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聖女のお披露目
しおりを挟むディランに手を取られながら門の前まで歩いて行くと、そこには大きな台が用意されていた。
何に使うのかとアンリが不思議に思っていると、ディランは突然アンリを横抱きにし、台に足をかけた。
「きゃっ、あ、あの、私重いですから!一人で上がれますっ!!」
「このヒラヒラした格好でか?軽いから大人しくしていろ。」
会話の途中でディランは台に上がり終わり、静かにアンリを下ろしてくれた。
「うぅぅ・・・、ありがとうございました・・・」
男性に横抱きにされた経験などないアンリは、ディランとの急な密着に動揺し、全身を赤く染めていた。
しかし、アンリ以上に動揺していたのは、セガールと民衆達だったのである。
今まで国王が女性に触れるところなど見たことがなかった彼らは、まさかのディランのエスコート姿に、ポカンと口を開けていた。
台に上がったことで、二人の姿は後ろの方に立っていた者にまで良く見えたのである。
結果的に静けさが訪れた広場に、ディランの声が響く。
「先日、召喚の儀の際に居合わせた者もいるだろうが、改めて紹介しよう。聖女、アンリだ。アンリ、隣へ。」
またもや手を差し出され、今度はアンリはすぐさま自分の手を乗せると、ディランの隣に並び立った。
えっと、私も何か言うべきなのかしら?
でも何を言えばいいの!?
期待を込めた何百もの目が自分に向けられているのを感じ、アンリは緊張でカチンと固まった。
こんな多くの人の前で挨拶が出来るほど、アンリの肝は据わっていないのである。
ディランはアンリの緊張を重ねた手から感じ取ると、おかしそうにクッと笑った。
笑われた悔しさで、アンリはわざとディランの手を強く握り返し、唇を尖らせた。
そんな二人の親しげな空気が、前方から後方へと徐々に伝わり、広場は笑い声に包まれていく。
挨拶などなくとも、民衆はアンリを自然と受け入れてくれたのである。
安心したことにより緊張が一気にほどけ、アンリも一緒になって笑い始めた。
皆さんが笑っている。
なんだか嬉しい!!
今まではいつも一人だったもの。
これからもっと役に立って、もっと仲良くなれたらいいな。
アンリがそう思った時だった。
「わわっ、なんだ、急に重くなったぞ!!」
「ん?水が入ってるぞ!!」
笑っていた人々が騒ぎ出した。
何事かと思って最前列に立つ者に目をやると、各自が持参してきたバケツなどの容器に水が溜まっているのが見える。
後ろの方に並んでいる者まで騒いでいるので、どうやら同じ現象が全員に起きているようだ。
クラウスはすぐさまコップを手にすると、近くに居た人に水を分けてもらい、検分を始めた。
「ディラン様、聖なる水です!!アンリ様は一瞬で聖なる水を民に分け与えました!!」
えええっ!?
私、まだ何もしてないけど?
アンリが自分じゃないとディランに首を振って否定したが、ディランは呆れたように目を細めた。
「アンリしかいないだろう。無意識に皆を喜ばせたいとか考えていたのではないか?全く、俺らの出番をとってくれるなよ?なぁ、クラウス?」
「ふふふ、私達はいいところが無かったですね。」
微笑みながら二人に順番に頭を撫でられたが、いまだ自分の力とは思えずにアイリは戸惑っていた。
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