ショボい魔法しか使えない私が、魔法のない世界に召喚されたら崇め奉られてます

櫻野くるみ

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王様はメロメロ?

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アンリは次に、ナスの隣のピーマンが植えてある場所へと移動した。

『美味しいピーマンになぁれ』

先程と同じように、心の中で祈ってみる。
すると、ぷっくりと膨らんだ大きなピーマンがあっという間に生っていた。

「ん?」

ディランが何かに気付いたように声を発した。

「また力が強まったのか?ナスよりも広範囲に実が生っているぞ」

アンリが見渡すと、確かにナスよりピーマンの方が畑の隅々まで元気になっている。

「さっきの自画自賛で、魔力が強まったのでしょうか?」

だとしたら、単純すぎて恥ずかしい……。

アンリは両手で頬を覆ったが、ディランは納得したように頷いた後、使用人達に言った。

「お前達、もっとアンリを誉めろ。アンリを調子に乗らせるんだ」

「ちょっ、ディラン様!調子に乗らせるって、ひどいですっ!」

アンリがさすがに声をあげると、ディランが笑っていた。

「クックッ……。冗談だ。役立っていると本気で思えない限り、小手先のことでアンリは喜ばないだろう。負担をかけるつもりもない。ゆっくり自信を取り戻せ」

「ディラン様……」

ディランの瞳と声が優しい。
この人の傍にいたら、自分は変われるかもしれないと、アンリは胸が熱くなった。

ディランとアンリが見つめ合う中、ディランの冗談を初めて聞いた使用人達は耳を疑っていた。

「ディラン様が冗談を?」
「しかも声を出して笑っていたような……」
「聖女様は人格まで変えてしまわれるのか!?」

噂はその日中に城の外まで広まり、『国王が聖女様に微笑んだ』という話に尾ひれが付き、噂が一周する頃には『国王は聖女様に骨抜きのメロメロ』という内容に変わっていた。

偶然噂を聞いたアンリは卒倒し、全力で否定した。

「そんなはずないでしょう。尾ひれどころか、全身にひれが付いてます!いえ、もう全く別の話じゃないですか!」

しかし、肝心のディランが訂正しようともしない為、事実のように受け取られていった。

「クラウス様、こんなの国王の沽券に関わります!クラウス様から事実無根だと皆さんに言って下さい!」

アンリはクラウスに泣きついたが、クラウスに笑顔で流された。

「殺伐としていたこの国に、せっかく明るい話題が訪れましたからね。このままでいいですよ。当たらずとも遠からずですし」

いやいや、はずれてますし、全く遠いですよ!!

しかしアンリの主張は通らなかった。


多くの野菜が収穫されたその日、夕食は具だくさんのスープがメインになった。
まだ小麦や畜産には手をつけられていない為、パンや肉は振る舞われなかった。

しかし、久しぶりの歯応えのある野菜と、美味しい水から作られたスープである。
体調が戻った人々も集まり、皆でささやかなパーティー気分を味わった。

「食事が美味しくないと、頑張る気力が出ないですよね」

アンリの言葉に皆が頷き、明日からやるべきことを相談する。

「何よりもまず、街にもこの水をもっと行き渡らせないと」

「火はだいぶ人から人へと渡っていってるらしい」

「食料も早めに何とかしないとな」

考え込んでいたディランが号令をかけた。

「明日の朝、復調した城の者にも声をかけ、全員集めろ。作業を分担し、街への配給を行う。アンリ、明日は違うことも試して欲しいのだが、頼めるか?」

「もちろんです!」

握りこぶしを作って、やる気満々なアンリを見て、ディランが微かに表情を緩めた。

「やっぱりメロメロ……」

「これがメロメロ……」

こそこそと噂話をする周囲の人々に、思わずアンリが叫んでいた。

「誤解ですーーーー!!」


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