13 / 34
王様はメロメロ?
しおりを挟む
アンリは次に、ナスの隣のピーマンが植えてある場所へと移動した。
『美味しいピーマンになぁれ』
先程と同じように、心の中で祈ってみる。
すると、ぷっくりと膨らんだ大きなピーマンがあっという間に生っていた。
「ん?」
ディランが何かに気付いたように声を発した。
「また力が強まったのか?ナスよりも広範囲に実が生っているぞ」
アンリが見渡すと、確かにナスよりピーマンの方が畑の隅々まで元気になっている。
「さっきの自画自賛で、魔力が強まったのでしょうか?」
だとしたら、単純すぎて恥ずかしい……。
アンリは両手で頬を覆ったが、ディランは納得したように頷いた後、使用人達に言った。
「お前達、もっとアンリを誉めろ。アンリを調子に乗らせるんだ」
「ちょっ、ディラン様!調子に乗らせるって、ひどいですっ!」
アンリがさすがに声をあげると、ディランが笑っていた。
「クックッ……。冗談だ。役立っていると本気で思えない限り、小手先のことでアンリは喜ばないだろう。負担をかけるつもりもない。ゆっくり自信を取り戻せ」
「ディラン様……」
ディランの瞳と声が優しい。
この人の傍にいたら、自分は変われるかもしれないと、アンリは胸が熱くなった。
ディランとアンリが見つめ合う中、ディランの冗談を初めて聞いた使用人達は耳を疑っていた。
「ディラン様が冗談を?」
「しかも声を出して笑っていたような……」
「聖女様は人格まで変えてしまわれるのか!?」
噂はその日中に城の外まで広まり、『国王が聖女様に微笑んだ』という話に尾ひれが付き、噂が一周する頃には『国王は聖女様に骨抜きのメロメロ』という内容に変わっていた。
偶然噂を聞いたアンリは卒倒し、全力で否定した。
「そんなはずないでしょう。尾ひれどころか、全身にひれが付いてます!いえ、もう全く別の話じゃないですか!」
しかし、肝心のディランが訂正しようともしない為、事実のように受け取られていった。
「クラウス様、こんなの国王の沽券に関わります!クラウス様から事実無根だと皆さんに言って下さい!」
アンリはクラウスに泣きついたが、クラウスに笑顔で流された。
「殺伐としていたこの国に、せっかく明るい話題が訪れましたからね。このままでいいですよ。当たらずとも遠からずですし」
いやいや、はずれてますし、全く遠いですよ!!
しかしアンリの主張は通らなかった。
多くの野菜が収穫されたその日、夕食は具だくさんのスープがメインになった。
まだ小麦や畜産には手をつけられていない為、パンや肉は振る舞われなかった。
しかし、久しぶりの歯応えのある野菜と、美味しい水から作られたスープである。
体調が戻った人々も集まり、皆でささやかなパーティー気分を味わった。
「食事が美味しくないと、頑張る気力が出ないですよね」
アンリの言葉に皆が頷き、明日からやるべきことを相談する。
「何よりもまず、街にもこの水をもっと行き渡らせないと」
「火はだいぶ人から人へと渡っていってるらしい」
「食料も早めに何とかしないとな」
考え込んでいたディランが号令をかけた。
「明日の朝、復調した城の者にも声をかけ、全員集めろ。作業を分担し、街への配給を行う。アンリ、明日は違うことも試して欲しいのだが、頼めるか?」
「もちろんです!」
握りこぶしを作って、やる気満々なアンリを見て、ディランが微かに表情を緩めた。
「やっぱりメロメロ……」
「これがメロメロ……」
こそこそと噂話をする周囲の人々に、思わずアンリが叫んでいた。
「誤解ですーーーー!!」
『美味しいピーマンになぁれ』
先程と同じように、心の中で祈ってみる。
すると、ぷっくりと膨らんだ大きなピーマンがあっという間に生っていた。
「ん?」
ディランが何かに気付いたように声を発した。
「また力が強まったのか?ナスよりも広範囲に実が生っているぞ」
アンリが見渡すと、確かにナスよりピーマンの方が畑の隅々まで元気になっている。
「さっきの自画自賛で、魔力が強まったのでしょうか?」
だとしたら、単純すぎて恥ずかしい……。
アンリは両手で頬を覆ったが、ディランは納得したように頷いた後、使用人達に言った。
「お前達、もっとアンリを誉めろ。アンリを調子に乗らせるんだ」
「ちょっ、ディラン様!調子に乗らせるって、ひどいですっ!」
アンリがさすがに声をあげると、ディランが笑っていた。
「クックッ……。冗談だ。役立っていると本気で思えない限り、小手先のことでアンリは喜ばないだろう。負担をかけるつもりもない。ゆっくり自信を取り戻せ」
「ディラン様……」
ディランの瞳と声が優しい。
この人の傍にいたら、自分は変われるかもしれないと、アンリは胸が熱くなった。
ディランとアンリが見つめ合う中、ディランの冗談を初めて聞いた使用人達は耳を疑っていた。
「ディラン様が冗談を?」
「しかも声を出して笑っていたような……」
「聖女様は人格まで変えてしまわれるのか!?」
噂はその日中に城の外まで広まり、『国王が聖女様に微笑んだ』という話に尾ひれが付き、噂が一周する頃には『国王は聖女様に骨抜きのメロメロ』という内容に変わっていた。
偶然噂を聞いたアンリは卒倒し、全力で否定した。
「そんなはずないでしょう。尾ひれどころか、全身にひれが付いてます!いえ、もう全く別の話じゃないですか!」
しかし、肝心のディランが訂正しようともしない為、事実のように受け取られていった。
「クラウス様、こんなの国王の沽券に関わります!クラウス様から事実無根だと皆さんに言って下さい!」
アンリはクラウスに泣きついたが、クラウスに笑顔で流された。
「殺伐としていたこの国に、せっかく明るい話題が訪れましたからね。このままでいいですよ。当たらずとも遠からずですし」
いやいや、はずれてますし、全く遠いですよ!!
しかしアンリの主張は通らなかった。
多くの野菜が収穫されたその日、夕食は具だくさんのスープがメインになった。
まだ小麦や畜産には手をつけられていない為、パンや肉は振る舞われなかった。
しかし、久しぶりの歯応えのある野菜と、美味しい水から作られたスープである。
体調が戻った人々も集まり、皆でささやかなパーティー気分を味わった。
「食事が美味しくないと、頑張る気力が出ないですよね」
アンリの言葉に皆が頷き、明日からやるべきことを相談する。
「何よりもまず、街にもこの水をもっと行き渡らせないと」
「火はだいぶ人から人へと渡っていってるらしい」
「食料も早めに何とかしないとな」
考え込んでいたディランが号令をかけた。
「明日の朝、復調した城の者にも声をかけ、全員集めろ。作業を分担し、街への配給を行う。アンリ、明日は違うことも試して欲しいのだが、頼めるか?」
「もちろんです!」
握りこぶしを作って、やる気満々なアンリを見て、ディランが微かに表情を緩めた。
「やっぱりメロメロ……」
「これがメロメロ……」
こそこそと噂話をする周囲の人々に、思わずアンリが叫んでいた。
「誤解ですーーーー!!」
11
あなたにおすすめの小説
美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ
さら
恋愛
会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。
ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。
けれど、測定された“能力値”は最低。
「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。
そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。
優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。
彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。
人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。
やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。
不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。
冷遇された聖女の結末
菜花
恋愛
異世界を救う聖女だと冷遇された毛利ラナ。けれど魔力慣らしの旅に出た途端に豹変する同行者達。彼らは同行者の一人のセレスティアを称えラナを貶める。知り合いもいない世界で心がすり減っていくラナ。彼女の迎える結末は――。
本編にプラスしていくつかのifルートがある長編。
カクヨムにも同じ作品を投稿しています。
【完結】召喚された2人〜大聖女様はどっち?
咲雪
恋愛
日本の大学生、神代清良(かみしろきよら)は異世界に召喚された。同時に後輩と思われる黒髪黒目の美少女の高校生津島花恋(つしまかれん)も召喚された。花恋が大聖女として扱われた。放置された清良を見放せなかった聖騎士クリスフォード・ランディックは、清良を保護することにした。
※番外編(後日談)含め、全23話完結、予約投稿済みです。
※ヒロインとヒーローは純然たる善人ではないです。
※騎士の上位が聖騎士という設定です。
※下品かも知れません。
※甘々(当社比)
※ご都合展開あり。
【完結】番としか子供が産まれない世界で
さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。
何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。
そんなニーナが番に出会うまで
4話完結
出会えたところで話は終わってます。
【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!
ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。
※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。
ボロボロになるまで働いたのに見た目が不快だと追放された聖女は隣国の皇子に溺愛される。……ちょっと待って、皇子が三つ子だなんて聞いてません!
沙寺絃
恋愛
ルイン王国の神殿で働く聖女アリーシャは、早朝から深夜まで一人で激務をこなしていた。
それなのに聖女の力を理解しない王太子コリンから理不尽に追放を言い渡されてしまう。
失意のアリーシャを迎えに来たのは、隣国アストラ帝国からの使者だった。
アリーシャはポーション作りの才能を買われ、アストラ帝国に招かれて病に臥せった皇帝を助ける。
帝国の皇子は感謝して、アリーシャに深い愛情と敬意を示すようになる。
そして帝国の皇子は十年前にアリーシャと出会った事のある初恋の男の子だった。
再会に胸を弾ませるアリーシャ。しかし、衝撃の事実が発覚する。
なんと、皇子は三つ子だった!
アリーシャの幼馴染の男の子も、三人の皇子が入れ替わって接していたと判明。
しかも病から復活した皇帝は、アリーシャを皇子の妃に迎えると言い出す。アリーシャと結婚した皇子に、次の皇帝の座を譲ると宣言した。
アリーシャは個性的な三つ子の皇子に愛されながら、誰と結婚するか決める事になってしまう。
一方、アリーシャを追放したルイン王国では暗雲が立ち込め始めていた……。
とっていただく責任などありません
まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、
団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。
この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!?
ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。
責任を取らなければとセルフイスから、
追いかけられる羽目に。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる