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力になりたいけれど
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集まっていた人々が去り、残ったのはアンリ、クラウス、ディランの三人だけとなった。
「お疲れさまでした、アンリ様。王宮で休憩致しましょう。軽食も用意させますので。よろしければ少々お話しさせていただいても?」
クラウスの言葉に、『もちろんです、待っていました』とばかりに、アンリはコクコクと頷き、「お願いします」と言ったのだった。
豪華な教会のような場所から、暗く狭い通路へ案内される。
「王宮へ続く隠し通路の為、狭くて申し訳ありません。でもアンリ様の火があるのでいつもより安心ですね」
「確かにな。この通路の途中で火が消えるのはなかなか堪えるからな」
クラウスの言葉にディランが困ったように笑いながら頷くので、アンリは驚く。
この長い通路が真っ暗なんて、考えるだけで怖いわ。
お化けが出そう……。
納屋なんかよりずっと怖い。
思わず身をすくめていると。
「手を貸せ」
王様が手を握ってくれた。
言い方は怖いけど、気遣ってくれる優しい人らしい。
でも王様と手を繋ぐなんて。
アンリは緊張で足を進めるのがやっとだった。
通路を無事に通り抜けると、急に眩しく豪華な造りの廊下に出た。
ーー王宮だろうか。
「応接室にご案内致しますね」
クラウスが先導し、大きな扉を開いた。
中は思ったよりこじんまりとしていたが、豪華なソファーが置かれ、テーブルには軽食らしきものと紅茶のセットが用意されていた。
「どうぞこちらへ」
アンリとディランをソファーへ導いた後、クラウスも座りながら話し始めた。
「食べながらで構いませんので。では改めまして、聖女様であられるアンリ様、この度は召喚に応じていただき、誠にありがとうございます」
いえ、応じたつもりはなく、気付いたらこちらに居ただけなのですが。
あ、もしかして私が、あちらの世界でもうイヤって思った気持ちが反応してしまったのかしら?
「どうした、聖女。やはり疲れたか?」
ぐるぐる考えていたら、王様のディランに心配されてしまった。
やはり気遣いが出来る人だ。
慌てて首を振りながら、否定する。
「疲れてはいません、えっと、国王様、司祭様。ただ、あの、私は聖女様ってよく知りませんが、そんな立派な方ではないので、名前は呼び捨てでお願いします」
「そんなわけにはまいりません。司祭である私が伝承の聖女様を呼び捨てなど。しかし聖女様という呼び方を気にされるなら、アンリ様とお呼びさせていただきます。私のことはクラウスとお呼びください」
「俺はアンリと呼ばせてもらおうか。しかし、国王様はやめてくれ」
あっさりとクラウスに否定され、ディランにもダメ出しをされてしまう。
「では、ディラン様とクラウス様とお呼びさせていただきます」
クラウスは不服そうだったが、アンリだって譲れない。
アンリはただの村娘なのだ。
一息付けようと紅茶を口にし、首を傾げる。
なんとなく、雑味のような濁った味を感じたのだ。
続けてサンドイッチのようなパンをかじってみる。
思ったより固く、こちらもまた味に違和感を感じた。
苦味があるし、具の野菜の味が薄く、しなびている。
『こちらの世界の食べ物はこういうものなのかしら』とアンリは考えていたのだが。
「お気付きの通りです。今、この国は危機的状況にあります。どうか私たちを助ける為に、お力をお貸し下さい」
クラウスが必死に訴え、ディランも沈痛な面持ちをしている。
アンリも状況はよくわからないが、出来るなら力になりたいとは思う。
なりたいとは思うが……。
アンリは心の中で叫んでいた。
私、魔法の力が弱いんですーーーー!!
「お疲れさまでした、アンリ様。王宮で休憩致しましょう。軽食も用意させますので。よろしければ少々お話しさせていただいても?」
クラウスの言葉に、『もちろんです、待っていました』とばかりに、アンリはコクコクと頷き、「お願いします」と言ったのだった。
豪華な教会のような場所から、暗く狭い通路へ案内される。
「王宮へ続く隠し通路の為、狭くて申し訳ありません。でもアンリ様の火があるのでいつもより安心ですね」
「確かにな。この通路の途中で火が消えるのはなかなか堪えるからな」
クラウスの言葉にディランが困ったように笑いながら頷くので、アンリは驚く。
この長い通路が真っ暗なんて、考えるだけで怖いわ。
お化けが出そう……。
納屋なんかよりずっと怖い。
思わず身をすくめていると。
「手を貸せ」
王様が手を握ってくれた。
言い方は怖いけど、気遣ってくれる優しい人らしい。
でも王様と手を繋ぐなんて。
アンリは緊張で足を進めるのがやっとだった。
通路を無事に通り抜けると、急に眩しく豪華な造りの廊下に出た。
ーー王宮だろうか。
「応接室にご案内致しますね」
クラウスが先導し、大きな扉を開いた。
中は思ったよりこじんまりとしていたが、豪華なソファーが置かれ、テーブルには軽食らしきものと紅茶のセットが用意されていた。
「どうぞこちらへ」
アンリとディランをソファーへ導いた後、クラウスも座りながら話し始めた。
「食べながらで構いませんので。では改めまして、聖女様であられるアンリ様、この度は召喚に応じていただき、誠にありがとうございます」
いえ、応じたつもりはなく、気付いたらこちらに居ただけなのですが。
あ、もしかして私が、あちらの世界でもうイヤって思った気持ちが反応してしまったのかしら?
「どうした、聖女。やはり疲れたか?」
ぐるぐる考えていたら、王様のディランに心配されてしまった。
やはり気遣いが出来る人だ。
慌てて首を振りながら、否定する。
「疲れてはいません、えっと、国王様、司祭様。ただ、あの、私は聖女様ってよく知りませんが、そんな立派な方ではないので、名前は呼び捨てでお願いします」
「そんなわけにはまいりません。司祭である私が伝承の聖女様を呼び捨てなど。しかし聖女様という呼び方を気にされるなら、アンリ様とお呼びさせていただきます。私のことはクラウスとお呼びください」
「俺はアンリと呼ばせてもらおうか。しかし、国王様はやめてくれ」
あっさりとクラウスに否定され、ディランにもダメ出しをされてしまう。
「では、ディラン様とクラウス様とお呼びさせていただきます」
クラウスは不服そうだったが、アンリだって譲れない。
アンリはただの村娘なのだ。
一息付けようと紅茶を口にし、首を傾げる。
なんとなく、雑味のような濁った味を感じたのだ。
続けてサンドイッチのようなパンをかじってみる。
思ったより固く、こちらもまた味に違和感を感じた。
苦味があるし、具の野菜の味が薄く、しなびている。
『こちらの世界の食べ物はこういうものなのかしら』とアンリは考えていたのだが。
「お気付きの通りです。今、この国は危機的状況にあります。どうか私たちを助ける為に、お力をお貸し下さい」
クラウスが必死に訴え、ディランも沈痛な面持ちをしている。
アンリも状況はよくわからないが、出来るなら力になりたいとは思う。
なりたいとは思うが……。
アンリは心の中で叫んでいた。
私、魔法の力が弱いんですーーーー!!
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