは皆アンリの力に感動し、聖女様と讃えていた。
その日の内にアンリの噂が国中に知れ渡ったことを、アンリだけが知らなかった。
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