ショボい魔法しか使えない私が、魔法のない世界に召喚されたら崇め奉られてます

櫻野くるみ

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過保護すぎる王様

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城門前に集まった者達が、これ以上は待っていられないとばかりに煩く騒ぎ始めた。

「アンリ、突然で悪いが今から俺と共に、民の前へ出て貰えるか?皆の前で、昨日のように水と土を出して見せて欲しい。なに、量は少なくて構わない。アンリが出して見せる事こそが重要なのだからな。」

え?
こんなにたくさんの人が集まっているのに、少しの量で足りるのかしら?

「少量では、後ろの皆さんにまで行き渡らないのでは?」

「大丈夫ですよ。増やせた分を、井戸と畑から今運んでもらっていますから。本日はそちらを主に配ります。」

にこやかにクラウスが答えるが、アンリは釈然としない。

「それでは重いですし、大変では?私が出してしまったほうが皆さんの負担が減りますよね?」

「駄目だ!アンリの負担が増える!!」

ディランが即座に反対した。

怖い顔でダメ出しをされてしまったわ。
ディラン様って、私に甘いというか、過保護過ぎる気がするんだけど・・・

嬉しい反面、困ってしまったアンリの耳に、聞き覚えのある大きな声が届いた。

「うるせーぞ、お前ら!!騒ぐと水も土も分けてやんねーぞ?」

騎士団長のセガールの声だ。
城門で民衆に向かって叫んでいる。
昨日まで病気で寝込んでいたとは思えない声量であった。

「騎士団長だ!!病でくたばったんじゃなかったのか?」
「さっすが団長!煩いからまだ来るなって、あの世から追い出されたに違いねぇ。」

あっという間に城門前の広場は、大きな笑い声に包まれていた。

セガールさん、騎士団長なのにあんな気安く話しかけられてるの?
慕われてるのね。

アンリが感心していると、クラウスが説明してくれた。

「セガールは平民出身なのですよ。病に倒れた時は皆が心配し、心を痛めていました。彼が元気になってくれて良かったです。国民の士気に関わりますからね。」

そうだったのね。
セガールさんはこの国にとって大きな存在なのね。

「うるせー!!ショボくれたお前らを置いて、俺が先に死ねるか!!それより、お行儀よくしねーと、聖女様が顔を出せないだろ?ほら、ピシッとしろ!!ピシッと!!」

セガールが強引に民衆を静まらせ、整列させようとしている様子がうかがえる。
慌てて部下の騎士団員が、セガールを補佐するために走り出ていった。

「俺達も行くぞ。ほら、手を貸せ。」

ディランがアンリに手を差し出した。
一瞬意味がわからずアンリが戸惑っていると、ディランは勝手にアンリの手を握り、歩き出してしまった。

「え?え?待って下さい。うわっ、早いですー。」

足をもつれさせながらなんとか付いていくアンリの後ろを、クラウスがクスクス笑いながら追ってくる。

「一人で歩けます!」

アンリが強めに訴えてみたが、ディランは聞く気がないらしい。

「せっかく愛らしく着飾ったのだから、大人しくエスコートされろ。」

もうっ!!
だから甘やかし過ぎですってば!!

家族にすら疎まれて育ったアンリは、ディランの過保護過ぎる扱いに、なかなか素直に甘えることが出来なかった。
しかし、ディランの大きな掌に包まれるのはドキドキしつつも嬉しく、こっそり握り返したのだった。


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