【完結】断りに行ったら、お見合い相手がドストライクだったので、やっぱり結婚します!

櫻野くるみ

文字の大きさ
7 / 11

近付く距離。

しおりを挟む
無事にライアンの服を仕立てる権利を手に入れたソフィーは、早速服作りにとりかかることにした。

お父様ったら、心配しなくてもまだ第二関門が残っているのに・・・
まぁ、ライアン様の妻の座は、絶対勝ち取ってみせますけどね!

ソフィーは、もう娘が嫁に行くのが決まったかのように落ち込む父を、笑って見ていた。
お嫁に行くかどうかはソフィーの服の出来次第なのだが、ソフィーの腕を誰よりも理解している父は、可愛い娘を近い将来手放すことを察していたのである。

ライアンの父の伯爵は、お見合いが継続したことで既に結婚が決まったかのように喜び、屋敷内の部屋を服を仕立てるのに使って欲しいと申し出てくれた。
伯爵の失くなった妻が以前裁縫を嗜んでいて、旧型のミシンがあるからぜひ活用して欲しいというのである。
まさかの提案にソフィーは歓喜したが、同時に悩みもした。
果たして年頃の娘が、同じく未婚の男性が住む屋敷へ入り浸ってもいいものか・・・
すると伯爵が、自分の服や、使用人達の制服も一新しようと言い出し、大がかりな仕事になる為、自分が部屋を提供したことにすればいいと言ってくれた。

まさに願ったり叶ったりのソフィーだったが、これは、使用人とも結び付きを強くし、なんとか結婚に持ち込もうという伯爵の思惑だったのである。


作業初日、ソフィーは使い慣れた道具を持って、伯爵家に向かった。
外出している伯爵とライアンの代わりに、ジェーンがすべてを頼まれているらしく、スムーズに部屋へと案内された。

「どうぞこちらのお部屋をお使い下さい。足りないものはおっしゃっていただければ、なるべくご用意致しますので。」

ニコニコとジェーンが部屋の中の説明をしてくれるが、想像以上に、いや、あまりの豪華な部屋にソフィーは戸惑った。

「あの、作業部屋なのに、こんな素敵な部屋をお借りしていいのでしょうか?ミシンも旧型と聞いていましたが、こんな多機能で高価なものを・・・」

日の当たらない使用人部屋で良かったのに、なんて広くて明るい部屋なのかしら。
ミシンもすごいけれど、道具も全部揃ってるじゃない。

「もちろんよろしいのですよ。旦那様は、奥様の使ってらした道具がまた日の目を見ることになって喜んでいらっしゃいます。ライアン様の試着など行うのでしたら、広い部屋の方がいいですよ。」

それもそうかもしれないわね。
使用人の方々も行き来するだろうし。

「では、ありがたく使わせていただきますね。今日は伯爵様とライアン様のお帰りは何時頃でしょうか?とりあえずは採寸をしないと・・・」

「それが、もしかして遅くなるかもと・・・」

申し訳なさそうにジェーンが答えるが、ジェーンのせいではないし、だったら他のことから始めるだけである。

「じゃあ新しい、使用人さん達の制服のデザインから進めましょう!皆さん、要望などありますよね?あ!手の空いている方々と一緒にお茶とかしたらまずいですか?」

さすがに他家の使用人とお茶会を開くのは行き過ぎかと思ったソフィーだったが、呆気なく案は通った。
『ソフィーを使用人と仲良くさせて、お嫁に来させる計画』を伯爵が立てているのだから、当然である。

こうして珍しいお茶の時間が始まり、最初は緊張をして黙りがちだった者も、ソフィーの話しやすさにつられ、徐々に意見を出してくれるようになった。

「我が儘だとは思うんですけど、脱ぎ着が大変で。」
「もう少ししゃがみやすい方がいいのですが。」
「今のが古いデザインなので、お洒落になったら嬉しいです。」

男女それぞれ、様々な意見が出たのをメモにとっていく。
生の声を聞くと、思っていたより改善点があるものだなとソフィーは勉強になった。



◆◆◆



ライアンは予定より帰宅が遅くなり、疲れていた。
今日からソフィーが来ることはわかっていたが、予想外のトラブルが起こり、切り上げて帰ることが出来なかったのである。

屋敷に帰ると、ジェーンが待っていた。

「今、戻った。ソフィー嬢はどうした?」

「ソフィー様でしたら、夕方には帰られました。ライアン様のお時間が取れる時に、採寸だけしたいとのことです。今日は私達とお茶をしながら、新しい制服についてお話を致しました。」

嬉しそうに報告をするジェーンに、ライアンは驚いた。

「は?うちの使用人とお茶?」

視線をジェーンから他の使用人に移すと、皆笑顔で頷いている。

正気か?
普通は雇用元の意見だけあれば作れるだろう。
現場の声を聞いて作る気だということか?

ライアンはソフィーのやり方に驚き、しかしそれでは労力をかけ過ぎだと非難めいた気持ちが芽生えた。
気持ちに寄り添い過ぎれば、ビジネスは立ち行かなくなることも多い。
自分も事業を行う者として、ライアンはソフィーの今後に、不安と興味を感じた。


翌日は早めに帰宅し、採寸の時間を作った。
ソフィーはメジャーを手に満面の笑顔だが、うってかわってライアンは怪訝そうな表情を浮かべる。

「ソフィー嬢?以前と随分印象が変わったな。なんというか、地味というか・・・」

ソフィーは髪をお団子にひっつめ、黒い飾り気のないワンピース姿であった。
まるでメイドである。

「あ、これは作業スタイルなんです。今日からはずっとこんな格好ですけど、よろしくお願い致します。」

貴族の令嬢が好んで着る服には思えず、最初違和感を感じたライアンだったが、すぐに意見は変わった。

随分と身軽に動くんだな。
このスタイルが一番動きやすいというのは事実なのだろう。
何より驚いたのは、使用人との連携だな。
もうこんなに親しくなったのか?

クルクルと楽しそうに、使用人と笑い合いながら働くソフィーは、今まで見た令嬢の中で一番輝いて見えた。

地味な格好の彼女が、着飾っている時より魅力的に見えるとはどういうことだ?

ライアンが自分の気持ちの変化に狼狽え、一生懸命平常を装っているのを、ジェーンだけが見抜き、内心笑っていたのだった。

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されて自由になったので、辺境で薬師になったら最強騎士に溺愛されました

有賀冬馬
恋愛
「愛想がないから妹と結婚する」と言われ、理不尽に婚約破棄されたクラリス。 貴族のしがらみも愛想笑いもこりごりです! 失意どころか自由を手にした彼女は、辺境の地で薬師として新たな人生を始めます。 辺境で薬師として働く中で出会ったのは、強くて優しい無骨な騎士・オリヴァー。誠実で不器用な彼にどんどん惹かれていき…… 「お前が笑ってくれるなら、それだけでいい」 不器用なふたりの、やさしくて甘い恋が始まります。 彼とのあたたかい結婚生活が始まった頃、没落した元婚約者と妹が涙目で擦り寄ってきて―― 「お断りします。今さら、遅いわよ」

聖女の座を追われた私は田舎で畑を耕すつもりが、辺境伯様に「君は畑担当ね」と強引に任命されました

さら
恋愛
 王都で“聖女”として人々を癒やし続けてきたリーネ。だが「加護が弱まった」と政争の口実にされ、無慈悲に追放されてしまう。行き場を失った彼女が選んだのは、幼い頃からの夢――のんびり畑を耕す暮らしだった。  ところが辺境の村にたどり着いた途端、無骨で豪胆な領主・辺境伯に「君は畑担当だ」と強引に任命されてしまう。荒れ果てた土地、困窮する領民たち、そして王都から伸びる陰謀の影。追放されたはずの聖女は、鍬を握り、祈りを土に注ぐことで再び人々に希望を芽吹かせていく。  「畑担当の聖女さま」と呼ばれながら笑顔を取り戻していくリーネ。そして彼女を真っ直ぐに支える辺境伯との距離も、少しずつ近づいて……?  畑から始まるスローライフと、不器用な辺境伯との恋。追放された聖女が見つけた本当の居場所は、王都の玉座ではなく、土と緑と温かな人々に囲まれた辺境の畑だった――。

美醜聖女は、老辺境伯の寡黙な溺愛に癒やされて、真の力を解き放つ

秋津冴
恋愛
 彼は結婚するときこう言った。 「わしはお前を愛することはないだろう」  八十を越えた彼が最期を迎える。五番目の妻としてその死を見届けたイザベラは十六歳。二人はもともと、契約結婚だった。  左目のまぶたが蜂に刺されたように腫れあがった彼女は左右非対称で、美しい右側と比較して「美醜令嬢」と侮蔑され、聖女候補の優秀な双子の妹ジェシカと、常に比較されて虐げられる日々。  だがある時、女神がその身に降臨したはイザベラは、さまざまな奇跡を起こせるようになる。  けれども、妹の成功を願う優しい姉は、誰にもそのことを知らせないできた。  彼女の秘めた実力に気づいた北の辺境伯ブレイクは、経営が破綻した神殿の借金を肩代わりする条件として、イザベラを求め嫁ぐことに。  結界を巡る魔族との戦いや幾つもの試練をくぐり抜け、その身に宿した女神の力に導かれて、やがてイザベラは本当の自分を解放する。  その陰には、どんなことでも無言のうちに認めてくれる、老いた辺境伯の優しさに満ちた環境があった。  イザベラは亡き夫の前で、女神にとある願いを捧げる。  他の投稿サイトでも掲載しています。

捨てられた騎士団長と相思相愛です

京月
恋愛
3年前、当時帝国騎士団で最強の呼び声が上がっていた「帝国の美剣」ことマクトリーラ伯爵家令息サラド・マクトリーラ様に私ルルロ侯爵令嬢ミルネ・ルルロは恋をした。しかし、サラド様には婚約者がおり、私の恋は叶うことは無いと知る。ある日、とある戦場でサラド様は全身を火傷する大怪我を負ってしまった。命に別状はないもののその火傷が残る顔を見て誰もが彼を割け、婚約者は彼を化け物と呼んで人里離れた山で療養と言う名の隔離、そのまま婚約を破棄した。そのチャンスを私は逃さなかった。「サラド様!私と婚約しましょう!!火傷?心配いりません!私回復魔法の博士号を取得してますから!!」

氷のメイドが辞職を伝えたらご主人様が何度も一緒にお出かけするようになりました

まさかの
恋愛
「結婚しようかと思います」 あまり表情に出ない氷のメイドとして噂されるサラサの一言が家族団欒としていた空気をぶち壊した。 ただそれは田舎に戻って結婚相手を探すというだけのことだった。 それに安心した伯爵の奥様が伯爵家の一人息子のオックスが成人するまでの一年間は残ってほしいという頼みを受け、いつものようにオックスのお世話をするサラサ。 するとどうしてかオックスは真面目に勉強を始め、社会勉強と評してサラサと一緒に何度もお出かけをするようになった。 好みの宝石を聞かれたり、ドレスを着せられたり、さらには何度も自分の好きな料理を食べさせてもらったりしながらも、あくまでも社会勉強と言い続けるオックス。 二人の甘酸っぱい日々と夫婦になるまでの物語。

【完結】お見合いに現れたのは、昨日一緒に食事をした上司でした

楠結衣
恋愛
王立医務局の調剤師として働くローズ。自分の仕事にやりがいを持っているが、行き遅れになることを家族から心配されて休日はお見合いする日々を過ごしている。 仕事量が多い連休明けは、なぜか上司のレオナルド様と二人きりで仕事をすることを不思議に思ったローズはレオナルドに質問しようとするとはぐらかされてしまう。さらに夕食を一緒にしようと誘われて……。 ◇表紙のイラストは、ありま氷炎さまに描いていただきました♪ ◇全三話予約投稿済みです

職業・聖女~稼ぐわよ!

satomi
恋愛
私は村人Aとして兄弟妹仲良く暮らしていく予定だったリリス。ある日、王都から神官がやってきて多分聖女探し。 私は聖女に認定されて、王都に連れて行かれそうになったんだけど、神官がコソコソと話しているのを耳にした。「兄弟妹なんぞ始末してしまえ!」と。 そんな人に力を使う予定はありません。 聞けば、無報酬での仕事。将来的に王妃になれるのだから。と。 ハァ?見たこともない相手との縁談なんてお断りよ!無報酬で働きまくるなんてもってのほか! このお話、お断りします!!

【完結】兄様が果てしなくアレなのですけど、伯爵家の将来は大丈夫でしょうか?

まりぃべる
恋愛
サンクレバドラー伯爵家は、果てしなくアレな兄と、私レフィア、それから大変可愛らしくて聡明な妹がおります。 果てしなくアレな兄は、最近家で見かけないのです。 お母様は心配されてますよ。 遊び歩いている兄様…伯爵家は大丈夫なのでしょうか? ☆この作品での世界観です。現実と違う場合もありますが、それをお考えいただきましてお読み下さると嬉しいです。

処理中です...