ショボい魔法しか使えない私が、魔法のない世界に召喚されたら崇め奉られてます

櫻野くるみ

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アンリが消えた村

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アンリが召喚され、国王ディランを始めとする人々に大切にされることで自信を取り戻し、生まれて初めての幸せを感じている頃。
アンリが元の世界で住んでいた村では、騒動が起きつつあった。

時は、アンリが召喚された直後に遡る。


「アンリが納屋に閉じ込められているんです!家族から虐待を受けているんじゃないかと薄々思っていましたが、こんなの酷すぎます!神父様、一緒に来てくれませんか?」

アンリの幼馴染みのマイクは、一度納屋を離れると、村の神父に助けを求めて教会に駆け付けた。
一番信頼できると思ったからである。
案の定、マイクが突然訪れたにも関わらず、神父はすぐに外出する準備を始めてくれた。

「アンリは素直でとても良い子ですが、いつも悲しげで、控えめな態度なのを心配していたんです。一度、ご家族と話した方がいいみたいですね。」

「お願いします、神父様!アンリは自分の魔法が弱いことを気に病んでいました。だから全部自分が悪いのだと、学校でもいつも辛そうにしていて。先生も見ぬふりだし、僕もどうしたらいいかわからなくて・・・」

「アンリは家庭だけでなく、学校でも辛い目にあっていた可能性があるということですね。よく話してくれました。あとはアンリ本人から話を聞きましょう。支度が出来ました。さぁ、行きましょう!」

マイクが神父と足早に通りを進んで行くと、アンリが親しくしている商店のおかみさんが顔を出した。

「マイク!こんな時間にどうしたんだい?神父様まで。」

「あ、おかみさん!アンリが大変なんだ。納屋に閉じ込められてるみたいで。」

「なんだって!?私は前からあそこの親はおかしいと思ってたんだよ!私も行くよ!!」

アンリを心配したおかみさんが加わろうとしたところに、おかみさんの夫が現れた。

「待て。あそこの夫婦はいい人達じゃないか。娘にそんなことをするはずがない。マイクの勘違いじゃないのか?」

アンリの両親は外面がいい為、ほとんどの村人が同じように思っていた。

「まあまあ、勘違いならそれで構わないですよ。念の為です。」

神父が取り成していると、話し声を聞いた近所の住人が何事かと徐々に増えていき、通りは日中のような人出になった。
普段平和極まりない村なので、滅多にない出来事に、心配する者、面白がる者が集まり出したのである。

俄に大所帯となった彼らは、アンリの家を目指し、数分後に門の前へ辿り着いた。
代表としてマイクと神父が納屋の様子を見に行くことになり、他の者はしばらくこの場で待機することになった。
アンリを普段学校でいじめている子供達が愉快そうに笑い、標的になるのが怖くて助けてあげられなかった子供達は、心配そうに成り行きを見つめていた。

「アンリ?助けに来たよ!返事をして!!」

マイクが納屋の入り口から声をかけるが、既にグランダースに召喚されてしまったアンリから、返事が返ってくることはない。

「おかしいですね。さきほどは返事があったのですよね?もうお仕置きが終わって、部屋に戻されたのでしょうか。」

二人が話していると、玄関が開き、アンリの両親が顔を出した。

「おや、神父様ではないですか。こんな時刻にどうされました?我が家に何か?」

いつもと同じ丁寧な口調とにこやかな笑顔を向け、アンリの父が問いかける。
アンリの母も、その後ろで微笑んでいた。

「突然すみませんね。いや、アンリに聞きたいことがありまして。アンリはいますか?」

神父が普段の調子で話しかけるが、マイクは二人を睨みつけていた。

「アンリなら、もう寝ていますよ。日を改めていただけますか?」

まるで何も後ろ暗いことはないとでもいうように、父親は答え、母親は頷く。

「そんなはずはない!僕はアンリが納屋で泣いている声を聞いたんだ!」

マイクが食ってかかる。

「納屋?そんな場所に居るはずがない。アンリは部屋で寝ているんだから。」

ハハハと両親が笑い、奥でアンリの兄がニヤニヤしているのが見えた。

「そうですか。では確認だけさせていただきますね。失礼します。」

いつもの神父らしくない、強引な態度で家に入ろうとすると、アンリの家族は慌て出し、神父を締め出そうとする。

「いくら神父様でも、若い娘の部屋にこんな時間に!非常識じゃないですか!」

揉めている間に、門の前で待っていたおかみさんが現れ、彼らの間をすり抜けて入っていく。

「私は女だからね、入らせてもらうよ!」

そのままアンリの部屋を探すが、すぐに見つかった。
というより、アンリの兄が不審な動作をした為、2階の隅の、薄汚れた扉の部屋だと気付いたのである。

「アンリちゃん?私だよ。悪いね、開けるよ?」

おかみさんが扉を開くと中は暗く、灯りをつけたが、もちろんアンリはそこに居なかった。

「納屋っていうのは、本当らしいね。しかも、この部屋・・・」

おかみさんが絶句するのも当然だった。
アンリの部屋は、若い女の子らしいものは何一つ無く、使い古され、色褪せた最低限の家具しかなかったのである。


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